孤独は希望を生み、
希望は絶望になった。
絶望は孤独を積もらせ、
孤独はまた希望を生む…
私の名前は……いや、そんなの今はどうでもいいの
私には会いたい人がいる。半年前にあって以来、ずっと片思いしているの。
彼のことを思うと…世界なんかどうでも良くなる。
でも彼が何事もなく暮らすためにはこの世界がなくちゃいけない。
だからまだみんな生きてる。
今日も私は歌う。みかんの箱を逆さまにしたステージで。
私は歌うことが好きだ。
誰にも縛られず、誰にも止められず、私の意志で出来ること。
それは歌うことぐらいしかなかったからかもしれないけど。
それでも私は歌うことが好きだ。
彼は真夜中の商店街を通った一人のお客さんだった。
私の歌を、彼は足を止めて聞いてくれた。
私はそんなの初めてだった。
人はたまに通るけど、みんな私の歌なんか聞いてくれない。
立ち止まるどころか足早に逃げて行くくらいだ。
だから私は彼のために歌った。いつもより思いを込めて。
彼は歌が終わるまで目をそらさずに聞いてくれた。
そして最後に、
「また聞きにくるよ」
そう言って帰っていった。
私は心を奪われた。
それからというもの、私は毎晩欠かさずに歌った。
みかんの箱を逆さまにしたステージで。
たとえ、寒くても、避けられても、孤独でも、私は歌った。
彼がまた、来る日を願って。
そして今日、あれからちょうど半年がたった。
いまだ、私の前に彼は現れない。
それでも私はあきらめない。
私は彼が来るまで歌い続けることを誓った。
歌うこと。それは私にとって唯一の希望だった。
歌詞はいつしか彼を思うものになっていた。
まだ彼は来ない。
この日も歌い終わって家に帰る。
途中、商店街においてあるテレビがついたままだということに気がついた。
私はしばらく眺めていた。
するとニュースが始まった。メガネをかけた中年の男性が文章を読み上げる。
『続いてのニュースです。えぇ…これまで行方不明だった25歳、ピアニストの男性が昨夜遺体で発見されました。』
私は一瞬、何を言っているのか分からなかった。いや、分からないままでいたかった。
そこには、あのとき私の歌を聞いてくれた彼の写真が、テレビの画面上に映し出されていた。
私はようやく受け入れた。
彼は…
彼は……
…………死んだんだ。
私は叫んだ。
声にならない声を上げた。
のどが焼けるように熱い。
彼が死んだ。
希望が消えた。
私は叫んだ。
その声は商店街に響いていた。
今日も私は歌う。みかんの箱を逆さまにしたステージで。
なぜだろう、いつも通り歌っているのに。
いつもと同じ時間なのに。
目に、涙が浮かぶ。
前が見えないや…
もう歌う意味はない。
そう思っていた。
今日も私は歌う。
みかんの箱を逆さまにしたステージで。
そんな私の歌を、彼は足を止めて聞いてくれた。
胸の中で何かが芽を出した。
彼は歌が終わるまで目をそらさずに聞いてくれた。
そして最後に、
「また聞きにくるよ」
そう言って帰っていった。
私は心を奪われた。
私の中に新しい希望の花が咲いた。
半年後、彼は死んだ。
少女は歌い続ける。いつまでも…
こんにちは、ぺんたこーです。
読んでいただきありがとうございます。
…え?少女は今、どうしているのかって?
それは私にも分かりません。
ですが、これだけは言えます。
少女は歌い続けます。
たとえ、命が尽きようと…