メグル   作:ぺんたこー

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私は踊る。
美しく舞う。
たとえそれが…

現実でなくても。


オドル

「さぁ!小さな主役さん。」

 

…私が主役?

 

歓声が聞こえる。

 

ここは…舞台?

 

「がんばっておいで!」

 

…え!?なにをするの?

 

どうしよう……私…

 

何もおぼえてない。

 

ー キーン ー

 

うぅ…頭が痛い。

 

『ワンツーワンツー』

 

…?なんだろう…みんな踊ってる…何かの練習かな?

 

『はい!ターン!』

 

……思い出した。

 

私はバレリーナだ!

 

舞台で鮮やかに舞う。

 

あれ?何か、大切なことを忘れている気がする…

 

いいや、今は舞台に集中しなくちゃ。

 

私は舞台に立つ。

 

幕が上がり、お客さんの拍手が聞こえる。

 

音楽が流れ始めた。

 

それに合わせて私は踊る。

 

わんつーわんつー

 

くるくる回る、優雅に回る。

 

曲が強くなる。

 

もうすぐだ。

 

いつも練習で失敗していたところ、今は本番なんだ。

 

失敗できないんだ!

 

私は今までの思いを乗せて精一杯とんだ。

 

いける!

 

練習の時よりも高く、美しくとべた気がする。

 

いつもは高くとぶことすら出来ない。でも今は違う。

 

高くとべた。

 

美しくとべた!

 

お客さんは関心の目を向けている。

 

いける。いける!

 

私は今、輝いている!

 

あぁ、幸せだ。

 

多分私はこの瞬間のためにバレリーナをやっているんだろう。

 

今日は、人生で最高の日だ!

 

私の胸の鼓動が高鳴る。

 

いける!

 

しかしそれは叶わなかった。

 

着地のときだった。

 

ー ゴギュ ー

 

下の方から生々しい音が聞こえる。

 

途端、私の視界が歪む。

 

脳が痛みを認識した。

 

「いやぁ」

 

なんだろうか、痛みよりも絶望感が勝っていたとでもいうのか。

 

私は叫べなかった。

 

着地ミス?

 

そんなことで私の人生が終わるの?

 

嫌だ…私はまだ踊りたい…

 

意識が遠のく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌ぁ!!」

 

私は布団を押しのけ起き上がる。

 

すごい量の汗が流れている。

 

あれ?ここはどこだろう…

 

確か…私は踊っていた。

 

最高の気分だった。

 

そうだ、着地を失敗して…

 

…ッ!!

 

絶望感が溢れだす。

 

布団がかかった足を見た。

 

おそるおそる布団をめくる。

 

そこにはパジャマのズボンをはいた足があった。

 

動かしてみる。

 

…?

 

痛くない。

 

試しに私はベッドから降りてみる。

 

痛くない。

 

安心感が私を包む。

 

部屋を見回す。

 

あれ?よく見たらここ

 

…私の部屋だ。

 

さっきまではベッドの上にいた。

 

じゃあ、さっきのは…夢?

 

良かった。

 

夢オチだった。

 

だいぶ心が落ち着いた。

 

机の上のカレンダーを見る。

 

今日の予定は…

 

カレンダーで今日の予定を見る。

 

今日を示す数字は赤色のマジックペンでぐるぐるとかこまれていた。

 

その下に発表会と書いてある。

 

…そうだ。

 

今日は発表会だ。

 

時計を見る。

 

「もうこんな時間!?」

 

思わず声が漏れる。

 

私は急いで準備をして、会場へ向かった。

 

 

 

良かった、間に合った。

 

会場に着くと係員の人が控え室まで案内してくれた。

 

まだ自分の番まで、少し時間がある。

 

ー 頑張って ー

 

ぼーっとしていたら急に声が聞こえた気がした。

 

あたりを見回すが誰もいない。

 

気のせいだろうか。

 

そんなことを考えているとスタッフの人が、準備をして舞台袖へ行くよう指示した。

 

私は衣装に着替え、舞台袖まで行く。

 

そこには裏方の人達がいた。

 

音響、照明、大道具、みんな一生懸命仕事をしていた。

 

そのうちの一人が小走りで近寄ってくる。

 

スタッフさんだろうか。細身の女性だ。

 

「あなたが次の出場者?」

 

私はうなずく。

 

「緊張せずに頑張るのよ!」

 

そう言われ、私は大きく深呼吸をした。

 

「それでは次の方です。どうぞ」

 

舞台の方で司会者が言う。

 

あれだけ練習したんだ。

 

きっと出来る。

 

自分に言い聞かせる。

 

鼓動が早くなる。

 

瞬間、頭の中が真っ白になった。

 

 

 

 

 

どれくらい時間がたっただろう。

 

私は声をかけられて、ようやく我に戻った。

 

「さぁ!小さな主役さん。」

 

私の脳は理解が追いつかない。

 

…私が主役?

 

歓声が聞こえる。

 

ここは…舞台?

 

「がんばっておいで!」

 

…思い出した。

 

私はバレリーナだ!

 

 

私は踊る、優雅に踊る。

 

あぁ、幸せだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー ゴギュ ー




日の光が差し込む病室に眠り続ける少女がいた。

少女はバレリーナ。

事故でいまだに意識が不明。

たとえ意識が戻っても、もう足は動かない。

しかし少女は踊り続ける。

たとえそれが夢の中でも。




隣には母親らしき人がいる。

寝ている少女を見ながらつぶやく。

「頑張って」

母親の目には涙が浮かんでいた。

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