わたしは遊ぶ。
私は森の小さな一軒家に住んでいる。
私は一人っ子だ。
でも決して寂しくない…
だってお父さんも、お母さんも優しくしてくれるから。
おもちゃだってたくさんある。
今日も私は一人で遊ぶ。
小さな家の部屋の中。
ーねぇねぇ遊ぼうよ。
…あなたはだあれ?
ーわたしはあなた
あなたは私?
じゃあ、私はだあれ?
ーあなたはあなた。
あなたは私で、私は私…
わけ分かんないよ…
ねぇ、あなたはだあれ?
ーわたしはあなたよ…
まって!ねぇ!わけ分かんないよ!
ねぇ!ねぇってば!
……もう…なんなの…
……? あれ?いつの間にこんなに時間が経ったんだろう…
お外がもう真っ暗だ…
「ただいまー」
…あっ!お母さんが帰ってきた!
私は部屋を出て階段を駆け下りる。
玄関までお母さんを出迎える。
「ただいま、いつも遅くてごめんね。さっ!ご飯にしましょ!」
「うん!」
ふー…お腹いっぱいだ。
ーねぇねぇ遊ぼうよ。
またあなたなの?
ーそんなことは気にせず遊びましょ。
今日の私は二人で遊ぶ。
ーどう?楽しい?
うん…でも何かおかしいの。
ーなにがおかしいの?
あなたと遊んでいると…なぜだか……私が私じゃなくなるような…
ーそんなこと気にしないで?
…でも……でも!
ーふふっ、いつか気がつくわ。
ねぇ!待って!
…あれ?夢かな…
今日も朝がやってくる。
みんなにやってくる。
平等に、それでいて残酷に…
「いってきます」
…あっ!お母さんが出かける!
私は部屋を出て階段を駆け下りる。
玄関までお母さんを見送る。
「いってらっしゃい!」
私は部屋に戻る。
おもちゃ箱からお人形を出す。
今日も私は一人で遊ぶ。
毎日同じことを繰り返す。
ーねぇねぇ遊ぼうよ。
またあなた?
ーさぁ、遊ぼう?
………
うん…
私は遊ぶ。
二人で遊ぶ。
ーほら、あなたのためだけに作ったのよ。
これは何?
ーこれはお菓子の家だよ。
お菓子の家?すっごーい!
ーどう?楽しい?
………
…うん!
私はこの人が大好きだ。
私のために何でもしてくれる。
そう……
お母さんとは…『あの人』とは…
違う!
ーもうすぐあなたはわたしになる。
私は忘れている。
ーわたしは覚えている。
ーわたしは私。
ーもうすぐ
ー入れ替われる!
ー今日も私は二人で遊ぶ。
今日は何して遊びましょうか…
ーねぇ、何かおかしくない?
そんなこと気にせず遊びましょ。
ーうん…
ーなんだろうこの感じ。
ー私が私じゃないみたい…
「ただいまー」
ー…あっ!お母さんが帰ってきた!
ー私は部屋を出て階段を駆け下りる…
ーあれ?身体が思うように動かない…
やっと気づいたの?
ーあなたは誰?
わたしはあなた、わたしは私よ。
ーどういうこと!?
つまり…あなたは今、わたしの中にいる。
あなたは私と代わってくれた。
今度は私がこの身体を使うのよ。ふふっ
ーねぇ!待って!
ーどうすれば元に戻るの?
……『寂しさ』を認めさせたら…かな?ふふふっ
ーえ?
あなたは『寂しさ』を認めなかった。だからわたしが生まれたの。
そして、あなたはわたしと遊んで『寂しさ』を認めたのよ。
だからわたしとあなたは入れ代わった。
ーじゃあ、あなたに『寂しさ』を認めさせればいいのね。
ふふっ、そうよ。でもそんなことできるのかしら。
あなたは今、語りかけることしか出来ないのよ?
ー…!?
まぁ、あなたが入れ替われても、またわたしが入れ替わるわ。
ー……
あら、そんな怖いこと考えないで。わたしを生み出したのは、あなたなのよ。
ーそんなのとっくに思い出してる!
ーだからもう、私の身体は渡さない!
今日もわたしは一人で遊ぶ。
小さな家の部屋の中。
…はぁ、お母さん遅いなぁ…
ーねぇねぇ遊ぼうよ。
…?…あなたはだあれ?
ー私はあなた
今日も私は一人で遊ぶ。
母は悩む。
毎日、娘の人格が変わっている。
今、娘の身体で何がおこっているのだろう…
街の医者に聞いたところ、それは『多重人格』だそうだ。
今のところ娘の人格は2人確認できている。
なぜこんなことになったのだろう…
少し前までは1人だったのに…
母の頬に水滴が流れる。