俺ガイルサイド…
八幡はアカメ達の世界にいた間に何故か一週間程、学校を無断で欠席をしていた扱いになっていたらしい。そのため朝から職員室で平塚静に説教?をされ一時間程、反省文を書かされたらしい。それから数時間後が進み正午、八幡は一人外で弁当を食べていた。
八幡「…(良いなぁ〜やっぱりこの静かさ…誰にも邪魔をされずにこうやって優しい風を浴びながら食べる弁当は格別だ…それは小町が作った弁当だからな、世界一可愛い妹がだぞ?美味しいに決まっている!てかもう食ってるし本当に美味しい!…ただ戸塚が今日発熱で欠席しているのが残念だったがな…今日はここに天使はいない)」
八幡は一人心の中で、呟きながら弁当を食べる。すると校門の方角から見たことのある人物がこちらを見ているような気配を感じた。
八幡「っ!あいつは?(誰だっけ?確か…)」
八幡の瞳に映ったのは、チェルシーとセキザクラだった。二人は校門の前で立っていて、八幡から見るとチェルシーがこちらを見ているようにみえた。その間、八幡は気配を消そうとする。
八幡「…(いや勘弁してくれ!俺はもう行けない!てか逝きたくない!だから早くどっか行ってください!)」
八幡が暫く息を殺していると、チェルシー達は学校から離れて行った。八幡はそれを見て一安心する。
八幡「はぁ…(危ねぇ、もう少しでバレるところだったな…やっぱり俺存在薄いからか?だが念の為明日から屋上で食べようかな)」
八幡は残りの弁当を全部食べた後、学校の中に入り教室に戻った。
教室に戻って行く途中、八幡は廊下で見たことのある人物(中二)と遭遇した。
義輝「おっ!八幡!久しぶりじゃないかぁ?)」
八幡「…おう」
八幡は軽く手を挙げた後その場から去ろうとする。すると義輝は慌てて八幡の前に再び立ちはだかる。
義輝「まっ待て八幡!お主、一週間程居なかったそうではないか?どうしたのだ?」
八幡「…何でお前が知ってんだ?」
義輝「お主のクラスの…いや、あの体育祭で負け犬と成り下がった葉山と言う奴が廊下で他の連中にそう言っているのが耳に入ったからなのだ!」
八幡「…あれは反則負けだったがな(葉山か…他の連中で言うと三浦あたりに言っていたと言うことになるな、まぁ本当にどうでもいい事なんだが)」
義輝「大丈夫だ!我は主の味方だ…話して見せよ」
即答で八幡は言う。
八幡「…熱で休んでた…それだけだ(嘘なんだがな)」
義輝「そっそうか…それはしょうがないなぁ」
八幡「そろそろ授業が始まるから俺は戻るぞ?」
八幡はそう言うと、教室の方向へ向かって行った。
義輝「ムムッ!もうそんな時間か…さて我も戻るとしよう!終わったら我と一緒にサイゼにでも〜」
義輝は八幡の方を振り向くが、喋っている間に八幡は教室に行ってしまった。
義輝「…あれ?」
場面は数分後に変わり、雪乃は体育の授業を受けていた。授業の内容は持久走…理由はマラソン大会が近い為である。そんな中、雪乃はグランドで走る位置についていた。どうやらクラス全員(男子も含む)でやるらしい。
雪乃「…(狭いわね、これでは走り辛いのだけれど…)」
そんな中、雪乃の近くにいた女性が声をかけてきた。
矢千瑠「まぁ、わかるよ〜こんな大人数で一斉スタートするなんて暑苦しくて死にそうだわ」
雪乃に声をかけてきた人物の名は、鳳矢千瑠。雪乃のたった一人の友達(結衣を除いて)である。
雪乃「鳳さん、同じクラスになってから思っていたのだけれど私の心を読むのはやめてほしいわ…」
矢千瑠「あれ?予想的中してた?」
雪乃「…」
すると、矢千瑠が真剣な眼差しで雪乃に問う。
矢千瑠「雪乃ちゃん、何か悩んでいるんだったらいつでも言っていいんだよ?」
雪乃は目を見開く。だがそれは一瞬だけであって、直ぐに普段の平静さに戻る。
雪乃「…鳳さん、私に悩みなんて無いわ…それよりも生徒会の方は大丈夫なのかしら?」
矢千瑠は雪乃にそう言われると、微笑んだ表情になる。
矢千瑠「雪乃ちゃんが心配してくれるなんて珍しいわね…生徒会なら大丈夫よ?上手くやってる」
雪乃「そう…」
その後スタートの合図が鳴り、クラス全員はグランドを走り始める。一周二周して行くと段々と個人差が出てきた。雪乃は現在その中で二位の位置にいた。トップとの差は30m程あった。
雪乃「はぁ…はぁ…(くっ…やはり体力がないのが仇となっているわね)」
雪乃の直ぐ後ろには、スタート前に話していた矢千瑠がいた。どうやら矢千瑠は雪乃とほぼ同等の実力があるらしい。
矢千瑠「やっぱり…凄いね雪乃ちゃん!だけど、私も負けないよ!」
矢千瑠は雪乃を追い越そうとするが、雪乃が再び前に出る。
雪乃「はぁ…はぁ…(流石…と言いたい所だけれど私は簡単に負けるつもりは無いわ!)」
二人は互いに競いながらトップに近づいて行く。
矢千瑠「はぁ…はぁ…(もう少しで一位になれる!)」
雪乃「はぁっ!…はぁっ!…(鳳さん、体力があるのね)」
トップの生徒がラスト一周に入って三秒後、雪乃と矢千瑠が同立でラスト一周に入る。トップの生徒は後ろを振り向くと、雪乃と矢千瑠が急接近しているのが見えた。
男子生徒「えぇぇ!(嘘でしょ!)」
当然この反応である。女子生徒二人が男子生徒を追い抜こうとしている(寧ろ二人で競っている)のであるからだ。驚くのも無理はない。
雪乃「はぁっ!はぁっ!(後は鳳さんを引き離せばっ!)」
だが矢千瑠はまだ体力が残っていた。まだ余裕があった。
矢千瑠「はぁ…はぁ…雪乃ちゃん!そろそろ限界なんじゃないの!」
矢千瑠はまだ息が整っていた。それに喋る体力があるぐらいだった。その反面、雪乃は息が既に乱れていた。だが雪乃は「負けたくない!」と口には出さないが実際は極度の負けず嫌いな為、無理をしてでも矢千瑠について来る。
雪乃「はぁっ!はぁっ!はぁっ!(ここまでついて来るなんて…この子、恐ろしいわね)」
残り半周になった所で、矢千瑠は雪乃を追い越しそのまま一気に独走する。
雪乃「はぁっ!はぁっ!(体力が…持たない!)」
そのまま矢千瑠はクラス一位でゴールをした。その数十秒後に雪乃はゴールをした。雪乃はゴールをした後、悔しそうな表情をしていた。因みに三位でゴールした男子生徒は雪乃と三秒差まで詰めていた。
矢千瑠「雪乃ちゃん、耐久力は私の方があったみたいね!」
雪乃「いいえ…これは授業の一つ、悔しくは無いわ…はぁ…はぁ…」
矢千瑠「ふふ、その割には結構本気でやってた気がするけどね」
クラス全員がゴールした後、体育の授業が終わり雪乃達は教室に戻って行った。
ホームルームが終わり、雪乃は教室を出て部室に向かっていた。
雪乃「…(今日は本気出しすぎたわね、教室に戻った時にはクラスの女子がビクビクしながら私を見ていたわ…私そこまで顔が凄かったのかしら?)」
独り言を呟いていた雪乃は部室の前で一度止まり横を振り返る。するとそこには隼人が壁に寄りかかってこちらを見ていた。
隼人「やぁ…奇遇だね」
雪乃「…」
雪乃は冷たい視線を隼人に向けた後、再び部室に目を向ける。
隼人「来るの早いねぇ、いつも思ったけどさ」
雪乃は隼人の発言を無視し、扉に手を触れる。
隼人「もう行っちゃうのか?」
雪乃「…(しつこい)」
雪乃が部室の扉を開くと隼人が遮るように言葉を挟む。
隼人「あ、あのさ」
だが雪乃は…
雪乃「用がないなら早々に帰宅したらどうかしら?」
雪乃はそう言い部室に入って扉を閉め鍵をかける。
雪乃「(しつこかった…)」
そう思っていると、隼人の声が聞こえる。
隼人「君はどうして振り向いてくれないんだ…僕はやっぱり君が良い…」
雪乃にとってはどうでもいい事なのでスルーする。雪乃はそのままいつも座っている椅子に座り、鞄から本を手に取り読み始める。だが隼人は予想以上にしつこかった。
隼人「頼む!少しでもいい!本当に少しだから…扉を開けてくれないか?」
雪乃「…」
隼人「お願いだ…頼む」
雪乃は本を読みながら言った。
雪乃「言ったはずよ…"用がないなら早々に帰宅したらどうかしら?"と」
雪乃は同じ事を言って再び本を読み始める。
場面は学校の入り口に変わる。タツミは学校内に入って奉仕部の所に向かっていた(奉仕部が始まる時間帯を平塚静に聞いた)。
タツミ「この方向だったけな?確かそうだった気がするんだが〜ん?」
タツミが見ている方向から、涼木が見えた。どうやら涼木も奉仕部の部室に向かっているみたいだったので後を追う。すると部室の入り口に隼人が下を向いて立っていた。
隼人「…はぁ」
涼木「あっ隼人先輩、どうしましたか?何か相談があるんですか?」
隼人「何だ…涼木か、君には関係無いよ」
涼木「え?」
隼人は低い声で言う。
隼人「俺は雪乃ちゃんに用があるんだ…邪魔はしないで貰いたい…」
涼木「あの…僕も奉仕部の一人です!悩みがあるなら僕にでもっ!」
隼人「君には関係無いって…言ったよね?…空気読めよ」
涼木「でもっ!悩んでいる人を支えるのが奉仕部としての役目でもあるんです!」
隼人が涼木に近づくと、涼木に軽く腹を殴る。
隼人「いい加減にしろ」
ドゴッ!
涼木「ごふっ!」
涼木は腹を抑えて座り込む。隼人は見下しながら…
隼人「君は前からそうだ…場の雰囲気を読むことが出来ない…俺はそういう奴は嫌いだ!」
涼木「うっ!…ぐっ!」
隼人「俺と雪乃ちゃんの間柄を邪魔しないで欲しいんだよ…はっきり言うと」
隼人が涼木の襟元を掴む。
涼木「はや…と…先…輩」
隼人「迷惑なんだよ」
涼木「っ⁉︎」
隼人「文化祭の時、言ったよな?…"お前は俺の邪魔をせず、ただ下を向いてパソコンいじっていればいいんだよ"って、忘れたか?」
涼木「うっ!」
隼人「あの時は素直に言う事聞いていたのに…今は何だ?いや、今だけじゃない!文化祭の準備をしていた時からお前は雪乃ちゃんに接触して来た!そして奉仕部にもなりやがった!」
隼人は涼木の襟元を強く握る。
涼木「うぐっ!」
隼人「俺はそうやってイチャイチャされる奴を見ていると…無性に苛立つんだよ!一年の癖に…生意気なんだよ!」
隼人が涼木の顔を殴ろうとしようとしたその時…
隼人「っ!」
涼木「っ!」
タツミ「…やめろよ!」
タツミが涼木の代わりに隼人の拳を額で受け止める。
涼木「っ!タツ…ミ…さん」
部室の扉が開き、雪乃が出てくる。
雪乃「っ!(タツミ君!)」
隼人が震えた声で問う。
隼人「…何なんだ…お前は」
タツミ「…涼木は悪くないだろ…お前、何してんだよ!」
怒ったタツミの声が廊下に響く。隼人はその威圧に震えながら周りを見る。後ろを振り返ると雪乃が隼人に近づく。
隼人「雪乃ちゃん…雪乃なら、分かるよな?俺の気持ちが…」
雪乃は冷たい目で隼人を見る。そして…
雪乃「…わからないわ…あなたの言っている事…全てが」
隼人「…」
雪乃「人を傷つけてまで…殴ってまでして、人に理解させたい訳?」
隼人「…」
雪乃「それにあなたが起こした行動は真逆の効果を発揮しているだけよ…私とあなたは"他人"よ」
隼人「…」
雪乃「…二度と…私の前に現れないで!」
隼人「…何故だ?…何故、拒絶する!君は僕の気持ちを理解出来るに決まってー」
ベチンッ!
雪乃は隼人の頬を引っ叩く。
雪乃「触れないでっ!…早く消えなさい」
隼人「…くっ!…今日はここまでにしておくよ…」
隼人は逃げる様に、雪乃達から走って去った。
涼木「げほっ!ごほっ!」
タツミ「っ!涼木!」
雪乃「っ!」
雪乃とタツミが涼木に近づく。涼木は口から少し血が出ていた。
涼木「先輩…タツミさん…すいません…」
タツミ「…くっ!(あいつっ!)」
タツミは急いで隼人を追う。
タツミ「雪乃さんっ!涼木を頼む!」
雪乃「タツミ君!待って!」
タツミはそのまま隼人が逃げた方向に向かって行った。
タツミ「はっ!はっ!(何処に行きやがった⁉︎)」
タツミが全力で走っていると…
八幡「…(やはりいつも通り、ここはMAXコーヒーに限るなぁ〜この苦さが俺にはピッタリだ)」
八幡はMAXコーヒーを片手に持って部室に向かっていた。その途中…
タツミ「はっ!はっ!」
すごい速さで…すれ違った。八幡は後ろを向くが、タツミは既にいなかった。
八幡「…え?(何?今の…幻?)」
八幡はそう言うと、再び部室に向かって歩く。すると目に映ったのは、涼木を支えている雪乃と血だらけの涼木だった。
雪乃「涼木君!」
涼木「先輩…僕なら…大丈夫…です…よ」
雪乃「無理は良く無いわ!今、保健室に連れてくから肩に掴まって!」
八幡「…(何だ…何が起きてるんだ⁉︎)」
八幡は状況が理解出来ないまま、雪乃の後を追った。
・葉山隼人(原作との異点)
俺ガイルサイドの人間。クラスの女子から"皆んなの葉山隼人"と慕われているが、本人は雪乃の事を気に入っている様で雪乃に近づこうとする男子を見ると追い詰める様な行動をする事が多い。本人は気づいていない様だが雪乃には凄く嫌われている。
※鳳矢千瑠については次回の後書きで紹介したいと思います。それと"一週間"と書いてありましたが、それは近いうちに明らかになる予定でいます。難しい内容で本当にすいません