あなたにみかんを届けたい   作:技巧ナイフ。

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お待たせしました。1ヶ月ぶりの本編です!!

みなさん、Aqours CLUBの登録は済ませましたか?
なにより“Landing action Yeah!!”は聴きましたか?

なんかもう、6月30日はAqoursの日として祝日にしてもらいたいですよね!ね!!


第13話 きっかけなんてなんでもいいんだよ

翌日。

朝っぱらから俺は浦の星女学院に来ている。これから俺も学校があるというのに、幼馴染2人は聞く耳を持ってくれなかった。泣いてしまいそうだ。

 

「いやぁ〜、ルビィちゃんが入部するからその時の写真をシンちゃんに撮ってもらいたいんだ〜」

 

「放課後じゃダメなの?」

 

「何言ってんの!こういうのは入部した瞬間撮ることに意味があるんだよ!ね、曜ちゃん?」

 

「ヨーソロー!」

 

曜、ヨーソローでなんでも解決できると思うなよ?

 

「ハァ……」

 

「あの……ご迷惑かけてすみません」

 

「別にいいんだよ。迷惑なのはそっちの2人であってルビィちゃんじゃないから」

 

内浦の海よりも深いため息を吐いてる俺にルビィちゃんは申し訳なさそうな顔で謝ってきた。

 

昨日の件で怖がられちゃってると思ったけど、そうでもないみたいだね。良かった良かった。

でも、そんなルビィちゃんの隣にいつもの文学少女はいない。

 

「そういえば、国木田さんは?」

 

梨子もそれに気付いたらしく、質問している。

それにルビィちゃんは答えず、俺のほうを見た。

 

まったく……面倒だなぁ。

 

「千歌、写真撮るのもうちょっと待っててもらってもいい?」

 

「えぇ〜」

 

「———いいよね?」

 

「……はい」

 

物分かりの良い幼馴染で大変嬉しい。そんな怯えた顔しなければ満点なんだけど。

 

 

 

 

 

 

浦女の図書室に入ると、中は閑散としていた。まぁ、当たり前か。朝だし。

 

図書委員が座るカウンター裏の椅子に腰掛け、俺は人を待つ。朝でもよくここに来てると言っていたし、今日も来るだろうね

 

「暇だな……」

別に待ち合わせをしてるわけじゃないけど、人を待つとなるとあまりここから動かないほうがいい。でも本好きとして浦女の図書室の蔵書はちょっと興味ある……。俺の心にジレンマが発生していた。

 

結局俺は自分の鞄から本を取り出し、それを読むことにする。

 

「……痛い」

 

本を読みながら図書室の回転椅子でひたすらグルグル回っていると、膝に何かがぶつかった。

そちらを見ると、カウンターの引き出しがちょっと開いている。どうやらそれに膝が衝突したみたいだね。

 

「ん?」

 

その引き出しの中に見覚えのある雑誌が見える。スクールアイドルものの雑誌だ。

 

学校の図書室に雑誌が置いてあるとは考えにくいし、誰かの私物かな?

 

とりあえず暇なので、それを適当に開く。どうやら雑誌の持ち主は相当このページが気に入っていたらしく、クセが付いている。μ’sの特集ページだね。

 

ウエディングドレス風の真っ白な衣装に身を包む女の子は———1年生の星空凛さんだ。確かこの衣装で歌っていた曲は『Love_wing_bell』だったかな。

 

ということはこの雑誌の持ち主は———ガラガラガラ……。

 

ちょうどその時、図書室の扉が開いた。雑誌に夢中で反応できなかったけど、どうやら待ち人来たるみたいだね。

 

「ずらっ!?信一くん……」

 

「今は一女(かずめ)ちゃんだよ」

 

下手に名前を呼ばないでほしい。警備員さんが俺退治にやって来ちゃうじゃないか。

 

「なんでいるの?一応ここ、女子校ずら」」

 

「女装してるから大丈夫だよ」

 

「そういう問題じゃないずら」

 

確かに……。やばいな、随分と女装して浦女に来ることが日常と化してきてる。なんか女装すれば1日ここにいてもバレないんじゃね?

 

と、後日改めて考え直したら自暴自棄を起こしそうなことは置いといて。

 

今は不審者を見るような目を向けて来る花丸をなんとかしよう。

 

「ちょっと花丸とおしゃべりしようかなって」

 

「マルは本読みたいずら」

 

「読みたい本って……これ?」

 

俺は今まで読んでいた……というか眺めていた雑誌を軽く掲げて花丸に見せる。

すると、まん丸お目目をさらに丸くして驚いた表情。

 

やっぱりね。

 

これは2日前に信夏と制服デートした時に買って、俺が花丸に押し付けたやつだ。

 

「勝手に人の引き出しを開けるなんて最低ずら……」

 

「うん、それはごめん」

 

ここは学校の図書室だけどね。まぁ、今はツッコまないでおこう。今は、ね。

 

ムスっとした表情で花丸はカウンター裏の椅子………つまり俺の隣の椅子に座ってハァ……とため息を1つ。

 

「それで?マルとおしゃべりって何?」

 

「あぁ、うん。花丸さ———スクールアイドル好きだよね?」

 

「…………………」

 

「まぁ、好きじゃなきゃこのページにこんなクセつかないけどさ」

 

ニコニコ笑いながら雑誌のページを開いて左右に振ると、花丸の顔もそれに合わせて左右に動く。お、ちょっと面白いぞ。

 

「スクールアイドル、やってみない?」

 

「昨日も言ったずら。マルには無理だよ」

 

「そっかぁ……」

 

う〜ん……やっぱり動かないか。じゃあちょっと攻め方を変えてみようかな。

 

「俺が格闘技やってるって花丸に話したことあったっけ?」

 

「えっと……キックボクシングだっけ?」

 

「うん、それそれ」

 

スクールアイドルとはまったく関係ない話に花丸は戸惑いながらも乗ってくれた。よし、これならいけるね。

 

「どうしてキックを始めたかは話した?」

 

「ううん。それは聞いてないずら」

 

「そっかぁ」

 

俺は降ろしていた髪を配達の時と同じようにポニーテールに結び上げる。やっぱり花丸と話すならこの髪型が1番しっくり来るよ。

 

「最初はね、父さんに無理矢理入会させられたんだ。中1から始まる配達の為に体力作りをしろって意味でね」

 

小学校に上がってすぐ、俺はジムに入れられた。千歌はともかく、信夏と過ごす時間が減るのは自殺したくなるくらい悲しかったのを今でも覚えてる。

まぁ、父さんとしても小学校に上がったばかりの子どもに筋トレを強いるのは気が引けたんだろうね。一歩間違えたら虐待になるし。

 

「それでも上達してインストラクター……いわゆるコーチに褒められるのは嬉しかったよ。同い年の男の子()と競い合うのは心が踊ったし、初めて試合に出て負けたのは悔しかった」

 

俺は立ち上がってカウンターを回り、花丸の顔の前にワンツーと左ジャブ右ストレートを出しながら話す。

 

最初はやる気のなかったものでも、今はそれなりに楽しくやってる。殴られたり蹴られたりするのは痛いけど、そこから学び取るのは面白い。

そういう意味を込めて。

 

「………………」

 

花丸は黙って俺の話を聞いている。

 

「まぁぶっちゃけさ、始めるきっかけなんてなんでもいいんだよ。続けたい理由なんてコロコロ変わるものだし。だからさ……」

 

俺は右ストレートとして出していた手を広げて掌を上に向ける。そしてにっこり笑って、

 

「やってみたらいいじゃん。スクールアイドル」

 

そう言ってやった。

すると、花丸の蜂蜜色をした瞳が微かに揺れた。迷うように。

 

でもそれも一瞬。ちょっとだけ目を閉じて、また開けた時にはいつも通りに戻っていた。

 

「ダメだよ。やっぱり……マルは鈍臭いから」

 

「そっか」

 

どうやら俺が出来る説得はここまでみたいだね。まぁ元々お客さんのよしみでやったわけだし、俺としてはそこまで花丸に入部してほしいという情熱があるわけじゃない。

 

「あ、その曲聴いてみる?」

 

「その曲?」

 

「その雑誌の曲。花丸がずっと見てたやつだよ」

 

俺が座ってた場所に開いたまま置いてある雑誌を指しながら誘ってみる。

 

これは単なる気まぐれ。どうせだし、スクールアイドルを知った記念に『Love_wing_bell』を聴いてみるのは良いかもしれない。

 

「聴けるの?」

 

「WALKMANに入ってるからね」

 

再びカウンターを回り、自分の鞄からWALKMANを取り出してイヤホンを花丸の耳にセットしてやる。

 

「じゃあ流すよ」

 

音量は大丈夫。再生ボタンを押すと、画面に『Love_wing_bell』のジャケットが表示された。

音楽が流れ始めると、花丸しっかりと聴くように静かに目を閉じる。

 

それからの4分47秒が神聖な時間に感じられるほど、花丸は集中しているようだった。一言一句歌詞を逃さないように、リズムを忘れないように少し体を揺らしながら、そして楽しそうに。

 

「———終わったずら」

 

「はいよ」

 

花丸は自分でイヤホンを外して渡してきた。俺はそれを受け取りながら質問する。

 

「どうだった?」

 

「なんかね……曲調はウェディングソングだけど歌詞は応援歌みたいだったずら」

 

応援歌……か。まぁ、確かに応援してるよね。『女の子』を。

 

「だったら花丸も応援されてみる?」

 

「え……?」

 

花丸の後ろを指差す。そこにはルビィちゃんとAqoursの3人がいた。

 

あとは自分でやりなよ、ルビィちゃん。

 

その気持ちを込めて、すれ違い様にポンっとルビィちゃんの肩を叩いた俺は浦女の図書室を後にした。

 

きっかけなんてなんでもいい。それこそ、親友と一緒にやってみたいってだけでもいいんだよ。

 

時刻は8時10分。これから着替えて学校に行ったら完全に遅刻だね。

千歌との写真を撮るって約束もあるし、ここで待つとしますか。花丸が応援され終わるのをね。

 

 

 

 

 

 

ペラリ。本をめくる音が静かな寺の中に薄く響く。

 

月曜日。今週もいつもと変わらず、俺は配達が終わった後に花丸と並んで本を読んでいる。

横には花丸が淹れたお茶。やっぱり自販機のお茶よりこっちのほうが美味しいね。

 

結局花丸はAqoursに加入した。やっぱり必要だったのは俺の上っ面だけの言葉よりルビィちゃんの心からの言葉だったよ。まぁ、当たり前か。

 

そんで5人になったということでAqoursもラブライブ予選への申し込みをした。Aqoursの上には5,000組以上のスクールアイドルがいるということで、みんな驚いてたけどやる気が削がれた様子はなかったよ。良きかな良きかな。

 

そんな考えが頭の中でぷかぷかしてたらコテンっと俺の肩に何かがぶつかった。そちらを見ると花丸が俺の肩に頭を預けている。

 

慣れない運動で疲れてるのかな?2人で読書中に寝落ちするなんて4年ぶりくらいかな。

 

そう思って花丸の顔を覗き込むと、しっかりとお目目が開いていた。

 

「こら。起きてるならしゃんとしなよ。もしくは寄りかかるならそっちの柱にして」

 

「信一くんの肩の方がいいずら」

 

そう言って花丸は頭だけじゃなくて体まで寄りかかってきやがった。控えめに言って鬱陶しい。

それを花丸がやっていいのは寝落ちしちゃった時だけなんだけど。

 

「ハァ……ウザい」

 

「ずらっ!?」

 

呟きながら俺はヒョイっと上体を軽く反らす。それだけで体重を預けていた倒れ込んで———ポスっと花丸の頭は見事俺の太ももに着陸した。

 

「ここならいいよ」

 

本を読んでいる都合上、肩に寄りかかられると筋肉が強張っちゃうんだよね。後で痛くなるからめっちゃ嫌だ。

それに比べて今の態勢………膝枕なら俺は普通に座ってるだけでいいから楽だ。そしてたぶん花丸も楽なはず。

 

「スクールアイドル楽しい?」

 

「……うん。千歌さん達は優しいし、ルビィちゃんも楽しそうずら」

 

「そう」

 

できれば花丸自身の事を聞きたかったんだけどなぁ。

まぁ、どうでもいいか。辛かったら辞めればいいし。俺には大して関係ない。

 

膝の上に乗ってる栗色の頭を撫でる。なんかでかい猫みたいだな。丸顔だから犬とかたぬきに近いけど。

 

「そういえば信一くん」

 

「ん?」

 

「マルも『うぉーくまん』?って言うの買ったんだけど、音楽が流れないずら。不良品つかまされたのかな?」

 

「あれはパソコンに繋いで専用のソフトから音楽を入れないと聴けないよ」

 

「………?…………………??」

 

「えっと……」

 

ダメだ。宇宙人を見るかのような目で俺を見てやがる。

 

「今教えてあげるよ。持ってきてごらん」

 

「……今はいいずら」

 

「なんで?」

 

「…………………………」

 

今度は俺が宇宙人を見るかのような目をする。

しかし、そんなことは知らんとばかりに花丸は俺の膝で気持ち良さそうに目を細めてる。Are you 日向ぼっこ中の猫?

 

そんな花丸の頭をもう一度撫でる。膝を提供してるんだから、サラサラの手触りが良い髪を撫でられるのは当然の権利だろうね。

 

「まぁいいか」

 

今度は甘えるように俺の手に頭を擦り付けてきた花丸に優しく笑いかける。

 

親友の夢を自分の夢と、平然と言える花丸。優しくて、他人の為に一生懸命になれるそんな花丸のことが……俺は———

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、そこまで嫌いじゃないからね。




はい、いかがでしたか?

花丸ちゃん推しということで、頑張りましたよ!文字数は少ないけど……。

次回から善子ちゃ……もといヨハネ様回です。実はまだこの小説に明確な登場はしてないんですよね。
ちょくちょく出してはいますけど。
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