八月、九月は忙しいのです(泣)まぁ、ロクアカに集中してたんですけどね。……すみません(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
はい、今回はヨハネ回の最後。
ここのオリ主ならではのやり方でヨハネ様に謁見しました!
朝、すずめの鳴き声で目が醒める。
学校行くようになってからは目覚まし時計で起きてたけど、今日はその時間より30分くらい早い。やっぱり……まだ迷ってるのかな?
「でも……もう堕天使は終わりにしなきゃ」
机の横にあるダンボールへ目を向ける。
そこには、中学時代から集めた堕天使グッズが詰められてる。
今日、私はコレを捨てるつもり。
もちろん未練がないわけじゃない。
けど私のせいで、私に付き合ってくれたAqoursのみんなにまで迷惑かけちゃったから。
人に迷惑をかけてまで貫き通さないといけないほど、私の堕天使は大きなものじゃない。私のちっぽけな自尊心から生まれた、ただの見栄。
でも変だな……。どうしてあの人の言葉が頭に浮かぶんだろう。
———自分に不満がない奴なんていないよ。
たぶんこの言葉が、私の堕天使を初めて肯定してくれたからかな?それともこの言葉のせいで、こんな辛い気持ちになってるからなのかな?
私はあの時、あの人になんて問いかけたのか。あの人はその問いかけになんて答えてくれたのか。
やっぱり思い出せない。
「まぁ、もういいか」
Aqoursと関わらない限り、もうあの人とも関わらない。だから悩む必要なんてない。
思考を切り替えて、私は自室を出る。ちょっと早いけどママは起きてるだろうし、適当にテレビでも見ながら朝ごはんができるの待ってればいいわね。
『あらら! もう、上手なんだから!』
『本当に驚いてるんですよ? 最初出てきた時はお姉さんかと思っちゃいました』
なにやら居間からママが誰かと話してる声が聞こえる。こんな早くにお客さんかしら? 軽くおべっかも言ってるし。
でも私は今日も学校があるから、あんまり気が進まないけどお客さんと一緒に朝食を食べないと。
『でもすっごく嬉しいわ! あの子、高校に入ってからすぐ不登校になっちゃったのに、復帰してからすぐに友達ができるなんて!』
『あ〜……でもごめんなさい。 いきなり来て朝ごはんご馳走になっちゃって』
『遠慮しなくていいのよ。 なんなら毎日食べに来ても!』
『いやいや、それはさすがに……』
……私の友達?
私に高校の友達はほとんどいないし、まして家を教えた人なんていないはず。
知ってるとすればずら丸くらいだけど、あの子がこんな朝早くから来るとは思えない。それにママはずら丸のこと知ってるはず。
……じゃあ誰なの?
でも聞こえてくる声は同年代の高い女の子の声だし、ママが家に上げたってことは浦女の生徒ってことよね。
私は早足で居間に向かい、勢い良く扉を開ける。
そこにはその辺の女の子よりもとびきり可愛い笑顔でママが焼いたフレンチトーストにかぶりついてる———朝比奈信一さんがいた。浦女の制服を着て。
バァンと津島家の廊下に続く居間の扉を勢い良く開く音に、俺と善子ちゃんママは目を丸くする。
さすがに防音はしてあるだろうけど、それでもマンションでその行動はいかがなものかな?
とりあえず挨拶はしておこう。
「おはよう善子ちゃん。早く善子ちゃんに会いたくて……来ちゃった♡」
善子ちゃんママがいるので、ミックスボイスを使って女の子らしく言ってみる。我ながら完璧な女子高生の挨拶だと自画自賛しちゃうよ。
今の俺は善子ちゃんともっと仲良くなりたい先輩という体でここに来ている。だからスカーフも千歌達と同じ赤色。
にしても、どうして善子ちゃんは挨拶を返してくれないのだろうか?
挨拶したのに無視される。まぁ、よくあることか。特に俺には。
そんな虚しさを抑える為に善子ちゃんママが焼いてくれたフレンチトーストをかじる。ぶっちゃけ朝から甘い物とかキツイ派だし、朝ご飯食べてきたからいらなかったんだけど……このフレンチトースト、不思議とかなり美味い。作り方教えてもらいたいな。
「こら、善子! せっかくお友達が来てくれたのに、そんな格好で出てきちゃダメでしょ」
「いや……だって…ママ……」
「あ、気にしませんよ。 それより善子ちゃんも一緒に食べよ?」
人の家でありながら図々しく朝食を薦める。友達と一緒にご飯を食べたい女の子にのみ許される、ある意味自己中な発言だが善子ちゃんママは「こんなに良い友達ができて……」と、嬉しそうにしている。
さすがの堕天使ヨハネ様も母親には逆らえないらしく、俺の隣に腰を下ろした。
「善子ちゃんのお母さん、綺麗だね? このフレンチトーストも美味しいし、結構自慢のお母さんなんじゃない?」
「あらあら〜
「やった!」
まだ甘い物出てくるのかよ……という苦渋に歪んだ顔をなんとか押し留めて喜んでおく。確かに甘い物好きだけど、できればブラックコーヒーもお供につけてほしい。
そんなこんなで俺と善子ちゃんママが2人で盛り上がり、善子ちゃんは黙々と食事を摂る光景が数分ほど流れ……パパッと食べ終わった善子ちゃんはごちそうさまをしてまた部屋に戻っていった。
俺はそれになんの許可も得ずについていく。
特に気にした様子も無く、善子ちゃんは自分の部屋に俺を入れてくれた。
「……で、なんで貴方が私の家知ってるのよ」
そして部屋に入って早々そんなことをきいてきた。まぁ、もっともな意見だね。
「調べた」
だからもっともな意見にもっともな答えをいつもの声で返したら……なんか可能な限り距離を取られて凄い顔された。
例えるなら、ストーカーを見るような顔かな?
若干の気持ち悪いという感情と、それを超える恐怖が善子ちゃんの端整なお顔に貼り付いてる。
「えっと……ずら丸にきいたとかじゃなくて?」
「花丸には何もきいてないよ。俺が独自に調べた」
「キモっ! 信一さんキモっ!」
「傷つくなぁ……」
人の心がないと名高い朝比奈信一も、さすがに年下の女の子にキモがられたら傷つくよ。
「う〜ん……別にSNSで行動を把握して住所特定とか昼夜問わず追いかけ回したとかじゃないから安心してほしいな」
「そこまでしてたら通報もんよ……」
いや、家を調べて特定した時点で通報していいと思うけどね。
でもこれは言わないでおこう。自分の社会的な首を自分で締めて喜ぶ倒錯的な趣味はない。
「じゃあどうやって私の家知ったのよ」
「簡単だよ。数年前に善子ちゃんが職業体験で
調べただけ、とは言うけど楽な作業じゃなかったよ。
職業体験は毎年やってるし、沼津市の色々な学校が来る。それを数年遡って特定の1人を探し当てるのは骨が折れた。実を言うと今めちゃくちゃ眠い。
閑話休題。
とりま調べた方法を聞いて、善子ちゃんは安心してくれたらしい。
俺もお巡りさんのお世話にならなくて一安心だ。
そこで俺は善子ちゃんの部屋に置いてある、とあるダンボールを見つけた。そこには、ちょっと理解不能な禍々しい道具が入ってる。
部室で見た善子ちゃんの動画に出てた物もあるから、たぶん堕天使ヨハネ用の道具かな?
それが無造作に、まるでゴミのように詰められてるよ。
「それ、捨てるの?」
「……うん。もう必要ないから」
堕天使グッズを指してきいてみると、善子ちゃんは寂しそうな顔で答えた。
未練はあるみたいだね。
「そんな顔するくらいなら捨てなきゃいいのに」
「でも……これがあったらまた私は堕天使に頼っちゃうから。困ったら堕天使になって逃げて、結局前に進めない」
「前って?」
「人と向き合うことかな。 ちょっと認めてもらえないからって自分だけの世界に逃げても何も変わらない。 その逃げた世界で人気者になっても、結局それはただの自己満足だし」
意外だなぁ。 善子ちゃんのことを1番よく理解してるのは善子ちゃん自身だったわけか。
「でもさ、その自己満足を楽しみにしてる人もいるんじゃないかな?」
「え……?」
「例えば動画配信を見てくれてる善子ちゃんのリスナーさん。その人達は善子ちゃんの自己満足を楽しみにしてくれてる。そうは考えられない?」
「……そんなこと言われなくても分かってる。だからリスナーの期待に応えようと今まで堕天使も続けてきて……その結果が今じゃない」
この子も花丸と同じだね。自分のことより他人を優先して不利益を被ってる。
言い方は悪いけど、類は友を呼ぶってとこかな?
「もう終わりにしないといけないの。堕天使を続けても……最終的に他人に迷惑かけちゃうだけだから」
「へぇ」
ダイヤさんに怒られたことを気にしてるのなら、それは違うと思うけどな。あれは提案した千歌が悪い。
さてと……善子ちゃんの本音も聞けたことだし、帰りたいな。今のを伝えれば千歌達も善子ちゃんを追いかけ回すことはないだろうし。
でもしまったなぁ……。善子ちゃんと一緒に学校へ行きたいと善子ちゃんママに言っちゃったから1人で津島家を出れないぞ。どうしたもんか……。言うまでもなく、善子ちゃんと一緒にここを出たら一度着替えないといけない俺は遅刻する。確実に。
「———ねぇ」
「んぁ?」
どうやってここから出るか頭を抱えていると、不意に善子ちゃんから声がかけられた。
間抜けな声が出て恥ずかしい。
「貴方が昔私に言ったこと覚えてる?」
「なんか言ったっけ?」
昔ってことは職業体験の日だよね? 確か2人で行動してたから他愛もない話をしてた気がするけど。
何年も覚えていられるほど強烈な何かを俺は言ったのかな? 基本それっきりのどうでもいい人間には話の流れで結構適当に発言してるから記憶にないんだけど。
「『自分に不満のない奴なんていない』って言ったわよ」
「そうなの?」
「うん。……覚えてないの?」
そんな悲しそうな顔されても困る。あの時の君は俺にとってどうでもいい人間だったから、それを言うことになった経緯すら覚えてない。
俺が善子ちゃん関連で覚えていることは、“堕天使ヨハネ”と“不幸体質”の二つだけだ。
「それって何年も覚えとくほど特別な言葉じゃなくない?」
「どうして?」
「自分への不満———つまりコンプレックスだよね? コンプレックスがない人なんていないのが
「……っ!?」
いや、そんなめちゃくちゃ驚かれた顔されても……。
まさか善子ちゃんはコンプレックスに悩んでいるのが自分だけだとでも思っていたのだろうか。もしそうなら海に投げ込んでいたところだ。
善子ちゃんは驚いた顔を見られたのが恥ずかしかったのか、目を右往左往。時計に目が止まり、慌てて堕天使グッズの入ったダンボールを持ち上げた。
どうやらゴミ捨ての時間が迫ってるようだね。でも思いの外ダンボールが重かったらしく、上手く持ち上げられない。
なので、代わりに俺が持つ。ちょうどいいや。ゴミ捨てしたらその足で帰ろう。
「あ…ありがとう」
「いえいえ。こんな見た目でも男だからね」
俺のコンプレックスはこの見た目。男なのに、その辺の女の子より女の子な可愛らしい顔と華奢な体だ。
一応一目で信夏の家族って分かってもらえるメリットがあるけど、兄だと分かった人は片手の指で足りる程度しかいない。
「……信一さんってあんまり優しくないわよね」
「優しくしてほしいの?」」
ダンボールを持ってエレベーターに乗っていたらいきなり善子ちゃんがそんなことを言って来た。
てか優しいだろう。重い物を代わりに持ってあげてる時点で。
早く帰りたいっていう本音もあるけど。
「ううん、そうじゃないの。ただ、昔はもっと優しかったから……」
「そりゃあ、お客さんになる可能性の人には優しくするよ。でももう俺と善子ちゃんは関わらなくなるでしょ? だから優しくする必要はないかなって」
エレベーターが一階に着き、降りる。どうやらゴミ捨て場はマンションの裏みたいなので、そこの小さな扉を開けてもらう。
そしてゴミ捨て場を確認する為に右見て、左見て。
ハァ……マジか。ため息を吐きたくなった。
俺は扉の前で回れ右をして、善子ちゃんを通せんぼ。外に出られないようにして目を見る。
「こう言っちゃアレだけど、元々善子ちゃんは俺にとってどうでもいい人だったから」
「ひどいわね」
「そうだね」
ひどいっと言うわりには、あまり傷付いてない。
何か諦めたような笑顔———昨日帰る時に見せたのと同じやつだ。
……気に入らないなぁ。
「俺にとって、善子ちゃんはどうでもいいよ。だから善子ちゃんがどんなコンプレックスを持って堕天使ヨハネになりたかったかもどうでもいい」
自分に不満がない奴なんていない。だからその不満———コンプレックスを克服する為に努力する。
その努力が善子ちゃんにとっては堕天使ヨハネだった。でも、その堕天使すら受け入れてもらえなかった善子ちゃんの苦悩はかなりのものだろう。
まぁ、知ったことじゃないけどね。
だけど善子ちゃんは俺に本音を言ってくれた。彼女の堕天使がどう生まれたのかも教えてくれた。だったら最低限、俺も善子ちゃんへの誠意を伝えるべきだ。“伝えなきゃ伝わらない”って言うのは常識だしね。
「どうでもいいから———俺は君の堕天使を嗤わない。コンプレックスを克服する君の努力は嗤われるようなものじゃない」
「…………………」
「君は堕天使が好きなんでしょ? だったら好きなままでいなよ」
いきなり俺が語り始めたことで、善子ちゃんは目を白黒させてる。
うん、分かるよ。俺だっていきなりこんなこと言われたら白黒しちゃうだろうし。
でも、仕方ないよね。 俺はAqoursの記録係なんだから。あの連中に見つかったら、できるだけAqoursの意思に沿うよう行動しないといけない。
「善子ちゃんはリア充になりたいんだったよね?」
「う、うん……」
「女子高でリア充になるには友達を作らないといけない。友達作りには部活が1番だと思うんだけど、どう?」
「それはそうだけど……でも今さら私が入れる部活なんて……」
「スクールアイドル部なんて、どうかな?」
善子ちゃんの言葉を遮って、俺はそう言いながら外に出る。
扉を出て左側には———善子ちゃんと一緒に撮った時に着ていたよく分からないゴスロリを着ているAqoursの5人がいた。
まったく、この5人がいなければ善子ちゃんの言い分に納得してさっさと帰れたっていうのに。なんと迷惑な。
「堕天使ヨハネちゃん!」
「「「「「 スクールアイドルに入りませんか! 」」」」」
朝っぱらからこの集合住宅の前で、この迷惑な連中は大声で善子ちゃん言う。
「ううん、入ってください!Aqoursに———堕天使ヨハネとして」
千歌が叫ぶと……善子ちゃんは首を振って逆方向に走り出した。
そんな善子ちゃんをAqoursは追いかける。
どうやら鬼ごっこが始まったようだ。でも、俺はそれに参加しない。だって早く帰りたいからね。
だから俺に言えることはこれだけ。目の前を走って通るAqoursに小さく一言。
「いってらっしゃい。車に気を付けてね」
あと通報されないようにね。
嫌だよ。知り合いがゴスロリで走り回って捕まったとかニュースで見るの。
あれから数日。結局善子ちゃんはスクールアイドル部に入部し、Aqoursの一員になった。
彼女に必要だったのは自分の好きなことを諦めて過ごす日常より、自分の好きなことを認めて一緒に頑張ってくれる仲間のようだ。
まぁ、善子ちゃんが堕天使ヨハネを辞めたらヨハ子って呼ばなくなっちゃうしね。俺としては彼女の面白い反応が見れる分、そのままでいてくれたほうが嬉しい。
それを伝えたらハンマーパンチを食らったので、微妙なところかな。
そんなしょーもない事を考えながら自室のパソコンを起動して動画サイトを開く。善子ちゃんがまた配信をするらしいんだけど、それを絶対見ろと言われたからだ。
これでつまらない動画だったらどうしてくれようか。動画時間の秒数分だけ、頭に乗っかってるお団子に色々な物をぶっ刺してやろうかな。
「えっと……“堕天使ヨハネ”っと」
あと30秒で配信開始。それまで待機画面を眺める。
そして……始まった。あのダンボールに入ってたグッズを背景に、善子ちゃんがゴスロリ姿で立ってる。
『はぁい、可愛いリトルデーモンたち。今宵も儀式を始めていくわよ』
すると、待ってました〜とか、ヨハネ様〜とか、色々なコメントが画面に流れる。中には踏んでくださいとかあるよ。やばいな。
『でも、その前に1つお知らせがあるの。聞いてくれるかしら?』
即座に返事のコメント。ついでに、踏んで罵ってというコメントも。
『いい子ね、リトルデーモン。 私、堕天使ヨハネはある集団の1人となったわ。その集団の名は、Aqours! 黒ミサを行い、リトルデーモンを熱狂させて魔力を集めることを主な目的としているわ』
堕天使風に禍々しく言ってるけど、黒ミサ=ライブ、魔力=人気ってところかな?
分かりにくいけど間違ってない。もちろん俺の解釈が正しければだけど。
『私もその一員としてこれから頑張っていくの。だから———応援してね、リトルデーモン!』
パチンと綺麗な顔でウインクを1つ、堕天使ヨハネの萌え豚に放って可愛らしく笑う。
それにコメントの嵐———画面が弾幕に覆われて善子ちゃんが見えなくなる始末。恐ろしい人気だね、ヨハネ様。
『それじゃあ、儀式を始めるわよ!』
お知らせを終え、高らかに宣言する画面の中の善子ちゃん。
その姿に、俺もコメントを書いてやることにした。
俺は確かに善子ちゃんなんてどうでもいい。だけど、どうでもいいけど応援するというのは必ずしも矛盾するわけじゃないよね?
『頑張れヨハ子』
そのコメントを打ち、送信。それと同時にパソコンを閉じる。
閉じる寸前、驚きながらも嬉しそうな顔が見えたのはたぶん気のせいじゃないかな。
はい、いかがでしたか?
ヨハネの口調難し過ぎ……。だというのに、彼女の誕生日の話を書かなければならない。すぐに!
じゃないと梨子ちゃんとルビィちゃんの誕生日が来ちゃう!?