あなたにみかんを届けたい   作:技巧ナイフ。

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2つの課題に追われ、それでも小説を書き続ける。全ては自己満足と己の妄想を形にする為に!



第18話 灯台下暗しとはよく言ったもんだね

『以上。頑張ルビィこと、黒澤ルビィがお伝えしました』

 

 翌日、Aqours &俺は浦女の理事長室でマリーに昨日撮ったPVの審査を行ってもらっている。一応学校の名前で作ったものだから、理事長の許可無く動画サイトに流すのはまずいらしい。

 

 マリーは執務机に両肘を置き、顔の前で指を組んでまさに大物といった風格を出しながら……あれ?寝てない?

 

「……はっ!」

 

 ———コケ!

 

 俺と善子ちゃんを除いた5人が大阪人のようにコケた。

 

「もう!本気なのに……!ちゃんと見てください!」

 

「本気でぇ?」」

 

 代表して食ってかかる千歌に、マリーはノートパソコンを閉じながら言葉を続ける。その目に少し嘲るような色が見えるのは、たぶん俺の気のせいじゃないね。

 

「それでこの体たらくですか?」

 

「うわぁ……随分バッサリ言うね。これ作るの、結構大変だったんだよ?」

 

「努力と結果は比例しません!大切なのはこのtown and schoolの魅力をちゃんと理解してるかデース!」

 

 チャリと並走してダッシュであっち行ったりこっち行ったりで大変だった俺も反論するけど、ド正論で返された。

 

 確かにマリーの言ってることは間違ってない。頑張ったならそれで良しが通じるのは義務教育までだし、社会に出たらそんなことを言い訳にしても無能のレッテルを貼られて終わりだ。

 実際、学校や町のことを知ってもらうPVなら重視すべきはマリーの言う通り結果なんだろうね。

 

「それってつまり……」

 

「私達が魅力を理解してないってことですか?」

 

「じゃあ理事長は、魅力が分かってるってこと?」

 

 元々PVそのものの出来自体は良いものと思ってなかった善子ちゃんも、これには負けじと言い返していく。

 

 俺に言う資格があるかは微妙だから言わなけど、善子ちゃん。相手は3年生で理事長なんだから敬語くらい使いましょうよ。

 

 だけど、元々あまりそういうことを気にしないマリーはドヤ顔で俺たちを見渡し、

 

「少なくとも、あなた達よりは」

 

 自信満々に言い放った。

 

「聞きたいですか?」

 

 挑発するように言われたマリーの言葉に千歌は……頷かない。

 

 

 

 

 

 

「もう少し言い方があると思うよ?」

 

 コーヒーを2人分淹れながら、出来るだけ責める口調にならないよう気を付けて言ってやる。

 

 Aqoursが理事長室を出てった後、俺だけはその場に残っていた。彼女達には先に帰っていいと伝えておいたけど、たぶん昇降口で待ってるだろうから話は手短に済ませよう。

 

「でも、あの程度のPVで人を集めようなんてのは甘えだと思わない?」

 

「それはそうだけどさ」

 

 上質な香りを湯気と一緒に広げているカップをマリーの前へ。相変わらず良い豆が揃ってるな。学校なのに。

 

 自分の分を一口啜り、続ける。

 

「……マリーもこの学校を無くしたくないの?」

 

「Of course」

 

「ふぅん。どうして?」

 

「前にも言ったでしょ?学校は勉強をする為だけの場所じゃないからよ」

 

「緊急避難場所でもあるよね」

 

「最初に思いつくのがそれなの!?」

 

「俺はね。でも———マリーや皆は違うんでしょ?」

 

 人間性が腐り落ちたと名高い俺でも学習能力はちゃんと備わってる。さすがに学校が将来の踏み台に過ぎないという俺の考えが世間とズレているのは最近のAqoursのリアクションで理解くらいしたよ。

 

 でも、だからこそ分からない。この浦女を統廃合から救いたいっていうマリーの気持ちも。千歌の気持ちも。

 

「この町の魅力ってなに?千歌は聞かなかったけど、俺は聞きたいな」

 

 降ろしていた髪をポニーテールに結び上げ、それなりに真剣な眼差しでマリーを見つめる。

 

 別に純粋な気持ちで聞いてるんじゃない。最終的に千歌達が気付かなかった場合の保険でもある。

 

「ふふっ、でもダ〜メ。シンイチはAqoursの……えっと……」

 

 どうやら本格的に俺の役職が忘れられ始めてるみたいだね。事態はかなり深刻だ。

 

「記録係だよ」

 

「そう、記録係なんだから。千歌っちが聞かないって言った以上、シンイチも聞いちゃダメだと思わない?」

 

「いや、まったく」

 

 千歌の意地に付き合うつもりは毛頭ないので、ここはハッキリNOを突きつけておく。俺はNOと言える日本人なのだ。

 

 そんな俺にマリーは愕然としてるけど、一口カップに口をつけてなんとか表情を戻してる。

 

「と、とにかく!今は信一にも教えることはできません!」

 

「……ケチンボ」

 

「あ、今のちょっと可愛かったからOne more please」

 

「イヤだよ」

 

 なんか話逸らして来たし、これ以上聞いても答えてくれそうにないな。……もしかしたら本当にツボにハマるくらい可愛かった可能性が少なからずあるけど、そこは考えないでおこう。男は可愛いと言われても大して嬉しくない。

 

 コーヒーを飲みきってマリーの分もカップを洗った後、俺は理事長室から出てAqoursの元へと戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 結局あの後千歌の家で再び作戦会議をしたけど、これといった案も出ることなくお開きとなった。ていうか、最後は梨子がしいたけに追いかけ回されて流れ解散だったね。

 

 夜、夏も近付いてきたとあって喉が渇いたので寝る前に水でも飲もうかとキッチンへ向かう。ウチはキッチンからリビングが見渡せる構造なので、必然的にリビングを通るんだけど———そこで母さんがいつも通り模造刀を立て掛けてある机に何かを広げて懐かしそうに見ている。

 

 

「ハァ……」

 

 そして悩ましげにため息を1つ。

 

 それを尻目に俺はコップを取り出して水道水を注ぐ。

 

「んぐんぐ」

 

 浄水機能が付いた水道なので、薬臭さはない。一応ミネラルウォーターもあるけど、あれはコーヒー用だからね。やっぱり美味しいコーヒーを淹れるには美味しい水が不可欠だ。

 

「ハァ……」

 

 母さんは俺をチラッと見た後、またため息をこぼしてる。

 

 さて、早く寝ないとね。明日は内浦の海開きの日。その日は特別に配達が無く、代わりに早朝から町の人全員で海岸のゴミ拾いをするのだ。

 そしてなにより、俺たち朝比奈一家は訳あって予定より1時間ほど早くゴミ拾いを始める。なので下手するといつもの配達より早起きしなきゃならない。

 

「お休み、母さん」

 

 目覚ましの時間を考えつつ母さんにそう言って部屋を出て行こうとすると———

 

「ハァ……」

 

 ———ジャキン

 

 再三に渡るため息と共に、俺の首の前に模造刀が出現。なにこのホラー映画?

 

「信一、母さんとっても悲しいことがあったの。もちろん聞いて……くれるわよね?」

 

「ちなみに聞かなかったら?」

 

「今月の信一の給料が無くなるだけよ。特に何も起こらないわ」

 

 起こってるじゃん!

 母親の話を聞かなかったら給料全額カットって……深淵の闇もビックリなブラック企業だ。

 まぁ、少なくとも俺に選択肢は無いらしい。だって首に模造刀突きつけられて、話聞かなかったら給料0円だし。

 

「わかったよ。聞くから刀下ろして?というか、どうやって俺の後ろまで来たの?」

 

 母さんの座っていたソファからリビングの入り口の間には机がある。

 俺が『お休み』って言ってからこちらに来るには最低でも1秒以上かかるはずなのに、何故か母さんは一瞬で刀を抜いて背後に回って来たんですけど……。

 

「よく漫画とかで縮地って技あるでしょ?アレよ」

 

「そんな現代社会で恐ろしく役に立たなさそうな技術どこで見て覚えたんだよ」

 

「YouTube」

 

 すげぇなYouTube。

 

 そんな俺の感動を他所に、刀を鞘に納めた母さんはソファに座ってポンポンと横を叩いてる。ここに座れという意味みたいだね。

 

「さっきから何見てたの?」

 

「卒業アルバムよ。高校の時のやつ」

 

 どうやら母さんはここで1人、思い出に浸っていたらしい。

 

 アルバムを手に取り、パラパラと捲っていくと……お、浦女の制服を着た昔の母さんだ。なんか毎日鏡で見ている自分の姿と瓜二つな気がするけど、気のせいだと思いたい。

 

 それにしても、このタイミングで高校時代のアルバムを引っ張り出してきたってことは知ってるんだね。母校(浦女)が今どんな状態か。

 

「ねぇ、信一」

 

「うん?」

 

「学校さ……無くなっちゃうのかな?」

 

「今のままだとそうなるみたいだね」

 

 俺が答えると、母さんの顔が歪む。泣きそうになるのを必死に堪えるような、そんな表情に。

 

「でも仕方ないんじゃない?俺も調べたけど、今じゃ1年生なんて12人しかいない。2年生は24人で3年生は38人」

 

 計算上、毎年入学者が12.5人ずつ減ってる。もちろん偶然だし来年もまた12.5減るという保証はないけど、可能性は高い。

 

「高校だって商売だし、お客さん(生徒)がいなければ潰れるのは自然な流れだと思うよ」

 

 教師だって慈善事業でやってるわけではないんだ。それだけではないにしても、働いてもらう以上お金がかかる。そんな教師に払うお金は生徒がいなければ入ってこない。私立高校なら尚更ね。

 

 そんな事、俺以上に母さんは理解しているはずだ。

 

「でも……やっぱり悲しいものよ。自分の通ってた学校が無くなるって」

 

「……………」

 

 ゆっくりと俺の手から卒業アルバムを掴み、大切そうに撫でる母さん。

 

「学校なんて将来への踏み台に過ぎない。信一はそう思ってるし、たぶんそれは間違ってないと思うわ。でもね?」

 

「……うん」

 

「その踏み台で踏んでいた(過ごした)3年間は掛け替えのないものだったのよ」

 

「……そっか」

 

 学校なんて将来への踏み台に過ぎないという俺の考えは間違ってない。けど———正しいってわけでもない。そう言いたいらしい。

 

「浦女に通う子達はね、みんなあの学校を選んだの。信一の高校でも良かったのに浦女を選んだのよ。この意味、分かるでしょ?」

 

「俺の高校より、浦女に通ってみたいと思う何かがあったってこと?」

 

「そういうこと。もしかしたら親やお姉さんが通ってたからっていうのもあるかもしれなけど、それも立派な理由なんだし」

 

 理由なんてなんでもいい。それは少し前に花丸へ言った言葉だ。

 奇しくもそれを今度は俺自身が母さんに言われるとわね。

 

「どんな理由であれあの学校には通ってる生徒がいるし、通ってた生徒がいる。学校が無くなるってことは、通ってる生徒の選んだ理由も無くなって———通ってた生徒の母校が無くなるってことなのよ」

 

 千歌も、曜も、梨子も、花丸も、ルビィちゃんも、善子ちゃんも、そして母さんも……浦女の生徒は色々な理由があってあそこを選んだ。その理由がなんであれ、それは浦女が無ければ存在しないものだったんだろうね。

 

 だったら……

 

「母さん。千歌達は今さ、本気で学校を廃校から救おうとしてる。でも、その為のモノがどうしても見つからないんだ。まずはこの町の魅力を知りたい」

 

「この町の魅力?」

 

「うん。この町に魅力を感じてもらって、浦女にも興味を持ってもらいたいらしいんだ」

 

 学校の存続なんて、生徒がどうにかできるような問題じゃない。どうにかする問題じゃない。浦女の生徒ですらない俺にはどうなろうと知ったこっちゃない。

 

 けど、幼馴染と母さんがどうにかしたいと言ったからね。だったら少しだけ手伝ってやろうと、今やっと本気で思い始めたよ。

 

 本日2度目の真剣な表情をする俺のおでこを———パチン!

 母さんはデコピンしてきた。

 

「いぁ……」

 

「信一、灯台下暗しって言葉知ってる?」

 

「当然」

 

 すると、年に似合わない悪戯っ子みたいな顔をして母さんはソファから立ち上がる。

 

「信一はいつもこの町の魅力に触れてるのよ。それこそ、産まれてからほとんどね」

 

 それだけ言い残してリビングを出て行った。なんだよ、もう……意味ありげな事言うだけで結局教えてくれないし。

 

 

 

 

 

 翌日早朝。まだちょっと薄暗い中、俺たち朝比奈一家は各々120ℓのポリ袋とゴミバサミを持って海岸へ向かっている。———仕事用の格好で。

 

 父さんはマリオ、母さんは道着、信夏はチアリーダー、俺は野戦服。みかん農園“イーストサン”を知らない人から見たら季節外れのハロウィンを楽しんでる仮装行列だろうね。できれば関わり合いになりたくない、イカれた一家だよ。

 

「うぅ……ちょっと失敗したかも……」

 

「寒そうだな、信夏」

 

「うん。上着持ってくれば良かったよぉ……」

 

「あら、なら母さんの着る?」

 

「やめてくれ。公然猥褻罪で捕まるぞ」

 

「それだけ?」

 

「あと俺だけの(あきら)の肌を他の男に見せたくない」

 

「ふふ……それが聞きたかったわ、ダーリン」

 

「言わなくとも伝わると思ったけどな、ハニー」

 

 なんか父さんと母さんがイチャつき始めて大変キショい……。

 

 母さんは道着姿———私有地外なので模造刀は無し———なので、上を脱いだらサラシを巻いただけであとは何も着てないことになる。それは息子としてもやめてほしい。高2の男にとっては、母親の上裸なんぞ見るくらいなら自ら目を潰す程見(にく)く、(みにく)いものだ。

 

 そんな見るに耐えず聞くに耐えない両親は知覚からシャットアウトして、俺はさっきから寒そうに腕をさすってる信夏へ目を向ける。ほんの少し眠気まなこで庇護欲をそそられるよ。

 

「はい、信夏」

 

 海開きの夏といっても、やっぱりまだ朝は少し肌寒い。半袖&超ミニスカートの信夏の肩へ野戦服の上衣を羽織ってあげる。

 

「あ……お兄ちゃんの匂い」

 

「ごめん、汗臭かったかな?」

 

「ううん、そうじゃないよ。なんかお兄ちゃんの匂いに包まれて抱き締められてるみたいで……落ち着くなぁ」

 

 幸せそうに微笑む我が天使妹(テンシスター)

 そっか!母さんが言ってた町の魅力ってコレだったんだ!……と、一瞬思ったけど信夏の笑顔がこんな狭い内浦に収まりきるはずはないか。というか惑星規模で足りない。

 

「それにしても……」

 

「ん?なぁに?」

 

 チアリーダーに野戦服の上衣というヘンテコな格好だけど、新鮮味があって良いな。今度Aqoursの衣装案として出してみよう。もちろん彼女達が6人掛かりでも信夏の魅力に勝てるとは思えないけど。

 

 と、海岸に着いたね。信夏のことを考えてると時間が早く進むのはどうしてなんだろう?やっぱり楽しいからかな?

 

「よし、じゃあ始めるぞ」

 

「「「 おぉ!! 」」」

 

 父さんの号令に返事をし、あとは4人とも行動を開始。まず父さんと母さん、俺と信夏でペアになった後背中合わせなる。そして逆の方向に進み、俺と父さんは比較的ゴミの多い道路側。信夏と母さんは海側のゴミをテキパキと拾い始めた。

 

「流石に多いな」

 

 道路側は車からポイ捨てされるタバコが大多数を占める。ウチは誰もタバコを吸わないのでこの慣れない臭いは苦手だ。それでも磯の香りみたいに吐き気を催すほどではないから良いけどさ。

 

 俺たち朝比奈一家が町の予定より1時間も早くゴミ拾いしてる理由は、ざっくり言ってしまえば営業努力に他ならない。

 このゴミ拾いは参加自由。もちろんボランティアなのでお金は出ない。そんな事を率先してやるみかん農園“イーストサン”の地元愛をアピールする場でもあるのだ。それが結果的には利益に繋がるし。

 まぁ、内浦自慢の海岸を綺麗にしたいという気持ちも確かにあるから100%金の為というわけではない事を理解していただきたい。一石二鳥と言えば聞こえが良いかもしれないね。

 

「お、信一。今年も早いね」

 

「おはよう、姐御。あれ、お姉さんは?」

 

「志満姉ならおじさん達の方に行ったよ」

 

 始めてから30分くらいすると、どんどん人がやってくる。大体は早起きなお年寄りだけど、海岸がすぐ目の前にある『十千万』の高海家も参戦してきたよ。

 

「じゃあ千歌は?」

 

「まだ寝てる。予定よりちょっと早いからさ」

 

「なんか腹立つなぁ」

 

「叩き起こしてこようか?」

 

「お願い」

 

 自分が頑張ってる時に他人が頑張ってないのって結構ムカつく。幼馴染なら尚更。

 

「あ、おはヨーソロー!シンくん!信夏ちゃん!」

 

「ん、おはヨ〜ソロ〜」

 

「おはヨーソロー!」

 

 曜も来たね。続いて花丸、ルビィちゃん、ダイヤさん。

 お、善子ちゃんも来た。なんかフラフラだけど。

 

「なんでそんなに疲れてるの?」

 

「クックックッ、今この時を疾る地獄の愛馬はまだ眠りについてるからよ」

 

「えっとぉ……」

 

「バスがなかったって意味ずら」

 

「なるほど」

 

 疲れ方からしてチャリで来たのかな。大変だなぁ、沼津在住は。

 

「チャオ!」

 

「おはよ〜。結構久し振りだね、信一。信夏も」

 

 マリーと果南ちゃん、淡島組も到着したようだね。ダイヤさんと合流して3人でゴミ拾いを開始してる。

 

 ずっと腰を曲げてたので、ストレッチがてら伸びをしながら辺りを見回すと、結構たくさんの人が来ていた。ゴミ拾いに夢中で気付かなかったけど、もう予定の開始時間5分前みたいだ。

 

「おっはよ〜!」

 

 そんな時、やっと千歌が来た。梨子の手を引いてこちらに手を振ってる。

 

「おはよう、2人とも」

 

「うん……」

 

「梨子?どうしたの?」

 

 挨拶もそこそこに、手を引かれてやってきた梨子は集まった人達を見て不思議そうな顔をしてる。

 

「その……この町ってこんなに人がいたんだなって」

 

「今さら?ライブの時もたくさんいたじゃん」

 

「あれは沼津の人達もいたから……」

 

 そっか。一部例外はいるけど、基本ここに集まっているのは内浦の人達だけだったね。それを初めて見る梨子には新鮮に映るのかもしれない。

 

「みんな海を綺麗にする為にこんな朝早くから?」

 

「うん、毎年やってる」

 

 頷くと、梨子は何か眩しいものを見るように目を細めている。

 お姉さんや姐御が手元を照らす為に配った提灯を持ってゴミを拾う町の人達へ視線を巡らさせて……そして何かに気付いたような顔になった。

 

「これなんじゃないかな……?」

 

「はい?」

 

「この町や学校の魅力って」

 

「これが……魅力?」

 

 俺も梨子と同じようにゴミを拾う町の人達へ視線を向ける。みんな嫌な顔一つせずに、ただ自慢の海を綺麗にしようとしてる姿。俺が産まれてから、毎年見ているなんてことのない景色だ。

 

 ———灯台下暗し……か。

 

 なるほどね。これを初めて見る梨子や、一度この町を離れたマリーだからこそ気付けるものだったんだね。ずっと内浦で暮らしてきた、俺や千歌達にとっては当たり前過ぎる事が。

 

「そうだ!」

 

 俺と同じ答えに辿り着いたらしく、隣で聞いていた千歌は海風ですっかり錆びだらけになった監視台へと登っていく。その音で全員が千歌に注目。だけど視線の数に圧倒されることなく、大きく息を吸った。

 

「皆さん!私達、浦の星女学院でスクールアイドルをやっている……Aqoursです!!」

 

 今やっと気付けた魅力を形にする為に。

 

「私達は学校を残す為に、ここに生徒をたくさん集める為に、皆さんに協力してほしいことがあります!」

 

 その協力の内容を聞いた瞬間、

 

「マジか……」

 

 と口から漏れた。でも、俺の口元は何故か笑ってる。





はい、いかがでしたか?今回は久々に信一マミーが登場しましたね。

これは思っちゃいけない疑問なんだろうけど、ヨハネ様あの時間にどうやって内浦まで来たの?
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