道の向こう側から近付いてきた青年は、ラットより3〜4歳上か、という程度の見た目ではあったが、その纏う雰囲気はかなり違うものだった。ゆるやかなウェーブがかかった綺麗な青髪のルイスは、飾り気はないがチリ一つ付いていないパリっとした清潔な純白の服に高そうな生地のマントを羽織り、これだけはこだわりがあるらしい装飾の細身剣を腰から下げていた。
歩くたびにカツンカツンと石畳が小気味良い音を立てる。ブーツも当然最高級品なのだろう。上級貴族である事が一目で分かる。だがラットは気にすることなく露店に座ったまま迎えた。
「リーテなら居ませんよ。先に帰ったようですけ・・・・」
「あ、ルイスー!」
ルイスの背後に、突如リーテが現れた。
かなり距離があったのに、後姿だけでルイスと断定するとものすごい勢いで駆けてきた。
(・・・・?ルイスさんが来るのを知っていたのかな?)
ラットが疑問に思うほど、戻ってきたリーテの服装は気合が入っていた。
短めのスカートに羽毛付のブーツ、肩をぴっちり覆う腰までの短い赤マント。腰にはポーチ。
(いや、気合の方向が違うな。戦闘用じゃないか)
あっという間に目の前まで来たリーテは、ポーチの横に短剣を吊るし、ティアラ型の兜まで付けていた。そしてルイスとラットの間で急停止すると、勢いよくラットのほうを向いた。
「完璧!完璧なプランができたわよラット!確実に大金持ち!」
胸の前で両手を強く握り、高らかに宣言するリーテ。
一拍置いてから今度はルイスへ向き直り詰め寄った。
「ルイス、約束忘れてないわね?」
リーテとラットの二人は同じくらいの身長だが、年上のルイスは20cm以上高い。挑戦的な目付きのリーテを上からほほえましく見下ろすと、ルイスはのんびりと頷いた。
「もちろん。楽しみにしているよ」
興奮か照れか(走ってきた疲れではないという事はその場の誰もが知っていた)、リーテはちょっぴり顔を赤くしながら満足げに頷き返すと、またせわしなく身をひるがえし、リーテとラットの家の方へ身体を向けた。
「ラット、急いで出発の準備するわよ!ちょっと遠いから日が暮れる前には峠前のルッツ村へ!」
肩越しに、またしても勝手な宣言をすると来た時と同じ猛スピードで視界から消えていった。
「・・・・ルイスさん、何度も聞いたかもしれませんけれど・・・・」
茫然と姉の消えた方向を見つめながら、横のルイスに問いかけるラット。
「あれのどこが良いんですか?」
「可愛いじゃないか、色々と。」
「・・・・そですか」
ルイスはにこにこしながら、ラットは呆れ顔で。
それぞれ、リーテの”完璧なプラン”について思いを馳せていた。