姉ニモマケズ、金ニモマケズ   作:湯たぽん

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エピローグ

「ま、"約束"だし仕方ないよねー」

 

「・・・・"約束"には期限を設けていなかったはずよ」

 

「でも、"約束"の条件達成が現実的でなくなった時点で、未達完了と見なされて当然だよね」

 

「見切りが早すぎるのよ。まだ私には策があったのに」

 

「そもそも、相手方には一切利益の無い"約束"じゃあないの」

 

「不利益もないわよ」

 

「時間は有益だよ」

 

「・・・・」

 

 

 

むぅ、と不満げな溜め息を絞りだし、リーテが黙る。金髪金眼、10代半ばを少し過ぎた頃であろうか。絵に描いたような美少女だが、やけに機嫌が悪い。

その横には、頬杖を突いて気だるげなラット。リーテの双子の弟である彼は同じ金髪だが、眼は碧色だ。険悪な空気の二人が座っているのは、大富豪アリアロス家の一室。機嫌悪く押し黙るリーテに対して、あくまで無関心、気だるげなままのラットがぽつりと一言。

 

 

 

「花嫁控え室だよ、ここ」

 

「ンのこととうに分かってるわよっ!!」

 

当の花嫁が激昂しているリーテなのだが。化粧が崩れるほどに顔を歪ませて怒り狂ってはいるが、その顔はしっかりヴェールで覆われ、純白のウェディングドレスも完璧に着付けられている。

 

 

 

ルイス・アリアロス公爵との結婚式。花嫁入場まであと少しというところなのである。

 

 

 

「良いじゃん、結局大好きなルイスさんと結婚できることに変わりはないんだよ?」

 

「だだだ大好きとか誰が言ったのよそれ今関係ないでしょ」

 

マリッジブルーというにはいささか奇妙な精神状態なリーテ。結婚自体は、ラットの言うとおりリーテも望んだことなのだが。その経緯と、アリアロス家への"嫁入り"が未だに気に食わないリーテだった。

 

 

 

「なんで借金の肩代わりの"見返り"が結婚なのさ。あのゼロを数えるだけでも大変な請求書がなくなる上に、超絶玉の輿だよ。懐深いにもほどがあるよねーアリアロス公爵家」

 

「未来の女主人が、ちょこっと商売の元手を貰うくらい問題ないじゃない」

 

「でも、あれだけやらかしといて、数週間で完全に元に戻って・・・・いや元にじゃないねあれは。より凄くなっちゃっててさ。もともと僕らに勝ち目無かったの、よく分かるよねー」

 

「勝ち目を引き出すための元金作りだったのよ」

 

 

 

花嫁控え室でなんとも場にそぐわない会話を続けている二人。いつの間にかリーテもラットと同じように頬杖を突き、そっくりな双子がまったく同じ体勢でだらけている。

 

 

 

「あんた、もう会場行きなさいよ」

 

「付き添いだもん。そうもいかないよ。どっちかというと会場よりもボルタック商会との会合に行きたいね。急遽変更になって投資話も不安定になってるのに、結婚式のほうを優先してやってるんだから、感謝してほしいところだよ」

 

 

 

あのぉ・・・・リーテ様、そろそろ・・・・

と、扉の隙間からアリアロス家のメイドが遠慮したような声をかけてきた。

 

人生最良であるはずのこの日に、仕方ないなと面倒臭そうに立ち上がるリーテ。隣でまったく同じようにだらだら立ち上がる弟に、精一杯の悪口を浴びせかけた。

 

 

 

「この守銭奴」

 

「知ってる。けどリーテにだけは言われたくないな」

 

 

 

少なくとも、アリアロス家の今後の経済状況だけは幸せを約束されそうな結婚式に向けて、リーテとラットの双子姉弟はやる気無さげに歩きだした。

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