(・ω・)始まるでザマス。書くのが下手な奴はこうなるのさ
八雲紫は人間が大好きだ。
自分でもおかしな事だと思っても、それでも好きだった。
これは人間という種族、存在に対する憧憬から来るものだった。
八雲紫は一人一種族の妖怪。だから同じ種族の仲間や家族といったものが居ない。紫は生まれたときから一人だった。
そんな紫が人間に興味を持つのは必然だったのかもしれない。
人間は脆く、弱く、すぐに死んでしまう生き物だ。時には同族同士で争い、血を流す。一人一人はたいした力も無く弱いが、時に一致団結し、自分たちよりも強大なものに立ち向う。
弱いからこそ他者の気持ちが分かり、誰かの為に思いやることが出来る。
一人で出来る事など高が知れている。だから皆で共に乗り越えていく。なんて弱くて、健気で、強く、儚く、醜く、美しいのだろうか。
個人で力を持つ妖怪には無いもの。妖怪ならば、誰かに助けを求めたりする事は言い換えれば自分が弱いことを認めてしまうことになる。
それは、肉体よりも精神に重点を置く妖怪にとっては致命的な事である。
だからこそ他者と手を取り合い苦境を乗り越え、何かを成す姿は紫の目にとても鮮烈に映った。
そして友人、恋人、家族など、人と人に間にあるあの暖かさ、あのぬくもりにどうしようもなく惹かれた。
物が個として成り立つのには物と物を分ける境界が存在しているから。
どれだけ近づこうとも境界、すなわち隙間が生まれてしまう。境界とは何者でもあって、何者でもない。ただただ虚無が広がる。
私はスキマ妖怪。一人一種族の妖怪。スキマより生まれ、スキマに還る。
そんな私だからこそ、あの人と人の間、あの隙間にあるぬくもりに惹かれてしまったのかもしれない。
違いがあると認め、そしてそのどうしようもない隙間にぬくもりを満たした人間。
人と人の間と書いて人間。そんな人間だからこそ惹かれたのかもしれない。
次第に紫はあることを考えるようになった。”人間と妖怪が共存出来る世界があればいいな”と
これは単なる夢物語だ。そんな事はあり得ないはずだが考えずには居られない。
私はスキマ妖怪。どうしようもない隙間があるのならば、私がその隙間を埋めてしまおう。
決定的な違いがあって手を繋げないのなら、私が間に入って手を取り、一緒に繋ごう。
同胞である妖怪と、紫の大好きな人間が共存出来る世界。
いや果ては妖怪、人間、神などの様々な種族が共存出来る楽園を作りたいと次第に思うようになった。様々な種族が仲良く暮らせる世界があれば、どんなに素晴らしいものか。
しかし、現実は非情だった。
妖怪は人間を喰らい、人間は妖怪を恐れる。この絶対的な関係は、早々覆らない。妖怪が人間を喰らう限り、人間は妖怪を恐れ続けるだろう。
この事を妖怪や人間に話したところで、何を酔狂な事をと大笑いし口を揃えてこう言うだろう、そんな世界があるわけが無い、と。
実際にこの話を友人に話してみたところ、大笑いした後、逆に心配された位だ。
だが、叶うはずの無いと分かっていても、この夢は捨てきれないと、悶々と毎日を過ごした。
ある日紫はある噂話を聞く。
それは木っ端妖怪どもの噂話だった。
どうやら、ここからそう遠くない場所で大きな力を持つ何かがいるらしいと。
曰く、その何かは常に近寄りがたい力を振りまいており、そいつに出会ってしまったら最後、生きては帰れないらしい。
しかし、生存者がいないものだからその姿の情報は曖昧で、とある話では山のような大男や、絶世の美女だったり、恐ろしい化け物だったりと、よく分からない状況になっていた。あと幼女だったと叫んでいた奴もいたが、きっと何かの見間違いだろう。
紫は、その程度の事かと思った。今の紫にとってはどうでもいい情報だった。大きな力を持つ奴なんてたくさん居る。
妖怪の世界ではよくあることだ。中途半端に力を持っている奴は、自らの力に溺れて欲望の限りを尽くす。
そういう奴は自らの立場も弁えず強者に挑み掛かっていく。だが上には上がいるものだ。
真の強者はそんなことはそんなことはしない。真の強者は知性と礼節を弁えていて無駄な争いなどはしない。だが、もし彼等の逆鱗に触れてしまったら、彼等は決して許しはしないだろう。そいつは間違いなく消される。この世に存在した証が残らないほど徹底的に。
そんな噂も数ヶ月すると聞かなくなる。
どうせ今回もそのような感じだろう。覚えておくまでも無いと思った。
それから、何年と月日が経ち、今度は違う噂話を聞いた。
なんでも奇妙な妖怪が居るそうだ。
他の妖怪達と一緒に人間を襲ったと思ったら、脅かすだけや、気絶させるだけで殺しはしないらしい。
一緒に居た妖怪が何をしているんだと問い詰めた所、これが俺のやり方などと言い、他の意見を一蹴していると。
そのくせ、そいつは恐ろしいほど強く、火や雷、水、風など妖術とも違う、よく分からない力を使うそうだ。
紫はその力に心当たりがあった。おそらくそれは魔法と呼ばれる西洋の方の術だろう。
そこまでなら、まあ可笑しいがそいつのやり方かなと思うだろう。
本当に奇妙なのはここからで、なんとその妖怪は、今度は逆に人間の味方もするそうだ。人間の振りをして交流をしていたり、頼まれた際は妖怪退治までするようだった。
紫はこれを聞いたとき、頭を殴られたかのような衝撃を受けた。
何と言ったか? 妖怪が人間の味方をする?
普通の妖怪なら何を馬鹿なことを、と相手にしないだろう。しかし紫は違った。
遂に現れたのだ。紫の夢を現実に変えるかもしれない可能性を持った存在が。
今すぐ会って話がしたい。そして、私の考えに賛同してくれるなら是非協力してもらいたいと考えた。
話がしたい。人間と妖怪の共存についてどう考えるか聞いてみたい。
今までの妖怪達の反応を思い出す。
馬鹿げた話と言うことは十分承知。でも人間側と妖怪側、その両方に立つその妖怪なら、こんな馬鹿げた話も真剣に考えてくれる。そんな予感がする。これは暗闇の中に差し込んだ光。これは何が何でも会わなければいけない。
この時からその妖怪を探す日々が始まった。
何かが変わる、そう確かな予感を持って。
※※※※※※
結果から述べると、見つからないの一言に限る。世の中、そう上手くはいかないものだ。
まず行動範囲が広すぎる。目撃情報を元に推察してみると、短時間でとんでもない長距離を移動している事になる。
空を飛んで移動したとしても無理がある移動だ。
しかも、目撃場所もバラバラで規則性が全く無く、次の出現場所が予想できない。もう気まぐれで移動しているようにしか思えない。
ここまで来ると、果たして噂は本当だったのか疑わしくなってくる。
実は嘘だったのでは無いかと、半ば諦めつつ探していた所、ある小さな村に目が止まった。
何やら入り口辺りに人だかりが出来ている。
件の妖怪は一向に見つからないので、息抜きがてら覗いてみることにした。
「いや~、あの妖怪には家畜を荒らされて本当に困っていたんです。村を代表してお礼を申し上げます。退治してくれて、本当にありがとうございます」
「いいよ、いいよ。この位どうってことないよ」
「しっかし、嬢ちゃん強いね~。まだこんなに小さいのに。
実は嬢ちゃんも妖怪だったりしてな?」
「アハハ~、ソンナワケナイジャナイデスカ~」
んん? よく見たらあの子妖怪だ。うまく隠している様だが、境界を操る紫の目は誤魔化せない。
「それにしても、凄かったな~。火とか水を使ってバーンって。あっという間のことだったな~」
「あれは魔法と言ってですね―――――」
んん? 火とか水を使って?
「本当にお礼はこんだけの食料でいいのかい?」
「問題ない。確かに受け取った。じゃあ、俺はこの辺で」
「おう、嬢ちゃんならいつでも歓迎する。元気でな」
んんん? 妖怪が妖怪退治? 人間と交流?
あれ、もしかしてこれ来たんじゃね?
いや待て。散々探してこれなのだ。はい、そうですか、と簡単に信じられるものか。
紫がこう思うのも無理ない。散々探して見つからないものが、息抜きがてら覗いた村でこうもあっさり見つかったのだ。
そしてこの時紫は疲れていた。それはとても。短絡的な思考しか出来ないほど。
んん? でもここで逃がしたらやばいんじゃね?
いっそのこと式にでもしてしまった方が楽なんじゃね?
そしたら洗いざらい情報吐かせられるし。
好きで人間と交流してるくらいだし、私のやることに文句はいわんでしょ。そうと決まったら村を離れてしばらくしたら式にしよう。そうしよう。
ゆかりはこんらんしている。
(*・ω・)ノsee you