知識と魔法は使いよう   作:ミカンコーヒー

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(*・ω・)ノGute Tag



5.貴女と私から始まる物語

さあ、ゆっかりんの回想が終わったよ☆

 

 

「共存か... 不可能に近いだろうね...」

 

俺がそう言うと紫は俯いた。

表情は見えないが、先ほどより暗くなっているだろうことは分かる。

正直言って不可能までは言わないが、相当難しいだろう。

妖怪は人間を喰らい、人間は妖怪を恐れる。この事実は早々覆る事は無い。

 

けど....

 

「そんな世界があったら見てみたいな...!」

「えっ...?」

 

勢いよく顔を上げる紫。馬鹿にはされないと思っていたが、まさか肯定してくれるとは思っていなかったのかその顔は驚きに染め上げられていた。

確かに馬鹿な話だろう。それこそ夢物語だ。でも、人が空を自由に飛ぶ鳥に憧れて飛行機を作ったように、何事も始めは小さな夢や憧れから始まる。

叶わないからこそ夢だと言う人もいるだろう。でもそれは違うと思う。

 

「人間も妖怪も仲良く暮らせるような、夢みたいな話。そんな夢みたいな世界。

 ......いいな、それ」

「いいの? 私が言うのも何だけど、馬鹿みたいな夢よ?」

 

最初は無理矢理だったくせに、何を今更弱気になってるんだか。

俺もいい加減今の状況に飽き飽きしていたんだ。

人間は妖怪が現れれば殺しにいくし、妖怪も人間を食料としか考えていない。まあ、両方に例外は居るけどね。どのみち少数だ。

 

「お馬鹿上等。何事も最初から道があるわけじゃ無い。無ければ作っていけばいいじゃないか」

 

紫の考えに賛同してくれるヒト達は少ないだろうけど、きっといる。少なくとも俺はそうだった。

初めから道があるわけない。俺だって物理的な道なんていくらでも作ってきた。

ただの道一つ切り拓くのも大変だった。虫はすごいし、草で手を切るわ、石は多いでもうたくさん。

でも紫が拓こうとしているものはそんな簡単なものではない。

 

「仮にも自分の夢だろ、そんな事言ったら駄目だよ。それに良い夢じゃないか。俺は好きだよ、その夢」

「......っ!」

 

これは予想外だったらしく驚いた表情になった後、紫の瞳から大粒の雫がとめどなくこぼれ落ちる。どうやら感極まって涙が止まらない様子だ。

 

「あ、あぁ、ごめんなさいね。そんなこと言ってくれたのは貴女が初めてだったから嬉しくて、つい...」

 

あぁ... なんかすごく分かるよその気持ち。何で皆から逃げられているのか分からなかった時とかよく夕日に向かって泣きながら叫んでたよ。

こういったとき平々凡々な俺には目の前で泣いている女の子を慰めるような言葉が直ぐに出てこない。

こんなとき直ぐに声を掛けれる奴は凄いと思う。俺は口が上手じゃない方なのでとても羨ましい。

 

「うっうぅぅ......」

 

でも、何でだろう。その涙に価値があると思ってしまうのは。夢のために流す涙を尊いと感じてしまうのは。やっと始まりに立った所なのに。こんなところで流すのはもったいない。その涙一粒一粒には紛れもなく価値がある。貴女が涙を流すのは今じゃ無い。

 

「八雲さんや、その涙は流すにはまだ早いよ。まだ物語は始まったばかり。その涙は君の夢が叶うまで取っておこう」

「物語は始まったばかり..... ふふっ、そうね。涙を流すのはまだ早いわね。これは大事に取っておきましょう」

 

紫はそう言うと微笑んだ。力強い不敵な笑みだ。そしてその瞳には強い意志が宿っていた。現実を知り、それでも夢を捨て切れないか弱い少女の瞳ではない。何が何でも夢を実現させてやるという強い意思が宿った瞳だ。

 

ああ、眩しい。何て眩しいのだろう。本当に強いヒトというのはこういう瞳を持っているのだろう。

眩しい。でも眩しいからこそ惹かれてしまう。一緒に歩みたくなる。貴女が創っていくその道を、一緒に。

いったいこの気持ちはなんと言うのだろうか。

 

ああ、俺もチョロいな。前世では割と早く死んじゃったし、まだ何も出来ていなかったからね。まあ、仕方が無い。

 

 

始めは何かが変わると思って話を聞いてみた。貴女の話に耳を傾けた。

ああ、変わったよ。間違いなく変わった。

 

何かが変わる、面白いことが起きると感じた。でも俺は第三者で、起こる出来事を眺めているだけの、あくまで傍観者としてのものだった。

 

でも......

 

貴女が話した夢が

 

貴女の流した涙が

 

貴女の瞳が

 

俺の心を動かした。世界が変わるのをただ眺めるのでは無く、世界を変えていきたい。

貴女と一緒に変えていきたい。幸いそれを成す為の力ならある。傍観者では無く、当事者としてこの世界と向き合っていきたい。

口べたな俺だけど、この気持ちを自分の言葉できちんと伝えよう。

既に返すべき答えは定まった。でもその前に、まずは非礼を詫びよう。

 

「八雲さん。最初に会ったときは話も聞かずに逃げ出してすみませんでした」

 

「紫で良いわ。まあ、あれは私の方にも問題があったわ。私の方こそごめんなさいね」

 

「では紫さん、まず式神の件だけど改めて断らせてもらいます。貴女の話を聞いて俺は貴女に、貴女の夢に憧れました。俺は式神なんて立場からじゃ無く、貴女と一緒にその夢を叶えたい。道が無いのなら一緒に創っていきたい。貴女と一緒に物語を描いて行きたい」

 

肩を並べて同じ夢を見たい。そんな関係を何て言うのだろうか。

好敵手? 全然違う。

協力者? うーん、なんか違うな。

同志? 良いけどちょっと堅いな。

ああ、良い言葉があるじゃないか。簡単な言葉だった。そう......

 

「友達としては駄目かな?」

「友達.......」

 

あれ? この反応は?

 

「もしかして友達いないとか?」

 

「し、失礼ね! 友達ぐらいいるわよっ!」

 

「なら安心。それで答えの方は?」

 

「えぇ、勿論! 共に頑張りましょう!」

 

そう言って花が咲くような笑顔を浮かべる。やだ、この子かわいい。

 

「んじゃ、これからよろしく紫さん」

「ええ、よろしくお願いしますわ ....えぇーと名前は?」

 

 

そう、我が輩は妖怪である(名無し)。名前はまだ無い。うぅ、そうだよね。災厄さんだもんね..... これが名前なわけないよね。 

そうだ良いこと思いついた。

 

「そうだね、どうせなら紫さんが付けてよ。紫さんなら良い名前を付けてくれそうだし」

「ハードルを上げないで頂戴。いきなりだから期待はしないでね。うーん.... 決まったわ」

 

早いな。

 

「貴女は私の夢を一緒に叶えたいと言ってくれました。私の夢を肯定し、希望を示してくれました。夢を夢のまま終わらせるのでは無く、夢を叶える、夢を現実に変える力が貴女にはあります。そう信じています。安直ですが、夢を叶えると書いて”夢叶”(ゆか)それが貴女の名前です」

 

カチリと歯車が嵌まったような気がした。ようやく全てが揃い俺という存在が定まったような、そんな感じだ。

 

「”夢叶”か、いいね気に入った」

 

「それは何より。では改めて、これからよろしくお願いしますわ夢叶」

 

「ああ、よろしく紫さん。ようやく紫さんの物語は始まったよ」

 

「物語ね...... なら、この物語の名前は『貴女と私の物語』ってとこかしらね」

 

「ははっ、それなら内容が恋愛物みたいになっちゃうじゃん」

 

「ふふっ、それもそうね。なら貴女ならどんな名前にします?」

 

「そうだね、紫さんのとほとんど変わらないけど......」

 

「『貴女と私から始まる物語』かな」

 

始めは小さな獣道。俺と紫さんが歩いた足跡が道になり、そこをまた一人と誰かが歩く。

そしたら小さな獣道だったところは小さな道となる。

俺と紫さんから始まった小さな獣道がいずれはたくさんのヒト達が歩く大きな道、それがいずれ軌跡になる。貴女と私だけでは無く、貴女と私から始まったたくさんのヒト達が織りなす壮大な物語になることを願って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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