子豚の親友とリスタート   作:紅いきつね

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初めましての方は初めまして、紅いきつねと申します。
アニメ1話見た瞬間に原作を揃えることを決意しました。

(個人的に)今期最強のアニメです。


プロローグ

8年前、俺には1人の親友とも呼べる友達がいた。正確に表現すると、親友とも呼べる友達であり、唯一の友達がいた。

その頃の俺は小学生、人生を達観......というよりは厨二病に近いかもしれないがそんな考え方をしていた。

運が良かったのか俺は自分でもそこそこイケメンと思える顔立ちに自分でも良い方だと思える運動能力をもっていた。

そんな俺に見た目だけを目当てに近づいてくるクラスの奴らが嫌だった。クラスにはそんな奴らばかりだった。本当に、つまらないと思った。

 

そんな時、俺はそいつと出会った。

 

そいつは金持ちの生まれで丸っこい......俗に言うデブだった。弱虫で喧嘩も弱くて、クラスの悪ガキ集団に虐められてるのを偶然見かけた俺はそいつを助けた。それからそいつは話しかけてくるようになり、俺達はよく喋る仲になっていった。俺にとって、本心からそうだと言える初めての友達だった。

最初は同情が9割で話し相手になっていた。残りの1割は単なる暇潰し。それはもうクソみたいな理由だった。だが、話すにつれてそんな考えは消えていた。

 

こいつは違う、こいつなら普通の友達になれるかもしれない。

 

そう、思った。

自分達の集団に入れて派閥を強くするのが目的でもなく、俺と友達だという称号が目当てでもない。本当にただ助けてくれた事を感謝してくれて、そんな俺を尊敬してくれたこいつなら。

 

厨二病気味の小学生なりにそう思い始めた時、最初にあったクソみたいな考えは消え去った。

 

そして唯一の友達ができた俺に更なる出会いが訪れた。

 

*****

 

下校のチャイムが鳴り、俺の席に丸っこい1人の男子、俺の唯一の友達である『早瀬 政宗』が近づいてきた。

 

「ねえねえ龍馬くん!今日もうちに遊びにこない?ママも龍馬くんのこと気に入っちゃったみたいでさ、いつでも連れてこいって言ってるし!」

 

「お、まじで?じゃあ今日もお邪魔しちゃおっかな!」

 

「じゃあさ、新しく買ったゲームやろうよ!対戦モードもあるって書いてあったしさ!」

 

「なんだなんだ?アクションゲーか?やり込むしかねえな!」

 

「決まりだね!じゃ、家で待ってるよ!」

 

「おう!」

 

そう言って1度帰宅し、いつも通り政宗の家に向おうとした時、なんとなく別の道を通って行くことにした。

 

自転車を漕いでいるとやたら大きな家が見えてきた。庭は広いはでかい門があるわですっかり漕ぐ足を止め、俺はその家に見入っていた。

 

「こんな家があったのか......知らなかった。あとで政宗にこの家知ってるか聞いてみるか」

 

そんな独り言を呟いていると、

 

「あの......何か御用ですか?」

 

茶色っぽく、一部を三つ編みにして肩ぐらいまで伸ばした髪の女の子に話しかけられた。

ただ1つ、普通の女の子と違う箇所があった。それは、その女の子が着ているのはメイド服と世間一般的に呼ばれるものであること。

 

「ご、ごめん。こんな大きな家があったんだなーと思ってつい見入っちゃって......」

 

女の子の見た目は俺と同じぐらいだったがこの屋敷の敷地内にメイド服で立っているということが俺を緊張させた。

 

「そう。じゃ、お気をつけて」

 

そう言ってその女の子は背を向けて去って

 

「あ、あの!」

 

いこうとしたところを俺は自分でもよく分からないまま呼び止めていた。

 

「......なに?」

 

「またここを通る時に偶然会ったら、よかったら話し相手になってくれないかな?」

 

いや何を言っているんだ俺は。初対面の、しかもこんな屋敷のメイドさんに、いくら同じぐらいの見た目だからといって。

 

「あ、いやその......」

 

「いいよ」

 

俺が何故かしてしまった発言を慌てて撤回しようとすると思いもよらぬ一言に遮られた。

 

「へ?」

 

「いいよ。話し相手、なってあげる。また会ったらね」

 

 

しかも了承されてしまった。こんな初対面のどこぞのガキが言った訳の分からんお願いを。その時の俺はとてつもなく間抜けな顔をしていただろう。

 

「まじすか......あ、ありがとう!俺の名前は平龍馬、龍馬って呼んでよ!」

 

「小岩井吉乃、吉乃でいいよ。あ、そろそろ行かなきゃ......ごめん」

 

「いやいやいいよ!こちらこそ突然呼び止めてごめんな!また来るから!」

 

そう俺が言うと吉乃はこくんと頷き、去っていった。

 

それから俺達は毎日のように雑談をした。話し相手になってくれる約束をした次の日、俺が放課後に昨日会った場所に行くと吉乃が本当に律義に待っていてくれたのがきっかけだった。勉強、流行り、いつの間にか俺の学校の奴らに対する厨二臭い考え方さえ話してしまっていた。

口に出してから馬鹿にされるかもしれないことに気づいたが、吉乃は馬鹿にしたりめんどくさがったりする態度をとらず、頷き、たまに毒を吐いたり、たまに自分の話をしてくれた。

見ず知らずからここまで話せるようになるとは、幼い故にだろうか。

 

 

いつも通り放課後に吉乃と話しに行ったその時だった。吉乃がいなかったのだ。しかし本来なら吉乃はメイド、仕事が忙しいのだろうと思った。しかし次の日も、その次の日も吉乃はいなかった。

 

「でさー、その女の子がね、すごく可愛くて強いんだよ!」

 

「ほー、そんな子がいるのか」

 

いくら厨二病こじらせて達観したような考え方をしていても小学生。何かあったのか、知らないガキの俺と話してるのがバレて問題になったのか、俺はそっちに意識がいったままで政宗の話が頭に全く入ってこなかった。すまん、政宗。

 

結局その日も吉乃はいなかった。

 

 

「龍馬くん......聞いてくれよ......」

 

次の日学校に行くと、泣いたのか目を腫らした政宗が話しかけてきた。

 

「おー、政宗......ってお前どうしたんだよ?また誰かに虐められたのか?誰だ、俺がぶん殴ってやる」

 

「ち、違うよ!いや、違くないけどそれが原因じゃないんだよ......」

 

席から立ち上がり、誰なのか聞き次第ぶん殴りに行こうとすると政宗に必死に止められた。

 

「んーと?つまり?」

 

「昨日可愛くて強い女の子と遊ぶようになったって話をしたじゃん、その女の子がさ......その女の子が......」

 

えーっと......そんな話してたっけか。吉乃のことしか頭になかったわ。

 

「おい泣くな泣くな、で、その子がどうしたんだよ?」

 

「あのね......」

 

俺が聞くと政宗は昨日、その子の家にいつも通り遊びに行こうとしている途中、悪ガキ集団に追いかけられなんとかその子の家の門に着くと、窓からお前なんか好きじゃないと言われ更に豚足呼ばわりされ見捨てられたことを話してくれた。

 

それを聞いた俺は一瞬その女に文句でも言ってやろうかと思ったが、なにか引っかかることに気づいた。

 

「なぁ政宗、お前その子になんかしたのか?」

 

「するわけないよ!昨日だって愛姫ちゃんにプレゼントを持っていこうとしてたんだ......」

 

ふむ、どうやらその女の子は愛姫ちゃんというらしい。その愛姫ちゃんが何故いきなり政宗を見捨てたのかさっぱり見当がつかない。

というか実は政宗を見捨てたのは本人じゃなくて政宗に恨み、もしくは単純に政宗を虐めたい誰かがなりすましていたのでは......?いや、流石にマンガとかアニメの影響受け過ぎか。

ダメだ、俺にはさっぱり分からん。

 

「だから俺ね、引っ越そうと思うんだ」

そんなことを考えていると、政宗がとんでもないことを口にした。

 

「......は!?なんだよ、そんなクソ女がいるこの土地にはいられないってか!?俺がいるだけじゃ足りないのか!?」

 

「ち、違うよ!!龍馬くんはもちろん大切な友達だと思ってるけど......それじゃダメなんだ」

 

「何がダメなんだ?」

 

「もう、龍馬くんに頼ってばかりなのは嫌だし何よりも......愛姫ちゃんを、あの女を......俺を豚足呼ばわりして見捨てたあの女を見返してやりたいんだ!!」

 

そう言い放った政宗の目は今まで俺に泣いて助けを求めてきた奴の目とは違った。小学生の俺には上手く表現できないが、1人の男の目......とでも言うのだろうか。それほど政宗の目は気迫に満ちていた。

 

そんな親友、応援しない奴がいるかよ。

 

「分かったよ政宗、俺は応援する。そんで強くなって戻ってこい!」

 

「り、龍馬くん...うん!絶対に強くなって戻ってくるから!」

 

「おう!......でもアテはあるのか?転校するだけで強くなれるとは思えないんだが?」

 

「その辺に関しては大丈夫。田舎にすごく厳しいお爺ちゃんがいてさ、鍛えてもらおうと思う」

 

「なるほどな、ならアテはあるわけだ。で?いつ転校するんだ?」

 

「明日にでも出発しようと思ってるよ」

 

「明日!?そんな簡単に引越しってできんのか?」

 

「そこは僕が全力でママとパパにお願いするよ」

 

あぁ、そう言えばこいつの家......なんだかんだ結構な金持ちだったわ......

 

 

そうして次の日、政宗はこの土地を去った。そこで俺はやっと気づいた。

 

「あれ、俺......またぼっちじゃね?」

 

「どうしたんだ、平?」

 

「いや、すいません先生。ただの独り言です」

 

授業中にどうやら独り言が漏れてしまったようだ。気をつけないと。

 

いやぼっちではないぞ、たしかに学校には友達は1人もいなくなってしまったが......俺にはまだ1人いた。最近まるで姿を見ないあの子......小岩井吉乃が。

昨日は政宗が転校する話のインパクトが強過ぎて寄るのを忘れてしまった......よし、今日からまた通い続けよう。

......吉乃、今日もまだいないのかな。

 

 

そんな俺の予想は簡単に覆された。

 

放課後、いつもの時間に向かうと、いたのだ。あのメイド服、間違いない。

 

「おーい吉乃!」

 

「......あ、龍馬。久しぶり」

 

「最近見なかったけどなんかあったのか?もしかして俺と話してるのバレて怒られた......とか?」

 

「ううん、違う。なんでもないの......本当になんでも......」

 

いつも通りの吉乃だ......と思ったがどうやら様子がおかしい。元々静かな声で話す吉乃だがどうにも暗い。

 

「なんでもないようにはまるで思えないんだが......俺でよかったら聞かせてくれないか?......いや、できれば聞かせてほしい」

 

なんというか、理由は自分でもまるで分からないけど、ここはなんとしても聞かないとと思った。俺に他人の悩みを解決できる技術なんてないくせに。

 

「......うん、龍馬なら......いいよ」

 

そんな俺に吉乃は話してくれた。自分が仕えているお嬢様に絡むようになった奴がいたこと、お嬢様は我が儘でいつもそれに我慢して振り回されていたのにそいつと遊ぶ時はとても楽しそうで今までの自分の苦労はなんだったのかと思ったこと、そして、お嬢様についていけるのは自分だけではなかったと分かってしまったショックの末、お嬢様になりすましてそいつを突き放してしまったこと。

 

「あいつがこなくなって私は嬉しくなったけどお嬢様はあれからヤケ食いするようになって、男の子みんな嫌いになって......お嬢様、こわれちゃった。こんなことになってからやっと分かったの。絶対にしちゃいけないことをしちゃったんだって......」

 

 

絶対にしちゃいけないことをしちゃった。その言葉で吉乃は締めくくった。

 

話を聞いて、俺は悔しかった。

 

そんな悩みを抱えていたのに相談相手になれる仲になれていなかったことが

 

悩みを抱え始めた頃にすぐ気づくことができなかったことが

 

そして、今ここでどんな言葉をかければいいのかまるで分からないことが

 

「ごめんな」

 

「......え?」

 

だから俺はありのまま思ったことを話すことにした。

 

「そんな悩みがあったって気づけなくてごめん。相談相手に思い浮かぶような奴じゃなくてごめん。今もろくな言葉をかけてやれなくて、ごめん」

 

ただひたすら俺は謝り続けた。たかが小学生の俺にはそれしかできなかった。

 

「......謝らないで!!」

 

「!!」

 

謝り続ける俺に吉乃が叫んだ。吉乃が大声を出す光景なんて初めて見た。そんな姿すら見たことなかったんだ。勝手に結構仲良くなったと勘違いして、たかだか毎日少しの時間話しただけで何を勘違いしていたんだろう。その結果がこれじゃないか。

 

「謝らないで......龍馬は何も悪くない......誰かに相談してみようかと思った。すぐに龍馬が思い浮かんだ。でも話せなかった。こんなこと思う奴なんだって思われたくなかった......嫌われたく、なかった......それで結局誰にも言えなくて......こんなことに......」

 

そう言って吉乃は泣きだした。訳が分からなかった。理解が追いつかなかった。最初に相談相手として思い浮かんだのは俺?俺に嫌われたくないから言えなかった?

 

俺が思ってることと正反対じゃないか。どうなってるんだこれは。

 

半ばパニックに陥った俺に唯一出来たことは、

 

「なに......してるの?」

 

「頭撫でてんの」

 

門の隙間から手を伸ばして泣きじゃくる吉乃の頭を撫でることぐらいだった。

 

「なんで?」

 

「吉乃が泣いてるから」

 

「意味わかんないよ」

 

「俺もわかんない」

 

「でも......」

 

「ん?」

 

「落ち着くからもうちょっとこうしてて」

 

「ん、わかった」

 

そうして俺はしばらく吉乃の頭を撫でていた。

 

 

それからどれくらい経ったのだろうか、綺麗な夕焼けが広がっていた。放課後に寄ってるから実際にはそんな経っていないのだろうけどすごく長く感じた。

 

「もう落ち着いた?」

 

「うん」

 

「まぁ今回の件についてはね、部外者の俺が言うのもなんだけど吉乃が悪いと思う。」

 

「......うん」

 

「でも、俺は吉乃を嫌いになったりしないし、むしろ吉乃の知らない一面を見ることができて、割と俺のこと信頼してくれてるんだって知って......こう言っちゃ悪いけど嬉しかった」

 

「......じゃな......」

 

「え?」

 

「割とじゃない、すっごく信頼してる」

 

そう言った吉乃の顔が真っ赤に見えたのは夕焼けが眩しいからか、泣きまくったからか、それとも......

 

「......ありがとう。だからさ、どんなに時間が経っても、覚悟決めたらその子に謝ろう?」

 

「......うん」

 

「その時は俺も一緒に謝るからさ、気づけなかった友達として。」

 

ただ1つ確実に言えるのは、

 

「......うん!」

 

その時の吉乃はとてつもなく可愛かったということだ。

 

 

*****

 

「あー、よく寝た。それにしても懐かしい夢を見たな......。まさか8年前の夢を見るなんて、やっぱりこの町に帰ってきたからか?というか吉乃がお嬢様になりすまして突き放したのって......政宗のことを豚足呼ばわりしたのって......ま、いいか」

 

今考えても仕方のないことだろう。

 

俺は時系列的にはあの夢のすぐあとに親の転勤によって転校する事になった。そしてまたこの町に戻ってきたのだ。

 

「小学生なのにあんな大人びたシーンを繰り広げてすぐ転校とか流石に酷いよなぁ......あの時の吉乃、めっちゃ泣きそうになってたし。今日学校終わったらあの場所の辺り行ってみようかな。その前に、新しく学校で上手くやっていけるだろうか......」

 

そう、この町に戻ってきてすぐに高校の編入試験を受け、合格。そして今日から通学なのだ。

 

「結局転校しても中学入っても周りは同じような奴らだったからなぁ......お陰様で未だに小学生の頃の厨二チックな考え方抜けきってないんだぞちくしょう」

 

と言っても流石に表面上喋るぐらいはできるようになったが。ウザいから喋らない、なんて流石に通用しなくなるしね。

 

「そういや編入試験奇跡的に満点取ったっていうのにもう1人いたらしいんだよな〜、龍馬くんSUGEEEEEEEじゃないじゃんちくしょう。でもどんな奴なのか気になるな」

 

その時、コンコンと俺の部屋のドアがノックされた。

 

「龍馬〜独り言ぶつぶつやってないで朝飯食って早く学校行きなさ〜い。長いわよ〜」

 

お母様でした。

 

「息子の独り言なんて聞いてないで来たらすぐ朝飯呼んでくれたらよかったかなぁ!?」

 

すいません、ここは2階です。しばらく部屋の前に立ってたってことですよね?

 

 

そんなこんなで朝飯を食べた俺は身支度を整え、

 

「行ってきます」

 

期待を胸に新たな学校生活を始めるのであった。

 

 




不定期更新ですがこれから頑張っていきますのでよければ応援してください。
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