旧プロローグ(兵士の意地)
ー2025年。
俺達、国連軍の兵士は、制圧した基地で、任務を行っていた。
任務内容は、物資、資材の奪取。
補給路を絶たれ、完全に押さえ込まれた俺達が、生き残る為の作戦だ。
しかし、作戦中に、敵勢力が現れ攻撃を受けていた。
「荷物の積込はまだか!」
「今やってる!···クソ!手が震えやがるぜ畜生!」
銃声と爆発音が響き渡る。
今の所、被害は少なく、なんとか持ちこたえているが、完全に劣勢。数が違いすぎる。
包囲されていないのが唯一の救いだ。
「急ぎやがれクソ野郎!···おいミヅキ!あのファッキン野郎どもを撃ちまくれ!」
「わかってるよジャック!畜生おおおおお!!!」
俺は手に持った軽機関銃を乱射する。
引き金を引きっぱなしにして、やみくもに。
制圧射撃にもなるかわからないような射撃。···だが運良く、敵は下がって行っている様だ。
「敵後退!」
「畳み掛けろ!奪ったRPGを使え!」
「吹き飛びやがれっ!」
近くの友軍兵士が対戦車ロケット···RPG-7を放つ。
バックブラストが発射筒から吹き出し、砂と小石を吹き飛ばし、
放たれた弾頭は、火を吹きながら後退する敵装甲車に突き刺さり、吹き飛ばした。
「!派手な花火だなオイ!」
「いいぞ!次だ次!」
「他のも撃ちまくれッ!」
―――
「全員、居るか?」
「何人か逝っちまったが、まあ大体居るよ。」
「OK。···ふぅ···」
あの後、なんとか荷物を積み込み脱出した俺達は、数人の犠牲を出しながら、トラックに揺られ、基地へと向かっていた。
アドレナリンが切れ、冷静になると、死んだ仲間の顔が脳裏に浮かぶ。
···みんな良い奴だった。
寄せ集めで、国籍も所属していた軍もバラバラ。初めて会ったのは半年前だが、まるで何年も共に戦っている戦友の様な奴らだった。
占領され、日本が敵の属国になった時も、俺を避けたり差別したり、同情なんかせず、俺の居場所になってくれた。
···そんなあいつらは、金属の板キレだけになってしまった。
ビニールのカバーがかけられ名前が刻まれ、、チェーンで繋がったそれには、血がこびりついていた。
俺はそれを強く握りしめる。
···見てろよ、お前ら。
死んでも負けねえぞ。
国連軍の最後の砦は、命に変えても守り切ってやる。
隊の全員がそう決意した時、トラックの横に砲弾が着弾、炸裂した。
―――
―あれ、ここ何処だ?
―何があったんだっけ?
「ぉ·······ぃ」
―声?···誰だろう?
「ぉ···ぃ···き···ろ」
―起きろ?···なんで?·········ああ、俺、さっきの砲撃を喰らって····
―そうだ!俺は砲撃で荷台から吹っ飛ばされたんだ!
体に感覚が戻り、飛び起きる。
周りを見渡すと、俺が乗っていたトラックの横に、砲弾が炸裂した跡があった。
ギリギリ直撃は避けたらしい。
「状況は?」
「最悪だ。敵兵に追いかけられてる。もうすぐ追い付かれる。」
「···皆は?」
「大丈夫。無事だ。トラックもな。···だが」
「どうした?」
「このまま逃げても追い付かれちまいそうなんだ。トラックの調子が悪くてな。」
「······どうする?」
「···やるしかねぇだろう?」
ジャックは苦笑し、俺に銃を押し付ける。
受け取った俺は、ジャックのボディアーマーを叩いた。
「頼むぜ。相棒。」
「勿論だ。」
俺はジャックと拳を合わせる。
すると、その横から別の拳が伸びてきた。
「てめえらだけに良いとこ持ってかせるかよ。」
「隊は家族。死ぬときゃ一緒。···だろ?」
「あのクソ共にゃ、一発返さなきゃ気が済まねえしな!家族の仇だ!」
隊の仲間達だった。
「お前ら···」
ジャックが少し涙ぐむ。
「バカ野郎、泣いてんじゃねえよ。」
皆が笑う。
「なっ···泣いてねーよ!···ちょっと吐き気がしただけだ!」
「吐くならあのクソ共の顔の上でな!」
「ついでに鉛玉のシャワーでも浴びさしてやろうぜ!」
「···よし!やろう!トラックは先に行け!俺達は死んでも食い止める!」
ジャックが言うと、トラックの窓から兵士が顔を出す。
「バカ行ってんじゃねぇ!てめえら見殺しにしろってのか!」
「ちげえよ!基地の奴ら助けろっていってんだ!お前らあいつら餓死させてえのか!」
「でもそしたらお前らが!」
「うるせえ!俺達を見捨てろってんじゃねぇ!待ってる奴ら助けろっていってんだ!聴こえねえのかこの野郎!さっさと行きやがれ!」
「···クソ!てめえら死ぬんじゃねえぞ!」
トラックのエンジンが咆哮を上げ、砂を巻き上げて走り出す。
助手席の兵士が窓から身を乗り出し、敬礼していた。
俺達は無言で敬礼を返すと、銃を握り直す。
···ここには俺達しか居ない。敵はもうすぐそこ。
頼れるのは数人の味方と、一丁のライフル、そして少しの爆薬だ。
おそらく長くは持つまい。相手との戦力差は明確。確実に死ぬだろう。
···だが、不思議と恐怖は感じなかった。
「よし!!我々第7分隊は、これより命を賭けて撤退の援護を行う!一分、一秒でも良い!時間を稼げ!」
臨時の隊長である、ジャックの言葉を聞きながら、慣れた手つきでマガジンを差し込み、ボルトハンドルを引き、初弾を薬室に装填する。
「よし·······撃てッ!」
ジャックの号令と共に、俺達は引き金を引いた。
―そしてしばらくたったある日。
国連軍兵である自衛官、「藍原 三月」の死亡が、ニュースにより、日本全国に伝えられた。