この泥臭い兵士に祝福を!   作:メガネ二曹

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本編
嗚呼(ああ)、女神様。


―あれ···俺···どうなったんだろう···

 

―生きてる···?いや···死んでるな··

 

―確か足止め中に手榴弾に吹っ飛ばされて···何だっけ···

 

―皆、どうなったかな···

 

―トラック、無事かな···

 

―とりあえず···起きるか···

 

目を開け、重い体に鞭を打ち、立ち上がった。

 

周りを見渡すと、何もない黒い空間が広がっている。

 

「なんだここ···」

 

見渡す限り、真っ暗。なのに何故か自分の体は普通に見える。

本当に良くわからない空間だ。

 

とりあえず俺は、ダメ元で無線機を使い、別の部隊の周波数に合わせる。

が、勿論何も起こらない。

適当に周波数のダイヤルを回すも、何処にも繋がらない。

 

「とりあえず···俺は何すりゃ良いんだ?」

 

頭をかきながら呟く。

人間にとって、何もやることの無い状態···つまり「暇」とはかなりの苦痛だ。

刑務所でも、ずっと牢屋に閉じ込められるのと刑務作業があるのとでは、刑務作業が出来る方が圧倒的に良い。

疲れる疲れないではなく、「やることが存在する」事が人を充実させるのだ。

 

現在俺は、その地獄の「暇」に落ちそうになっている。

 

なにせ、この真っ黒な不思議空間には、本当に自分以外の物が存在しない。

 

「····はぁ」

 

「どうしたのですか?ため息などついて。幸せが逃げてしまいますよ?」

 

「??!うおっ!」

 

いきなり、何も無いハズの後ろから声がして、俺は反射的に後ろへ拳銃を向け、振り向く。

 

すると、何も無い黒い空間に、ポツンと椅子に座った女の子が居た。

 

「あ···悪い。ちょっと驚いて。」

 

俺は慌てて拳銃を下ろす。

 

「いえ。驚かせてしまったのはこちらですので。···藍原 三月さんですよね?」

 

「あ、はい。」

 

「···藍原三月、2005年月8月10日産まれの20歳。身長174cm、体重62kg。職業は自衛官。小、中学校を、平凡な成績で卒業後、私立高校へ入学。これも普通に卒業。その後憧れていた自衛官になろうと海上自衛隊への入隊を目指すが、適性で陸上自衛隊を受験し、一般曹候補生課程で入隊。その後姫路駐屯地で一年勤務し、陸士長になると同時に派遣。参加後、PKO活動中の任務で死亡···合ってます?」

 

「は···はあ。」

 

「特技は射撃、機械いじり等。軍艦や兵器が好き。趣味はゲームでFPSや戦場シュミレーションゲーム。料理が上手い。なんでもこなす。子供に良くなつかれ、妹の友達にじゃれられる。」

 

「はい。」

 

「ロリコンというあだ名を妹に付けられ、好き勝手吹聴された上、近所のおばさんに通報された。」

 

「·············はい。」

 

····なんだろう。この俺についての説明。最後らへん変だし。

····あれか?俺、地獄に行く前に理由言われてるとか?

話が終わったら「ハイじゃあこういう理由だから地獄いってね☆」みたいなパターンか?

 

···まあ、いかつい閻魔大王に言い渡されるよかマシだが。

 

「さて、藍原さん。お話があります。」

 

「はい。」

 

「私は女神エリス。神様です。」

 

「はあ。」

 

「···驚かないのですね」

 

「······まあ、はい。」

 

あんだけ俺の事を知って居たのだ。もう驚きはしない。

正直、家族よりも俺の事を良く知って居るだろう。

 

「···コホン。その事はとりあえず良いとして、今回、あなたにお願いがあります。」

 

「なんです?」

 

「ある世界に転生して欲しいのです。」

 

····は?

今この娘、転生って言った?

あれか?あの記憶とか引き継いで生き返るってヤツ?

 

「えーっと、何ででしょう?」

 

「···実は、その世界は、「魔王軍」という勢力によって生活が脅かされているのです。」

 

なんだそのRPGみたいな世界。

 

「そこで私達は、亡くなられ、ここに来た日本人の方に、ある特典をお渡しして、魔王軍のトップ、「魔王」の討伐を依頼しているのです。」

 

おー。web小説みてーな展開だ。

 

「···俺はそれで構わないのですが···でも、俺ただの下っば兵士ですし···まあそれなりに戦闘には自信はありますが···」

 

魔王と言う位だ。かなり強いはずである。

しかし、俺はあくまで兵士。

個人装備として扱えるのは銃に爆弾、刃物はナイフと銃剣ぐらいだ。

実戦を経験し、実際に戦った者として、それなりに戦い慣れしているし、訓練だって意外と上の成績だ。

···だが、

 

「··銃って魔王に通用しますかね?」

 

一番の問題はこれだ。

俺は自衛官として、現代の兵士としての戦い方が体に染み込んでいる。

「長い剣の戦い方を覚えろ」と言われたら、戦い方を知らない一般人の方が速く覚えるし、上達も速い。

となると、自然と俺は銃器での戦闘を行う様になる。

だが、銃は寄られると弱い。

魔王が盾で弾を防ごう物なら、即座に死亡確定だ。

俺たち歩兵、小銃手は、「三発位弾を喰らうと死ぬ『人間』」を相手にする訓練を受けている。

戦い方もそうだ。

理想は、出来るだけ有利な位地、ある程度の距離から素早く攻撃、相手が反撃する前に殺し切る、という物だ。

勿論、万が一の対処も学んでいるが、ゲームで出てくるような、「剣で斬られたり、火で炙られたり、雷落とされたりしても簡単には死なない『魔王』」を倒すようなシチュエーション等、習う事は無い。

「戦車と遭遇したらバレずに逃げろ」と言われるライフルマンが出来る事じゃない。

そもそも雷なんか落とされたら戦車だって撃破される。

それに耐えきるような生物(かどうかは知らないが、)と戦うなんて、かなり無茶だ。

 

そんな疑問を受けたエリス様は、難しい顔をする。

 

「···私もよく分かりません。ただ、銃弾を数発受けただけでは死なないと思います。」

 

だろうな。

 

···だがしかし、俺はまだ生きる事に未練がある。

 

「藍原 三月」は、まだ20年しか生きていないのだ。

 

「····解りました。魔王を倒せるかはわかりませんが、お力になります。···それに俺は、平和維持軍の兵士ですしね。どんな世界であれ、平和にするのが俺の役目です。」

 

俺がそう答えると、エリス様は笑顔になる。

 

「ありがとうございます。よろしくお願いしますね♪」

 

女神さまが微笑む。

······可愛いなぁおい。

 

「はい。·····ところで、」

 

「なんでしょう?」

 

「さっき言ってた、「ある特典」って、何ですか?」

 

「ああ、私達も依頼をする側ですし、転生される日本人の方には、「力」を差し上げているのです。」

 

「力?」

 

「魔剣や、特殊な能力、神器等ですね。」

 

「···はあ。····ちなみに、俺は何を貰えるんですか?」

 

「···今までは好きに選んで貰っていたのですが、前回の転生者の方が、女神自身を連れていったせいで、こちらであなたに合っている物を決め、お渡ししています。」

 

「はあ」

 

「あなたは····そうですね。「創る力」を授けます。」

 

「···創る?」

 

「はい。魔力と引き換えに、イメージした武器などを生成する、という力です。」

 

「なんでもですか?」

 

「はい。イメージできる物なら、実在しない物でも。···ただし、大きく、複雑で、強くなる程、創るのに時間がかかりますが。」

 

「解りました。ありがとうございます。」

 

俺が軽くお辞儀すると、エリス様が立ち上がる。

 

「藍原三月さん。貴方をこれから、転生させます。···願わくば、魔王討伐の悲願を達成してください。」

 

「···了ッ!」

 

俺は直立不動で捧げ筒をし、挙手の敬礼をした。

エリス様が微笑み、両手をこちらに向ける。すると黒い床に光の紋様が浮かびあがった。

 

「では、御武運を。」

 

視界が真っ白になり、俺の意識は刈り取られた。

 

―――

 

どれだけ、時間が過ぎただろうか。

 

体に意識が戻ってきた俺は、腕を動かし銃を握る。

 

重い瞼を開くと、青々と茂る草に、心地いいそよ風。

 

どうやら草原にいる用だ。

 

暖かい日光と、涼しいそよ風で、凄まじく心地良い。

 

このまま寝そべっていたい。

 

···そんな事を考えていると、べちょっと、何かが俺のヘルメットにかかった。

 

手で触ると、なにやら生臭いぬるぬるした液体。

 

なんだろう?と思い、起き上がってみると·····

 

俺の上に、口を大きく開けたバカでかいカエルが居た。

 

「?!!うわああああああッ!」

 

とっさに横に飛び、回避行動を取る。ギリギリ食われるのは避けられたらしい。

 

「なんだこのカエル!気持ち悪い!」

 

拳銃を抜き、発砲。マズルフラッシュと小さな発砲音が響き、銃口から22マグナム弾が吐き出された。

 

銃弾はカエルに命中するも、あまり効果は無い。

 

そりゃそうだ。

 

ただでさえ威力の無い拳銃弾、しかも22口径等、小動物をギリギリ殺せる位の威力しか無い。

 

鹿も殺せないのが、あんな大きなカエル相手に通用するハズが無い。

俺はすぐに拳銃をしまい、89式小銃を構え、発砲。

セレクタは「3」、つまりスリー·ショット·バーストモードだ。

 

引き金を引くと、3発の5.56mmライフル弾が放たれる。

 

弾丸は頭部に命中。

 

脳の中枢を弾丸で撃ち抜かれたら生きてはいられない。

 

脳を撃ち抜かれたカエルは、仰向けに倒れた。

 

「ふぅ···危なかった···」

 

なんとか生き残ったようだ。

 

···だが、転生してすぐこれって大丈夫なのだろうか。

 

俺は戦い慣れしていた上に、使い慣れた銃があったから対処できたが、一般人ではこうはいかないだろう。

 

他の転生者は大丈夫なんだろうか····なんて思った時。

 

「いやああああ!!!キモいっ!くんな!来ないでッ!助けてええええ!!」

 

···女の子の悲鳴が聞こえた。

 

俺は慌てて銃を持ち、悲鳴の方へと走りだした。

 

 

 

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