現世で死んでも来世がある   作:瘧草

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2話目だって言うのに一万文字近く書いてしまった…。


第弐話 不思議な妖怪少女

やけに周りが五月蝿い。泣き声がする。足が痛い。腕が痛い。体中が痛い。

目を開けてみると知らない天井があった。

五月蝿い方を首だけ動かして見てみると、母さんと妹、忍、今さっきゲームしあってた奴等、その他大勢がいて皆泣いてた。

流石にこんなことになってたら誰でも慌てるだろ。忍なんて190cm以上ある大男で普段あまり泣かない奴だぞ。

俺は何で皆泣いているのか気になったから問いかけてみることにした。皆が泣いている理由がわからないから、かなり怯えながら尋ねた。

 

「あ、あの皆何で泣いてるんだ?」

 

皆が一斉に此方を向く、目を見開く、驚く。

皆同じような動きをした。

 

「お兄…ちゃん?」

「質問に答えてくれ、何で皆泣いてるんだよ」

「契、お前……生き返れるのか?」

「は?生き返る?」

「お前…トラックに轢かれて病院に着いた時には…もう」

「トラック?轢かれ……あ」

 

俺死んだっぽいな。

それを聞いたとき断片的だが何かを思い出した。

天界に行った。神様にあった。力をもらった。妖怪が俺を襲いに来る。これはあまり言うなと言われた。

神様ってどんなんだっけ?天界ってどんな所だっけ?力ってどんなの?妖怪は何処からくるんだ?

……後からでいいや。とにかくこの現状を打破しないと。

あと、皆が泣いている理由が俺だと知ったからとたんに恥ずかしくなってきた。

 

皆が呆けている中、俺に近づいてくる影があった。母さんだ。母さんが泣いてるのも珍しい。と、思ってたらなんかビンタされた。

 

「何心配させてんのよ、お父さんに続いてあんたまで居なくなったら我が家に男手が無くなっちゃうでしょ」

「そこなの?母さん」

 

母さんはかなりの天然です。

 

「そうだ先生に伝えにいかないと」

「先生?誰それ」

「病院の先生」

 

此処は病院だったようだ。

まだ皆は呆けているが、だんだん状況を飲み込め始めたようだ。逆に俺はまだ戸惑っていた。

 

「契痛いところはないか?」

「全身痛い。喉乾いた」

「トラックにぶつかられたらそりゃ全身痛くなるだろ」

 

佐竹は大爆笑し始めた、泣きながら。此方は笑い事にならないほど痛いのに。そして爆笑するな仮にも此処は病院だというのに。

 

佐竹の笑いが止まり出した頃先生が来た。

「こんなのありえない、心停止から一時間は経ってるのになんで喋れているんだ、普通なら脳死しててもいいぐらいだぞ」

「先生、流石にその言い方は生き返った人にダメージがあります」

「す、すまない。一応体に異常がないか調べさせてくれないか?」

「いいですよ」

 

 

それからいろんな事をされた。いろんな事だ。…コラッそこいやらしい考えをしない。

診断の結果、軽い脱水症状、左腕の骨折、左足首の捻挫、肋骨の骨折、だったそうだ。全治6週間。トラックに轢かれてそれくらいで済んだのも奇跡らしい。

あと事故を起こしてからまだ一時間ぐらいしかたってないらしい。

診断結果を聞いた妹は、

 

「お兄ちゃん化物みたい」

 

と笑顔で言ってきた。その笑顔は反則級だが言ってる言葉も別の意味で反則級のダメージだぞ。

 

手術をさっと終わらせると次の日の朝になっていた。麻酔ってすげぇ。

病室で寝転がりながら窓の外を見てみる。

木の上に人みたいな、でも頭がない変な奴が立ってた。痩せて小柄な姿だ。と言うより子供に近い。それにジャージを着てて手が白い。

俺は平然としていた。驚きすぎて声が出なかった訳じゃない。

気分を変えたくてテレビをつけてみる。いつものように、目覚まし時計のマスコットの番組を見る。

窓の外が気になって仕方がないので見てみると、奴はいなくなっていた。

 

病室で寝転がり続ける生活が4日経った朝、体が痛くないことに気づいた。

俺は先生を呼んで検査してもらった。

 

「ありえない、怪我が完全に治ってる」

「え、先生本当ですか?」

「こんなこと初めてだ。君、体はどういう構造なんだい?」

「前、診察してもらったじゃないですか。その時、人間だったでしょ?」

「まぁそうだったんだけどね」

 

先生は納得のいかなさそうな表情をした。

この事を家に電話してみると妹から、

 

「本当に化物じゃないよね?」

 

と、不安がられた。自分でも自分が人間なのか自信がなくなり始めてるのに。

 

ギプスをはずしてもらって、もう一度大丈夫か見てもらってから退院した。

 

一応、忍とゲームしてた奴等にメールをしておく。

このまま家に一直線で帰るのも、なんだかなぁ、という感じなので古本屋によって本を立ち読みすることにする。歩いていると色々なものを見た。手を繋いで歩く親子、自転車を漕いでいる学生、首の無い人、公園で遊んでいる小学生位の子、皆が皆楽しそうだ。

現実逃避?はい、当然です。

途中で見た奴は絶対にヤバい奴だった。妖怪ってあんなのなのか?あんなのとどうやって戦えと?

早歩きになりつつ古本屋につく。

俺はいつものように、ほのぼのした日常系の漫画を手に取る。古本屋はとても良い。本を立ち読みしていても注意されないから。都会じゃ注意された。

 

五冊読み終わった頃、太陽がちょうど真上辺りにあった。

暑い。店の中にずっといたい。歩きたくない。

そんなことをうだうだ考えていても仕方ないので家に帰ることにした。そういえば、家に古本屋に行くと連絡してなかったと気付き連絡してから歩みを進める。

周囲を見渡してみると朝とは違い車がよく走っていた。田舎だから川向かいに車が走っているのだが。緑道を歩く人もあまりいない。が、しいて言うなら、いる。だが人じゃない。首がない。

(こいつ俺の事を監視してる?)

入院した日からずっと見ている気がする。

危害を加えてこないから無視していたけど、ずっと監視されているとすると落ち着かない。

走ってみるが追いかけて来る素振りはない。

あいつは何がしたいんだろう?

そう考えていたら家に着いた。ただいまと言うと誰も返事を返さなかった。

リビングでお茶を一杯のんで二階の自分の部屋に行く。部屋につくとエアコンがついていた。俺が連絡したときはまだ妹が家にいたから、気をまわしてくれたんだろう。

部屋を見渡しておかしな点に気付く。ベッドが膨らんでいる。おかしいと思ったが普通のことだった。犬の黒(♀)が占拠しているのだろう。

黒はシベリアンハスキーで、眼は左が蒼、右が翠のいわゆるオッドアイ、色は尻尾から背中と横腹と頭の上辺りまでが黒でお腹と足と顔の目の周りまで白の子だ。でも、他のシベリアンハスキーよりも体が前のめりで狼っぽいんだよな。なんでだろ?

それはそうとベッドに寝転びたかったから退いてもらおう。

 

「くろー、寝転びたいから退いてー」

「いやー」

「わかった」

 

どうやら黒は人間になったようだ。女の子だったから女の子の声でいいな。ベッドで寝転びたいけど…仕方がない、リビングのソファーで寝転ぼう。

……じゃなくて!

 

「どうしてお前は此処にいるんだ?」

 

妹の頬っぺたを引っ張りながら問い掛ける。ついでに頬っぺたが柔らかい。 

 

「だって、お兄ちゃんが4日間も家にいなかったんだもん」

「理由になってない。そもそも寂しいなら病院に来いよ」

「邪魔になりそうだからー。それで、お兄ちゃんは怪我本当に治ったの?」

「ほれ」

 

怪我が完璧に治ったことを教えるために動き回った。動いてなかったから足がいたくなったけど。

 

「大丈夫そうだからいいや。それじゃ」

「待て、逃がさないからな。ベッドに入ってた理由を聞くまでは」

「さっきも言った、お兄ちゃんがいなかったからだって」

「病院にこればよかっただろ」

「邪魔になるから行かなかったの」

 

このあとも数回この会話を続け結局俺が負けた。

めんどくさくなっただけだ。

場所は移りリビングに来た。妹も一緒だ。

夏休みだから何かやっているだろうとテレビをつけるがめぼしいものがなかった。

暇だから適当なテレビを眺めたまま妹と話す。

 

「母さんは?」「黒の散歩」

「母さん仕事じゃないの?」「今日休みなんだって」

「そうか、俺のいない間に何かあった?」「何も」

「ちくわ大明神」「がんもどき帝王」

「なんだよそれ」「頭の中にパッと出てきた」

「夏休み予定は?」「今のところは何も」

「だよな」「お兄ちゃんも?」

「察してくれ」「そっか」

「昼御飯は?」「カップラーメン食べてて」

 

こんなどうでもいい会話をしているだけでも楽しいのは会話に飢えているからだろうか。一応病院には一度だけ忍と忍のお母さんが来てくれた。それ以来入院中は誰とも話してない。

妹は宿題をすると言い自分の部屋に行ってしまった。

勉強…勉強なあ。勉強かあ。残念、俺は夏休みに入る前に大体を終わらせる派の人だ。夏休み入ったら人生が終わりそうになったけど。

そうだ、昼御飯昼御飯。俺はカップうどんを作り、食べた。自炊ができる俺は凄いと思う。

昼御飯を食べ終えた俺は自分の部屋に入りベッドに寝転んでゲームをし始めた。

 

どうして時間はこんなに速く進むのだろうか。いつの間にか五時になっていた。

リビングに降りるとキッチンから野菜を刻む音が聞こえてくる。

家は母さんが夜まで働いていることもあり、俺たちで料理やら洗濯やらをこなしている。今日はいるらしいけど、見当たらない。まだ散歩なのだろうか。

んー?俺が帰ってきたときから散歩だったら五時間位たってるぞ。母さんは天然だから迷子にでもなってるんだろうか。

というかそれは天然で済む問題なのだろうか?

まあ、母さんが居なくても料理は大体が夢がしている。何故俺がしないかは言わないでもわかるだろう。その代わり、洗濯は俺がやっている。手先は器用なんでね。洗濯にそんなのが必要かはわからないが。

いつものように、洗濯カゴに入れられている汚れた服などを仕分けしていく。洗濯ネットに入れる物を仕分ける作業は、めんどくさくて嫌いだ。

仕分けできたらまとめて洗濯機にシュゥゥゥーッ!!

超!エキサイティン!!からのボタンをポチッ。

と、いつもこのテンションで入れるまでが俺の洗濯である。

洗濯物も一時間はかかるし晩御飯もできてないか。その間にテレビを見よう。ニュースならやってるだろ。

テレビを見初めてから数分後俺の携帯が鳴った。母さんからだ。

 

「もしもし」

「あ、わたしわたし」

「わたしわたし詐欺の人ですね。きります」

「待ってー」

 

母さんの反応はかなり面白い。つい弄っちゃうんだよな。

 

「どうしたの」

「道に迷った」

「やっぱり。で?なんか目印の物ある?」

「うーん。コンビニ」

「コンビニはいっぱいあるよ。どのコンビニ?」

「イレブンセブン」

「二ヶ所あるよ。ファミレスが近くにある?」

「ある」

 

参ったな。三キロ先のコンビニじゃないか。迎えに行くのめんどくさいな。と言うより町の事ぐらい把握しとけよ。

 

「それとね、顔の無い人が手招きして読んでるんだけど行っていい?」

「え?」

 

顔の無い?それってまさか。俺を監視してる奴か!なんで母さんの方にいった?狙いは俺だろ!?

 

「か、母さんコンビニ入ってて!」

「どうしたのそんな慌てて」

「いいから!」

「はいはい」

「今から行くから、きるよ」

 

不味い!不味い!!

 

「お兄ちゃん。お母さん迷子って?」

「うん、行ってくる」

「どうしたのそんな慌てて」

「母さんと同じ反応をするな!いってきます」

「いってらっしゃい」

 

慌てて外に出たので玄関先で少しつまずいたが、そんなことは今はどうでもいい。

自転車を出して全力で漕ぐ。

漕ぎながら最短でコンビニに着く道を考える。

それでも最低でも15分はかかる。

あれやこれやと考えている最中一番大事なことに気付く。

 

(勢いで飛び出したもののあんなやつとどう戦えば?)

 

焦っていたから武器になりそうな物なんて持ってない。ましてやどういう風に倒すかもわからない。

いつもならすぐに着いていた気がするが、今日は長く感じる。

ここが田舎で良かった。信号があまりないから止まる事がほとんど無いから。

そうこうしているうちにコンビニが見え始めた。

何も起こっていないことを祈りながら漕ぎ続ける。コンビニの前に黒が紐をくくられて座っているのが見えた。

ラストスパートをかけてコンビニに到着する。自転車をその辺に停めて中に入る。

しかし、中に入って気づいた。母さんと奴が話してる。母さんが笑顔で話してる。でも、店員が母さんを不審そうに睨んでる。

すると、母さんが手を振って俺を呼び始めた。店の中だからやめて欲しい。それから店員視線が痛い。

何故か店の人が俺によってくる。あまりよらないで欲しい。

そんなことを考えていると店員が話しかけてきた。できるだけ話さないで欲しい。俺は年上と話すのが苦手なのだ。しかし、話さなければならないときもある。それが今だ。

 

「すみません、貴方あの人のご家族ですか?一人で話していて…その…言いにくいのですが不気味なので店の外に行かせてくれませんか?」

「あれが一人ですか?」

「……あなたもですか。店の印象が悪くなるので出ていってください」

 

あんなのがいるのに何故この人は「一人」というんだ?

訳がわからないが店員の睨みがきつくなってきたので母さんを呼んで店を出る。ついでに奴も。

店を出て黒の紐を外す母さんと奴を睨み付ける俺。すると、奴から話しかけてきた。

 

「私、首上無(くびかみむう)といいます」

「女の子!?」

 

母さんと話してたから話すことには驚かないが、てっきり男の子かと思ってたから拍子抜けだ。妖怪っていうとなんか男を連想する。それにしても「むう」とは珍しい名前だ。

 

「だ、大丈夫ですか?」

「大丈夫、大丈夫……?…あ。お前俺の事監視してただろ?」

「話がかなり飛んでませんか?」

 

俺も飛ばしすぎた気はしたけど。そのまま問いに答えてほしかった。

 

「そんなに警戒しなくていいですよ?悪いことしませんし」

「そんなこと言われてもな、もう一度聞く。俺を監視してたよな?」

「してましたよ。…けど」

 

あっさり認めやがった。いつから?と言うときっとトラックに跳ねられてからなのだろうけどさ…ん?けど?

 

「けどどうした」

「けど、危害を加えるつもりはありません」

「はぁ、悪い奴等はほとんどそういうよ」

「ほんとですって」

「あのー盛り上がってるとこ申し訳ないけど家に帰りたいなーって」

 

すっかり母さんがいることを忘れてた。それから母さんの言うことにも賛成だ。夢がご飯を作って待ってるんだ。それにこいつからの事情聴取も歩きながらでいいだろう。

 

三人?と一匹で家に向かう。

 

「って何でお前も俺達に溶け込んでるんだよ」

「あ、言うの忘れてた。私貴方の家に昔から住んでる妖怪です」

「あ?(裏声)」

「へーそうなんだー」

つい裏声が出たってちっがーう!突っ込みたいことがかなりあるぞ。

 

「お前みたいなの生まれてこのかた寸分も一時たりとも目に映ったことがないぞ!それから母さん感想が軽すぎる!」

「酷いです…それと見れなくて当然です。普通の人には見えませんから」

「そうかー、で終わるとでも!お前簡単言ってるけどそんなことあるわ…けない…よな?」

「妖怪本人が言ってるんです本当ですよ」

「……マジで?」

「多分周りの人からはあなたが一人で話してるように見えているんじゃないでしょうか?」

 

それかなり可哀想な人じゃねぇかぁぁぁあ!!

 

そんな適当な話をしながら歩くこと数十分。家に着いた。

短時間だったのにかなり疲れた。俺は普段突っ込みよりもボケの方が向いてるんだ。

それからわかった事が何個があった。

簡単にまとめてみると、妖怪達から見たら神様が悪い奴なんだとか、妖怪の世界にも社会があるとか、むうはその中でも偉い方なんだとか。だから俺の監視をしていたらしい。

中でも気になったのが、俺達の家族は陰陽師一家と言う話だ。

ありえない、これに対しては母さんも驚いていた。知らなかったらしい。

母さんの先祖にも陰陽師は居たそうだけど特に父さんの方が強いらしく、ついでに男の子が産まれたらたいそう喜ばれていたそうだ。

それから、俺達家族は「そういうの」を見る素質はあったけど見え始めるきっかけがなかったらしい。そのきっかけになってしまったのが俺が事故ったせいらしいかった。

ついでにむうは父さんの方に憑いていた妖怪らしい。妖怪って憑くものなのか?

むうに何故そんなのになったのかと聞いてみると話をそらされた。まあいいけど。

それから疑問点がかなりある、神様の話とかなり食い違っているからだ。こいつらにとっては神様が悪者なのか。どっちを信じたものやら。

 

「むうはどうする?家に入る?」

「そうしたいのは山々なんですが…その、邪魔じゃないでしょうか?」

「邪魔なんてね~そんなことないわよ~」

「母さん軽い、けど話してる間に本当に安全そうだと思い始めてたからいいよ?言い出しっぺがなんでこんなに上から目線なんだろ」

「ふふっ、それじゃお言葉に甘えて、お邪魔しまーす」

「お邪魔しますじゃないだろ、これからここはお前の家なんだから、ただいまで「キャーー!?」…夢?……あっ」

 

今度は母さんじゃなくて夢を忘れてた。そりゃそうだ、お邪魔しますって聞こえて誰だろうと気にならない人はいない。夢はそれに見に行ってしまう癖がある、俺もだけど。それで玄関に行くと首のない人が立ってたらそりゃ驚く。

 

「夢、家族に失礼じゃない」

 

玄関に入ると夢が倒れていた。当然の反応だ。母さんと俺がおかしいだけだ。

夢を玄関からリビングのソファに寝かせて、黒も足を拭いてリビングについてきた。作り終えてくれているご飯を食べる。が、ここで問題が起きる。むうが食べれない。頭がないから口もない。

 

「それなら大丈夫です。私、食べなくても生きれるんで」

「へー」

「今思ったけど、むうは何処から声出してるんだ?」

「何処なんでしょうか?」

「突っ込んだらダメなところだった?」

 

むうが首を縦に振る。そうか、突っ込んだらダメだったか。

それから食事をし始めた。食事中は適当な世間話をしながら食べる。

最初、ご飯を食べたそうな素振りを見せなったむうも俺達がご飯食べていると食べたくなってきたのだろうかご飯を見ながらそわそわしだした。

 

「ご飯、食べたいのか?」

「少し…」

 

参った。あげたいのは山々だが何せ口が無いからどうしたものか。眺めているむうも可哀想だけど方法がないからなあ。

それを察したのかむうも黙りこんでしまった。 

 

なんだろうこのもやもやは。

 

「今は食べる方法が無いけどきっと見つけるからそれまで我慢してくれるか?」

 

と言いつつ小指を差し出す。

 

「何ですか?何で小指を向けてくるんですか?」

「ん?あ、これ?これはな、なんといいますか。んー?」

「約束事をするときのおまじないみたいなものよ~。」

「あ、そうそれそれ。母さんありがと。」

「そうなんですか、それから契さんの小指をどうすれば?」

「まず小指を出して」

 

むうは言われた通りに小指を出してくる。

 

「そう、それを俺の小指と絡めて」

「はい…」

 

何故かむうがうつむいた。

 

「どうした?嫌だったりしたか?」

「いえ」

「そうか。それから歌うけどいい?」

「いいですよ」

「こほん、指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます、はい。もういいよ」

「何ですかその物騒な内容は」

「あれ~最後の「指切った」まで言わないの~」

「内容についてはなんでこんなのかは知らないな、あと最後まで言っちゃうとなんかダメって言うのをきいたことあったから」

「ん、んー?バサッ」

 

このタイミングで夢も起きたようだ。

が、また深い眠りに着いた。何故か。またむうを見てしまって気を失ったからだ。

仕方ない部屋まで連れていくか。

 

「母さん、夢をベッドで寝かしてくる」

「襲っちゃダメよ~」

「妹だぞ」

 

母さんもいい年なんだからそんな冗談言わないで欲しい。

俺は夢をおんぶして二階に登り始めた。

力の入ってない人は重いって言うけど本当だな。

と、そんな事を考え始めたのには理由がある。背中にあたっているモノに意識しないようにするためだ。お姫様抱っこでもしてればよかった。

それにしてもいつの間にこんなに大きくなったんだろう。前までは俺の真似ばっかりして俺についてきたりしてたのに。今もそんなことするときはあるけど。

途中で階段に躓くハプニングもあったけどその他は大丈夫だった。

夢を寝かしつけて俺は退散する。

リビングに戻るとむうと母さんが何かを話合っていた。俺には関係無さそうな気がしたからソファに腰掛けてテレビを見る。7時過ぎだからバラエティー番組でもしてるだろ。

テレビを見てたら、二人の話し声が大きくなり始めた。聞くつもりはないが聞こえてしまうほどの大きさだ。

 

「でね~、け…たら………ってね~今もそう…けど~」

「……さんはかわ……ったんですね。もう少し……会う…かったのに」

「あれ~むうは……に憑いてたんじゃないの?」

「いえ、あの人が亡くなったので一応契さんに憑いてたんですが意志がなくてボーとしてただけですよ」

「だから契の成長過程を知らないのね~」

「って、なんていう話をしてるんだ!」

 

母さんには脳天チョップ、むうにはどうすればいいかわからん!

 

「あんたらは俺の話をしてたのか」

「気づいてたと思ってたわ~」

「私も気づいているものかと思って、つい」

「俺ももう高校生だ、恥ずかしいもんは恥ずかしい。やめてくれ」

「わかりました」「わかったわ~」

 

ったくもう、本当にプライバシーの欠片も無いな。

俺は機嫌が悪くなったので自分の部屋に戻ることにした。

俺はこんな性格だからまともに友達が出来ない。機嫌が悪くなることが多いから。でも、一時間経てば直ってることがほとんどだが。

部屋に着くまでに階段で夢とすれ違った。いつもなら素通りするが今日は違う。

すれ違った際に方向転換して後ろをついていく。

階段を完璧に降りたときに夢が振り向いた。それもジト目で。

お兄ちゃん興奮してしまいますぅ、とはならない。こいつのジト目は見たものを死んでしまおうかと迷わせる狂気の瞳。そのほとんどの標的が俺だ。

しかし今日は用事があるので目を逸らしながら話す。

 

「ゆ、夢よその目をやめていただけないか」

「ついてこないで」

「お前の寝起きが機嫌悪いのは知ってるけどその標的を俺にするのは違うだろ」

「それで、話があるんでしょ」

「(何でわかるんだよ)お前って首がない物とかで倒れない?」

「倒れないよ」

 

記憶が無いのかそれとも記憶を消したのか、お前は二度倒れている。

 

「そうか、リビングに行くなら目を瞑って行け」

「なんで」

「いいから、出来ないなら抑えといてやろうか」

「わかったから」

 

目を隠そうとしたら手を掴まれて捻られた。めっちゃ痛い。子供の頃はあんなに可愛かったのに。

夢がリビングに行くからついていく。数度チラチラ見てきたが諦めたようだ。夢がリビングのドアを開けたら目の前にむうがいた。

が、夢は倒れなかった。夢の正面に行くと目を瞑っていた。言うことは聞いてくれるから可愛い。

 

「夢、今から会って欲しい奴がいるんだけど俺が開けていいって言うまで目を開けるなよ」

「わかった」

「むう、こっちが俺の妹の夢だ。よろしくしてやってくれ」

「どうも、夢さん。私、むうと申します」

「女の人?」

「そうですよ、でもなんで目を瞑っているの?」

「お兄ちゃんがいうから」

「えっと、もう開けてもいいけど驚くなよ、むうは首が無いから」

「首が無い?」

「本当のことだから気をつけろ」

「わかった、開けるよー」

 

夢は目を開けた。瞬きをかなりの速度で繰り返してる。

しかし、倒れることはなかった。

 

「もう一度紹介するねこちらがむう、首のない幽霊に近い妖怪さんです」

 

夢が俺の方を油を注してないロボットみたいな動きで振り向いてきた。

 

「どういうことですってかね」

 

凄い口調になってるぞ夢よ。

それから、むうに補足をしてもらいながら夢にむうの事を教えてあげた。

最初は意味のわからなそうな顔をしてたけど実物が目の前にいると信憑性があるのだろう。

最後の方には全てを飲み込んでいた。

 

「この家系も厄介なんだね」

「全くだ」

 

これから始まる新しい生活にも慣れていかないといけなくなってくるんだ、こんなことだけで驚いていられないだろう。

そんな時、黒が俺に向かって吠えてきた。

しゃがみこんでみると口の周りを舐められた。

が、いつものことだから気にしてない。

数秒舐められてやめて欲しくなったから立ち上がって皆の方を向くと母さんと夢が笑っているが、むうは黒の方を見ているように感じた。




第弐話を読んでいただき有り難うございました。

この話の病院のシーンですが、トラック(自転車以外の乗り物)に跳ねられたということが人生で一度もないので結構自分で疑問に思いながら書いてます。
心不全の後って脳死ってするんですかね?
っというよりも、トラックに跳ねられたら心不全って起きるんでしょうか?
この辺り、不快に思われた方が居られましたら申し訳ございません。

次回も読んでいただければ幸いであります。
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