「まだ気にしてるの?今さっきのこと」
「気にするもなにも…死にたい、消え去りたい」
「答えになってないよ」
「それにしてもむうが周りの人に見えていないってのは頭の中にしっかり叩き込まないと…」
「そろそろ20分経つよ。機嫌直しなよ」
今が「俺」の奇行から数十分経とうが経たまいがどうでもいい。
ただ今さっきの奇行を人に見られていたというのが問題なんだ。ダメだ、悪い方向にしか頭が回らない。どうせこれからこの町に「土下座青年現る」みたいな見出しのチラシが配られ始めるよ。嫌だ。もう死ぬしかないんだ。
「顔がグロッキーになってるよ!逆に周りの人に注目されてるよ!ここ、スーパーだから!」
「おう、そうだな、俺は豆腐メンタルだな。ふふ、もっと言ってくださって良いですよむうさん」
「だから「さん」付けやめてって言ってるでしょ!」
「ごめんごめん、それは俺のメンタルが弱いのが悪いんだよな?俺を元気にしようとして怒ってるんだよな?」
「違う!」
もう無理だよ。生きていく力が出ないよ。目をずっと開けっぱなしでも何故か目が乾かないよ。
「ほら、買い物するよ!」
「すまないメモ帳渡すから取ってきて」
「無理!」
「はは、即答しないでよ」
「契ってそんな性格だったの?結構明るい方だと思ってたのに」
「いつもの性格で隠してるけど内面はいつもこうだよ。気が強いように見せるために明るく見せたり、頑張って身長も伸ばそうとして牛乳飲んだりしてるし。まあ、そのおかげで内面はあまり表には出てないはずだよ。忍とかは気づいてるかも知れないけど」
「そうだったの。でも、私は明るい契の方が好きだなーなんて」
「そう?そういってもらえると嬉しいな」
「それに契は優しいからいいよね」
「そうかなぁ」
「それからそれから、こんな風に私と話してくれてるところとか」
「……あ、むう周りの人に見えてないんなら今どうなってんだ」
「……あはは。契?準備は?」
「完璧だよ…」
「位置について」
「よーい」
「「ドン」」
スーパーなんてもっと人居るんだからぁぁぁぁぁぁ!!!
それにより今からスーパー早買い大作戦が始まった。
作戦は
まず、お菓子コーナーに猛ダッシュで駆け込む。
次に、むうと一緒にどんなのがいいか手早く決める。
最後に、レジまで猛ダッシュ。
というものだ。
むうは俺の後ろについて俺の後を追ってきた。お菓子コーナーがわからないのだろう。俺はここの店を長年利用している。お菓子コーナーの場所、お菓子の位置なんて知り尽くしている。
大丈夫。もう恥ずかしいどころじゃない。恥ずかしいを通り越して、なんかもう吹っ切れてしまっている。
お菓子コーナーに行くまでに色々な人とぶつかりそうになる。が、全て回避する。こんなところで当たってしまったらもっと視線を集めることになるからな。
猛ダッシュでお菓子コーナーに駆け込むと、見慣れた顔があった。
「お?お前どうしたそんなに息を切らして」
「忍…ハッハッ」
なんで忍がいるんだよ。あれか?明日のためにお菓子を買ってくれてるのか?なんて優しいやつなんだ。
「どうした女の人でも見て発情したか」
「生憎そんな暇ないんでね!」
「どうした機嫌悪いのか?」
「死にたい気分だよ」
「話が噛み合ってないんだが。ほら、落ち着け」
そういって忍は右手を突きだし、親指に中指を掛け、何の躊躇もなく額にデコピンを繰り出してきた。
「ッ痛ぇ!何しやがる!」
「落ち着いたろ?」
誰がデコピンで落ち着くか!
お前とのいつものやり取り過ぎて…落ち着いたわ。くそ、なんなんだよこいつ。
「落ち着くわけがないって言いたいけど落ち着いちゃったよ」
「だろ?もう一発いる?」
「いらないし、やらせねえよ」
「そうだ、お前なんでここにいるんだ?」
「明日皆に出すためのお菓子買いに来たんだよ」
「へー」
「そういうお前は?」
「家族で食べる分のやつ」
そこは明日俺の家に来るときのやつ買えよッ!
「明日の分はその中に入ってるのか?」
「契が買うんだろ、買わなくていいじゃん」
あつかましいにも程がある。昔はもっと律儀でしっかりしてたのに。いつからこうなったんだよ。
「俺はもう帰るぞ。じゃ」
「そうか。じゃ」
俺達は軽く挨拶を交わして、忍がお菓子コーナーから出ていく。俺は忍がレジに消えるまで見ていた。
本当にいつからあんな性格になったんだ。
昔は成績優秀、運動抜群、いろんなお母さん達があの子みたいな子がうちの子だったら良かったのにと囁かれるほどだったのに。
今じゃ運動が出来ても成績がダメになった。
まあ、俺は両方ダメダメだけどな。しかし、俺にも得意分野が無いわけではない。
「契、またボーとしてるよ」
「ん?あ、むうか。ボーとしてるんじゃなくて昔を懐かしんでたんだよ」
「へー、それであの人は誰なの?」
「あいつは、昔からの友達ってところかな」
「そうなんだ。話を聞く限り明日来る人だね」
「そうだ、明日はあいつとあと二人来るからな」
そうこう話してる内に平地揚げと両揚げポテト、それから飴の袋を手に取る。この3つだけでいいだろう。俺は走るでもなくゆっくりとレジに向かう。あいつのデコピンは相手を冷静にする効果でも付いてんのか。
と、考えているとむうが話しかけてくる。
「そういえば、むうさんからむうに戻ってる」
「落ち着いたからな、それにしても本当にそんなに年取ってんの?」
「ほんとだよ。妖怪は年取ってもあんまり姿は変わらないから分かりにくいんだ」
「それじゃ大体何年くらい生きれるんだ?」
「うーん、最長寿の島様が4000歳位で、人型なら100年、亜人種が400から600年、特殊な種はほとんどが1000年以上かな?」
「ほへぇー」
俺は自分でもわかるぐらいボケた声を出した。
むうよりも長生きしてて、紀元位から生まれてるやつが居るなんて。妖怪はそんな頃から生まれてるのか。
「あ、でも誰からも存在を忘れ去られた時と、ある種の術や呪文とかで消滅しちゃうけどね」
「一つ目は余り無さそうだけど二つ目はどうなんだ?あと物理で殺されたらどうなる?」
「術とか呪文は神様達がデフォルトの攻撃として使ってくるね。ちなみに物理で殺されたとしても数日後には復活してるからいい。」
神様はなんなんだ。魔術師かなんかなのか。それと、妖怪も化け物か?復活するってなんだよ。どうやって生き返るんだよ。
まだまだ疑問は尽きないがそれもまた追々でいいだろう。
それより今考えるのは1つ…。
「どうやって勉強の手から逃れるか…」
「ん?何か言った?」
「べ、別になんも言ってない言ってない」
口に出ていたか。しかし、今はそれを考える。
家に帰ったところでむうに勉強の続きをさせられる。俺は極度のめんどくさがりだ。一時間もペンを握ってたら寝始める。それをどうやって回避したものか…。
買い物をし終えたらトイレに行ってくると言う嘘をつくか。
「……お客様?864円になります」
「え?あぁ」
いつの間にかレジに来ていたようだ。考えすぎて周りが見えなくなる癖やめないといけないな。
俺は急いで864円を出す。こういうときってお金が何故か出しにくい。
店員さんにお金を渡してからその場を立ち去る。
「ありがとうございました」
「あ…とうざいました」
店員さんから話しかけられるとテンパる。不思議。
「契、今の挨拶なに?恥ずかしいの?」
「人と話すのが苦手なだけだ、知り合いとかならまだしも」
「へー」
「あー、トイレ行きたくなってきたわ、先に帰っといてくれないか?荷物は俺が持って帰るから」
「わかった、それじゃ鍵ちょうだい」
「ほれ」
計画はうまくいった。計画って言っても嘘つくだけだったが。しかし、一応本当にトイレはしておく。
よし、むうももういっただろう。俺はトイレから出て時間潰しのために古本屋に向かう。途中まで家に帰る道と同じ道を通るから見つからないようにゆっくりといく。
が、あれ…ゆっくり歩いているつもりだったがむうと距離がかなり縮んでしまっている。
むうと俺とでは歩幅が違うからか?俺はいつの間にかむうの50メートル程後ろまで迫っていた。
(首なし幼女を影から眺める男、スパイダーマッ!!)
馬鹿な考えはやめる。
むうは十字路の真ん中で足を止めていた。ここは町だがこの道には家がない。後ろを向かれると俺がいることに気づかれる。
俺はむうが早く家へと向かってくれることを祈りながら眺め続ける。
俺の家は左…古本屋は右…早く左へ行ってくれ。俺の用があるのは右なんだ。
しかし、俺の頭の中に一つの疑問が浮かぶ。
(これ、詰んでないか?)
もし、むうがすぐに左へ行ったとしよう。前だけを見て歩いてくれたらいいが行きしなの事を考えるとそれは絶対にあり得ない。必ず右か左の脇にいって花とか虫とかを触り始めると思う。そのときむうが左の脇に来てしまった場合俺をバッチリと視認出来るだろう。
今とるべき行動は戻って後ろの家の塀に隠れるか、むうにバレるのを承知で横を通り抜け右へ走って行くかだ。
戻るとしても後ろの家までは百メートルあるかないか位だ。その間にもむうが後ろを振り向いたり左の道へ行き左の脇に寄ってくるかもしれない。
横を通り抜けて右へ走っていくのは…出来ればしたくない。子供(年齢的には…)に大人げないところを見せたくない。
どうしたもんか、こんなことを考えている間に後ろに逃げていればよかった。時間がどんどん過ぎていく。
よし、後ろへ撤退だ。と、踵を返そうとした時、むうも同時に動き出す。
撤退するタイミングが悪すぎた。もう少し早く動いていればよかった。俺は自分の決断の遅さを呪った。
さらば、古本屋よ俺は勉強をさせられてくるよ。
俺は腹をくくって前へと歩きだす。むうも同時に前へと歩きだす。
へ?
なんでむうも前に行ってるんだ?俺達の家は左なのに。
しかし、むうは歩みを止めない。このまま行ったとしても山があるだけだ。
俺はあることに気がついた瞬間笑いを堪えるのに必死になっていた。
むうは迷子になっているようだ。
400歳が迷子になっている。何処に行こうというのだろう。少し不思議に思い後ろからゆっくりと本当にゆっくりとついていく。
真っ直ぐ行ったところで裏山しかないのに。普通に考えて真っ直ぐ行こうとは誰も考えない。
俺は爪先で歩きながら足音を殺す。この距離からなら足音なんてどれだけ頑張っても聞こえないだろうが。
陽はまだ真上を少し通過したくらいだ。少しむうの動向に着いていくのもいいかもしれない。
そんなこんなを考えながらむうの方に意識を戻す。
それにしても本当に何処に行くのだろうか。
歩いて数分。ここはもう、林というより森に近いレベルで鬱蒼としている。鳥の鳴き声は聞こえるのにその気配がしない。鳥の声以外は風のざわめきと木々の揺れる音くらいだ。
この周辺だけ生き物がいないような感じ。それから少し冷えている。半袖で寒いと感じるくらいだ。
夏の昼間でも森ってこんなにも暗くて涼しいんだな。暇なときにまた来よう。
ここまで来ると流石に俺でも止める。俺がもし後ろについていなかったら迷子というより遭難してる。
俺はいつもの歩幅に戻してむうの後ろに行き話しかける。
「むう、どこまで行くんだ?この辺は俺ならわかるけどむうはわからないだろ?ほら、帰るぞ」
「泣いてるの…」
「ん?泣いてる?」
「誰かの泣き声が聞こえるの…それも懐かしい…契には聞こえないの?」
「う~ん、すまん全く聞こえない」
「それなら着いてきて」
俺はむうに服の裾を掴まれて引っ張られる。
しかし、それも尋常じゃないほどに強い力だ。意味もなく振り払おうとしても全く歯が立たず、引きずられるように連れていかれる。逆の方向に進もうとするも結果は無駄で体制を崩した位だった。
どこからこんなにも強い力が出るのだろうか。
「む、むうそんなに強く引っ張っても逃げないって」
「契にも関係があるから着いてきて!!」
俺に関係がある?
それなら俺も着いていかないといけない。が、何処に行くのかも全く知らされないまま連れていかれるのも嫌なんだけどなぁ。
それから一分程歩き、少し開けたところに出た。その間もむうは全く服の裾を離さなかった。
その開けた場所は山にしては不自然過ぎる位平らな土地だった。サッカーコートの4分の1位の広さのの地面に植物がびっしりと生えている。
元々この場所には何があったのだろうか?
考えるまでもなく家とかだろうな。形が全く残ってないけど。
するとむうが服の裾を離し、山の斜面に走っていった。一応俺もそれを追いかける。
そこで気づく。生き物の気配がしない。むうと俺の気配だけが周りから浮いたように感じる。
そしてさらに気づく。風のざわめきが普段なら聞こえるはずが全くといっていいほど聞こえない。鳥の囀りですら。聞こえるのは自分の呼吸する音と心臓の鼓動音……だけだったが、急にむうの泣き叫ぶ声が聞こえてきた。それも泣くというよりもほとんど絶叫に近かった。
この異様な空間にむうの泣き声だけが木霊する。
そしてむうの方に行っては行けないと心のどこかで俺が叫ぶ。が、むうがどうなっているのか不安よりも心配が上回りむうの方に駆け出す。
山の斜面に近付けば近付くほどむうの声はどんどん大きくなる。
と、木から五メートル程の距離のところで木の向こう側が見え始めた。
洞穴がある。
その洞穴からむうの声は聞こえるようだ。
俺はおもむろに洞穴に近づき中を覗く。中は光を遮るように…今にでも吸い込まれてしまいそうな程に暗い。暗黒というのはこういうことをいうのだろう。しかし、むうの気配だけは何故かわかった。
入り口から数メートル先にむうは何かを抱き抱えるように座り込んでいるようだった。
暗くてよく見えない。俺はポケットから携帯を出しむうがいるであろう場所を照らす。
むうが抱き抱えていたものは…
頭蓋骨だった
第肆話読んでいただき有り難うございました。
今回は簡単に佐竹の紹介をします。
こいつは、契と腐れ縁の幼馴染みです。
契も可哀想に…男の幼馴染みとは…。女子の幼馴染みも追加してやる。
とまあ、それは置いといて。こいつの成績が悪くなったのもまたおいおい。
これは紹介なのか?
次回、微グロ注意です。(描写下手)
次回も読んでいただければ幸いであります。