現世で死んでも来世がある   作:瘧草

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もうサブタイトルに捻りが無くなり始めました。(元々無かったんですけどね)
そして、花粉症がヤバい今日この頃…


第七話 夜の森

俺はゆっくりと目を開けた。

窓から射し込む日差しの強さに少し目をしかめながらも周りの状況を観察する。

まずは左手の小指。やはり無いがそこまで絶望感がなかった。それよりも不快感がとてつもない。左手の肘辺りまで真っ赤に染まってしまっていた。誰が見ても一目で分かる…血だ。しかしここまで出てしまっているのに何故俺は生きているのだろうか。神様の仕業だろうがどうしてこうなっているのかどれだけ思い出そうとしても全く思い出せない。まあ大事なところ以外は思い出せないって言ってたからそこまで大事な事でもないんだろう。

しかしまあ、よくもここまで赤に染めれたものだ。床は当然、壁にも天井にですら血が付着しちゃってるよ。これは誰が掃除するんだろうな。

とそんなことをボーっと考えていると俺の寝ているベッドから見て右の扉から2、3人の足音が聞こえてきた。

その足音は俺の部屋の前で止まり、ゆっくりとドアの取っ手に手を掛け恐る恐るといった風にドアを開けた。

 

「限無さん、お兄さんが急に出血したというのは本当で…」

 

開けられたときにそのような会話が聞こえたがすぐさまドアが閉められてしまった。

成る程。夢が病院の先生を呼びにいったのか。ナイス夢。

しかしどう弁解したものか…声からして前に担当してくれた先生なのは確かなんだが…今回に関しては出血多量で死んでるのにそれでもまだ血が噴き出したことがおかしいんだよな…。

 

「限無さん、これはおかしな状態です。僕はこんなの初めて見ましたよ。出血多量で数十分前に死んだはずの人が血を噴き出すなんてこと。血がすっからかんまでは行かなくとも、普通出ないはずなんです。その血の量もあり得ない程の量。天井に付くって相当勢いが強かったんでしょう・・・」

 

等々ドアの向こうからは怒号の先生の力説。

俺はゆっくりと体を起こし立ち上がってみる。多少ふらつくがどうってこと無い。指の傷口からももう血は垂れていなかった。

そして俺はドアの取っ手に手を掛け二人を驚かせるように勢いよく開ける。

開けるとそこにはこちらを向き硬直したまま動かない二人の姿があった。

 

「どうかしましたか?二人とも顔色が優れないようで…血行に良い食べ物をしっかり食べた方がいいですよ。それではッ!!」

 

俺はそう言葉を残し全力疾走を決め込んだ。とにかくこの病院から逃げなければならない。あんな事件に近いことを起こしておいて弁解なんて考えがおかしいんだ。

俺は感覚的にずっと走り続けた。

どこに何があるのかとか全く分からない。それでも走り続けた。

患者さんが横を通りすぎる度に小さな悲鳴をあげられる。何故かは知らないけど病院の入り口を探すためとにかく走り続けた。

走ること二分程で俺は病院を出ていた。

病院を抜け出せたことに安堵し俺はなんで他の人に驚かれていたかを考え始めたが、答えはあっさりと出た。

身体中が血まみれだった。走ってきた方を見てみると血がポタポタと垂れている。しかしここで服を脱いだとしてもこの下には何も着ていない。夏に二枚着ている奴なんて聞いたことも見たこともない。考えに考え抜いた結果このまま家に直行することに決めた。

そうと決まれば行動あるのみ。家の方角を向きジョギング程度で走り出す。歩いても良いが人にこの服を見られるのはヤバい。それならば走って服を揺らしてばれにくくすれば良い。幸いにも今日着ている服は黒色。これのおかげでよりばれない。

今度ばかりは田舎良かったと思う。何故なら人はほとんど歩いてないし、あまり信号がないからだ。信号がないおかげで止まってるうちにばれる心配もなければノンストップで家に帰れる。体力が持つはずがないけども。

 

 

十数分後家に着いた。

家には母さんと黒がいた。母さんはせっせと何処かに行く用意をしていた。考えるまでもなく病院だろう。

 

「ただいまー」

「ワンッ!!」

「おう黒ただいま。黒はいつも利口だな」

「……」

 

この口を舐めるのさえなければだけど。

 

「あれ?契?なんで?病院にいるんじゃ?」

「抜け出してきた。少し騒動があってね」

「そうなのー?よかったー。出掛けなくて良くなった~」

 

母さんは能天気にそんなことを言ってるけど俺は一応死んだんだよな。現実味が全くない。

 

「あら?契その服どうしたの?なんでそんなにもドス黒くなってるの?……それ血?」

「うん、ちょっと怪我してね。驚くなって方が無理かもしれないけど隠してても良いこと無いから言っとく。指が千切れたんだ」

「え…?」

 

母さんのこんな顔初めてみた。普段母さんはのーんびりしながら生活している。だからこんな真剣な顔になることはなかった。

 

「何があったの?ちょっとこっち来なさい、服着替えて」

 

いつもの母さんからは考えられないような威圧がある。

俺は黙って従うことしかできない。

俺は服を着替え母さんが居るであろうリビングのドアのノブに手を掛ける。明らかにこの扉の向こうからは異様な雰囲気が漂っている。

駄目だとてつもなく怖い。こんな空気になったこと一度もなかった。

しかし絶対に入らないといけないのなら入るしかない。

俺は腹をくくってドアを押す。

そこには母さんが椅子に座り机に両肘をつき手を口の前で結んで…どっかの司令見たいなポーズで俺が来るのを待っていた。

 

「そこに座りなさい」

 

俺は母さんが示した椅子に深々と腰かける。

 

「さて、単刀直入に聞くわね。その小指どうしたの?」

「いや、どう言えば良いのかな…えっとね」

「しっかり、はっきり答えなさい」

 

そこには俺の知らない母さんがいた。

いつもみたいに目を細くして俺を見ている。しかしその中の相貌はガッチリと俺の目をロックしている。心までもが支配されているようなそんな感覚に陥る。

流石にここまでの気迫を前に俺は会話をはぐらかすようなことはしなかった。

 

 

「そう、むうがね」

 

俺は母さんに全てを伝えた。むうが何かに怒ってこうなったことや俺が半永久的に死ねないこととか何もかもを。

 

「はぁ…まあいいわ。これからもそんな危険なことがあるようだけど契なら大丈夫ね」

「なんでそんなこと分かるの?」

「ん?それはなんたってお父さんとお母さんの間の息子だからよ」

 

なんだその根拠は。

 

「い~…よし。これにて会議しゅ~りょ~」

 

といった瞬間母さんから感じていた威圧感は消え失せ、その代わりにいつものほんわかした母さんの雰囲気が帰ってきた。

というよりもこれは会議と言える代物だったのだろうか?

 

「ただいまー」

 

と、同時に夢も帰ってきたらしい。

一応夢にも今日の出来事話しておくか。

 

 

夢にも話終え俺は自室に籠っていた。

流石に今日だけで人生が急変しすぎだ。まぁ夏休み初日から死んで神様から命令を下されたりと夏休み入った時から人生が急変した感じではあるけど。

普通小指が無くなったことが驚くことなのだろうがそれ以上のトンデモ展開が繰り広げられているからあんまり気にならないのがとても困る。

自分の感覚が麻痺しているのが分かる。

まあいいや。こんなのは寝てから気持ちを整理すれば良いんだ。

俺はまだ昼御飯すら食べていないのに昼寝をすることにした。

 

 

 

 

俺の目が覚めたのは昼寝開始から約七時間経ってからだった。時間にして七時過ぎ。

我ながら寝過ぎたと思う。もう日はどんどん傾いているがまだ完全に暗くなっていない程度の時間。

俺は寝ぼけ眼のまま一階に降りリビングへ向かった。

リビングに入ると同時ぐらいに黒に飛び付かれた。

 

「わんっわん!!」

「むうがまだ帰ってきてないって?」

「クゥーン…」

「マジか…」

 

リビングでは母さんと夢が仲良さそうにソファでテレビをつけたまま眠っていた。

仕方ない探しに行ってやるか。

 

「ふんー…黒も一緒に行くか?」

「わんッ!」

「よし行くか」

 

縄はめんどくさいから付けないで行こう。

俺は携帯を持って、置き手紙をして家を出た。鍵は掛けなくても誰も入ってこないからほっとく。一応鍵は持っとくけど。

 

「黒どこにいるか…分かるはず無いよな」

「わんわんッ!!」

「舐めるなって?それはいつも俺が言ってるっての」

 

黒は鼻を空に突きだして鼻をヒクヒクさせ始めた。

数秒の後黒は走り始めた。それも俺がジョギング追い付ける程度で。全く良くできた家族だと思う。

俺は黒についていく。

しかし夏といっても今は日暮れ。早くしなければ日が落ちてしまう。

ついでにいうとむうの居場所は大体検討はついてる。

 

「黒?むうがいる場所ってもしかして裏山だったりする?」

「……」

 

俺がそういうと黒は面白くなさそうにこちらを向き小さくワンと吠えた。

 

「悪い悪いむうと最後にあったのがそこだったからさ。よし場所がわかったから急ぐぞ」

「わんッ」

 

俺と黒は走ったり歩いたりを繰り返しながらも裏山への道を着実に進んでいった。

そうこうしているうちに裏山の入り口まで来ていた。

 

「本当にむうってここにいる?」

「わんッ」

「そうかそうか、ありがとう」

 

よし。夜の森、ついでに夏。絶好のローケーションの中俺たちは森の中に進んでいく。森は嫌いなんだよな。虫とか一杯いるから。ムカデとか昔噛まれてから見るだけで叫びそうになる。そんな魔物の巣窟に夜踏みいるってただの馬鹿でしかない。

今日の昼は引きずられてたからそんなこと考えもしてなかったけど。

俺は黒の後ろに着いていく。たまに黒の後ろを振り向いて俺が着いてきているかを確認している。黒も怖かったりするのだろうか。

それにしても暗くなってきたな。もう日が地平線に隠れ始めてしまっている。懐中電灯でも持ってこりゃよかった。この状態で灯りがないと相当めんどくさいことになるな。

俺の前をズンズン歩いている黒。歩くだけだと暇だから少し背中をつついてみる。

 

ツンツン (俺が黒をつつく)

 

クルッ (黒がこちらを向く)

 

ガブッ (黒が俺の指に噛みつく)

 

「Oh my gosh!!」

「グルル!!」

「悪かったよ、悪かったけど噛みつくほどでもなかったろ。痛ぇな。」

 

黒は進行方向を向き直しさっきまでよりも早く歩きだした。そこまで怒らなくても良かったと思うんだけどなぁ。

 

 

さらに奥に進むこと数分後。俺達は俺とむうの争った広場的な所まで来ていた。

その争った痕跡は今もなお残されており、血溜まりが広がっている所や、所々地面に穴が開いていたりしていた。

ここまで来るために携帯の電源を付け、ライトをずっとつけていた。懐中電灯なんていらんかったんや。

うん、ここにいることは間違いないはずなのだが、むうは広場にはいなかった。

黒も左右を見たり、前後を見たりと忙しなく動いているにも関わらずむうのいる場所の特定までは出来ていないようだった。

参った…。もしここから移動されていたりしたら捜索は不可能だぞ。仕方ない、虱潰しに探していくか。

 

「悪いが黒、来た道をもう一回探してきてくれないか?俺はこの周辺探すから」

 

黒は一吠えすると、もと来た道を駆け出していった。

動物ってのは良いな。あんなに速く走れて。一応俺も動物の部類に入るのだろうけど。

さて、俺も探し始めますかね。何処にいることやら。

俺は何気なくそっと空を見上げてみる。そこには満点の星空と、大きな…とても大きな満月が登っていた。

絶景かな絶景かな。ここの辺りは山だから街灯もなければ家の明かりすらない。絶好の夜空観賞場所だ。お?あれ、もしかして夏の大三角形じゃね?

俺がのーんびりそんなことを考えていると、何処からか女の子らしき泣き声が聞こえてきた。

どうも啜り泣くような声で泣いているようで、微かにしか聞こえない。

こんなところで遊んでて迷子になったのかな?ならばこの紳士助けに参ろう。ふはははは!!

泣いていると考えられる場所は、泣き声からして右か左か前の3択…。

とにかく俺は左に駆け出した。が、声は小さくなっていく。

 

しくじった!反対だったのか!

 

俺は方向転換しまた駆け出した。が、また声が小さくなっていった。

 

なん、だと?俺がまさかの3択で二回外したのか!?

 

俺は渋々左を向いて歩き出した。

いや、普通3択で一回間違えたら次は大体合ってるもんだろ。しかもこの場合反対側にいるんだろうなって考えるだろ。それが、横にいましたww、何て言われたら切れるに決まっとるだろ。くそッ、どこまでも俺を馬鹿…に…。

 

自分の思考に文句をいいながら俺はその泣いている正体を見つけた。それは迷子になっている子供なんかじゃなかった。

俺と黒が今探している張本人だった。むうはこちらに背中を向けて座り込んでいる。

しかし、やっぱり俺の見慣れたむうの姿じゃない。

体格は大きくなって白い着物っぽいのも着てるし、頭もある。その頭の額からは少ししか見えないが白い双角がある。

どう声を掛ければ良いんだろうか。女の子が泣いているときはどう声を掛けるのが正解なんだ?

そっと肩に手を掛けると気持ち悪がられるだろうし、声をそのまま掛けるのも失礼な気がする。

特定の女子と喋ったことないしなぁ。ましてや泣いてる子なんて全く喋ったことない。

俺は数秒考え、肩をトントンして小声で話を切り出すことにした。

 

「むう、夏だけど夜は冷える。帰ろう俺達の家に」

 

我ながら謎の切り込み口を入れたと思う。雰囲気も何もない。

 

「グスッ…帰れないよ…」

「帰れない?何でなんだ?」

「契は…私の本性を知ったから…」

「本性ねぇ…昼間のあれか?いや、まあ怖くなかったって言ったら嘘になるけど…何て言うかな」

「契は…優しいから…私を庇ってるだろうけど」

 

そんなつもりは一切無かったんだけどな…。どんな言葉をかけても無意味な気がしてきたぞ。どうしたものか…。

俺が一人でうーうー唸っていても、こちらをむうは向こうとしない。

 

「私はッ…私達は人間と生きれないの!!」

 

私達ってのは妖怪のことか?

うーん、まあ共存できないって言われたらそんな気もするけど。そこまで断言する意味もないような。なんでそんなに強く言えるんだろうか?

 

そんな風に疑問に思いつつもむうを家に連れて帰る方法を考えていると、黒が俺の足を鼻でつついてきた。

 

「お、帰ってきてたのか。むうはここにいたよ」

「わん」

「悪かったな、無駄足させて」

 

俺は黒の眉間を撫でつつ謝り、もう一度むうの方を向いた。相変わらず俯いている。

 

「黒、どうすれば良いと思う?」

 

俺がむうに聞こえない程度の声で黒に囁く。

 

「クゥーン」

「あ、それ良いなそれでいこう」

 

黒と俺は小声で1、2言やり取りをし、作戦と呼べるかわからないほどの小規模な作戦を立てて実行に移した。

 

「はぁ…。むうはめんどくさいやつだな」

「え?」

「だってさ、冷えるから帰るぞって言ってんのに着いてこようとしないし、自分の怒りに任せて俺を攻撃してきたりさ、なんなの?」

「ぇ…?」

「おまけに、人には見えないから俺が一人芝居してる風に周りから見られるしよ、俺の家族に訳が分からないほど馴染みやがるし、俺の宿題だって世話焼いて手伝い始めたりさ!!」

「ううっ…」

 

俺がむうを適当に責めていると、むうは肩を小刻みに震わせながら静かに泣き始めた。

俺は最後の一言を伝える前に長い間をあけた。

完全に夜になってしまい、虫達が自身の体の一部から綺麗な音色を出す美しい合奏が聞こえる。山を越えていく風が木の葉の側面を撫でつつ通りすぎていく音が聞こえる。

カブトムシなどの昆虫が集まってきそうな松の蜜の臭いが鼻につく。

 

俺が息を一回吸うと周りの音や匂いが全て消えた気がした。

俺はむうの正面に行き、しゃがみこみ、最後の一言を呟いた。

 

 

「そんなむうが俺は大好きだ」

 

 

そのときむうが顔を上げて初めて俺を見た。

そこには目の色が天色から猩々緋に変わり、目の回りが何時間も泣き続けていたように真っ赤に腫れていた。

 

「契…?それっ「はい黙ろうか、お前は俺におんぶされて家に帰れば良いだけだ」う…ぅあー…あぁーー!!」

 

むうは堰を切ったように大声で泣き始めた。

これじゃまるで童女だな。

そう思いながらも、俺は背中を擦ってあげてからしゃがんだ状態のままむうに背中を向けた。

 

それにしても俺が普段絶対に言わないような恥ずかしい言葉言っちゃったよ…。くそっとても背中が痒い。

 

俺はむうが背中に乗ってくるまで背を向けたまま今さっきの自分の痛い言葉を思い返しながら悶えていた。

が、一向にむうが乗ってこない。

 

「どうした?むう。俺の背中に普通に乗ってもらえれば良いんだけど」

「ぁ、足…」

「なんて?」

「足が痺れちゃった」

「……えぇ?本気で?」

 

俺が問いかけるとむうは首を縦に振った。

どうすれば良いんだろうか。強引にしちゃってこの着物が破れちゃったら怖いし…。

 

「わん!グルルル」

「うっそだろ?俺が?マジで?やったこと無いぞ?男しか」

「わ、わんわん!!」

「うら?私がやってほしいけどこの際むうにしてあげろって?う、うーん」

 

どうしようか…。いや、これが一番手っ取り早いのは分かってるけどもさ。男しかしたことねぇ。

くそっ、もう自棄じゃあ!!

 

「むう、すまんが少しの間だけ恥ずかしいかもしれない。俺も恥ずかしいけど、さ!」

「契?なんで私の膝持って…キャッ。ってなんで私を持ち上げてるの!?」

 

俗に言うお姫様抱っこである。なんかもう…死にたい。

まぁ家に帰るまでの我慢だから大丈夫、のはず。

それにしても、むうはこんなにも軽かったのか。体に似合わず軽い。いや、成長してないところがあるからだろうけどさ。特に肋骨の辺りとか。

 

ハッ!?俺はなにを考えてるんだ、煩悩を捨てろぉ!!

 

俺は頭を振って煩悩を振り払う。しかし、完全に払えるわけがないのはわかってるので諦める。

まあいいや、むうの体がここまで軽かったことに感謝する。重かったら俺が家まで無事に送り届けれたか怪しかったからな。

 

「ねえ、契はなんで人の胸を見てるの?」

「んん!?ち、違う!断じて違う!俺はむうの胸が薄いなんてこれっぽっちも考えてない!!」

「心が漏れやすい可哀想な人なんだね…。今日だけは見逃して上げる」

 

俺達は、喋りながらもと来た道をのんびりではあるが戻り、山を抜けた。

 

「むうはなんであんなに怒ってたの?怒るってレベルじゃ無かったけど」

「それは…契には悪いけどあまり言いたくないの」

 

むうは顔を若干歪めてそう言ってきた。

 

「うーん、俺的にはしっかり言って欲しいところだけど、そこまで嫌そうな顔をされると、聞くわけにもいかなさそうな感じだな…いつか教えてくれないか?」

「いつか…ね。うん、いつか話すよ」

「話変わるけど、むう軽すぎないか?なんか秘密があったりすんの?」

「別にないけど、そんなこと考えたことも無かったよ?理由か、わからないけど妖怪だからじゃないかな?」

「なんじゃそりゃ」

 

そんなどうでもいい話をしながら家に向かって歩き、大体家まで半分くらいにあたる踏切で電車が通りすぎるのを待っていると、ふいに黒にふくらはぎを噛まれた。

 

「どうした?結構痛めなんだけど」

「グルルル」

「抱っこし過ぎか?」

「わ、私もそろそろ自分で歩けるかなぁなんて…」 

「そうか、それならおんぶにするか」

「なんでそうなるのかな…」

 

俺はむうがどう言おうと家まで送り届けたい。何故かは知らん。

一旦むうをお姫様抱っこから解放して、むうの前で少し屈む。

むうは少し躊躇したのか数秒後に背中にもたれ掛かってきた。

 

(胸が貧相だな…)

 

そう、下心丸出しの考えを心のなかで渦巻かせつつ俺はむうを背負った。

そして俺達は、村の夜の闇にその姿を隠していった。

 

 

次の日、俺が両腕を後ろに回して誰もいない背中と話し黒と共に町を歩いていた、というのがちょっとしたニュースになったのはまた別の話。

 




第七話読んでいただき有り難うございました。

泣き声の描写が難しすぎる(白目)
泣き声を文字で書いたら駄目な気がするのに書いてしまうのはどうしてなんでしょうね。これから泣き声、叫び声等は増えるというのに…。
それから、疑問なんですが、死んだ場合病院に送られるんでしょうかね。もう、妄想の域で書いているので不快に思われた方…かたじけない。
最後に、いつの間にか契と黒が会話しだしましたね。何ででしょうかね?(すっとぼけ)
次話からアホみたいに物語が進み始めますので読みづらい場合申し訳ありません。
後書き長くてすみません。

次回も読んでいただければ幸いであります。
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