現世で死んでも来世がある   作:瘧草

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タイトルで内容が割れそうな気がします。


第八話 異世界への裂け目

「ただいまー」

「おかえり~」

 

俺がむうと黒を連れて帰ってくると母さんの声が返ってきた。母さんは洗濯をするためなのか玄関の近くで衣類を入れた籠を抱えて歩いていた。

 

「どう?むうは見つかったの?」

「裏山で見つかったよ。ほら」

 

俺はいつの間にか俺の背中で寝ていたむうを母さんに見せる。

 

「ん~?強○?」

「はッ!?いや、どうなったらそうなんの!?」

「今は夜でしょ、ついでに寝てる…寝てる間に襲ったのね…私の息子ながらよくやるわ…」

「理屈がおかしいよ!!っと言うかよく思春期の息子にそんなド直球で言えるね!あり得ないからね?」

「今夜は赤飯ね。買いにいかなきゃ」

「待って、待って!人の話聞いて!してないっていってる!あんたの息子がしてないっていってる!」

「3割の冗談は置いといて、で?仲直りはしたの?」

「誰か!!この人半分以上本気だったよ!!助けて!!」

 

この人はなんなんだ!ろくに息子が信じられないのか!本当に頭の中どんな風になってんのか一回調べてみたいわ!

 

「けーい、仲直りしたの?」

「母さんのせいだから…こんな雰囲気になってんの母さんのせいだから。そうだな、仲直りしたっちゃしたのかな?」

 

あれが仲直りというのかすら怪しいと思う。こちらは指が1本断たれてるというのに、むうには適当な言いくるめだし。これはいつか何かしてもらわないと。

 

「う~ん、そうね~。むうが起きたら話聞いて見ようかな~?」

「いいんじゃない。裏山で泣いてたっぽいし、今はそっと寝かしつけとけば」

「その泣いてた理由は…契!責任とれるんでしょうね!!」

「だ か ら!俺なんもしてないって!!それよりも、むうの姿が変わってることに驚かないの?」

 

「あらほんと」

「驚きの言葉が想像以上の短さ!!」

 

俺がそう叫ぶと母さんはむうに、ササッと近づいてきて身体中を触り始めた。

 

「そうね~、髪の色は白雪みたいだし、肌はお餅みたいにぷにぷにで触り心地は最高、この角だって短くて可愛いし、体の大きさの割に胸は小さめで…」

「母さん!息子の背中で寝てる人の身体中を隅々まで触らなくていい!胸の感想とかもどうでもいいから!俺がめっちゃ困惑してるのわからないの!」

 

そういい俺は玄関から駆け足でリビングに向かい、そっとリビングのソファーにむうを寝かせた。

寝かせた後に俺はコップを出しお茶を注いで、ちびちび飲んでいた。むうの寝顔を横目で見ながら。

俺が評価するのもおかしいと思うが、町で見かければ浮いていると思うが、それでも見かければ振り返りそうなほど可愛いと思う。整った顔立ちに、あの真っ白な髪や肌。さらに俺と黒しか見ていないだろう吸い込まれるような猩々緋の瞳。

とてもいいと思う。寝込みに襲ってもいいんじゃないかな……俺は何を考えてるんだよ…こんなんだから生まれてこの方彼女の一人も出来てねぇんだよ…。

いや、ここはほとんど過疎地って言えるぐらい人が居なくて小学生から高校生まであわせて40人いない位だから彼女出来なくても普通なんだけどさ…。

 

「はぁ…」

「どうしたの~?むうをガン見したままため息ついて~」

「いや、むうが可愛いなってね、って母さんいつの間に来てたの!?」

「ん~?玄関からリビングまですぐに着くじゃない?」

 

むむ~、俺の気づかないうちに近くに来てたのか。我が母親ながら侮れない存在だ…。

 

「あ、そうそう今日のご飯はカップラーメンね」

「わかった、それも夏とかの長期休日の楽しみだし」

 

カップラーメンとかは自分の食べたいときに、さっと食べれるからいい。夜は夜食としても最高だ。気になるのはカロリーのみ。帰宅部だから食べ過ぎると太る。

 

そんなことを考えつつ俺はカップラーメンを手に取らずに2階へ上がる。

そして、自分の部屋のベッドに寝転がった。とても暇だ。

暇…暇……暇つぶしにゲームするか。そうと決まればゲームの電源をいれリモコンを持つ。

このゲームゾンビアクティブ過ぎるんだよ…。

 

ゲームには何らかの魔力が籠ってると思う。止めようと思っても四時間ほど遊んじゃうんだよな。

今は…大体12時か、寝るには早いな。

少し宿題でも眺めてるか。

椅子に深く座り込み、宿題を眺めながら思う。

 

「あれ?丸つけとかも終わってるんだったら、後美術と自由研究位じゃね?」

 

Wow 、想像以上に余裕がある夏休みになったもんだ。生活リズムも、もう崩壊しちゃってるし、遊びまくる休みか?いいねぇ、最高だねぇ!!

 

「フォォォォォォォォオ!!」

 

魂が勝手にシャウトする!!近所迷惑も気にならない。

何故なら周りに家がないからだ!!

 

「ドン」

 

すると隣の部屋からの壁ドン。姉ちゃん御乱心。そういや、夏休みに入ってから姉ちゃん見てないや。

……あれ?一学期に姉ちゃん見た最後の時っていつだっけ?

ん?下手すれば一学期に見てないんじゃ…。

昔から引きこもりだったけど、もうこれ重度の引きこもりじゃないか?。

ご飯とかってどうしてるんだろう。風呂は?

まさか、姉ちゃん女どころか人間捨ててるんじゃ…。

壁ドンのおかげで少し生存確認ができたが声も一応聞いとくか。

俺は部屋を出て左に行く。

俺達の部屋割りは奥から母さん、姉ちゃん、俺、夢となっている。母さんは廊下を歩いてたらドアが真正面に見える。夢の部屋のドアは母さんの部屋のドアと向かい合っている。

簡単な家の作り。

って俺は誰に説明してるんだ。なんで説明口調で自分でわかってることを頭のなかで考えてるんだ。

 

「コンコン」

 

俺はその考えを振り払うように姉ちゃんの部屋のドアをノックする。

部屋からは微かな人の動く音がした。

 

「んん?だれ?あに?」

 

ドア越しに姉ちゃんが話しかけてくる。

どうも人と話してないらしく喉は掠れてるし、呂律も悪い。

 

「あ、俺俺」

「おえおれさいのひとですか?さぎは、はんざいれすよ」

「ん?何?」

「このこえは、けい?」

「うん、そうだよ。ちょっとした生存確認のつもりだったんだけど、生きてますか?」

「いきてるおー、それとおおごえださらいでねー」

「あいあい、ゲームしすぎんなよー」

「そろそろするげーむがらくらってきてうんだー、かっれきてー」

「自分で外でて買ってきなよ…生存確認できたし戻るわ」

「うー、ざーねー」

 

全く締まりの無い返事と共にまた中で人の動きがした。

さて、俺も部屋に帰ってゲーム再開しよう。

俺はトイレをして自分の部屋に戻ろうとした。

が、トイレをし終え部屋に帰る途中に誰かの会話が聞こえた。会話、と言うよりも一人の声しか聞こえないから独り言なのだろうか。一階から聞こえてくる。

こんな時間に電話だろうか?

喉も乾いたし誰か気になるし、一階行こう。

 

階段を電話している相手に気付かれないようにゆっくり降りる。声も少しずつだが大きくなってくる。

 

階段を降りきると誰か判明した。むうだ。

むうだとわかっても、誰と話してるんだ?

あれか、昔の友達とかと話してんのか?

俺はリビングへ向かってお茶を飲む。リビングにいなかったから洗面所か?

俺はグイッとお茶を飲み干し洗面所にそっと近づき、会話を盗み聞きする。

人間性としてはゴミ以下、いや塵以下だな。

それでも俺は耳を傾けた。

 

「それで、はい、はい、元の…にもど………はい、それとその……人間を………に連れていっ……、はい、わかりました…ですが……………」

 

全くではないが聞き取り辛い過ぎる。こそこそ話しすぎだ。

俺はジリジリと洗面所に近づきもう一度聞き耳をたてた。

 

「本当にダメですか?本当に本当にダメですか?」

 

ダメ?何がダメなんだ?

俺が少しずつ距離を縮めていると

 

ギィィ…

 

という音と共に床が軋んだ。

 

「誰ッ!?」

 

まずった。クソ、こうなりゃ2階にダッシュで夢の部屋に転がり込もう。

一段飛ばしで階段を駆け上がり夢の部屋にダイレクト潜入。スニーキングミッションは得意だ。

匍匐前進でむうの寝ているベッドの下に潜り込む。

潜り込んだと同時かそれより少し早くドアが開いた。

 

「夢…じゃなさそうね、契ね」

 

ふぅ、危うくバレるところだった。ドアが閉まり、俺は部屋を立ち去ろうとベッドの下から這い出てくると

 

「何してるの、お兄ちゃん」

 

俺がその声の方を向くと、目に光の灯っていない夢の姿があった。光がないのは電気が付いていないからだと思いたい。

 

「何、してるの?」

「スニーキングミッションの練習をしていた。このベッドの下は快適だな。それじゃ」

 

俺は親指を立てて部屋を出ようとドアノブに手を掛けると外から

 

「契がいない、何処行ったの、はは」

 

という少し寒気がするようなむうの声がした。

前門に鬼後門に鬼とはまさにこの事。

片方は比喩でもなく本当に鬼なんだが。

どうしよう…、今更どうやっても無意味にしか思えない。

 

「お兄ちゃん、ナニしてたの?」

 

何故、妹相手にナニしなけりゃならんのか。ネットで調べればさっと出てくるわ。

 

「契♪契♪何処だろなぁ」

 

むうも頭狂ってきてる。なんであんなにも愉快そうなんだよチクショウ。

 

「コンコンコン、契はいる?いたら返事してね」

「お兄ちゃんならここにいるよ」

「あれ?夢?起きたの?それと、契がいるの?それじゃお邪魔します」

 

そう言い入ってきたむうは何故か笑顔。すっごく笑顔。張り付いてる。笑顔が張り付いてる。

挟撃とは怖いものだ。

 

「さて、契今さっきの話盗み聞きしてた?(さて、お兄ちゃんこれはどういうこと?)

 

二人一辺に話さないで、威圧が物凄いから。

 

「黙りとはなかなか良い度胸だね()

 

二人ともハモらないで、

 

「しかし、二人には胸がない」

「「あぁん?」」

 

やべぇ、口に出ちまった。死を覚悟しよう。

遺言は『女は怒らせないほうが良い』でいいや。

 

「「まあ、お兄ちゃん()がそういうことするのも何か意味があるんだろうけどね」」

「そ、そうなんだ。だから二人とも落ち着いて」

 

 

数分間の言い訳の後、二人は落ち着いた。威圧は収まらなかったけど。

 

「まず、むう。こんな時間に電話してるから誰かと気になったんだ。悪かった」

「こんな時間に電話してた私も悪かったね」

「それに夢も。むうから逃げるために逃げ込んだんだ。悪かった」

「それだけなら良いよ、ごめんなさい」

 

二人とも優しくてよかった。本当によかった。よくあんな一触即発の空気から逃がれたものだ。

自分の運の良さと二人の心の寛大さに感謝せねば。

 

「それにしても電話は誰から?」

「電話は師匠から」

「師匠?」

「私を育ててくれて、戦い方とか知識とかも与えてくれた妖生(人生)の師匠だよ」

「そうか」

「反応薄いね。まあ、盗み聞きしなくても一応話すつもりだったんだけどね」

「ふーん」

「それで、単刀直入に聞くと妖怪界に来る?」

「へー。え?妖怪界?」

「妖怪の世界のこと。こっちでは異次元って言われてるものだね」

 

妖怪の世界か。

正直に言うとかなり行ってみたい、どんな奴等がいるのか興味があるし、どんな世界が広がっているのかも見てみたい。

むうの師匠にも会ってみたい。そして、どうしたらこんなに、その、可愛い子に育つのかも聞いてみたい。

 

「はいはい!!私行ってみたい!!」

「夢はどうだろ?一旦師匠に聞かないと」

「俺は?俺も行きたい」

「契はバレなきゃ行けるよ」

 

ん?バレなきゃ?

 

「バレなきゃ大丈夫。師匠からはかなり反対されたけど楽しいからね」

「バレなきゃって言ってるけど、師匠が止めてるなら行かないほうが良くないか?」

「大丈夫大丈夫。バレなきゃ犯罪じゃないんですよって言うぐらいだしね。まあ、一回位行っても怒られはしないって」

「そうは言うけどなぁ…」

 

やめといた方がいいってなんか俺の中の警鐘が鳴りまくってる。

しかし、こういうときほど駄目なことに飛び付くのが男ってもんなんだよな。

 

「いっか、サーって行く位なんともないか」

「よし決まりだね」

「で?いつ行くことになるんだ?」

「今からだよ?」

 

なに言ってんのこいつって目で見ないで。

首も傾げんな!

その目と仕草はこっちのものだ!

 

「用意はどうするんだ?要るもんとかは?その他に必要なもんは?」

「要らない要らない、普通に手ぶらで行ってもいいよ」

 

何故か自信をもってそう言い放つむう。

どれくらい緩い世界なんだろうか。

 

「何も要らないなら、いいや。んで?どう行くんだ?」

「そ、れ、は。そーい!!」

 

力の籠りそうもない掛け声と共にむうは両手を上に掲げた。

なんか同じ年頃位の女の子が、こんな訳のわからないポーズを白装束を着ながらしているから不思議ちゃんにしか見えない。

そういえば歳は全く違うんだっけな。

 

「ふん!!」

 

次は大きくその上に掲げていた両手を勢いよく地面に降り下ろした。

 

するとそこには何故か大人一人が潜れそうな空間の裂け目がぱっくりと空に浮いていた。

 

俺の位置からは降り下ろすときに白装束がはためいて何が起きたかわからなかった。

ほんの数秒の出来事だったのに、俺には到底理解できないようなとても凄いことが起こったのだけはわかった。

 

「これは?」

「異世界同士を繋ぎ合わせた空間の裂け目だけど?」

 

なに言ってるかさっぱりわからん。日本語で頼みたい。

 

「まあまあ、気になることもあるだろうけど、あまり深く考え込まないで、凄いな位に思っといてよ」

「そこまで頭も良くないし今はそう言うことにしとくわ」

「ありがとう。それとここを潜ったらもう妖怪の世界だから」

「なんて便利な…」

「じゃ、私は先行ってるから着いてきてね」

 

むうはそう言うと、その空間の裂け目になんの躊躇もなく入っていってしまった。

 

「んじゃ、俺も少し行ってくるわ。この事母さんに言っといて…って寝るならしっかりベッドで寝ろよ」

 

夢はベッドに、もたれ掛かったまま気絶していた。

 

俺は夢をベッドに寝転ばせてから、サッと置き手紙を書いて空間の裂け目に入った。

 




第八話読んでいただき有り難うございました。

この頃風強いですね。
夜中外を歩いてると道路を2つのビニール袋が競走するように転がっていたのには笑いました。
えー、小説の方は亀更新も亀更新で申し訳ないあまりです。
あと、数パートでメタ回挟むつもりなのでキャラに関してはそこで話したいと思います。(キャラ崩壊が激しい小説なんで{キャラがふわふわしてるんだもん})

次回も読んでいただければ幸いであります。
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