現世で死んでも来世がある   作:瘧草

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ダメですね…タイトルに何の捻りもない。


第九話 第一妖怪登場

「……」

 

俺は今、爛々と赤く輝く6つの目に睨まれている。

その目は複数人に見つめられているのではなく、一人?に見つめられている。

その目の2つだけは人間と同じ位置にあるが、他の目はその目の縦に2つずつ、額に向かって並んでいる。

6つの目に白目は無く、全て赤色に染まっていた。

これと一人の時に出会っていたら、驚きすぎて漏らすか、逃げながら漏らすか、謝りつつも漏らすか、の3択を選ばされたことだろう。

 

何故俺がこんな状況に陥ってしまっているのか。それは、ほんの数分前まで遡る……

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

「うぉお~???」

 

それが、俺が妖界に着いたときの第一声だった。

謎の空間の歪みから入ってすぐに妖界についた。ドアから部屋に入った感じで一歩踏み出したらここにいたのだ。

まず目に入ってくるものと言えば、歴史の教科書で見るような木造の平屋が狭い視界に半分位見えているものだ。

その平屋は、玄関を行灯で灯してあった。

辺りを見回してみようとしたが、どうやらここは裏路地みたいな所らしかった。

大体左右の幅が3メートルあるか?って位の小さい道。

ついでに今はどうも夜のようで周りは暗かった。

 

俺が少し見えている建物を目を輝かせながら眺めていると、

 

「ようこそ、我々妖怪によって妖怪のために妖怪が作った最初の町、第一妖怪京へ。それから妖界へ」

 

というようにむうが謎の説明をして来た。

 

「見えてるの平屋だけだけどね!」

「説明はまだ続いてるから少し興奮と愚痴は抑えてね」

「手短に頼む!わくわくしすぎて心臓が爆発しそうなんだ!!」

「手短ね、この世界全体は妖源郷って言われてて、その初めて出来た都がここ、第一妖怪京。

今大体何個あるんだろ?300年程封印されてたからわからないや。

私たちが今居るところは、その第一妖怪京の東西に伸びる青白(せいびゃく)大通りの東の端の裏路地だね。ってこういうのも歩きながら話した方がいいのかな?」

「そ、そうしてもらえると嬉しい」

 

もう、どんな世界が広がっているのか気になりすぎて足の震えが止まらない。都って言ってたし目の前に見える木造の平屋が何軒も並んでいるんだろうか。

そういうところめっちゃ行ってみたかったんだ。

何て言うの?趣?があるところがかなり好きだ。歴史を感じるって言うか、なんというか。

兎に角、早くどんなのかを見てみたい。

 

「うぉぉぉォ!!!」

 

俺は雄叫びを上げながら裏路地を走る。

後ろからはむうの待って!とかの制止の声が聞こえたが、俺はそういうのも無視をして走った。

そして、100メートル走17秒の俊足を最大限活用して裏路地を抜けた。

 

俺の視界には「一瞬」木造の平屋が軒を連ねて佇んでいるのが見えた。

奥には山が見え、松のような木も数十本生えていた。

しかし、それもやっぱり一瞬。

急に俺の視界は真っ暗になった。暗くなった、と感じてから顔が熱くなり出した。

どうやら何かにぶつけたようだ。鼻がとても痛い。

鼻も痛いが、これはなんだろうか?

壁にしては丸いし、円柱にしても今さっきこんなところにはなかった。周りが暗かったから気づかなかったのか?

自分の腕でしっかりホールド出来るほどの太さ。

それは上にも伸びていて、上に手を伸ばす程太くなっているのがわかった。下に伸ばすと細くなっていっている。

手触りも不思議で、さらさらしている感じで、それでも滑らかな触り心地。手にフィットしそうな感じだ。

 

そうやって俺がその何かを手で堪能していると上から、

 

「貴様、何をしている」

 

と年上のような女の人の声が聞こえてきた。

なんだろうかと、上を向いてみると……。

 

目の6つ付いた化け物に睨まれていた。

 

 

 

 

 

ヤバイ。ヤバイヤバイヤバイ。

駄目だ。これもう詰んでる。

俺は心の中で叫びつつも、目を逸らして、俺の抱きついていた物を見てみる。

それは黒光りする不思議な棒だった。

そして、その棒を目で追っていくと、上に向かうと太くなり、途中で曲がっている。

それをさらに目で追うと、少し楕円形の丸い何かがあった。

頭の中では分かっているのだが、信じたくない。信じてはいけない。

でもこれはどう考えても……蜘蛛の頭胸部だった。

俺が抱きついているのは蜘蛛の足か。

さらにその頭胸部を目でなぞっていくと、膨らんだ腹部があった。

大きさ的には足の節目までの高さは、170ちょっとある俺よりも少し高い。大体180くらいだろうか?

腹部は目測で横に2メートルを越えている。

その反対側には黒を貴重とした鎧のようなものを着た、目が6つある女の人がいた。

その鎧には水筒のような物が2つと、よく時代劇で見かけるような日本刀、形状から見てアサルトライフル?のようなものが腰に掛けられていた。

顔は首だけを曲げているので横顔しか見えないが、顔立ちは整っていると横顔を見るだけでわかる。

 

「貴様、聞こえているのか?何をしている?それよりもそろそろ離れろ!」

 

という怒声と共に俺は蹴り飛ばされた。

風を切る音がこの状態じゃなかったら心地よかったのだろう。

俺はもと来た裏路地に弾き返された。

そして、壁に当たるときの衝撃に耐えるように体に力を入れた。

 

が、「いっよいしょっー!!」

 

と、むうの声が聞こえるのと同時に自分の肺から空気が一気に漏れた。

どうやら俺はむうに羽交い締めされたらしい。

それから俺はその状態のままくるくると回転させられた。

遠心力で足に血がいったが、壁に当たるような痛みより幾分もましだった。

けれども、ろくに肺に空気のない状態で回されると息が止まっている様なものであり、俺は静かに瀕死の状態に陥っていた。

 

数秒か数十秒後回転は止まり、俺の息も止まり、むうの心臓マッサージにより蘇生、どうやら俺は九死に一生を得たようだった。

 

「危なかった…危うく死ぬところだった」

「軽く死んでたよ」

 

なんて素敵な冗談だろうか

 

俺はそんな皮肉を頭の中で考えながら裏路地の出口の方を向くと、蜘蛛女?がこちらを見たまま唖然としていた。

 

「むう、むう。あいつヤバイって。俺あいつに近づきたくない」

「あいつ?」

 

むうはゆっくりと出口の方に顔を向けた。

すると、むうも固まってしまった。

 

メトメガアウーシューンカンスーキダトキヅーイター。

 

俺は適当にBGMを頭の中で掛けていると、

 

「まさか、焔なのか?」

「え、嘘、響ちゃん?」

 

反応から察するに昔の友達とかか?

それにしても焔って誰だ?

響ってのはあいつの名前ってわかるけど、焔?

聞きたいのもやまやまだが雰囲気を壊しそうなのでやめておく。二人の会話でものんびり聞いとくか。

 

「焔、お前今までどこいってたんだ!皆で探したんだぞ!」

「う、うん…それは…」

「300年近くだ! 300年だぞ?わかってるのか!」

「ごめん…長いよね…300年って…」

 

うん?仲良いんだよな?いや、仲良くなかったら怒らないか?どうなんだろうか?

 

「けど、総大将から話は一応聴かされてる!」

「え?話の伝達速くない?」

「私らの伝達速度を嘗めて貰っちゃ困る、と言っても総大将に用があったときに偶々総大将に連絡が来て、その連絡の相手が焔だったってだけのことだがな」

「でもそれおかしくない?総大将のところからここまで十数キロはあるよ?」

「こっちの方にも急ぎの用事があって走ってきただけのことだ」

「そう、それじゃ私は行くね」

「…待て。そいつは誰だ?」

 

そういって、響と言われた蜘蛛女は俺の方を睨んできた。

睨まれただけで心も体も凍りつきそうだった。

 

「こ、こいつ?偶々見掛けた記憶喪失の妖だよ」

「ほ~?」

 

その疑うような一言の後、俺は裏路地から出てくるように催促された。

俺はそれを拒否することもできずに言われるがまま出ていった。

裏路地から大通りに出ると、響というやつに俺の周りを回られ、その間ずっと俺を見られていた。数回、回った後に俺の正面に立った。

 

「貴様、名はなんと言う」

「わ、わかりません」

 

この場合、むうが記憶喪失と言ったから合わせた方がいいのだろう。徹底的に記憶喪失の振りをしよう。

 

「どこからの記憶がある」

「はっきりわかりませんが、裏路地の所からははっきりしてます」

「焔とはどこで出会った」

「この人とはこの裏路地にで出会いました」

「ふっ、わかった」

 

そう響が言うと、彼女は顔から一切の表情を無くし、むうを見た。

その顔から読み取れるものは、なにもない。

しかし、彼女の右手だけは握りこぶしを作っていた。

 

「むう、総大将の所に行きな」

「なんで」

「なんでって…ここまで来て白を切るつもりかい?」

「私何の話かわからない」

「そうか。しかし…だ。そこの『人間』はボロを出したぞ」

「本当に何の話?」

「今さっきこいつは、あんたの事をむうって言って私に近づきたくないと話していたな。

あんたの本名は焔だが、なんかの理由があってむうって名乗ってたって感じだ。

それから妖界特有の妖力も流れてないようだし…ってところだな」

「……」

 

むうぅぅぅぅ!!!そこで黙っちゃ敗けを認めたのと同じだぁぁ!!!

俺も言い返したいが俺が話すとボロを出すどころか自分から人間だと証明するようなもんだ。

ぐぬぬ。この妖やりおる…。

これは結構適当な推理の気がするのに言い返せない自分が情けない。

 

「って感じなんだが、総大将の所に行くぞ」

「わかったよ」

「偉いな、私もまた戻らねばならんから一緒に行く」

「はぁ…。説教かなぁ…」

「それだけで済めば良いがな。気分を治すついでに久しぶりに背中に乗せてやろう」

「やったぁ~!!」

 

そういうとむうは嬉々として、響に手を取ってもらい背中に股がった。

私的にはどうも蜘蛛に乗ると言うのは抵抗があるもんなんだがな。

俺も響の背中に手を乗せて乗せてもらおうとしたが、

 

「貴様、なにをその場のノリで乗ろうとしてる?」

 

っと、首に手を当てられ脅された。爪がとても長かった。人の皮膚とかは普通に貫けてしまうのではないかと言うほど鋭かった。

 

「ってか、ここから十数キロあるんだろ?乗せてくれよ」

「甘えるな」

 

その一言で俺の我が儘は制されてしまった。

この野郎、いつか仕返しをしてやる。

 

そう思いながらも俺は前を歩く二人に続いて、真夜中に長い長い総大将の所までの道のりを行くのであった。

 

 




第九話読んでいただき有り難うございました。

どんどん暑くなってくる今日。
暑がりである私にはどうも夏という季節は合わないようです。
暑くなるにつれ桜の花も散り、じきに毛虫が出現し始めます。
あいつら嫌いなんだよ!なんで空から宙吊りになって降ってくるかな!昔顔面に触れて軽くトラウマなんだよ!

ということで次回も読んでいただければ幸いであります。
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