錬金術師キャロルを倒した後、私は再び風鳴機関へと戻る事へとなった。
シンフォギアシステムは全基復旧、残るはオートスコアラーの撃破だけ。
私の役目は終わり、終わって、また闇の中の日々へ帰るだけ、こんなに暗闇が安心できる日が来るとは思わなかった。
美味なる血肉に溺れて、殺戮の嵐を起こすだけの獣が、人々を守る彼女達の隣に居るなんて到底無理なのでしょう。
私はセキュリティロックのかかった牢獄の様な部屋で一人、安心して眠りにつくつもりでいた。
しかし、よく知る匂いを感じて、私は飛び起きた。
開かれる扉、どうして。
「どうして来た、風鳴翼」
「理由なんて必要か、明日歌」
「違う私は」
「違わない、お前は、あの日私達が守れなかった……それでも私達を守ってくれた明日歌に変わりは無い」
「そんな事を言う為だけに……こんな獣の檻に……」
「獣なんて言わない、確かに奴を喰らい始めた時は驚いたが……命を懸けて私達を守ってくれた仲間だ」
私は声を殺して泣く、まだ私を仲間と思ってくれている、それだけでもう十分だった。
これ以上は心が耐えられないと、私は思った。
「今日はもう、帰ってほしい。翼さんの言葉だけで私は十分救われた」
「また来る、そしていつか……いつか必ず私達はお前をその闇の中から連れ出す」
希望なんてもう要らなかった、このまま、幸福のまま終われればどこまで幸せだったのだろう。
魔法少女事件終息後、私は再び闇の中に居た、国防の為にスパイを始末するといういつもと変わらない任務の中でそれは始まった。
変身を解除すると変異した肉体の硬質化した外皮部分が腐り落ちた。
何か変だと、私は崩れ落ちた肉に視線をやると
辺り一面に転がる死体へとその腐肉が取り付き、新たな形を成し始めた。
死肉から生まれた怪物達はうめき声を上げながら立ち上がる。
未知の現象に私はすぐさま指示を仰ぐと、このまま様子見として現場に放置し私は撤退という事で。
床に落ちる他の死体を貪る怪物達を尻目に私はその場を立ち去る。
翌日、伝えられたのはあの怪物達が民間人を襲い、数名の犠牲が出た事、奴らは人の肉を喰らう事、非常に凶暴である事。
そして機動部隊を全滅させた後、S.O.N.Gの装者達によって倒された事。
破壊された怪物の残骸を回収後、調査に回した所、ネフィリムと同じ聖遺物由来の成分によって構築されていた事がわかり、怪物の名前を便宜上「ネフィル」と呼ぶ事になった。
数日後、施設内に警報が鳴り響き、すぐさま私を研究室へと向かわせろという指示が出された。
そこで私が見た光景は今まで見たものの中で最もおぞましいものだった。
研究員に取り付いた「ネフィル」が他の研究員を襲い、銃撃もまるで効いていない。
私はすぐさま「変身」し、ネフィルに向けて攻撃をしかける。
手足から生える鋭い刃と爪で研究員だったネフィルの体を引き裂き、思いつきで液体窒素ボンベを叩き付ける。
するとどうやら効果があったようで、凍りついた残骸は動きを止めた。
だがそこで気を抜いてしまったのがよくなかったらしい、襲われて倒れていた研究員達が立ち上がる。
あきらかに致命傷を負っているような者達が、だ。
彼らはまるで私のように怪物へと次々と変貌していく。
ここが地獄なのだろうか。
機動部隊へ撤退指示を出し、施設を封鎖させるように掛け合えと叫び、私はネフィル達へと立ち向かう。
凍結した残骸を踏み潰し、怪物同士で殺しあう、私と奴らの違いは知性だけ。
設備を利用して出来るだけ戦いを優位に進めようとするが、ここで私にも限界が近づいてきた。
ここ数日、人を食べれていないのだ。
エネルギーが足りない。
だが気付く、目の前にあるじゃないか、エネルギー源が。
飛び掛ってきたネフィルの首を刎ね、心臓をひきずりだす。
人間とは違う、黒い異形の心臓。
それを口にした時、私の中に衝撃が走った。
今まで食べてきた何よりも美味で、手が止まらない、体に力が満ちていく。
その心臓を瞬く間に食い尽くし、次の獲物に視線を移す。
気がつけば黒い肉体は赤く変色し、以前よりたくましくなったように感じる。
食えば食うだけ、強くなる。
そして、気がついた時には全てが手遅れだった。
おそらく投入された第二次部隊が施設を開いてしまったのだろう。
何処を見てもネフィルの残骸と人間の死体。
生きているのは私だけ。
どうやら残骸と化しているネフィルは炎に弱いらしく、燃えると炭となって崩れる。
私は全てのネフィルの残骸に火を灯していく。
そして生きている無線機を手にして、呼ぶのは彼女の名だった。
「翼さん、最後のお願いを聞いてもらえますか」
一人の少女が名の無い墓の前に立つ。
少女の名は風鳴翼。
「聖遺物融合体」を倒し、災厄を終わらせた英雄の一人。
……彼女は、墓の前で歌を歌う。
それが、怪物に成り果てた仲間が最後に望んだ、願いなのだから。
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