それはそうと初節句です
「大丈夫ですかアスカさん?廊下で倒れていたって……」
「大丈夫です、そう簡単に死ぬつもりはないですから」
「具合悪かったりしたら直ぐにいってよねマッキー!」
「そうそう、トラストミー・トラストユーよマッキー!」
「そうですわ、真琴さん」
マッキーこと真琴明日歌は登校初日から壁にぶつかり気絶して早退した。
だが翌日、壁にぶつかった事は伏せられ倒れた事だけがクローズアップされ周りから病弱っ子のレッテルを張られる。
――アスカさん……病弱なのに、ノイズと戦ってるんだ……私、助けになれたらいいな……
その為か響の熱い視線がアスカに刺さり、響には未来の熱い視線が刺さる。
「ねえ、マッキー病弱だけどお肉食べられないとかないよね?」
「羽佐間さんとこの子よりは大丈夫ですよ、板場さん」
「名前でいいよ、マッキー」
「ほら、でも板場さんの名前はユミじゃないですか……?私は病弱じゃないですか?」
「あっ……マリンスノー……皆が私達を誉めてくれているみたい……」
「ユミ……?―――!(無音の絶叫の演技)」
一方、アニメちゃんこと弓美とふしぎちゃんことアスカはアニメの話題で盛り上がっていた。
「そっかー!翔子じゃなくて僚先輩で来るか~!なるホドね~!そういえばファフナー以外は何か見てるの?」
「ゲッターとかマジンガーとかロボット系をよく見てます、ユミは?」
「あ、名前で呼んでくれるんだ……私は幅広く見てるけど最近は特撮にはまってて電光刑事バンとか見てるの」
「なるほど、私は特撮は特捜メカとかなら見てましたね」
オタクは自分の得意な話題になると早口になって周囲を置き去りに加速していく生き物だ。
「すっかり仲良しだねえ二人とも」
「類友ですわ」
「取っ付きにくい人かと思ってたけどそうでもないね響、でも何でそんなに熱い視線を送ってるのかな?私を見て欲しいんだけど……それよりもまだその"ヒミツ"にしてる事聞いてないんだけど」
「……んえ何…?ひっ……未来!?これにはちょっと訳が……」
皆一歩引いた所でなかよし二人を観察、今日もリディアンは平和だった。
◆◆◆
「んじゃまたねマッキー!」
夕暮れの道、放課後の寄り道を楽しみ、また明日会うことを約束してそれぞれが帰路へと着く中で、アスカと未来の二人が残る。
不思議な事に、そこに居るべきかもしれない筈の立花響は居ない。
「あれ?小日向さんは響さんと同じ場所に住んでるのでは?」
「そんな事も知ってるんだ……私、真琴さんに聞きたい事があるの」
未来の突き刺す様な視線に思わず
――えっ私何かした!?
と思わず怯むアスカ、日溜まりは目で殺す。
「……答えられる範囲で答えます」
「あなたは響の何?響を何に巻き込んでるの?」
――まじかあ……鋭い、鋭すぎる!ただ者ではないぞこの子!
核心をターボでスマッシュする未来にやべえよやべえよと戦慄する、対人能力の低いアスカには対処不能の状況、こんな時は!
「リディアンに一度戻ろう、ここではとてもではないが話せない」
「そんな事に……響を巻き込んでるの」
さらに殺意を感じる視線に変わり内心オドオドしながらもアスカはOTONAに丸投げする事にした、英断である。
だが、アスカは影が一つ自分達を追い掛けて来ていた事に気付いていなかった。
そしてリディアンまで後少しという距離まで来た所で、少し周囲の様子がおかしくなった。
――黒い塵が風に混ざって散る。
二課の携帯端末を持って来て居ないアスカは、その静寂の街にようやく気づいた。
「まさか」
「の…ノイズ!?」
キュピキュピとコミカルな音を出しながら歩くオレンジの人型、それはノイズだった。
「きゃああああああ!」
そしてここ二日、よく聞いた声の叫びが聞こえ、振り返れば。
ノイズに囲まれる弓美の姿があった。
「そんな!?板場さん!なんで!?」
「どうしてユミがここにっ……ッ!」
解散した後、アスカに携帯の番号を聞こうと戻ってきた弓美は未来とアスカのやり取りを聞いてその後をつけてきていた、その結果がコレである。
もはや一刻の猶予もない、となればアスカに躊躇いはなかった。
「小日向さん、クラスの皆には内緒ですよ」
「えっ」
―その口から紡がれた聖詠によってアスカは姿を白銀に包む。
「来いッッ!」
ブースターで瞬時に白い風になったアスカは剣銃-ガンドレイクを構築し、弓美に迫るノイズ達を正確に撃ち落とし、最後の一体を蹴り飛ばし粉砕して着地する。
「えっ……マーク……ザイン?」
「マークゼクスですよ、ユミ」
「ま…マッキー!!?」
「機体名はイカロス、クロッシングは後でいいので、小日向さんと一緒に居てください」
混乱する弓美を未来に預けるとアスカは高く飛翔する、そこに恐れはなく。
引き金を引く指に、グリップを握る手に力が満ちて、命に溢れる歌が夕暮れ空に轟く。
降り注ぐ光の矢でノイズ達を次々に無へと還し、地面から生えてきた巨人型ノイズへ向けて、生成ルガーランスを突き立てた。
「消す事しか知らないんだな!なら私が消してやる!お前達を!」
二つに割れた刀身の間を光が走り、巨人ノイズを爆散させた。
「マッキー……すごい……すごいじゃない!まるでアニメみたい!!」
それを先程までの恐怖から解放された弓美は子供の様にはしゃぐ、一方で未来はただ静かにそれを見守っていた。
―つまり響も、ノイズと戦うって事?あの響が?
武器を手にして戦う響の姿を頭に浮かべ、未来はただなんとも言えない様な不安げな表情を浮かべた。
そしてノイズを殲滅し、イカロスがゆっくりと舞い降りる。
アスカは満ち足りた笑みを浮かべ、空へと両の手をかざした。
そこにもう一人、遅れてやってきた者が居た。
「アスカ……無事か!?」
天羽々斬を纏った翼であった。
「ええ、一人でも何とかやれました……これで翼さんを守れそうですって……どうしました二人とも……?」
弓美と未来が面食らったのも無理はない、あの風鳴翼が不思議な格好をしてそこにいるのだから。
「あ……アニメみたいな展開……ウーン……」
「ゆ……ユミ!?」
さすがに衝撃的すぎて板場弓美は気絶した。
――現実はアニメより奇なり。
小日向未来は、そう呟いた。