――何を思い上がっていたのだろう、よくよく考えれば気づけた事だ。
――私ごときが、翼さんを守ろうなんて、ただただ傷つけて来ただけじゃないか。
――さっきのだってそう、私なんかを翼さんは気遣ってくれてた、なのに私は逃げた。
完全に心がマイナスに振り切れたまま、アスカはさまよう、見知らぬ夜の街を。
――ああ、せっかくの好意を台無しにして……こんな私なんていなくなればいいのに……。
近くを通った隕石の軌道が変わりそうな程にクッソ重い雰囲気を漂わせ歩く少女に近づく勇気を持つ者もなく、気づけば真夜中。
アスカは自然公園でぐったりと行き倒れていた。
「このまま、土に還れたらどれだけ楽なんでしょうね」
まるでフェストゥムの様になりながら地に伏せるアスカに近づく足音。
「お……おい、アンタ大丈夫か?」
―――――
雪音クリスは夜の街を散歩をしていた、次の作戦の下見もあるが、あのくそったれ(アリー)と同じ空間に居るのが不愉快だったからだ。
とはいえ離れても思い浮かぶのは自分が殺し損ねた少女の姿、まるでゾンビの様に立ち上がるあの姿はホラーだ、正直言ってもう会いたくない。
そんな事を考えながら歩いていると公園で行き倒れの少女を発見。
――なんだ?
根は善人なクリス、自分と同じ年頃の少女が倒れていて気にならない筈もなく、近づけば外傷もなく胸の上下で辛うじていきているのはわかった。
「おい、アンタ大丈夫か?」
「……ダメみたいです」
その声には聞き覚えがあった、例のゾンビガールだ、クリスは自分の血の気が引くのを感じた。
「なんで倒れてんだ……」
「こうしていれば『土に還れる』かなって……」
その不思議な物言いにクリスは首を傾げる。
だが一つだけ、クリスの頭に目の前の少女が倒れている理由が浮かんだ。
――もしかして追い出された……?あるいは逃げてきたのか……理由は……まさかあのゾンビめいた能力か!?
――――
「ひっ!?ゾンビ!?」
「ち…ちがっ!私は…」
「生ける屍、実験台としてはなかなか興味深い」
「やっやめて!」
「消えろゾンビ野郎!」
――――
クリスの頭の中でそれっぽい寸劇が繰り広げられ、いつの間にか目の前の少女へ注がれる視線はやさしいモノになっていた。
「行くところがないなら、ウチに来るか?特に何もないけどさ……」
クリスは根がやさしい人間である。
「いいの……?」
「ああ…でも腹が減ったからってアタシを食おうとかしないって約束するならな」
「食べないですよ!?」
こうして雪音クリスは図らずして、融合症例の確保に成功した。
その頃、二課は混沌としていた。
「お前ら……本当に何やってんだ……」
「私は自分が恥ずかしくて生きてはいられません…あだっ」
「切腹で済むか馬鹿者!」
どん底を通り越してズンドコな翼、困惑し切りな大人の皆さん、状況がわからない響と未来、申し訳なさそうな弓美、そして頭を抱える了子。
――嫌な予感がするわ、これはアジトに帰ったらごく自然に真琴明日歌がクリスとアリーに混じっている予感!
ピンポイントな悪い予感は、最悪の形で現実となる事をフィーネは既に知っている。
――居たら…どうしよう……
居ても居なくても周囲にダメージを与える。
そんなアスカであった。