ショッピングモールの一角が崩壊する、それは屋上からアリーを攻撃したスパイへの報復が原因だった。
「なるほど、ギアと完全聖遺物の両刀も悪くないね」
ガングニールから放たれた砲撃が邪魔者を消し去った、その余波で建物が崩落、多くの被害が出た。
その中には『二人』が居た事などアリーに知るよしはなかった。
「ひどい……なんであんな事を!」
「無関係の人達を巻き込むなんて!」
思わず絶句する響と色んな意味で毒づく了子、その時であった。
――イチイバルの聖詠が鳴り渡ったのは。
「アリィイイイ!てっめええええ!」
凄まじい気迫で瓦礫の山から飛び出して来たのはクリス。
「すまない、いやまさかさすがに君があんな所にいるなんて知らなかったんだ」
クリスの怒りを巻き込まれたが故のモノとしか思いもよらぬアリー、だがクリスは今までで最も躊躇無く、激情で引き金を引いた。
怒りの一撃はアリーの右肩を撃ち抜き、鎧を貫いて血が噴き出す。
「なんのつもりだい」
「てめえをぶち殺す、それだけだあ゛あ゛あ゛っ゛!」
黒き闇を纏い、唸り叫ぶクリスは既に暴走状態にあった。
「あの子の纏ってるのもシンフォギアッ!?」
「何が何だかわからないけど……とにかく今のうちに行きましょう」
――クリスが裏切り?何故……いやまさか今の一撃で真琴明日歌が巻き込まれたのか?というかコレではデュランダルは持ち帰れないのでは……おのれまたしてもお前か真琴明日歌!!
そう、手駒がまさかの同士討ちを初め、デュランダルの回収手段がフィーネには無いのだ。
「……泣きながら戦ってる……何で?」
「響ちゃん、気になるのはわかるけど今は……ううん……そうね、心の信じるままにしなさい」
こうなれば響を引き離してデュランダルを何処かに隠し、新手に襲われて奪われたとすればいいかと判断するフィーネ、だがそこでまた想定外が発生する。
クリスの絶唱手前のフォニックゲインに当てられて、デュランダルが起動してしまったのだ。
トランクを破壊して浮き上がる不朽の剣、デュランダルは強いフォニックゲインの方、クリスの方へと向かっていく。
「まずいわ響ちゃん、デュランダルのエネルギーが何処に向くかわからないわ!ここは一度離れましょう!」
さすがのフィーネも戦闘に巻き込まれると無理がある。
そして二人が離れた頃に獣の様にアリーに襲いかかっていたクリスの手にデュランダルが握られる。
「アスカ……」
して一瞬理性を取り戻したクリスだが次の瞬間には再び激情が心を支配し、力任せに剣を降り下ろす。
「目の前の敵を滅ぼせ!!デュランダルゥウウウ!」
これには思わずアリーも重傷を負いながら逃亡。
結果として、クリスがデュランダルを手にしたまま姿を消した事で、デュランダル護送、及び強奪は失敗に終わった。
その後、崩落したショッピングモール地下。
エージェント達により瓦礫の下で発見されたアスカは生きていた。
いや『生かされていた』、全身を覆う翡翠色の結晶が挽き肉めいた状態となった体を『再構築』していた。
そしてそのまま二課に搬送されたのだが、面会謝絶。
そもそもアスカが回収されたと知らされたのは弦十郎と緒川、了子の三人だけ。
それは『とても見せられる様な姿じゃない』からだ。
だが、何処から嗅ぎ付けたのか、その病室――あるいは隔離室へやってきた者がいた。
翼だ、彼女は偶然、運び出されるアスカを見ていたのだ。
「また……また私のせいだ……私のせいでお前はこんな事に……」
全身の7割を損壊しながらも結晶に覆われて再生を続けるバケモノの様な姿となったアスカを見て泣き崩れる翼。
「私はお前をどうしてやればいいんだ……教えてくれアスカ……」
アスカは、何も答えなかった。
一方、クリスは雨が降る中、一人さ迷っていた。
アリーを攻撃した以上もうフィーネの側へは戻れない、デュランダルを手にした以上二課へも行けない。
そしてアスカは、もう
いない。
今、その手にあるのは弱々しく光を放つ剣と胸の歌だけ。
「なあアスカ……あたしはどうすればいいんだ?」
その呟きに答える者は、いない。
これで翼さんとクリスちゃんルートが解禁ですね(すっとぼけ)