まだ少し満たされない月の昇る夜に。
「さて、これはどういう事か説明してくれるかしら?アリー」
「どうもこうも、新しい依頼主が見つかっただけだよ」
フィーネのアジトである館、フィーネとネフシュタンの鎧を纏ったアリーが対峙し、それをさらに黒服の男達が取り囲む。
「妙な動きをしない事だね、君も護身用の『ギア』の一つや二つ持っているだろうけど、銃の引き金は歌より早いよ」
「目的は私の身柄の拘束かしら」
「まあどっちでもいいそうだよ、天才は少なくとも優秀なのは沢山いるからね」
アリーはソロモンの杖をフィーネに見せつけるように突きだし、生殺与奪がこちらにあるといわんばかりアピールする。
「そうね、少し好き勝手やりすぎたみたいね……でも」
フィーネは肩を落としため息をつく、それを見て周囲は諦めたかと一瞬気を抜いた。
「あなた達の思い通りにはならないわ」
だがその瞬間、フィーネは服の袖から結晶を取りだし、それを地面に叩き付ける。
すると地面に模様が描かれ現れる『ノイズ』
「馬鹿な!?ソロモンの杖は!?」
「杖の制御が効かない!?」
男達が瞬く間にうろたえだし、アリーも一瞬驚く、その隙にノイズ達が包囲網を食い破り、刺客達を炭へと変えていく。
「たかがノイズでも研究しておいて正解だったわ」
後にキャロルが使用する『アルカノイズ』の様に相転移防壁こそ持たないがそれなりの戦力となる『フラットノイズ』。
包囲を崩したが、まだ最大の敵が残っている。
「行け、ノイズ」
ソロモンの杖で召喚した通常ノイズを壁にしてフラットノイズを相殺するアリー、体勢を立て直した刺客達はすぐさま射撃を開始、フィーネはそれをフラットノイズを盾にして防ぐが。
フラットノイズの在庫は無尽蔵ではない、このままでは徐々に追い込まれていくだけだ。
しかしそれだけの隙があれば十分だった。
――蝋の羽を固め纏いて、真なる想いを飛ばせ
イカロスの聖詠、フィーネがギアを纏う。
それは破片で作った予備のうちの一機、イカロスはコアが無事なら欠片をいくらでも供給できる『ギアの量産向け』の聖遺物。
来るべき月の破壊、重力崩壊の後に世界を統治する為の駒の一つ。
「開発者の強みを見せてあげるわ」
星空を背にして、フィーネが舞う。
『銃剣』を手に生成、まずは容赦なく生き残りの雑兵とノイズを撃ち狩り屠り、すかさず羽弾『フェザーミサイル』をアリーに放つ。
「やるねぇっ!」
振るう鞭でミサイルを残さず迎撃、ならばと再び背負う羽の装甲を分離させてアリーを取り囲み、レーザーを放つ『フェザービット』。
フィーネは戦闘は得意とはいえない、が武力を纏えば戦えない訳でもない。
決してアリーを近づかせない様にしながら、鳥籠の様な包囲で的確に攻撃する。
「だけどこっちにもギアはあるんだ!いけ!ファング!」
一瞬の内に聖詠を済ませ、ガングニールとネフシュタンの二重装となったアリーはファングでフェザービットを乱し、槍で防御、さらにソロモンの杖でノイズを召喚。
「まったく……手数が多いわね!」
『拡散ホーミングレーザー』で素早くノイズとファングを処理、そしてアリーの突撃(ランスチャージ)を回避。
そこを『銃剣』の砲撃で追撃するがエネルギーのチャージが追い付かず、ネフシュタンの鎧相手には有効打にはならない。
「せめて後もう一つ手があればね……」
思わずボヤいて浮かぶのは今や行方不明の雪音クリス。
「私らしくもない」
「そうだな、フィーネが正面きって戦うなんてアタシの中のイメージが崩れちまったよ」
「!?」
「へえ……」
そこに現れたのは三人目の装者。
イチイバルを纏う雪音クリスだった。
「貸し借りの精算の時間だ、フィーネ、アリー」
クリスの銃口が向いたのはアリーの方、フィーネは思わず笑う。
「あなたにはひどいことしてきたのに、義理固いのね」
「フィーネ、アンタにはとても感謝してるし、勝手に出ていった負い目もある……そしてアリー、てめぇには家族とアタシと……まあ死んじゃいなかったがダチの分の恨みがある」
「楽しくなってきたじゃないか」
月が見下ろす中で、第二幕が開く。
オリジナル敵がギアを纏うんだから、フィーネがギアを纏ってもいいよね!