【更新停止】今を生きて、明日を歌う為に   作:青川トーン

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作詞なんて始めてやりました、おいは恥ずかしくて生きてはおられんご!


アスカ、怒りのデスポエム

 

 前半を漆黒の鎧めいた衣装を纏ったマリアが盛り上げたステージ、間奏と共にワイヤーアクションで舞い降りるは純白の仮面天使『セレナ(アスカ)』。

 

――恥ッずかしいぃいいッ!!

 

 その衣装はかなり際どく色っぽい、ギアのインナーに申し訳程度のドレス要素を足したモノで、セレナの仮面の下は真っ赤だ。

 

 とはいえもうすぐ間奏が終わりBパートが始まる、いつまでも機能不全ではいられず歌詞を紡がねば。

 

「――あなたの側に居られるのなら、この羽根を千切って天使でなくなっても、私は笑えるだろう」

 

――そもそもなんで自作ポエムを世間に公開せにゃならんのでぇええす!!

 

 この歌の作詞はセレナ自身、マリアとの英語の授業中に日本語で書いた落書きポエムをマリアが『いい詩(うた)ね、今度のライブの曲にしましょう!』と持ち上げ今に到る。

 

「空はもう飛べなくても、会いに行くよあなたへ」

 

「空の向こうまで会いに行くわあなたへ」

 

 曲名は『バベルとイカロス』、滅茶苦茶失敗しそうなタイトルだが、観客は大盛り上がり、ライブは成功だった、セレナの心は重傷だった。

 

 

「そういえば、日本でライブをやることになったわ」

 

「ねえさん、それ本当!?」

 

 そしてライブ終了後、ステージ裏でマリアが唐突に日本でのライブ計画を話す、ちなみに装者との戦闘の事も、風鳴翼との合同である事も話していない。

 

――やった!これで日本に……みんなの所へ帰れる!

 

 盛大にフラグを立てて喜ぶセレナ(アスカ)、これが『次回への引き』なら『君は知るだろう』ポイントが倍点である。

 

「そんなに行ってみたかったの、日本に?」

 

 あまりもの喜びっぷりに首を傾げるマリア、セレナは慌てて取り繕う。

 

「その、ねえさんと私の歌を世界に広げていく第一歩だと思うと嬉しくて……」

 

 彼女はもう少し自分の発言に責任を持つべきである。

 

――せれなあああああ!

 

「せれなぁ……私がんばるわぁ……!!」

 

 内心絶叫、涙腺崩壊、マリアが歓喜極まって泣き出す。

 

――やっちまいましたああああ!

 

 もはや曖昧な笑みしか浮かべられないアホな少女であった。

 

―――

 

 一方、風鳴翼は。

 

「……まさか話題の『HAE(ヘブンアンドアース)』と合同ライブとは……」

 

「嬉しそうですね翼さん」

 次の仕事に向けて打ち合わせをしていた翼と緒川、翼は久々に上機嫌だった。

 

「そんなに顔に出ていましたか」

 

「何、私も『大天使セレナ』の歌は好きです……なんというかこう……テクニカルというか……思い出させる感じで」

 

 セレナは『本人の赤面癖などの都合上、仮面を被っている』し『髪は白い』が、どこかアスカ(の言動やポエム)を思い起こさせる歌を歌う、それ故に翼は『HAE』の情報はそれなりチェックしていた。

 

「ちなみに『曲』の原案はもう向こうに届く頃ですかね?」

 

「そうですね……しかしそれにしても翼さんにしては珍しい歌詞ですねコレ……」

 

「……実を言うとアスカが遺した歌を参考にしました……『セレナ』ならきっと共感してくれると感じたので」

 

「アスカさん……」

 

――翼さん、いくらなんでもポエム公開はその……死体蹴りとかそういうレベルじゃ……

 

 内心、緒川は天国にいるであろうアスカ(アスカ死亡は二課内部ではほぼ確定事項)を哀れんだ。

 

「ふふ、楽しみだ……」

 

 若干、『セレナ』とお近づきになってアスカの喪失の傷を癒したい程度に、重い翼であった。

 

 

 

―――

 

 翌日、セレナは曲の原案を見て倒れそうになった。

 

――相手、翼さんじゃねえか!しかもこの歌詞私のポエムじゃねえか!当てこすりかッッ!

 

 

 セレナ、いやアスカは確信した。

 

『向こうは私が生きていて、アメリカで何故かデビューしている事を知っているが、迎えも手紙も寄越さない』

 

――何!?生存報告もせずにデビューした私への嫌がらせですか!?いいでしょう!こうなれば翼さんの恥ずかしい実態を若干ゃバラす曲も作って送りつけてやります!!

 

「マリアねえさん、なんていうか手紙から風鳴翼さんの気持ちが伝わってきたから私ソロで歌う曲を一曲作りたいな」

 

「いいわよ(いいわよ)」

 

――さすがね、セレナ……見知らぬ相手の気持ちを読み取るなんて!

 

 なにやら勘違いしているマリアの許可も降り作られた曲が以下のモノとなる。

 

《不器用な剣士さんへ捧ぐ》

 

――歌って戦う剣士さん、みんなを守る為に頑張る剣士さん

 

――みんなの前では頼れる剣士さん、でもね本当はねとっても不器用

 

――傷付いてる事をうまく言い出せなくて、勘違いもなかなか気づけなくて

 

――時々こっそり泣いちゃう剣士さん

 

――でもねホントは知ってるよ、大事な人はいつでもそばにいて、あなたを見ているよ

 

――不器用な剣士さん、家事は苦手でいつでも散らかしちゃう剣士さん

 

――あなたの大事な人に気づいてあげて欲しいな

 

――たった一つのお願いだよ

 

//

 

 以上の歌詞をアスカは笑顔で書き終えた。

 

――っしゃおらッッ!!お往生せえや翼さんッッ!!

 

 セレナとしての顔は笑っていてもアスカの内心は怒り模様、とにかく恨み辛みを込めた作曲。

 

 アスカ、怒りのデスポエムである。

 

――なんというか……やさしい曲ね……

 

 それを見たマリアはやさしい気持ちとなった。

 

―――

 

 翌日、メールで送られた『例の歌』を見た翼は。

 

「……」

 

 泣いていた。

 

「翼さん、涙を拭いてください」

 

「すみません、涙など要らないなんて言いながらこのザマです」

 

「すごいですね、セレナさんは……あれだけでアスカさんの気持ちを汲み取るなんて……」

 

 アスカの予想していない効果ではあったが翼にダメージを与える事には成功していた。

 

 

 再会、あるいは出会いまであと少し。

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