セレナの『不器用な剣士に捧ぐ』から始まり、マリアと翼の『不死鳥のフランメ』そして三人揃って歌う『AZURE_ANGEL』でこれ以上無い盛り上がりを見せた会場。
中継で見ている響達も大盛り上がり。
「生で見たかったなあ~!!」
「アタシも同感だ」
響とクリスは先の『任務』のせいでライブ会場には行けず悔しい思いをしていたこの二人も『セレナ』が少し『アスカ』っぽいと認識して、ちょっと懐かしいような気分に浸っていた。
――やっぱマッキーじゃないかなアレ……
――やっぱりアスカさんじゃないかなあの人
一方で未来と弓美は盛り上がりつつも、セレナが実はアスカじゃないかと睨んでいた。
本人が実際死んだ所を見ていない二人としては死んだという事実はなかなか実感がわかないのだ。
まあ事実、アスカなのであるが。
―――――
――これからこの世界全てを敵に回すのね……
マリアは沸き立つ会場を前に静かに震える、この熱気を裏切り、救うためにと夜空を仰ぐ。
そのまた何かに戸惑っているような姿にセレナ(アスカ)は歩み寄ってマリアの手を握る。
「大丈夫だよ、ねえさん……」
セレナの優しい声に覚悟の決まったマリアがまっすぐ前を見据える。
――マリアさんも結構、緊張するタイプだよね~いっつもプルプルしてるし……
仮面の下で微笑むセレナ、そこへ。
観客とステージを分かつ様に『ノイズ』達が現れ、観客達の熱気は静まり、やがて絶叫へと変わる。
――えっ
セレナはそのまま思考停止した。
「狼狽えるなッッ!」
マリアが声を張り上げる事で会場の混乱は鎮まる、がセレナはマリアの後ろに立ったまま微動だにしない。
「マリア、一体どういう事だッッ!?」
「そうね翼、あなたもよく聞いておきなさい」
思わずギアをその手に握り、今にも起動せんとする翼にも関わらず、マリアは表情を変えず続ける。
「我々は世界に宣告する、我らはフィーネ……終わりの名を持つ者!」
「フィーネ……だと」
「さし当たっては24時間以内に降伏宣言を出し、随時武力を放棄せよ、さもなくば各国の首都はノイズによって灰塵の砂漠となるだろう」
「世界を支配するとでもッッ!?」
「当然!」
マリアの突然の宣告に翼は思わず怯む、そして不気味な迄に沈黙したままのセレナ。
――わからないです、ぜんぜんわからないです
マリアの突然の奇行に完全にフリーズしたセレナ、しかし外側から見ればそれはまるで『平然』としている様だった。
「そうね……あなたも何か言いなさい」
――えぇ……(困惑)
マリアからの突然の無茶振り、完全に混乱しているセレナの口から出るモノはもうテクニカル発言しかない。
「世界が一つとなる時が来た、あの欠けた月を見るといい、人がやがて同じように地球を食い潰す前に」
だがセレナ、ポエム製造中に正気を取り戻す。
マリアの奇行は『例のフロンティア』の関係だという事に奇跡的に気付いたセレナはすぐさまポエムの方向を転換。
「私達は同じ旗のもとで目指さねばならない……フロンティアを!人間同士で殺しあう為の武力など、もはや必要ないのだ!!」
――そうですよね、フロンティアがまだなんだかよくわかりませんけど……それを武力で奪って自分達だけ安全とかそんな抜け駆けされたら不味いですもんね……だから牽制?って奴ですよね!
未曾有の災害での最大の敵は同じ人間とはよく言うもので、そういうの詳しい(アニメで見た)セレナはだいたいそういう解釈で続ける。
「当然、従わぬ自由もある、だがその時はこの天使セレナがお前達を無へ還すだろう!」
――えっ……どういう事なの……セレナ
ノリノリでテクニカル演説を行うセレナに今度はマリアがおいてけぼりを食らう番だった。
「そう風鳴翼、あなたも例外ではない……その手にした剣を置いてください……」
演技ではあるが、演技であるこそ、一番近くにある武力をまず手放させる、セレナが翼に剣(マイク)の切っ先を向けた。
「さもなくば、まずはあなたから消す事になります」
完全に演技に熱が入ってしまい、セレナのその声は真に迫っていた。
だが……。
「……やっぱりアスカじゃないんだな……」
「は?突然何を……」
翼の突然の呟きにセレナは――アスカは呆気に取られた。
「そうだ……お前が……アスカであるものか……あいつは優しくて……不器用で……とてもそんな事を出来る奴ではなかった」
「……だとして何ですか?」
――何でこの流れで私(アスカ)の話に?
アスカは困惑した、何やら肩を震わせ俯き呟く翼の姿になにやら背筋が寒くなる様な気配を感じる。
「まあいいです、とにかく平伏してくださ……」
「アスカと同じ声で、二度とそんな事を言えない様に……してやる」
そこには羅刹がいた。
風鳴翼、キレた。