暗闇に純白の楽譜が無数に描かれる。
そこには力無く呆然と浮かぶ少女、アスカと少しばかり不思議な格好をした『見覚えのある』女性が居た。
――真琴アスカ、あなたは本当に愚かね、何も考えていないようで考え込んで、他人を惑わしながら破滅へと繋がる運命を突き進んでいく
――きっとあなたはそう遠くないうちに『大好きな物語』の登場人物のように『この世界』へ『消えない傷と痛み』の祝福を与えて死ぬわ
――共に歌ったあの夜と同じ様に
『なんで櫻井先生はそんなスケスケな格好してるんですか、というかここってまさか……あの世ですか……?』
――……あなた話聞いてた?
『すみません……全然……』
楽譜が生まれては消えていく世界、アスカと対峙していたのは『フィーネ』であった。
――……まったく……安心しなさい、まだあなたは生きているわ、ただちょっと……そうね、一つアドバイスをあげるわ
『何ですか?』
――恐れるな、真っ直ぐ心を伝えなさい、あの立花響の様にね……さもないとあなた……消し炭よりひどい事になるわよ
◆◆◆◆
「私が一番!アスカをうまく愛せる!」
「黙りなさい!セレナにあなたの自分勝手な感情を押し付けないで!あの子は私が守るわ!」
「ええい!テロリスト風情が!」
槍と剣が交差して火花が散る、翼とマリア、主に欠けたモノをアスカで代用してた似た者同士。
「悪いけどマリアの邪魔はさせないデス」
「数の利はこっちにある」
「ああ……えっとうん……別に戦いたい訳じゃないし……その正直あの二人はもう勝手にやってなよって感じで……そのクリスちゃんの様子が気になるから……戦わなくていいかな?」
なにやらやる気を削がれたというか疲れた顔でザババコンビに対応する響、痴話喧嘩は何やらも食わない。
「そのダメ……デース」
「悪いけど……仕事だから……その……うちのマリアがごめんなさい……」
響の様子に察する、切歌と調、アスカがやって来てからイチャイチャというか不健全姉妹交流を見せられて、最近では『ただの残念なマリア』と認識を改めるかギリギリのラインだったが、ついに二人の中では『頼れるやさしいマリア』は『ただの拗らせたマリア』となった。
「…そのご苦労様です?」
「ありがとう……といいたい所だけど……」
「そういう訳でレッツ武力による世界平和の為に、死ぬがよい。デス!」
「どういう訳!?」
◆◆◆◆
主にアスカのせいでぐだぐだになった戦いをモニターで見守るのは二課だけではなく、FISも同じで。
「ナスターシャ教授」
「博士、それ以上は言わないでください、私も本気で頭を抱えています」
「これは大変ですね……」
「なまじ、限られた戦力であるが故に強くは言えないのです……」
まるで油で滑って進まない競走のような戦いを、見て頭を抱える者達が、そこにいた。
◆◆◆
「ハァ……ハァ……いい加減に倒れなさい!」
「倒れるのは……貴様……だ!」
まるでエレガントでない歌手二人の戦いは取っ組み合いへともつれ込み。
「あだだだギブ!ギブデース!」
「ああっ切ちゃんそれ以上はダメ!インナーがずれて危ない!……ふぅ……それ以上はいけない!」
「勝ったッ!って、ごめん……ちょっとやりすぎた!?」
「ひどいデース!?いくらなんでも外で裸にされたらお嫁にいけないデース!責任を取ってほしいデス!」
これまでがグダグダすぎて本気の戦いをやる気になれなかった響はとりあえず制圧の為に武装を封じつつ『レスリング』で勝負、まずは切歌をギブアップさせた。
「切ちゃん……ねえ」
「じょ…冗談デスよ!?」
「たはは……」
なんというか年の近い妹というか友達が出来たような気分の響だった。
で、アスカはというとまだ沈黙しており、クリスは割りとダメージがひどく緒川が回収していた。
そして……
「ぐふっ」
ついにリンカーの切れたマリアがダウン。
「勝負……あったな!」
「そうね第一ラウンドはあなたの勝ちね……でも次は負けないわ」
「負け惜しみを、貴様に次など……ぐっ」
とはいえ翼のダメージも大きい、主にクリスにアスカを先取りされたのが後になって効いてきたのだ。
「セレナ!切歌!調!帰るわよ!」
「そういう訳で帰るデース」
「またね」
「そうだね、またね……って……えっ」
あまりにも自然な、友達に掛けるようなノリについ気を抜いた響から切歌と調が遠ざかる。
「しまった!確保……そうだアスカさんは……」
響は自分がやらかした事に気付き、すかさず確保すべきもう一人を見やれば。
ぐったりしつつ再生したネフィリムにくわえられて運ばれているアスカがいた。
「あっ、別に合体してた訳じゃないんだ……」
そして突然現れたヘリによって運ばれていく一行を疲れから『不幸』にもつい見逃してしまう響であった。
「まあアスカさん居たら居たで騒ぎ起こすし……まだいいかな……」
「よくない!!」
こうして、第一接近衝突は痛み分けのような形で終わった。
――当然ながら両陣営、帰還と共に凄まじい説教が待っていた。