【更新停止】今を生きて、明日を歌う為に   作:青川トーン

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束の間の平穏

 

 

――アスカちゃん、復活という奴です

 

 散々好き勝手マリアに甘えた事でスッキリさわやか完全体となり復活したアスカは再びセレナとしての活動を再開。

 

 ルンルン気分で廊下を徘徊していると切歌と出会した。

 

「あっ…セレナ……もう大丈夫なのデスか?」

 

「大丈夫です、マリア姉さんのおかげでもう大復活です」

 

「それはよかったデス!調も心配してたから後で会ったら元気な姿を見せてあげて欲しいデス」

 

「あっそうだ、これから食堂のキッチンを借りてちょっと早いけどお昼を作ろうと思うんだけど……よかったらどう?」

 

「……えっ!?セレナって料理作れるんデスか!?」

 

「多少は腕に自信がありますよ、よかったらマリア姉さんとか教授とかも呼んで来てくれると嬉しいです」

 

「了解デスでーす!」

 

――ここ最近はレトルトだとかカップ麺だとかばかりで偏った食生活も気が滅入る原因です、気分一転……ここはそう……!料理の出番です!

 

 

 地味に積み重ねられてきたアスカの家事スキルが火を噴くぜと言わんばかりに発揮される。

 

 まずキッチンに立つとエプロンを装着、手拭いで髪を纏め、手洗い、そして冷蔵庫の中身を確認!

 

『そう、料理は栄養と美味の祝福です……人を良くする為には……!』

 

 野菜と鶏肉を取り出して、包丁代わりに『部分展開したブレード』を手にする、融合症例の無駄使いである。

 

◆◆◆◆

 

 『セレナ』それは人格を持った生体型聖遺物であり、フロンティア起動の為の鍵であり。

 

 一人の男の望みを叶える者となりえるかもしれない存在。

 

 

「……ネフィリムについてはもう粗方調べ尽くしましたが……セレナについては全然調べさせてくれませんねえ……」

 

 だが皆わかっている、セレナを調べ尽くしてしまえば、ドクターウェルは世界を敵に回しているFISからさっさと去ってしまうのだと。

 

 だからセレナを調べさせるのは最後だ、それまではしっかり働いて貰う。

 

 それが今のFISのウェル博士へのスタンスだ。

 

「あ、なんで……そんなゴキゲンなんですかマリア……いえフィーネ(笑)」

 

「フフン……今日の昼食はセレナが用意してくれるのよ」

 

――聖遺物に食事を作らせるとかどうなってんだよFIS!?どんな料理が出てくるか気になるじゃないか!?

 

「すみません、滅茶苦茶気になりますので見せてください」

 

「フッフッフ~んいいわ、特別にあなたの同席を許可するわ…ドクター」

 

 滅茶苦茶ご満悦ドヤ顔を披露するマリアと困惑と好奇心の入り交じった表情をするウェル博士であった。

 

◆◆◆

 

 じー

 

 

 月読調、現在スニーキングミッション中。

 

 実はFIS内でマリアを除けば唯一セレナの正体が二課関係者だと感付いているのが調だ。

 

 

 とはいえスパイだとか裏切りを警戒して監視している訳ではない、その辺りはマリアを信じ、セレナも信じているので問題ない。

 

「やっぱり……今日も作るんだ……でも今日はこんな早い時間……つまりはついにチャンス……」

 

 キッチンへと入っていったアスカを見届けると調はふっと笑う。

 

 そういつだったか、真夜中に一人キッチンへと入っていくアスカを見て後をつけて行ったのが全ての始まりだ。

 

 漂う良い香り、もうそれだけで何をしているのかは理解できた。

 

「これまでは恥ずかしくて分けて欲しいと言い出せなかった……それに夜も遅かったし……でも今日こそは……!」

 

 そう、勇気が無く、夜食テロに泣かされて来たのも今日まで……!

 

 勇気を持って扉の向こうへ踏み出せば。

 

「あ、調ちゃん……お昼作ったんだけど一緒にどう?」

 

「うん、頂く」

 

 踏み出せばほら、世界はこんなにも優しい。

 

◆◆◆◆

 

 

「バジル風味チキンソテーとトマトスープです」

 

――凄い、何が凄いって普通だ、あらゆる予想をぶっちぎって真っ当なモノが出てきたぞ……

 

 『普通に美味しそう』な料理にウェル博士は驚愕した。

 

「これがセレナが作った料理デスか?……なんか凄いデスね……」

 

「これが真夜中の香りの正体……」

 

 驚く切歌と楽しみにしていた調。

 

「セレナ、夜中にキッチンを使ってたのはあなたでしたか……てっきり他の職員かと……」

 

「え、とまあそうです」

 

 さすがのナスターシャ教授もセレナが料理を作っていたとは思わなかったようだ。

 

「セレナ、あなた結構頻繁に夜中に出てたわよね……どうして太らないの……」

 

「た……体力を使うので」

 

 一方マリアは体質の差に少し嫉妬した。

 

「しかし、一体これ程の真っ当な料理を何処で覚えたのですか?職員に教えて貰ったという話は……」

 

 ウェル博士の鋭い指摘、思わぬ所から自分の正体が露見しそうだと咄嗟に気づいたアスカは曖昧な笑みを浮かべる。

 

 

「……ライブの後とかで寄ったレストランの料理を再現してみたんですよ……まあそれはともかくとして冷めないうちに頂いてくださいな」

 

 なんとか追及を逃れたアスカ、この後、その料理の腕前が何処から漏れたのか、所長や他の職員にまで料理を振る舞う事となり、いつのまにか仕事が増えていく事となるアスカであった。

 

◆◆◆

 

 同日、日本。

 

「…………」

「なあ翼ぁ」

「翼さん……」

 

 クリス、響、翼の三人が囲む机の上にはモザイクのような、這い寄る混沌のような何かが皿に盛られていて。

 

「料理を、作ってみたんだ」

 

「料理?これが…か?てっきり新しい武器かと」

 

「未来も弓美ちゃんも連れてこなくてよかった」

 

 思わず本音が漏れ出す装者二人。

 

「くっ……アスカの様にはいかないな……」

 

 この涅槃キッチン事件は三人の装者の心に深い傷痕を残す事となった。

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