「はあ……」
夕暮れの校舎に一人、板場弓美は黄昏ていた。
それは友を想うため息、死んだと思えば生きていて、世界を敵に回しながら今は行方知れずの真琴明日歌。
思えば、そこまで長い付き合いではなかったが、その存在感はあまりにも重厚、ただのオタク仲間かと思いきやシンフォギア装者で、ノイズから助けられて非日常と関わる切っ掛けになって、何の間違いか回収された『残骸』を見せられ、死を思い知らされて、かと思いきやセレナとして生きていてアイドルみたいな事をやってたかと思いきや更に世界を敵に回して。
そして今は風鳴翼と雪音クリスの日常的な修羅場に巻き込まれる原因だ。
「……毎日毎日アニメみたいで楽しいのに、なんでアンタが居ないのよ……」
今が楽しくない訳ではない、でも、物足りない。
「とっとと帰ってきなさいよ……」
「板場さん、大丈夫?」
「あ……ミッキー」
「そのあだ名はダメだよって言ったよね?」
「ハイ、未来さん」
そこへやって来たのは陸上部帰りの未来だった、響は定期検査の為珍しく一緒ではない。
「やっぱり、アスカさんの事?」
「うん、私達がどうこう出来る話じゃないのはわかってる……けどやっぱりマッキーが居ないのは寂しいなって、ほら……ちょっとテクニカルだけど隙間に程よく挟まるから居ないと隙間が余計に広くなった様に見える感じ」
「まあ……わかんなくはないかな……」
小日向未来にとってもアスカはそれなりに大きめな存在だった、それは非日常の象徴であり、生と死が隣り合わせである事を知らしめ、一時的な『死の喪失』であの響を『少しばかり大人しく』させた存在。
「聞いた話とか実際一緒に過ごして気づいたんだけどマッキーはさ、自分が動く事で周りに何が起きるとか全く分かってないと思う、マッキーは……多分『本当に悲しんだ』事が無いから、ああやって……ひどい死に方をしたり、なんだか生きてても世界を敵に回したり、自分を大切にしないんだと私は思う」
「アスカさんの事をよく考えてるんだね」
「そりゃ……親友だし当然……けど、ただ想ってるだけじゃ、どうにもならないのはアニメも現実も一緒……だから……私も覚悟を持って『装者』になる為のテスト受けて見ようと思う」
フィーネが所持していた『イカロスのシンフォギア』それは今、装者不在で保管されつつも、新たな適合者を探している。
弓美はアスカのあの惨い死に様に怯み、今に到るまで適合テストを受けていなかった、だがアスカが生きていて、何故か敵対している今、彼女をどうにか止めたいと想い、弓美は装者になりたいと願っていた。
「私も響の帰る場所、日だまりでいたい……なんて言うけど、やっぱり何処までも隣に居たいからってテストを受けてみたけど、まるで適性が無かったから……板場さんもあんまり期待しすぎると落差が辛いからね」
一足お先に適性テストを受けたものの適合できなかった未来は語る。
「大丈夫、たとえ適性が無くても気合いで動くって!アニメなら」
「それ命とか大事なモノ削ってない?大丈夫?」
――三千世界、鳴いて血を吐く、アニメちゃん
ふとそんなフレーズが浮かんだ未来であったがそれを振りほどく。
「シンフォギアなら、うちにもありますよ、ユミ」
その時だった、居ない筈の者がそこに現れたのは。
「アスカ……さん?」
「ま……マッキー……なんでここに」
白い髪のセレナ、いやアスカが夕暮れのリディアンに現れた。
「あまり余裕がなくて形振り構ってられませんので直球でお願いしますが……ユミ、小日向さん、世界を救う為に、装者になってくれませんか?……まあ拒んでも無理矢理にでも連れていきますが」
その表情はいつになく真剣で、焦りの浮かんだモノであった。