【更新停止】今を生きて、明日を歌う為に   作:青川トーン

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我生きずして死すこと無し


守る、傷つける

 

 ガンガンと火花を散らして打ち合うのは烈槍と撃槍、マリアと響、クリスと切歌、調と翼、適合率の差をLinkerと消耗と覚悟と作戦で覆しFISチームは優位を取る。

 

「どうしてッ……そこまで……」

 

「言った筈よ、私達は世界を統一する、その為にまず邪魔なあなた達を倒すとッ!」

 

 武器のリーチの差もあり、ボロボロの響に対してマリアには殆どダメージがなく、同じ様に近接戦闘を強いられたクリスも大きく消耗、かろうじて翼だけが調の攻撃をいなしているが、そこはノイズをサポートに入れる事で手数に差をつける。

 

「このままでは埒が明かん……ッ!」

 

「セレナの言った通り……ノイズも使い方次第……!」

 

 そう、この作戦を立てたのは他ならぬアスカ、とんだ裏切り行為である。

 

 翼相手のノイズと装者の連携攻撃はかつて実際に翼を苦戦させたモノ、前回はガングニールであったが今回はシュルシャガナ、対策を練っていたが、初めて戦う相手で少し勝手が違う、だがこれくらいで引く防人ではない。

 

「なっ…動かない……!?」

 

 ノイズを倒した爆風に紛れ投げ放った小剣の『影縫い』で調の動きを止める。

 

「しまった…っ!」

 

「貰った!」

 

 勝機とノイズを蹴飛ばし、蒼ノ一閃が放たれる、だがそれが調に届く事はなかった。

 

 白い影が稲妻を纏った一撃に割り込んで受け止めた為だ。

 

 

「セレナ……!」

「アスカっ!」

 

 それは私服姿のセレナであり、アスカだった。

 

「この服、気に入ってたんですが仕方ないですね」

 

 生身でギアの攻撃を受け止めた故に纏っていた服はズタズタに吹き飛び、あられもない姿になっているが気にする事無く、調の影縫いを解くセレナ。

 

 ギアと完全に同化している為にその肉体は既に人のモノではないと知っているが故の無茶。

 

「セレナ……いくらなんでも生身で受けないで……少しヒヤヒヤした……」

 

「大丈夫ですよ調、私は……ヒトデナシなので」

 

――そう、友を巻き込み拐い、仲間を裏切り、仲間を騙すヒトデナシでロクデナシです

 

 誘拐した弓美と共にいつものステルスキャリアに乗ってマリア達を迎えに来たセレナ、かなり消耗した二課の装者達を見て心が痛むが。

 

――邪魔をされるわけにはいかないんです、だから……

 

「ここで決着をつけましょう、翼さん」

 

 本当に決着をつけるつもりではないが、しばらく動けないくらいには痛め付けるべきだと、『セレナ』は冷たく判断し『アスカ』は軋む心で受け入れた。

 

 

 

「アスカ……私はお前に聞きたい事が数え切れない程にある……だが今は……今は一つだけでいい……だから答えてくれ」

 

 真剣な表情で告げるセレナに翼は覚悟を決めて問い掛ける。

 

「まだお前は、私は友と想ってくれているか?」

 

 翼の真っ直ぐな眼差しに、表情こそ変えなかったが、アスカの心は怯む。

 

――やめて、戦えなくなる

 

「答えるまでも、ありません」

 

 だからアスカはセレナとなった、自分の心を溶けた蝋で覆い、翼の言葉を押し潰した。

 

「だからこそ、叩き潰します……あなただからこそ……叩き潰して、私は進まなければならない……私自身の為に」

 

 守る為に傷つける、最大の矛盾を抱えて駆け出すセレナ。

 

 アスカとしての心はこれ以上耐えられない、だから何も考えず、冷血な理性で温かな心を殺して翼を倒す事に決めた。

 

――感傷を捨てろ、過去に囚われるな、昨日があるから今日があり、今日があるから明日がある、明日の為に役目を終えた過去を殺せ、翼さんを生かす為に翼さんを倒せ、それは矛盾しない。

 

 

 

 聖詠によってイカロスを纏うセレナ、その手には欠片から同化構築した『天羽々斬』

 

 それを目にした翼が思い出すのはかつてアスカが告げた言葉。

 

『翼さんは私が守ります』

 

――お前は相変わらず、不器用だな……私もか

 

 何故か翼にはセレナの、アスカの真意がはっきり伝わった確信があった、それは天羽々斬の欠片が繋いだモノなのか、それとも『愛』か。

 

「ならば信じたその上で、お前を止めてみせる!」

 

 そして、取り戻してみせると翼が駆け出した。

 

 

 瞬く間に縮まる距離、二つの剣がぶつかって走る稲妻、技量では翼が上、パワーではセレナが上、しかし消耗を差し引いても意志の強さで力の増すシンフォギア。

 

 迷いを殺しているセレナと大きく消耗しながらも迷う事なく進む翼、互角であった。

 

――技量では私は勝てない、ならば力と数で押すしかない、だが死なせてはならない、だから私の選択は

 

 セレナは背部ユニットからアンカーを射出して攻撃、しかし翼はそれを見切り千ノ落涙で迎撃。

 

「私も……」

 

 それを見ていた調がセレナの援護をしようとするが、セレナは冷静にそれを止める。

 

「調は切歌かマリアの援護に、消耗した相手ぐらい直ぐに押し潰せます」

 

「随分と余裕だな!」

 

「ええ、余裕です、私は賢いので」

 

 セレナはイカロスの有利を生かして、ブースターを吹かした蹴りを放って距離を取ると上空に舞い上がり、天羽々斬を展開して力にモノをいわせた『蒼白ノ一閃』を放つ。

 

「地の利を得たとて!」

 

 それを翼は本家『蒼ノ一閃』で返して打ち消し、跳躍。

 

「わざわざ私の世界に領空侵犯なんて!」

 

 踏ん張りの利かない空での剣撃など恐れる事はない、だが念には念をともう一振りの武器、ルガーランスを手にするが。

 

 月明かりが陰った。

 

「天ノ逆鱗ですかっ!!」

 

 空から降ってきた剣を間一髪で回避、それは『蒼ノ一閃』がぶつかり合った一瞬の隙に投げられたモノだった。

 

 だが遮られた視界は致命的、剣が通り過ぎた向こうには再び『蒼ノ一閃』を放つ翼が居た。

 

 せっかく得た手数の有利を手放すしかない、ルガーランスを投げて盾としてそれを防ぐセレナ、そして攻めの手を緩めず翼が『千の落涙』を放つ。

 

 イカロスの飛行ユニットに直撃を受け墜落するセレナ。

 

「やっぱり強いですね……翼さんは」

 

 決して大きなダメージではない、だがバランスを崩してしまえば飛ぶに飛べない、あっという間に有利が無に帰した。

 

「だからこそ、ここで勝つ」

 

 故にセレナは、切り札を切る。

 

「命を使ってでも」

 

 それはシンフォギアに搭載された決戦機能。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal――」

 

 絶唱。

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