原作が次から次へと新しい設定が出てくるのでなかなか思い切れず……
作戦決行前夜、セレナは一人で所長室に居た。
あれから作戦準備はナスターシャ教授とウェル博士に任せきり、自身の最後の為に確認をする。
それはソロモンの杖と錬金術師達から与えられた『アルカノイズ』の確認、そして『分解弾』の効果の確認だ。
現在のシンフォギアのバリアフィールドをも突破出来てしまうアルカノイズは非常に危険だ、分解弾もアルカノイズと同様のチューニングが施されている。
今こそ協力者であるがパヴァリア光明結社はこの先、間違いなく敵になりえる。
それはセレナの、ではなく……装者達の、だ。
「なんとか、しませんと……ね」
アルカノイズが封じられた12個の結晶の内3つ、分解弾も3発分、箱に仕舞い、残りを『衣装』と『拳銃』に仕込む。
「櫻井先生、いえ……フィーネ……さん」
『……時間が足りん、設備もない、本格的な対策は無理だな、だが完全融合体のお前なら別に問題ないだろう?』
「そうなんですか?」
『分解されるより早く切り捨てて再構築できるお前にはあまり脅威ではないよ、コンバーターさえ壊されなければの話だがな、それよりもいいのか?』
「何がです?」
『……わかっているのか?お前は世界を敵に回すのだぞ、ただ一人で』
「ああ、大丈夫です……シナリオは出来ました、少しアドリブが必要ですが、演じるのも……慣れましたし」
『………そうか、まあお前がそれでいいなら』
「いいんです、花は散れど実は残る……私の想いも、きっと残る、出来るなら風に吹かれて散りたい……ですね」
『……お前は、風鳴翼の事を愛しているんだな』
「……当然他の皆も好きです……でも翼さんは特別な『好き』なんです、理由なんてどうでもいいってくらい……まあ、伝えるつもりはありませんよ……私は明日、死ぬんですから」
『まったく、変な愛の形もあったものだ、だが……嫌いではない』
「さすがに一万年単位で恋するフィーネさんには敵いませんけどね……」
セレナではなく、アスカとしての最後の夜に語り合うのは奇しくもかつての敵であり、かつての仲間。
愛する事、その共通点が繋いだ語らいは必然だったのだろうか。
◆◆◆◆
「マリアさん……」
「ユミ、明日……フロンティアの浮上と共に私はフィーネに挑む、そのどさくさに紛れてマムと切歌と調があなたを逃がすわ」
かつてセレナの部屋であった場所でマリアと弓美は居た。
「私はずっと、死んだ妹の影を追って生きてきた、けど分かった……いえ、分かっていたの……過ぎた時は戻らない、今、私は向き合わねばならないと」
弓美はこの二日間、慌ただしく変化する状況を冷静に分析する。
一つ、旧所長をセレナが殺害しその座を奪う
二つ、そしてセレナはかつてこの組織の黒幕であったフィーネを名乗る、フィーネとなれば元の魂は上書きされてしまう
三つ、フィーネは他人を道具としてしか見ていない、世界を救う為のフロンティア計画も、世界を支配するモノに書き換えられるかも知れない
四つ、しかしその計画の最大の要は「板場弓美」というただの少女。
――マッキー、本当にその「フィーネ」になったの?もしかして……また自分を犠牲にして何かをするつもり?
アニメでこういう展開になった時は大体、本当に黒幕として暗躍していた場合と、世界の為に自分を敵に仕立てあげる場合がある。
――マッキーなら、やりかねない……「私の引いたレールも此処までです、さようなら」とでも言いそうね
少なくともテクニカル発言やあの自己犠牲をいとわない性格からして、十中八九やる。
「マリアさん、二課に……私の友達にどうにか連絡する方法はありませんか」
「……無くは無い……けれど私達は敵対して……」
「大丈夫です、絶対にわかってくれます……それに私はマッキーも……アスカも助けたい……友達だから」
――絶対にそんな事はさせない、そして一緒に帰るの
弓美は手にしたペンダントを握りしめた、それはセレナのイカロスの同化特性を利用した「チューニング」を受けた神獣鏡のギア。
このチューニングは、ギアを装者に合わせる事で適合率を「一時的」に上げる事が出来る、しかし時間内であればノーリスクで適合出来るあたり凄まじいモノである。
だが同時にその制限時間を過ぎれば、非常に危険だ。
適合率が低下すれば瞬く間にバックファイアが襲いかかってくる、故に神獣鏡の特性も含めて起動時間は2分40秒をタイムリミットとする。
――いざという時は、私も……
終わりは、もうすぐそこに。