世界が見守るそれは黄金の裁定者と神々しき輝きを放つ少女の戦い。
――熱い……身体中から炎が噴き出しそうだ……でも……!
響自身、今にも自壊してしまいそうな事には気付いている、それでも戦わない訳にはいかない。
後退りは後悔、前のめりにならば一転して生きられる!
『今さら、一人増えた所で変わらない、何も、何も!』
――響ちゃんの纏うソレもシンフォギア……聖遺物ならネフィリムで食い尽くせる筈だ!それしかない!
アスカもまた、自身の心のまま、後悔をせぬ為に選ぶ。
高まるフォニックゲインはいまや世界中から集まっている。
このペースなら「限界」までに何とかなりそうだな、とフィーネは冷静に分析するが。
――それはそれとして、フロンティアの操作を忘れるなよ
――大丈夫です、あの体はまだ使えますから
セレナとして動いていた時の体にも「天羽々斬」の欠片をコアとして聖遺物を少し残している。
瓦礫の下ではあるが、意識を移してみればきちんと体は動いた。
――今さらですが……人間やめてますね、私
――そうね、創造者もきっと驚くわ
そしてアスカは一人二役、二つの体を同時に動かしながらの『救済劇』を熱演する。
「はああああッッ!」
先に動いたのは響だった、最短で一直線の拳がネフィリムに突き刺さる。
『ぬぐうっ……このエネルギーは……』
それはネフィリムのエネルギー吸収を上回る威力、なるほどとアスカはネフィリムの腹部から触手を生やすが、すぐさま響は飛び退り回避。
ならばとネフィリムの全身から屈折レーザーを空中の響に向けて放つ。
しかしそれも空を蹴る事でことごとく避けられ、ネフィリムの頬に連撃が刺さる。
しかし、アスカはわざとネフィリムの肉体強度を下げ、右腕に響の拳を突き刺さらせて動きを止める。
――肉を切らせて!骨を絶つ!
そこからネフィリムの力とイカロスの蝋を響の体に纏わせて覆っていく。
「力が…抜けて…く……」
流石に直接触れ続ければネフィリムのエネルギー吸収がどうにか勝つ、だが。
「マアアアスト!ダアアアアアイ!!」
緑色の閃光が、ネフィリムの腕を切り落とし、響が解放される。
暁切歌のイガリマだ、だがイガリマにこれ程の力があっただろうか。
あるのだ、今のイガリマと切歌には。
禍々しいオーラを纏ったイガリマ、口から血を流す切歌。
「切歌…ちゃん……?」
「あなたと並んで戦えるなんて思ってもみなかったデス……願わくばもっと早くに……並べたらよかったデスね……」
「切ちゃん!?」
調が叫ぶ、理解してしまったのだ、その力の源が命そのモノである事を。
「ぜっ…しょう……!?」
――絶唱!?切歌ちゃんが何故!?
――マズいぞ、イガリマの絶唱は防御できない、お前であろうと「死ぬぞ」
イガリマの絶唱特性を開発者であるフィーネは知っていた。
それがアスカを殺しうるとも。
ただでさえ無理難題と言える難易度が加速度的に上昇する。
――切歌ちゃんを燃え尽きさせずに、響ちゃんからガングニールを奪う為にすべきは
『絶唱を使ったか、だが遅かったな、時は満ちた』
ネフィリムが形を変える、それは大樹の様な姿。
フロンティアの建造物を覆う様に無数の触手を広がらせていく。
「何だ!?」
「なんだよ!?」
翼とクリスを。
「きゃあっ!?」
「なあっ!?調!?」
「うっぐ!?」
調と切歌、そして響を。
その場にいる装者達を巻き込んで、『根』は際限なく広がっていく。
――役に立ちましたね、スカラベ型フェストゥムのパスタ攻撃の発想が!
――お前……いやいいのか……
「こんの野郎!!」
クリスにガトリングで触手を撃たれても。
「こんな小細工!」
翼に切り払われても。
それを上回る速度で触手の数を増やせばいい。
「デェエエエス!」
イガリマの鎌を回転させ、根を削いでいく切歌。
その吐血の量はだんだん無視できなくなっていく。
――ごめん
故にアスカは調を後ろから触手で拘束し、動きを止め、それを人質として切歌の動きを止めた。
「切歌ちゃん!」
それを救い出す為に立ち上がる響、だが。
「う゛っっ!?」
響の右腕から金色の結晶が生え、膝をついた。
――まずいわ、もう立花響はガングニールの侵食に耐えられない
――まだです!
アスカはネフィリムの触手を響に突き刺す。
「立花ああああっ!?」
翼が叫ぶ、クリスが目を背ける。
だが止まる事なく触手は次々と突き刺さり、響の体を持ち上げて、ネフィリムがその体に取り込んだ。
――まだだ、生きるのを、諦めないで……!
アスカはその想いだけを胸にネフィリムの中で響からガングニールを奪っていく。
――こんな事なら!神獣鏡があれば……!
ここで思い出すのは聖遺物を除去するのには最も適していたソレ。
同時に先程のコントロール室へ向けて動かしている『セレナ』の体。
『天羽々斬』を纏わせて無理矢理動かしているが今から『神獣鏡』を取りに行かせる事も――
その時、紫色の輝きが響を取り込んだ部分をもろともに貫いた。
くり抜かれたかのようにネフィリムに空いた穴、宙に舞ったのはギアが解除され、ガングニールの結晶から解き放たれた響。
――……まさか!?
そして響を受け止めるのは紫色のギアを、神獣鏡を纏った。
板場弓美だった。
「来て……よかった……後悔せずに済んだ……」
血を吐き、膝をつきながらも不敵に笑う弓美。
――……本当にありがとう、私の友達
「確かに助けたよ、ビッキー……小日向……それに……マッキー」