【更新停止】今を生きて、明日を歌う為に   作:青川トーン

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―これで、最後です―


明日歌-つづく-

 

 夜空に欠けた月が満ちる。

 

 それを見ていた誰もが諦めかけた、少女達は倒れ、屈したかの様に見えた。

 

 だが歌はまだ途絶えていなかった。

 

 新しい歌が始まる、それはまるで新しい明日を告げる歌に聞こえた。

 

 人々はつられてその歌を口ずさむ。

 

 生まれ、育ち、死んで、また生まれ、続いていく様なメロディを。

 

 空を優しい光が覆う、人々が目をあける、世界中に中継されていた終末の舞台に立ち、歌を紡いでいたのは心折れて諦めたかの様に見えた「マリア」だった。

 

「諦めるな!!進み続ける事を!立ち上がる事を!そして生きる事を諦めるな!」

 

 銀の指輪をしたその右手に握るのは、破損していた筈のアガートラーム。

 

 「ニーベルングの指輪」を手にした時、何故か、導かれる様に思い出したそのギアは「セレナ」が遺したモノ。

 

 二人の「妹」の遺志を抱いて、歌えばその「銀腕」は確かに応えてくれた。

 

 それは「ニーベルングの指輪」が、天羽々斬とイカロス、そして真琴明日歌の歩んだ役割である「欠けた何かを満たす」という特性を持った為だった。

 

 イカロスによって人生に欠けていた友を得て、天羽々斬の欠片によって奇妙な形とはいえ絆を得て、その二つとの融合で、マリアと出会いを得て、セレナという役を演じる事でマリアの心の傷を一時とはいえ塞ぐ役割を得て、そして今、一つの物語の終わりの為の最後のピースとなって。

 

 本人も知らないうちに「そういう概念」となっていた。

 

 イカロスの羽根の材料である蝋は、物を繋ぐ為に使われる。

 

 きっと絆を繋ぐというこじつけにもなれたのかもしれない。

 

 何だかんだ、世の中はやったもん勝ちである様で。

 

 高まったフォニックゲインが月へと照射される事で『天と地』を繋ぎ、それでも溢れたモノが装者達にも降り注ぐ。

 

 それを見ていてマリアは響がギアを失っている事に気付き、苦笑いしつつも『烈槍』を手にして。

 

――今までありがとう、ガングニール……そしてこれまでの私!

 

「立花響!これを使え!」

 

 見事なコントロールでガングニールのペンダントを投げるマリア、そしてそれをキャッチする響、結構な距離があったが、この世界――強く信じる者が勝つのだから、問題はなかった。

 

 これから始まるのは歌。

 

――信じてよかった、本当によかった……ここまで生きてよかった、こんなバカみたいに恥ずかしい想いをしてよかった

 

――私も随分と綺麗なモノを見せられて驚いたが、お前にも恥ずかしいという自覚はあったのだな!それが一番驚いたぞッ!

 

――失礼ですね!!

 

 明日に続く、歌だ。

 

 

 

◇明日歌-つづく-◇

 

 70億の絶唱によって立ち上がった7人の装者を見てアスカは心の中で笑みを浮かべる。

 

――さて、ここまで来ればもう遠慮は要りません……こちらも盛り上げましょうか

 

 

『人の意思を束ねたか、だが既に裁定は下された!抗おうとも全ては虚無だ!』

 

 再びネフィリムの姿を変える、フロンティアの地を燃料として新たに顕現させる姿は大きさ50メートル程の赤と金の巨人。

 

『全てを裁く、それが我が存在理由(レゾンデートル)』

 

 アスカの中の強大なラスボス像はファフナー・マークレゾンをイメージして作られた姿。

 

 そしてずっと隠し持っていた「ソロモンの杖」で呼び出すのは巨大なノイズの群れ。

 

 まさに最終決戦に相応しい絵図となっていた。

 

「無意味なんかじゃない!決して無意味なんかにさせない!」

 

 マリアが先頭に立ち叫ぶ。

 

「そうだ、人の心の光は!繋がる心で越えて見せる!」

 

 ガングニールを纏った響が続いて並び立ち。

 

「私達は勝つ!みんなの力で!」

 

 神獣鏡を纏った弓美もその隣に立つ。

 

『ならばやって見せろォオオオ!』

 

 ネフィリム・レゾンの両の肩から放たれた無数のレーザーにより火蓋は切られる。

 

 装者達が思い思いの武器を振るいまずはノイズを蹴散らす。

 

 

「数ばかり揃えようと!」

「今さら一山いくらのノイズで止まるかよォ!」

 

 翼の天羽々斬は一振りの斬撃で空を埋め尽くす様なノイズの群れをなぎはらい、クリスのイチイバルは重武装で広域に渡り殲滅。

 

「こんのぉ!邪魔デース!」

「切ちゃんは私が守る!」

 

 切歌はイガリマで巨大なノイズを切り裂き、調はシュルシャガナでその背を守る。

 

 

「ぇ…っと……無に還れぇええ!」

 

 初めてまともに戦う事となる弓美は神獣鏡の色からマークニヒトをイメージし、巨大なエネルギー球を作り出し、それをノイズの群れに投げつける。

 

 破邪の特性を持つ神獣鏡のソレは不慣れでふよふよな巨大なだけのエネルギー球にも破邪を付与、近づくだけでノイズを次々と消し去っていく。

 

「や……やりゃ出来んじゃん私……アニメみたいに!」

 

 想像以上の破壊力に思わず顔がひきつる弓美だった。

 

「合わせるぞ!ついて来れるかッ!」

「合わせますッ!」

 

 そして響とマリアは直接ネフィリム本体を叩く。

 

 ガングニールとアガートラーム、突撃槍を二つ形成して、同じタイミングで同じ場所へ、即興のシンクロにてネフィリムに突撃する。

 

『させるものか!』

 

 それに対抗するのはエネルギーまかせのバリア。

 

「止まるッ……!」

「ものかァアアア!」

 

 アガートラームのエネルギーベクトルの操作はそんな出力まかせの雑な防御を軽々と無力化、そしてガングニールの、響の繋ぐ力がその特性を共振させ、バリアを粉砕してネフィリムの左半身を貫いた。

 

 

『人の力、思いの力、歌の力、いくら集めた所で、束ねた所で、いつかは無に帰す、思いは踏みにじられる!一万年それを見続けてきた絶望を!わかるものかあッ!』

 

 イカロス役に熱が入ったアスカがネフィリムを即座に再生させ、右腕を砲へと変形させる。

 

『これで終わりだ!悲劇も!希望も!もう沢山だ!静寂なる虚無へ還れーッ!』

 

 興奮のあまりありったけのエネルギーを右腕に収束させるが、所々「イカロス」が限界を迎え、ネフィリムに飲まれ始めている。

 

――これが最後、最後の一撃です……フィーネさん……ここまでお付き合いありがとうございました

 

――馬鹿者、こんなにエネルギーを使って奴らが勝てると信じているのか?言ってみれば核以上の威力だぞ

 

――信じてます、ですのでまた来世、縁があれば

 

――フッ……なら来世も演劇家にでもなれ、ひょっとすれば縁が出来るかもな、面白い見せ物だった――

 

 

「ならば何度でも歌う!」

 

 マリアが叫ぶ。

 

「何度でも束ねる!」

 

 響が叫ぶ。

 

「何度でも奏でる!」

 

 翼が叫ぶ。

 

「何度だって聞かせてやる!」

 

 クリスが叫ぶ。

 

「何度でも!」

「絶対にデス!」

 

 調と切歌が叫ぶ。

 

「だって!そうやって進んできたんだから!」

 

 弓美が叫ぶ。

 

 7人の装者のアームドギアが合わさり二つの金銀の拳となる。

 

『終われッ!』

 

――続け、明日へ

 

『「歌い続けるッッ!」』

 

 誰一人、そう、敵を演じるアスカさえも欠ける事なく明日を願った。

 

<Nex† Des†ination>

 

 

『ならば、信じるよ』

 

――いい歌だった

 

 

 ネフィリムに空いた風穴、ひび割れていくイカロスのコア、薄れていく意識。

 

 ネフィリムに貯めていたエネルギーは一兆度を越えられる程、故にこのまま爆発する訳にはいかない。

 

――行こうか

 

 

 爆発の瞬間、ソロモンの杖でネフィリムを諸ともにバビロニアの宝物庫へと送り込む。

 

 それは周囲にはまるで天へと還る光の柱に見えた。

 

 こうして『一万年の観測者で裁定者』と『地球の危機』は『演者』と『真相』共に消え去った。

 

 






―おつきあい、ありがとうございました―
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