元中二病同士の青春ラブコメ?   作:いろはにほへと✍︎

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絶えずあなたを
何者かに変えようとする世界の中で
自分らしくあり続けること
それがもっとも素晴らしい偉業である。

―エマーソン―



ほらーまん!

 ディスティニーランドに遊びに行ってから数日が過ぎた。

 

 少しずつ教室も通い慣れ、比企谷に電話やメールをするのも躊躇しなくなってきた。

 

 私はメールのアプリを開くと、比企谷からのメールを開いた。

 

 『別に』

 

 いつも、朝なに食べた? とか、帰ったら何するの? とか簡単なメール。

 

 奴はいつも返信する気があるのか、ないのか。

 

 無愛想な比企谷にどう返信するか、少し悩む。

 

 どう送っても、同じく返ってくるのだ。

 

 『ああ』

 

 『そうだな』

 

 『おう』

 

 比企谷は語彙力がないのだろうか。

 

 つっこんでも『そうかもな』としか帰ってこなかった。

 

 んー。どうしようか……。

 

 「二ブー! お昼食べよー!」

 

 「あ、うん」

 

 「……また誰かとメール?」

 

 「……ヒキタニ? 彼氏?」

 

 「ちょっ、何勝手に見てんのよ!」

 

 「えー、二ブー。彼氏ー?」

 

 「ち、違うわよ!」

 

 「好きなのー?!」

 

 「ち、ちが……、うこともないこともないかもしれないけど……」

 

 「片思いってことー?!」

 

 ……まずい。収拾がつかなくなってきている……。

 

 どうにかしなければ……!

 

 私はお弁当を持つと、全速力で部室へと走った。

 

 × × ×

 

 部室へ入ると、冨樫くんと小鳥遊さんがいた。

 

 こいつら……。いつも昼時にいないと思ったら……!

 

 「に、丹生谷?」

 

 「なに!?」

 

 「いや、昼に部室くるのは初めてだなぁと」

 

 「……悪い?」

 

 「いえ……」

 

 「勇太。しっかりして! 丹生谷は闇の者に魂を持っていかれている! ここは凸守に助けを……」

 

 「やめなさい」

 

 私は落ち着いて止める。

 

 あの中坊なんて呼ばれたら、さらに面倒なことになるのは目に見えているからだ。

 

 「ていうかいつも二人で食べてるの?」

 

 「ああ。まあな」

 

 「そう。私と勇太はいつも一緒」

 

 「もう惚気なくていいから」

 

 「というか丹生谷にも、相手いるんじゃないのか?」

 

 冨樫くんが極当たり前のように私に尋ねる。

 

 対して、何のことかさっぱり分からない私は聞き返す。

 

 すると冨樫くんがまた、極当たり前のように名前を口にした。

 

 「ほら、比企谷と仲良いから付き合ってんのかと――」

 

 「うるさい!」

 

 私はその勢いで置いてあった枕を投げつける。

 

 「ぐはっ!」

 

 「ゆ、勇太! 大丈夫?!」

 

 「ああ。大丈夫だ。どうやら丹生谷は本当に闇の機関に――」

 

 「ぐはっ!」

 

 「洗脳されてないわよ!」

 

 「もう何このバカップル!」

 

 私はそう捨て台詞を吐くと、そのまま部室を後にした。

 

 × × ×

 

 四月になると寒さも和らぎ、自然と電車を使うことが無くなった。

 

 同時に比企谷に会うこともなくなった。

 

 通学路で会うだろうと思っていたが、電車のように定時刻がある訳でもないのでお互い帰る時間はバラバラだった。

 

 とはいっても会う理由も特になくて誘うことは出来ないでいた。

 

 というか! 私、別に比企谷のことはなんとも……、思ってないわけじゃないけど……。

 

 実際、自分がどう思っているとか分からなくなっていた。

 

 好きとか嫌いとか、男とか女とか、そういう境界線を失ったようだ。

 

 一人考え込んでいると、突然、話しかけられた。

 

 年齢は四十そこそこってところだろうか。

 

 ジャケットとジーパンにキャップ。明らかに若造りだ。

 

 「ねえ、お姉ちゃん。ちょっと道教えてくれない?」

 

 自然な感じで話しかけられた。

 

 「いいですけど……、どこに行きたいんですか?」

 

 「えっとここなんだけど」

 

 そう言うと、地図を差し出される。

 

 「あー、ここなら。ここから……」

 

 「へえ。ありがとうな」

 

 「いえいえ。それでは――」

 

 私がそう言って去ろうとすると、止められた。

 

 「ちょっと待ってよ」

 

 「はい?」

 

 私は何か不味い雰囲気を感じて、さりげなく逃げ出す準備を始める。

 

 「お礼してあげるからさー」

 

 「いえ、大丈夫です……」

 

 「そんな事言わずに!」

 

 「いえ、本当に大丈夫です!」

 

 途中で気づく。

 

 最初からこう持っていくつもりだったと。

 

 男は何度も断る私を見かねたのか、突然、肩を掴まれた。

 

 「やめてください!」

 

 「俺の親切を無駄にした君が悪いんだからね?」

 

 私はそのまま、いつからか止めてあった車の方へ連れていかれる。

 

 生憎ここはあまり人が通らない。

 

 助けを求めるのにはあまりに不向きな場所だった。

 

 ――もう終わりだ。

 

 そう思った瞬間だった。

 

 「思い通りに行かないから誘拐ってなにその超理論……。おっさん落ち着いてください」

 

 不意に知った声が耳に入った。

 

 ここで助けに来てくれるなんて、正義の味方?! ヒーロー?! と思ったのも束の間。

 

 現れたのはぼっちの味方、比企谷だった。

 

 × × ×

 

 「は? 意味わかんねえ事言ってんじゃねえぞ」

 

 おじさんが声を荒らげる。

 

 対して比企谷は落ち着いて、冷静に受け答えする。

 

 「いや、そのまんまっすよ。マジで通報しますよ」

 

 「お前、何言ってんの? 俺は親切心でなあ」

 

 「いや、嫌がってる奴連れ込もうとしてる時点で親切じゃないでしょ」

 

 「だいたい同意の上だ!」

 

 そう支離滅裂なことを言うと、何を狂ったのか私のスカートの方に手を伸ばす。

 

 「……や、やめ……」

 

 声にならない叫びが私の中を暴れ回った。

 

 だが、それは外に出ることなく、私の中に沈んでいく。

 

 「おいマジで通報するぞ。やめろ」

 

 私の内心とは裏腹に比企谷は冷静だ。

 

 もう少し焦ってほしい。

 

 「うるせえ! この子もいいって言ってるんだよ!」

 

 いや、何言ってんのコイツ。

 

 思わず冷静につっこむ。

 

 「……話通じない奴ってマジでいるのか……。俺はもう忠告したからな」

 

 そう言うと比企谷は徐々に距離を詰めてきた。

 

 「おい、しつこいなお前。彼氏かなんかなのか?」

 

 呆れたように尋ねられると比企谷は面倒そうに口を開く。

 

 「いや全然。だだあんたとは違って名前くらい知ってるぞ。何なら黒歴史もな」

 

 それからすぐに警察のサイレンが聞こえた。

 

 「おい。まさかお前」

 

 「いやあんた善悪の判断ついたのか」

 

 「は?」

 

 「今自分が悪いことしてるって分かってたんだなってことだよ」

 

 「てめえ!」

 

 訳が分からないが、男はそのまま比企谷に殴りかかる。

 

 比企谷は避けなかった。

 

 「……っ! 比企谷!」

 

 今度は声が出た。

 

 本人は少し息が切れているが平気そうだ。

 

 「いってぇ」

 

 比企谷が呟くと同時に警察が到着した。

 

 私が指をさして、比企谷が指示すると警察は未だに暴れている男を取り押さえた。

 

 私はその瞬間、安堵で地面へ崩れ落ちた。

 

 × × ×

 

 少しずつ野次馬が集まってくる中で、私は比企谷の元へ行き、お礼をすると同時に問いかけた。

 

 「なんでさっき避けないで殴られたの?」

 

 「ああ。動画撮ってたからな……。いやー、死ぬほど恐かった。」

 

 比企谷の用意周到さに呆れる。

 

 いつそんな時間があったのだと。

 

 というかまさか途中まで見てたんじゃ……?

 

 「……まさか、途中まで見てたんじゃないでしょうね……?!」

 

 「……いや、何にでも証拠は必要なわけで……」

 

 「さいってー! 女の子が困ってるんだからすぐ助けに来なさいよ!」

 

 「いやだって普通に恐かったし……。寧ろ俺よりお前の方が力あるんじゃないのか」

 

 比企谷は冗談めかしてそういうと、警察の人に呼ばれて話を聞かれていた。

 

 次は私か。

 

 そう思うと少し面倒だが、姑息なぼっちヒーローのおかげで助かった分、ちゃんと協力しよう。

 

 ……ていうか忠告する前に通報してるよね?

 

 私は一人、静かにごちると疲れも相俟って崩れるように座り込んだ。

 

 




どうも超展開
俺ガイル×ごちうさ書きたい!!
けど需要がない!!

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