元中二病同士の青春ラブコメ?   作:いろはにほへと✍︎

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どうやって生きるかなんてことは、

誰も他人に教えられないよ。

それは、自分自身で見つけるものだ。


―ボブ・マーリー―



だーくふぇありーふぇすてぃばる! こうへん!

 

 「駆けつけたぞヒッキー!」

 

 「ヒッキーはやめろ」

 

 文化祭実行委員としての自分の仕事をほとんど終えて丹生谷との待ち合わせ場所に行ってみればそこはすでにパラレルワールド――平行世界が展開されていた。

 俺はそこに土足で踏み入る。おかげでやつら――富樫、小鳥遊、で、デコ……? は一度平行世界から元の世界に戻ってくることになった。

 小鳥遊と、で、デコ、凸谷は再度、平行世界に戻ろうと呪文を唱えはじめた。

 

 「バニッシュメント――」

 

 「はいはいもうバニッシュメントはいいから」

 

 すると、小鳥遊がまるではっと我に返ったような迫真の演技を魅せる。

 

 「勇太! こいつは独立した世界――インディペンデントワールドの住人の様だ! 至急応援を!」

 

 「富樫、早くあほナシ止めてくれ」

 

 「あ、あほ?!」

 

 小鳥遊が可愛いらしい反応をして、ふと俺もやつらのペースに飲まれていたことに気がついた。

 丹生谷はもはや何も言わず、俺は話題を探していた時に、五月七日先輩がいないと知った。

 

 「で、比企谷。このあとどうする?」

 

 「んー、じゃあ模擬店でも回るか?」

 

 「そうだね、そうしよっか」

 

 丹生谷は俺の意見に賛同してから微笑みを浮かべる。なまじ美人なだけあって鼓動が早くなってしまった。俺はごまかすように足元の石を蹴る。

 

 「まあさしあたっては……こいつらどうする」

 

 じとっとした目――普段から腐っているよりもさらに腐らせて、中二病ご一行を睨めつける。

 

 「まあいいんじゃない? たまには一緒に」

 

 「……マジ?」

 

 思いがけない提案に一瞬固まってしまった。

 

 「大マジよ、仕方ないじゃない……」

 

 「いやまあ確かに……」

 

 やむを得ず、賛成する。「ほら行くわよ」と丹生谷が声をかけると皆ぞろぞろついてきた。

 

 まあ、いいんだけどさ。たまには、ね?

 

 × × ×

 

 どんどんぱふぱふ! と祭りを楽しんでいる、否アホたちの行動を止めているうちに泣きたくなって来た。

 

 一時間ほど食べ歩きみたいにゆっくり話ながら回っていたが、奴らはうるさい、うるさい。おかげで俺も丹生谷も大して休む時間を取れず、終始奴らのフォローに回った。というか今になって考えると、冨樫なんのために来たんだ。ちゃんと止めろ。帰らせるぞ……。

 聞いてよ! 奴らは、とにかく「Van!shment Th!s World」って叫ぶんだ。

 

 例えば焼き鳥を見れば、バニッシュメント。

 しかもスイーツを見れば、バニッシュメント。

 あるいは演劇を見れば、バニッシュメント。

 ともすれば剣豪将軍に、バニッシュメント。

 

 なんでもバニッシュメントすればいいとか、甘えてんじゃねえぞ! バニッシュメントしても、断じて許しませんからね僕は!

 っていうか最後、お相手の剣豪将軍も楽しそうだったわ。我の力が分かるとは! (涙)だった。もういっそ一緒にプロットとか考えろよ。そんなことを考えてたり、剣豪将軍対小鳥遊、凸村でバニッシュメントしているうちにまた三十分間経過してエンディングが近づいていた。

 

 木材……木炭……木材屋を放って置いて体育館に移動するとちょうど休憩に入ったばかりの雪ノ下がいた。彼女はふうと一息ついてから俺たちに気づいてゆっくり近づいてきた。

 

 「お疲れ様、ヒキタニくん」

 

 「おう、そっちこそな。絶壁ノ下」

 

 「なっ……そもそもそういうところで判断するところが性差別的であなたの人間性の薄さが滲み出るわね。いい? 私はそんなところはまったく気にしていないしむしろ人間性によってその人の価値は決まるべきで……」

 

 「わかったわかったごめんなさい」

 

 筆舌に尽くしがたいくらい雪ノ下は早口で言い連ねてから、不満足そうにため息をつく。それからワンテンポ遅れて丹生谷に挨拶をした。

 

 「こんにちは、に、に、錦鯉さん」

 

 「に、しか合ってないじゃないの……。私の名前は、ニ・ブ・タ・ニ!」

 

 「ごめんなさい私としたことが。先ほどの非礼は許してちょうだい、煮豚似さん」

 

 「なんかすごくバカにされた気がする」

 

 「そんなことないわ」

 

 丹生谷と雪ノ下は、最近やりとりが攻撃的というか、時期的に俺と丹生谷が付き合い始めた頃から雪ノ下が攻撃的になってきた。

 雪ノ下は長い髪をぱさっと払うと、俺たちの周りの現役中二病患者たちにも、慈悲深くも挨拶をする。というかこいつら、他人が話してる時に黙ることとかできるんだな。……いや、雪ノ下のオーラですね。こいつら気が小さいんだった……。

 

 「そろそろエンディングね」

 

 雪ノ下がアホたちとお戯れをしたあと、俺が見ても分かるくらいオシャレな時計に視線を落としてから呟いた。

 どうやら剣豪将軍と、雪ノ下さまのお戯れによって大分時間が割かれたらしい。俺もスマホを見て終わりの時間が近づいていることを確認した。

 

 「そうだな、大したことはできなかったけど、俺も戻る時間だわ」

 

 予定より早く戻る必要がありそうだったので、悪いな、と丹生谷に一言だけ詫びる。他の連中? 誰?

 

 「いいよ、大丈夫。そりゃまあ寂しいけど」

 

 「ま、あとで打ち上げとかやらされるだろうし呼ぶわ、丹生谷だけ」

 

 「受け身なんだ……しかも私だけ」

 

 「なっ! ちゃんと私も呼んでほしいです」

 

 「凸守も呼んでほしいデスっ!」

 

 少しいじるように言うと、設定を忘れて小鳥遊と凸林が飛びかかってきた。それを躱して丹生谷の表情を浮かがうと本当に少し寂しそうだった。まったく……何日もいなくなるわけじゃないぞ。

 

 「あとで会えるから」

 

 それだけ呟いて行こうとすると、ぐいっと袖を引っ張られた。振り向いてみれば、丹生谷が顔を真っ赤に染めて俯いていた。

 

 「好き、って言って」

 

 「はっ? なんで今?!」

 

 脊髄反射で後退りしてしまった。丹生谷は下を向いたままぽしょりと呟く。

 

 「心配だから……相模さん、とか」

 

 なるほど、と得心がいった。どうやら丹生谷は相模が俺に好感を持っていると勘違いしているらしい。付き合って違いだから……。きっと……。

 しかし、彼女の心配を払拭するのは男の役目。

 周りが注目するなかで言うのはきついので、そっと耳元に寄って囁いた。すると、丹生谷はさらに耳を真っ赤に染め上げて俺の耳元に来る。

 彼女は髪をかきあげて、ふわりと良い香りを漂わせると、まるで俺の耳を食べるんじゃないかというほどの距離に来た。

 

 「――私も、私も好きだよ」

 

 彼女はぴょんぴょんと一二歩下がって、手を後ろに、真っ赤な頬で太陽みたいに微笑んだ。




ついに本当に完結……!?

どうも、ひとまず? 文化祭編のアフターストーリーは完結です。あれ? 打ち上げは? って静かにしなさい、そこ!

ゆっくり、ゆっくりやってきたので長いようですが十何話で完結してたんですね(笑)
全体的に反省する点は数多いです……。

新作『あるいは、彼女は決意する。』を書き始めました。今は5話くらいです。静かに二人の後輩は決意する。(完結済み)とは違い、純粋な八オリです(笑)宣伝になりますけれど、こちらもどうぞ読んでみてください(笑)

いつも感想・評価、誤字脱字報告ありがとうございます! 感想は全て読ませていただいていますし、おそらく必ず返信しています(笑)

それでは、文化祭編ありがとうございました!

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