ストライクザブラッド~ソードダンサーと第四真祖〜   作:ソードダンサー

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中盤戦にさしかかりました。


孤島の武装蜂起篇Secondmission
孤島の武装蜂起篇Secondmission1


激しい拷問を受け、独房に放り込まれた火乃香はどうにか突破口を探していた。

壁の向こう側には常に敵兵士が1人見張っている。そして唯一の出入り口になりそうな扉は1箇所しかない。

さてどうしたものか…。

ほのかの知りうる全ての周波数を探り出した。

ここで気づいた。頼りなさそうだけどあの男を使えばいいと。

この基地にいながら、火乃香との協力関係にあるあの男なら、なんとかしてくれるかもしれない。

「オタコン聞こえるか?」

『どうしたのアルマース1』

「敵に捕まったから助けてくれない?」

『いいよ。どこの独房にいるの?』

「どこにいるかはわからないが近くに天井から鎖が垂れている部屋だ」

『あそこか!わかった僕も今近くにいるから助けに行くよ』

どうやら助けに来てくれるらしい。装備品は先ほど拷問を受けた部屋に置いてあるのが見える。突然壁の向こうにいる見張りの兵士がお腹を抑えながらトイレへ駆け込んだと同時に、拷問部屋の扉が開き、若干分かりにくいがちょっとした空間の歪みが独房の扉に近づいて来た。

「お待たせ!それにしてもひどい傷だね」

「あぁ…それよりも、早く出してくれ!」

「ごめんこの扉は電子制御じゃなくて物理的にロックがかけられているんだ」

「だったら見張りから鍵を奪ってくれ!ちょっと気絶してもらうだけだから!」

「僕は科学者だぞ?!人殺しなんかできやしない!それにもしかしたら殺されるかもしれないんだ!」

「殺すんじゃない気絶してもらうんだ!」

「どちらにしろ無理だ!僕じゃできない!…これケチャップとレーションこれでうまくしのいで!…あ!見張りが戻って来た!じゃぁね!」

「お、おい!」

火乃香を置き去りにしてステレス迷彩でどこかへ行ってしまった。

ケチャップとレーションで美味しいご飯を作れとでも言いたいのかと愚痴りたくなるが、まさかなと思いながらも、うつ伏せになりケチャップをお腹の下にしまいこみながら、ゆっくりと出す。所謂死んだふりだ。

「!どうした?!」

…………(((なんで騙される?!)))

火乃香だけではなく、この状況をモニターしていたディスカバリーにいるメンバーも心の中でツッコミを入れる

こんな見え透いた子供騙しにも律儀に乗ってくれるとは、なんとも真面目なのかそれとも一周回ってボケ担当なのか、いや火乃香による彼の評価はボケ担当というふうに決まってしまったが…。

重たい扉の施錠が解除され、死体もどき(火乃香)に近づこうとした瞬間火乃香は相手の顎に手をかけ転ばし、部屋を出た。

ふと部屋の中を見ると見張りは気絶しているようだった。軟弱なやつで助かったと思いながら、拷問部屋を抜けた。拷問部屋が位置していた場所はドナルドアンダーソンが拘束されていた部屋のすぐ近くだった。

そこから装備を整えた火乃香は真っ直ぐと連絡通路へ向かう。

今回はスナイパーウルフはいなかったようだ。そのままあの忌々しい扉を潜り、第1ヘリポートの階段を登って行く。

なんだって?エレベーターは使わないのかだって?HAHAHA!エレベーターが止まっていたんだよチクショー!

エレベーターが止まっていたことや様々なストレスで火乃香はどうにかなってしまったらしい。

そして階段を上る行為というのは舐めてもらっては困る。登っても登っても上が見えてこない。見栄えの変わらないコンクリートの壁と鉄の階段だけが続く景色と聞こえるのは自分の足音と荒くなっていく息。

「いつまで登らにゃならんのだ!」

つい叫んでしまった。なぜなら既に9階以上の高さを登っているからだ。

上ること数分、今までずっと登っていたが、途端に平坦な通路にたどり着いた。目の前にはおそらくもう1つの通信塔に行くための連絡橋があるのだろう。ゆっくりとセキュリティ扉の横についているパネルにカードを翳そうとしたが、扉が開かなかった。

「オタコン扉が開かないんだが…」

『おかしいな…普通は開くはずなんだけど…』

「?」

火乃香はじっと扉を見つめるとあるものを発見した。

『どうしたの?』

「溶接されてる…」

『溶接?なんでわかるんだい?』

「溶接した後がしっかりとあった…オタコン他に行く方法は?」

『あるにはあるけど…ラペリングしなきゃ無理だよ?』

「ならそれで行こう…嫌な予感しかしないけど…」

嫌な予感がするということは100%何かあるということだ。

この島に来た際に見たハインドDもまだ何処かにいる。

梯子を登り、第1ヘリポートの屋上に出た。

大きなパラボラアンテナやヘリポート、変電施設などが存在し、その先には第2ヘリポートの屋上が見えた。ヘリポートをつなぐための連絡橋などはなく、下を見ると溶接された扉の反対側にある連絡橋が見えた。近くには頑丈なロープがあり、十分な長さだ。

しかし安全に降下するために必要なハーネスがない。別にハーネスがなくてもラペリング降下はできるが、頼りになるものは自分の腕力と握力だけになってしまう。それに着用しているスニーキングスーツの強化繊維がどこまで耐えられるかわからない。加えて今火乃香の腕は何箇所か切り傷を負っているためうまく力が入らないことも懸念される。

ロープを括り付け、降下しようとした瞬間、ハインドのローター音とともに機銃掃射された。

《ガハハハハ!ソードダンサーァ!ここで決着をつけるぞ!》

バルカンレイヴンの声だ。

壁からは蒸気が噴き出し、さらに降下を難しくした。ハインドの機銃掃射はちょっとした動きで避けることもできる。しかし機銃によって火乃香の命を支えるロープが切られれば真っ逆さまに落ちてしまう。急いで懸垂降下を開始する。

ギリギリを銃弾が通る。

まるで獲物をゆっくりと追い込ん出るかのようにハンティングを楽しんでいるかのように絶妙なまでに弾がばらまかれる。

降下するにつれ、強化繊維のグローブは段々と擦れていくのを感じる。グローブ越しにロープが食い込み手が痛むが泣いている暇はない。連絡橋まで残り15メートルほどの地点でロープを手放し、落下する。うまく受け身を取り無事に着地成功した。

そして連絡橋を渡り第2ヘリポートの中へ入る。

中の構造は第1ヘリポートと全く同じらしい。同じフロアにエレベータがあったためボタンを押したが電源が落とされているらしく反応がなかった。仕方なく階段で下に降りようとするがその階段が何者かによって破壊されていた。

「クソッ!」

誰かの妨害を受けている。誰が見てもそうだと言い切れるほどにだ。

第1ヘリポートの連絡橋といいこの妨害工作といいおそらくレイヴンがやったのだろう。

仕方がないので屋上に出るためエレベータ前を通ろうとした時、ガサゴソと音が聞こえた。

「誰だ!」

壁から飛び出しソーコムを構える。

「僕だ!僕だよ!アルマース1!撃たないで!」

ステレス迷彩の電源を切り即座に手を挙げ射撃の制止を呼びかけたのはオタコンだった。

「オタコンか…驚かさないでくれ…」

「いやぁごめんだけど君の勇姿を下から見ていたよ!まるでハリウッドのワンシーンみたいだったね!」

ニコニコと笑いながら先ほどの降下を語っていた。

しかし火乃香は複雑な顔をした。

「現実は映画みたいに華やかで見栄えの良いものではない…自分が生き残るために泥だらけになり必死になる…それが俺の生きる世界さ…」

「…アルマース…君に1つ聞いても良いかい?」

「なに?」

「人は戦場でも愛は芽生えると思う?」

唐突な質問だった。火乃香は目を見開き、オタコンの顔をまじまじと見る。オタコンの表情はなにかを期待しているようでもあった。

「…そうだな…人は…どんな場所でもどんな時でも…人を愛することができる…だけどそれはとても容易なことではない…もし愛を享受したいのならば、その人を守り抜く覚悟と信じる心そして何倍も愛することが大切だ。俺はそう思っている」

「君に恋人は…?」

「いる…だけど…苦労や心配ばかりかけているがな。だから彼女達が笑顔で居られるように最大限の努力をする…それが俺がしてやれることだ」

脳裏には笑顔で手を差し伸べてくるラ・フォリアと夏音の顔が浮ぶ。

今も心配をかけている。だから必ず生きて二人の元に戻る。こんな島で野垂れ死ぬことだけは避けなければならない。

「そう…なんだ…ありがとう!」

オタコンはどこか満足したような顔でどこかへまた走り去ってしまった。

火乃香は屋上に向かうため、ゆっくりと階段を登り始めた。

数分登ったところで屋上に出ることができた。

見渡せば隅っこにスティンガーミサイルが置いてあった。

『スティンガーを手に入れたか』

ナスターシャ・ロマネンコが通信を入れてきた

『これならば勝率が若干上がる!』

「勝率が若干上がる?何言ってるんだ?」

『君はわかっていない。確かにM1エイスブラムを対戦車ミサイルなしにグレネードと地雷だけで倒し切った君とは言えど、相手は対戦車ヘリなんだぞ!生身の人間では勝つ事は不可能だ!だがそのスティンガーを手に入れたならばそのゼロに近い確率も10パーセントくらいは上がった!』

「随分と酷評してくれるな」

『それだけ勝つ見込みがなかったという事だ。いいかアルマース1。スティンガーミサイルは短射程の携帯型誘導ミサイルだ。赤外線センサーで相手を捕捉し、あとは打ちっ放し(Fire-and- forget)だから君は照準をヘリに合わせ引き金を引くだけであとは全て機械がやってくれる。冷戦下で行われたソ連用兵器としてアフガン侵攻の際アメリカが現地で活動するムジャヒディンに対ソ連用兵器として提供されたんだ。スティンガーによってソ連は戦術を見直さなければなくなったほど有効的な打撃になった』

「へぇ…」

『まぁ君が唯一気をつけなければならないのが機銃掃射くらいだろう。健闘を祈る』

通信を終了し辺りを見渡す。遠くからヘリのローター音が聞こえた。

《準備運動は万全のようだな刀使い(ソードダンサー)!楽しませてくれ!》

大音量の外部スピーカーで挑発され、機銃掃射を受ける。屋上にはコンテナが置いてあった。そのコンテナをうまく利用しながら銃弾の雨を掻い潜る。

スティンガーのシーカーを開き、照準を合わせる。ヘリをロックオンし、引き金を引いた。

樹脂製コンテナからミサイルが超音速でレイヴンの操るハインドDに突っ込んでいった。

ハインドDはフレアを撒き散らしながら回避行動を取ろうとしたが、2波長光波ホーミングによって赤外線と紫外線を辿ることも可能としているため、フレアによる妨害を難なく躱し、ローターに直撃し、エンジンが被弾した。大きく期待がぐらつきながら

墜落していく。

火乃香はゆっくりと手すりにつかまり下を見下ろす。あの爆発で生き残ることはまず不可能だ。恐らくは死んだだろう。念のため双眼鏡で墜落現場を確認する。

コックピットは燃え上がり、レイヴンと思しき死体が燃えていた。

「地獄に堕ちたか…」

『アルマース1!エレベーターが動いたよ!』

「助かる」

『ハインドを落としたの?!』

「蝿を一匹堕としただけだ…」

『……そっか…君にとってヘリを一匹落とすのなんて造作もないことなんだよね…』

「何か言ったか?」

『!いや!なんでもない!それより、きちんとルートは覚えてるかい?』

オタコンが小さく呟いていた。

「あぁ…この建物の一階にあるセキュリティ扉の先にある平原に出た後700メートルほど東に行ったところにあるんだろ?」

『問題無いみたいだね。幸運を祈るよ!』

第2ヘリポート屋上から地上へ降りるために来た道を永遠と下っていく。

オタコンと出会ったエレベーター前に着いた。

先ほどオタコンからエレベーターの作動が可能になったとの連絡を受けていたので早速操作パネルを押す。

無事動いてくれたようだ。

ほんの10秒程度で火乃香のいる階層に到着しエレベーターへ乗り込む。

エレベーターに乗ること10秒。一階に到着し、目の前にあるセキュリティ扉を開け細い通路を道なりに進んでいくと、平原へ出るための扉を見つけた。屋上でハインドを落としていた時もそうだったが、嵐が潜入した時よりも酷くなっていた。

扉を潜ると小高い丘が250メートル程先に存在していた。

高低差は約10メートルほどと言ったところだろう。荷物の運搬する為のトラックやその先には木が生えていた。

そしてこの平野には火乃香の心音と風の音以外に、『(ウルフ)』の遠吠えが聞こえた。(ウルフ)がいるという事は火乃香を一旦地獄に落とした女スナイパーもいることになる。より一層緊張が増す。

地形的に観ても火乃香のいるところは障害物がなく、そして高度が低い為、こちらからは見えにくく相手には見えやすいという状況だ。警戒していて損はないだろうと考えていた。姿勢を低くしゆっくりと前進していく。

____________________!

撃たれる!

火乃香は右に転がる。その0.1秒後には地面に穴が開いていた。

『流石だね刀使い(ソードダンサー)!まぁ今のはわざと外したのだけれど』

「!スナイパーウルフ!…貴様…よくもやってくれたな…!生きてこの島から出られると思うなよ…!」

『ウルフだって?!』

オタコンが殺伐とした通信に割り込み、嬉しそうに話しかけてきている。

刀使い(ソードダンサー)…死ぬのは貴方よ…?』

『待って2人共!話し合えばわかるはずだよ!』

「目を覚ませオタコン!こいつは俺とお前を殺そうとしている組織の人間だ!」

ストックホルム症候群___拉致監禁された被害者が心理的に生き延びる為犯罪者に心を許してしまう症状だ。オタコンはこの軟禁生活で自然と生き延びるためにウルフを受け入れ、挙げ句の果てに恋心まで抱いてしまったのだろう。

ハインドを落とす前…オタコンとあったあの時、戦場でも愛は芽生えるかなんて聞いてきた時に気がつかなかった自分を責めた。

ハインドを落とした時から微妙に感じていた嫌な気配。素直に従っていれば、もしかしたらオタコンとの通信を一時的に切断していれば。ウルフが獲物(火乃香)を挑発する為に入れてきたこの無線を聞かせることもなく。火乃香はウルフをあっさり殺すことができたはずだった。

『刀使い…貴方に1つ教えてあげる…私が今いる場所…貴方がよく見えるわ…』

無線機越しにでもわかるほど熱い吐息とともに甘く囁く。それはまるで恋する少女のようだった。

スナイパー()が自らの存在をアピールしてくるとはスナイパー()失格だぞ?」

『私の宣言は死の宣言…私が近くにいるという事は貴方のしも近いという事』

『まって!ウルフ!やめて!お願いだ!』

『五月蝿い!子供は指くわえて見ていろ!』

愛おしい人との会話に突如割り込んだ元カレへの塩対応を彷彿とさせる光景だった。火乃香もこれ以上オタコンをこの会話へ割り込ませるのは余りにも酷な事だ。それに彼女は狼の死かそれとも刀使いの死どちらかを望んでいる。だったらそれに答えるのは筋だ。これ以上オタコンをこの通話に割り込ませ続けると火乃香は彼女を殺し辛くなり、自分が刈り取られてしまう。

「オタコン!目を覚ませ!こいつも俺もお前の生きる甘ったれた世界には生きちゃいない!」

『楽しませて頂戴…刀使い(ソードダンサー)!』

スナイパーウルフ()との最後の決着(デスゲーム)が幕を開けた。

 

 

 

 

タイムリミットまで残り13時間




モーイクツネールトクリスマスー彼女のいない私はクリぼっちを謳歌します└(՞ةڼ◔)」
あまり細々と書いて長くするのも読みづらくするだけかなとおまってしまうし、かといって大雑把に描き過ぎたらただでさえ文才がなく状況や心理的な描写がわかりづらいというのに、更にわかり辛くしてしまうしで…難しいですねぇ…SS書くのって。
だんだんと設定を忘れてきているのも問題ですけどね…
プロット書いてないんで結構ガバガバではあります。許してください!
こんな作品ですがこれからもよろしくお願いします!

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