ストライクザブラッド~ソードダンサーと第四真祖〜   作:ソードダンサー

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孤島の武装蜂起篇Secondmission3

平原を後にし、いくつかある扉をセキュリティカードで開いていく。

それぞれ武器弾薬、それから手ブレを抑えるのに利用しているジアゼパムなんかも手に入れ、装備を整え最期の扉を開いた。

中にはコンテナがいくつか積まれていて、天井の隅にガンカメラが設置されていた。

火乃香は迷わずチャフグレネードのピンを抜き、部屋に放り込む。

数秒してから小さな爆発音と共に金属片がバラ撒かれ、ガンカメラの無効化に成功した。そっと奥にある地下整備基地へ続くであろう階段を下り、扉を開けた。

扉を開けた瞬間、熱風が火乃香の体全体に吹き付けてきた。

部屋の中を見渡すとマグマのような液体が下に溜まっていた。溶鉱炉のようだ。

(暑い…早く抜けたいな…)

火乃香は目の前にある昇降機に乗るため、ボタンを押そうとした。だが、その瞬間見てしまったのだ。見張りの兵士1人を…。

その兵士は丁度手すりの側にいた。しかも鼻歌を歌いながらだ。

火乃香は兵士を見ているとなぜか無性に腹立たしい気分になった。

ーこのまま背後から下にある溶鉱炉に突き落とせば楽に処理できちまうぜ!アニキ!ー

火乃香の中にいる悪魔が囁く。そして普通だったらここで天使が現れ、邪悪な考えに喝を入れ、早まった行動を止めるのだが、何せここは戦場だ。そんな天使なんて現れることはなく、遂に名も知らないJAMの兵士をちっとも哀れに思わずに、後頭部を勢いよく抑えつけ、上半身が手すりから乗り出したところ両足を持ち上げ、手すりの向こう側へと突き落とした。

奇声を上げながら溶鉱炉に落ちていき、ジューと音を立てながら沈んでいった。

『アルマース1…流石にあの処理の仕方はひどいと思うんだが…』

『あなた何か日常生活で不安やストレスを抱えているの?』

『うわぁ…あれは可哀想だよ…!非道徳的な人ね!』

大佐、ナオミ、メイリンがこぞって火乃香を非難してくる。

しかも無線越しだというのに、司令部にいる他の人達からも白い目を向けられているような気がした。

「武器装備は現地調達なんだろ?貴重な物資を無駄にはしたくないし、何より地形を利用するのは基本じゃないか?!それとナオミ…ストレスや不安というが戦場にいてストレスを感じない奴は人間でもなんでもない!もしそんな奴がいるならばそいつは重篤潜在犯かコンバットハイになっている兵士、最悪は精神崩壊を起こした奴だけだ!道徳的にと言うことも同じだ!戦場で道徳を大切にしていたら真っ先に殺されてしまう」

それぞれ3人を黙らせ通信切断した。

思い返せば8時間前、拉致同然の強引さで部隊招集を受けた時から火乃香にのしかかるストレスは相当のものだった。それからと言うものの、無駄にガンプレイをかましてくる厨二爺さんや、既に死んだと思っていた過去の仲間との殴り合い、女スナイパーに望んでもいない好意を寄せられ、更に敵の手に落ちてわ拷問を受け、一方的にではあるがオタコンが愛する女スナイパーを殺し、そしてこれからメタルギアの破壊と核の発射阻止、場合によっては自分の最後の血縁者である兄を殺さなければならないのだ。これだけのプレッシャーとストレスを受け続けているのだ。たかが溶鉱炉の中に兵士1人を突き落としたからといって、何も感じない。それどころか、少しスッキリしたのは仕方のないことだ…と、少なくとも本人はそう思っている。

昇降機に乗り、下の階層へ向かう。

一階には大きな搬入扉とボイラー室があった。

火乃香はボイラー室の方へ向かい何かないか探した。

探ること数秒。ボディーアーマーを見つけた。ボディーアーマーを身につけ、火乃香は搬入扉へ向かった。

火乃香が搬入扉に近づいた瞬間大きな扉はゆっくりと開き、その奥に続く搬入用のエレベーターに乗り込みさらに地下へと進んでいった。

地下に着くとそこは先程までいた溶鉱炉とは真逆の極寒の地だった。おそらくは巨大な冷凍室か何かだろう。歩哨がちらほら見えるが余裕で突破し、そのまま真っ直ぐ通路を走っていった。

扉を抜けると排水施設があり、反対側には扉見えた。おそらくそこにメタルギアが眠っているのだろう。

反対側の扉まで走り、セキュリティカードで開けた。

横幅約3メートルほどの細い通路を抜けた先に見えた。

遂にだ。巨大な鉄の塊が。それはまるでティラノサウルスを彷彿とさせるような巨大な恐竜が。

メタルギアとの対局だった。

「大佐…メタルギアだ…」

『あぁ…』

息を呑むほど大きくそしてどこか冷たい雰囲気を纏っているようなそれでいてかつてこの地上を支配し、王者として君臨していたティラノサウルスのように堂々としていた。

その圧倒的スケールに火乃香は息を呑んだ。

「大佐…メタルギアだ…REXだ…」

『あぁ…遂にたどり着いたか…アルマース1!REXの核発射能力を確認し、破壊するんだ!』

大佐からの最終任務が言い渡された。

火乃香は周りを見渡し、上に上がるためのハシゴを見つけた。

何回かハシゴを登り、高さ約15メートルほどにある頭部に登った。

通信がなった。オタコンからだ。

『アルマース1!』

「オタコン!どうした?」

『今僕の研究室にいるんだ!』

「で?それがどうした?」

『REXのミサイル発射を止めるためには3つの鍵が必要だっていったの覚えてる?』

「あぁ…3枚のPALキーが必要だったな…だけど俺は一枚しか持っていない…!残りは奴らが持っているかもしれない…」

『安心してアルマース1!今ベイカー社長のネットワークシステムにハッキングしているから!』

「そうか!お前ハッカーだったな!」

『うん!その道で僕の横に出る人はいないと自負してるよ!』

大きくでたオタコンに心強く感じる。浅葱よりも腕がいいのは確かだ。いや浅葱も負けていないだろう。そんな心強い味方の情報を待つことにした。時間が惜しいので目の前に見える地下管制室に向かうことにした。おそらくあそこで全てを操作するのだろう。管制室の窓は強化ガラスでできていることぐらい想像つく。

部屋には人影が2つ。双眼鏡で覗く。

1人はオセロット、そしてもう1人が霞だ。すぐに管制室の入り口に向かい、聞き耳をたてる。

「計画の進行具合はどうだ?」

「順調です。予定に変更はありません初弾の着弾地点は予定通りニューヨークに設定しています」

「わかった。では予定通りニューヨークに向けて発射する」

『アルマース1!やったよ!』

「オタコンか…どうした?」

『3つの鍵についてだ!いいかいアルマース1、君の持っている一枚の鍵で三枚の鍵の役割をするんだ。形状記憶合金ってことだよ!鍵の順番も間違ってはいけないよ。順番に熱した鍵、冷やした鍵、そして常温放置した鍵だ』

「わかった」

『部屋の中央に3つのボックスがあるだろ?』

「あぁ」

『その目の前にカードの差込口があるからそこに差し込むんだ。全てのボックスが沈んだらPALキーの入力が完了して、描くの発射が阻止される!』

「助かった!」

オタコンとの通信を切った。火乃香はウルフが死んで酷く落ち込むかと思っていたがそうでもなかった。いや彼は酷く落ち込んでいるのだろう。しかし、彼はそれを表に出さず忘れようとしているのだろう。彼女の死から必死に目をそらすために、自ら役割を求めて。

一旦火乃香は溶鉱炉へ行き鍵を熱し、形を変形させ管制室の入り口にもう一度戻った。管制室に霞たちはいないようだった。チャフをばら撒き、監視カメラを無効化し、部屋に侵入する。

そこからは作業だった。それぞれ鍵を熱しては差込み、冷やしては差込み、そして最期の鍵を入力する。

鍵の変形を待つのは意外と時間がかかった。3つ目のボックスが沈んでいき、そして機械の音声が流れ出した。

《第3のPALコードが入力されました。接続可能な核発射台を検索します………見つかりませんでした。》

「なに?!核が見つからない?!オタコンどうなっている?!」

『それは僕にもわからない…!今そっちのネットワークに侵入して…よし!…えぇぇぇえ?!』

「どうした?!」

『核が持ち出されている…』

「なんだって?!大佐!」

『あぁ!ずっとモニターしていたからわかる!それと、その島の周辺に巨大な潜水艦が向かっているぞ!軍事衛星から送られてきたデータによれば400メートル級だ!もしかしたら関係があるかもしれない!』

世界で最も最先端軍事技術を保有するロシア、アメリカのさらに10年先を行く軍事技術を持つCFFですら想像を超える大きさの潜水艦が向かってきているらしい。400メートル級の潜水艦なんて聞いたことがない。第二次大戦時に沈んだ戦艦大和の全長263メートルだし、アメリカ海軍所属の最新鋭原子力空母ロナルド・レーガンでも全長333メートルだという。それよりも巨大な船を開発していたとなると、CFFはJAMを見くびっていたようだ。JAMは恐らく、この世で最大の軍事組織なのかもしれない。

後ろでバタバタと騒がしい。クルー達が慌てているのだろう。ここにきての急展開に理解が追いつかない。

ふと窓の外を見ると霞がREXの上に立っていた。くそっ!何処までも舐めやがって!

火乃香は管制室を飛び出しレックスへ向かって走った

「霞!!!」

腹に力を入れて大声で叫んだ。

「お前たちは常に後手に回っていたというだけだ!それといい知らせだ」

『火乃香!ワームホールドライバーのシステムが乗っ取られた!』

「なぜワームホールドライバーが奪われた!大佐の話じゃ全くもって別系統なんだろ?!」

『スパイが紛れ込んでいたらしい…それも本部に、だ。たった今連絡が入った。スパイを捕まえたと。しかし…ウィルスが流し込まれたあとだった…』

なんてザルな警備なのだろうか。この基地でもそこまでザル警備ではなかった筈だ…と火乃香は少なくとも思っていたい。しかし、国連軍の警備がザルなのは仕方のないことだった。それは万年人手不足によることが起因している。

最悪のシナリオが動き出そうとしていた。

そんな状況の中REXを乗せたエレベータがゆっくりと登るのだった。

「さて…アーセナルギアが到着するまでまだ時間がかかる…それまでに、全て明かそうか…なぜ俺がこんなことをしているのかを…」

 

 

 

 

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-ディスカバリー艦内にてー

時は火乃香が敵の手に落ちたところまで戻る。

稲垣隼人は新たな一手を打とうとしていた。

「COMBAT FAIRY FORCE全軍へ通達。総員戦闘待機、繰り返す総員戦闘待機」

総員戦闘待機。CFF第一特務隊から第十特務隊及び、特殊航空戦闘団の作戦展開を意味する。

「メイ・リン、海軍技術部へ繋いでくれ」

「は、はい!」

メイリンへ海軍技術部に繋いでもらった。海軍技術部ー水上戦力の乏しいCFFにとって水上戦力増強のために用意された組織だった。

「レイス艦長…あれ(・・)の準備はできてるか?」

『ええ、既にそちらへ向かわせています』

「一隻は作戦海域へ、もう一隻はアメリカ西海岸へ」

『わかっていますよ』

白の制服を着た40台半ばの男が海軍式の敬礼をし、モニターは再び火乃香のバイタルを映し出した。

「司令官、どうしてですか?」

「まぁそのうちわかるさ…念の為だよ…それと彼の回収もしなければならないしな」

この読みが数時間後には当たっていた…最悪の形として




次くらいで武装蜂起篇は終わりになると思います(終わるとは言っていない)

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