ストライクザブラッド~ソードダンサーと第四真祖〜   作:ソードダンサー

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書きます今回で右腕篇完結です。


聖者の右腕6

「ただいま〜」

オイスタッタハとの戦闘を途中で放棄した火乃香は自宅に帰宅していた。

「おかえり、火乃香」

「あれ?阿夜姐ぇまだここに居たの?仕事は?」

「有給休暇の消化だよ。那月に留守番を頼まれた」

十二単のように着物を着込む阿夜は優雅に紅茶を飲みながら本を読んでいる。

「ふーん書記(ノタリア)の魔女が留守番ねぇ…自分の妹に家族サービスしてあげたらどうなの?」

「優麻は、新しく確認された魔導書の回収任務に就いている。」

「妹を働かせて自分は優雅に休暇かよ」

皮肉100パーセントのセリフを吐いた火乃香に、阿夜は苦笑せざる終えない。

そんな中、リビングに那月が突如現れた。

「姉さんおかえりー早かったねぇ。」

「ただいま。火乃香…お前が途中で抜けだすからあの暁古城(バ カ)が余計な事をしてくれた!お陰で私は苦労したんだからな!」

どうやら古城はオイスタッタハに対し獅子の黄金(レグルス・アウルム)を召喚したのはいいが、眷獣から迸る稲妻でこの島が沈みかけたらしい。

「それはそれはご苦労様だよ。じゃ晩御飯作ってきまーす」

「さっさと作れこの愚弟!…とそうだお前に部下ができるぞ」

「部下?」

「オイスタッタハが連れ回していたホムンクルスだが、検査が終わり次第うちに来るからそのつもりでな」

「なんで!?」

「いくらテロまがいなことに加担していたとはいえ本人は望んでいなかった。更に眷獣が植え付けられた人工生命体(ホムンクルス)なんて珍しいからな。3年間の観察保護処分が下された。そして攻魔官であり教育者の私が適任と言うわけでアスタルテの面倒をみる事になった!(忠実なメイドが欲しいから引き取った)」

「ふーん」

冷めた目で火乃香は那月を見る

「なんだ…?」

「別に」

本音は口にしていないがダダ漏れだ。

こうして新しい家族を迎える事になった南宮家はいつもより少しだけ騒がしい夕食となった。

________________________

事件を解決した次の日担任の南宮先生から新学期そうそう無断で早退した罰として、追試が言い渡されたため古城は彩海学園の食堂で追試の対策を行なっていた。古城の目の前で火乃香は優雅に紅茶を飲みながら『ガリバー旅行記』を読んでいた。

その姿はどこか那月に似ている。

「クッソ…那月ちゃん…!なんで追追試なんて…!一応この島を救ったんだからそれでチャラにしてくれたっていいだろ!」

「まぁ、救ったと言っても古城が眷獣の扱いを少しでもミスってたら今頃俺たちは海の藻屑になっていたところだ…。そう考えると古城の功績は無いに等しいんだぞ」

「はぁぁぁあついてねぇ」

そう言いながら古城は必死で問題を解いているがどこか落ち着きがない。

「落ち着かないみたいだね」

「当たり前だろ…姫柊にあんなことしちまったんだから」

あんな事とは恐らく吸血だろう。すると雪菜が古城と火乃香のところにやってきた。

「どうだった!?」

「古城…がっつきすぎだ…」

「はい。陰性(だいじょうぶ)でした。」

「はぁぁぁあ、よかったぁ。姫柊をその…『血の従者』にしちまったんじゃねぇか…って気が気じゃなくて」

『血の従者』ー吸血鬼が身体の一部を与えて作り出す1代限りの疑似吸血鬼の事。その身体の一部と言うのは唾液や血液なども含まれており、吸血行為の最中に唾液が侵入したり、月齢などの条件が重なることでも『血の従者』になり得るのだ。

「でもあの時は月齢も計算して比較的安全な日だってわかってましたから」

「あ、あと傷とか残ってないか?」

あ、はい。ちょっと血が出ただけで、最初は少し痛かったですけど、そんなに苦しくなかったですし、跡になる事もなさそうです」

(おかしい…いやらしい意味の会話ではない筈なのに、誰かに聞かれたら確実に修羅場になりそうだ)

火乃香の背中には嫌な汗が滲みでてくる。彼の危機察知能力が反応している。火乃香自身、己の危機察知能力は人類…いや地球上の全生物で最も優れていると自負している。彼の危機察知能力と危機管理能力のおかげで戦場では何度も仲間の命と己の命を救ってきた。彼が所属する世界最強と言われている国連軍総司令長官直属の特殊作戦部隊【『COMBAT FAIRY FORCE』通称CFF。日本なんかでは妖精部隊なんて言われることもある】の作戦指令本部長、つまり稲垣隼人からも火乃香の第六感には度々助けられている。故に彼の能力は最も信頼できるものである。

そんな彼の第六感が危険を告げているのだ。

(あ、わかったぞこの会話のダメなところが)

そう火乃香の目の前で繰り広げられる会話には重要な主語が指示語で示されているのだ。このままでは危険だと判断した火乃香は2人に会話をやめるよう促そうとする。

「古城…そう言う会話はここでしない方が…「古城君…雪菜ちゃんの何を吸ったって…?」…」

目の前で急に発せられた声にビクリと震える古城。長い髪をショートカット風にまとめた彼の妹暁凪沙である。

「やぁ凪沙ちゃん、久しぶり元気してた?」

古城を助けるべく話題をそらそうと奮闘する火乃香。

「ほのちゃん、久しぶり〜。随分と疲れ切った顔だね?ちゃんと休んでる?お仕事で無理しちゃダメだよ?」

よし!マシンガントークに持ち込めそうだ!そう火乃香は確信した。

がしかし女性の怒りというのは、簡単には治らないようだ。

「いろいろ外国での面白いお話を聞きたいけど、先にやらなきゃいけない事(尋 問)があるから…。それで古城君何を雪菜ちゃんに何をしたって…?」

「な、な、凪沙…?部活……は?」

「今日は偶々休みになったんだよ…。だから試験勉強で頑張っている古城君と最近仕事で忙しいほのちゃんのために浅葱ちゃんと何か差し入れしてあげようって話てたんだけど聞き捨てならないセリフが聞こえたから」

どんどん凪沙の目が死んでいく。

「そ、そうだ、なら、あ、浅葱はどうしたんだ?」

「浅葱ちゃん?ずっと古城君の後ろで話を聞いてるよ?」

古城はギ、ギ、ギと音がなりそうなほど首をゆっくりと後ろに向ける。

彼の後ろには穏やかな笑顔を見せる浅葱がいた。

「ふ〜〜ん、この子を吸って、痛い思いさせて、血を出して、古城が心配して、挙げ句の果てに陰性…ねぇ?」

「あ、浅葱…誤解してるぞ…?」

古城は涙目で火乃香を見る。やめろ!飛び火するだろ!火乃香はこれ以上関わりたくなかったので必死で読書にのめり込む。が浅葱ここで火乃香を睨む。

「火乃香…古城とこの転校生に何があったか教えなさい。」

すごい迫力だ…。今まで経験してきた様々な威圧で最も強烈だと後に火乃香は語る。

「………俺は拷問に屈しないぞ………痛みに耐える訓練はしてるからな………」

「答えなさい。」

その一言でこの場の空気が凍りついた。

「Yes.sir!しかし自分がここで真実を言えば社会的に殺されかねません!」

火乃香は思わず昔教官に鉄拳制裁を喰らう度に使っていた返事と直立不動の陸軍式の敬礼を行う。流石は現役特殊部隊の隊員。とっさの行動であってもその姿は立派だ。

「古城!火乃香が言えないような事をしたっていうの!?」

「火乃香ぁ!お前のせいでややこしくなっただろうが!」

古城が逆ギレしてくる。だって事実だろ…

「古城君の変態!エロ!スケベ!」

凪沙は大声で古城を変態呼ばわりし非難する。

「それと転校生のあなた!一体古城のなんなのよ!」

「私は先輩の監視役です」

いきなり話を振られた雪菜も古城同様ビクリと震わせつつも答える雪菜も中々に肝が座っているだろう。

「そのあなたが誘惑してどうするの!」

「それは…そうですね」

頬を若干赤くさせもじもじしながら答える雪菜。これでは示しがつかない。そうしている間にも暴走した乙女2人はヒートアップしていく

「ここに淫魔が!妹のクラスメイトに手を出す淫魔がいます!」

「ちょ!やめろ浅葱ぃ!」

騒がしかなっていき段々と野次馬が増えてきた。火乃香は同類だと見られたくないので、とっとと席を離れていく。席を離れ、辺りを見回すと小柄で銀髪が特徴の少女がいた。

「やぁ、夏音。どうしたの?」

「火乃香さん、何かあったのですか?」

「いや気にしなくていい…っといっしょに帰るか?」

「はい、でした」

騒がしい食堂を背に帰路につく火乃香だった。

「そうだ、今週の土曜日空いてる?」

「あいてました。」

「良かった…どこか行こうか?」

「はい!」

夏音は穏やかなな笑顔を火乃香に見せた。彼女を守り抜くそう誓いながら火乃香は夏音と帰路につくのだった。

__________________________________________

現在時刻21:30彩海学園のとある教室にて2人の話し声が聞こえる。

「かくして、血の伴侶を得た第四真祖こと暁古城は眷獣を一体掌握し次の段階へといたるのであった」

髪をたてヘッドフォンを首からぶら下げた少年、矢瀬基樹は1匹の鳥に話しかけていた。

「そうですか、監視役ご苦労様です」

その鳥から声が聞こえた。式神だ。相手は獅子王機関三聖の一角である、閑古詠だ。

そんな2人の間に1人の少年が突如割って入ってきた。

「やぁ基樹、こそこそと何をしているんだい?あ、まさか彼女と逢引?いやー悪いねー空気読めなくて」

「っ!?火乃香か…なんだ?」

「警戒しなくて結構…成る程ね姫柊さんは未だ眠っている獣につけられた鈴…いや首輪の方が正しそうだな」

「何の用ですか?刀使い(ソードダンサー)…」

静寂破り(ペーパーノイズ)いや閑古詠といった方がいいか?まぁ俺はただ忠告しにきただけさ…」

「なんですか」

「古城を舐めてたら痛い目あうぜ…。それと、あんたらがやろうとしている事が何かは知らんが…なるべく巻き込まないように配慮してくれ…ただそれだけだ」

「分かっています。あなたを本気で怒らせてしまっては、あの2人以誰も手をつけることができなくなってしまいますからね。私も殺されかねませんし」

基樹は心底驚いた。火乃香が強いというのは知っていたがハイパーアダプターでもないのに三聖ですら太刀打ちできないということを知ってしまったからだ。

因みに火乃香を宥めることの出来る人物は1人は叶瀬夏音、もう1人はアルディギアの王女である。

「まぁそう言うことだ…あまり遅くまで出歩くなよ…じゃないと2人揃って姉さんの生活指導が入りかねんからな」

その一言を残し、火乃香は空間転移で消えていった。

 

 

 

 

 

 

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