オウガテイルになったんだが   作:腹ペコ

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実際そんな時間ないだろ!
と思うかもしれませんがよくある事だと流してください。

今回少し長めです。


生きる理由(中)

コンゴウの攻撃手段は大きく分けて2種類ある。

 

剛腕によるなぎ払い

パイプから放つ真空波

 

 自分とコンゴウの距離はだいたい4〜5mくらい。そしてコンゴウは両腕を上げた。であれば来るのは空気砲だ。

右足に重心を置きタイミングを見計らい飛ぶ。

 

 

B班攻撃!

 

 

コンゴウの背後をとる形で仲間たちが現れ一斉に針を飛ばす。

 攻撃直後はどんなアラガミだろうと硬直時間がある。ハンニバルレベルの早さならまだしもこちらに気を取られているコンゴウであれば背後の攻撃に

 

 

ガァァァァァァ!!

 

 

対処出来まい。

 

 

 攻撃する部分は四肢を狙うように予め言っておいた。四肢を狙うことで動きを制限させるためだ。

 コンゴウは先ほど挙げたハンニバル程ではないにせよ高い俊敏性がある。その俊敏性をフル活用し襲われてはひとたまりもない。

 だから初撃でそれを封じなければならなかった。しかし、ただ背後狙うだけでは予備動作や針を発射する音を聴き取り躱される恐れもある。 じゃあどうするかと考えた結果...自分が囮になることにした。

 

 

 攻撃を受けたコンゴウは後ろ足を気にしながらも自分に背を向けB班に威嚇した。それを確認し少し安心する。

 正面の一体しかいない自分を先に潰すか、一体だけの自分を無視し背後の15匹を狙うか。

 どちらを取るかは正直分からないのでここは賭けだった。一体の方を狙った場合は自分が全力で引きつけ、背後を向いた場合は

 

 

ガァァァァァ!!!

 

 

 A班と共に攻撃を仕掛ける。コンゴウが自分に背を向けたとき飛び出すように既に言ってある。

 そして怯んだコンゴウに両面から針を打ち込む。一体一体では大したダメージにはならないだろうが群れで攻撃すれば話は別だ。

ゲームの結合崩壊でよく見た黄色が右足に見える。

 

 

やめ!回避準備!

 

 攻撃を中断させ反撃を警戒させる。ペース配分に気をつけなければならないのとコンゴウの攻撃動作を覚えさせるためだ。

 

 針を打つにはエネルギーが必要だ。当然のことながら打ちすぎれば疲れるしそれによって回避行動にも遅れが生じる。初撃にある程度効果が見えたら即座に止めることで継戦出来るようにした。(オウガテイルだからなけなしのものではあるがね!)

 

 そして攻撃動作。これは自分が死んでも問題なく対処できるようにするためだ。いつまでも自分が生き残れるか分からない。自分が死んでも彼らが生きられるようにするためだ。(一番は自分が死なないことだがね!)

 

 

 顔を抑えてうつ伏せになっていたコンゴウは起き上がる。右足を庇いながら立ち上がり両腕で胸を叩く。ウホウホしている。

 これは活性化だったかな。コンゴウの場合攻撃方法が変わるということはなかったはずだ。動きが早くなるくらいだが右足にダメージを負っているのでそこまで早い動きはできないと見た。

 両腕を掲げB班に向け真空波を放つ。

コンゴウの正面に位置取っていた2匹の反応が遅れた。まぁ犠牲は仕方ない、想定の内だ。

 

だというのに

 

 

 

 

おい!

 

叫ぶとコンゴウがこちらを向いた。

何をやっているんだ自分は。

 

 

分かっていた

覚悟もしていた

 

いや、そんなことは全くなかった。

 

分かっていた、犠牲が出ることは。

"死ぬ"ということを分かっていなかった。

 

皆で帰れない、覚悟はしていた。

覚悟をしていたつもりだった。

 

指示があったから2人ですんだ。

指示がもっと的確だったら避けられたんじゃ。

 

 

 

 初めにヴァジュラと戦った時1匹のオウガテイルが死んだ。その時は少し心配しただけで.....

 だから大丈夫だと、死んでしまったとしても多少の動揺はあれどパニックにはならないだろうと。

 

 

 

 

違った

 

 

 

 

大きく凹んだ壁に潰れた頭とグチャグチャな胴体が見えた。

 

コンゴウに向かって駆け出す。そばの仲間たちが驚く様子が見なくても伝わってきた。

 元々の作戦では相手のオラクル消費を待ち真空波が打てなくなったところで慎重に近づき直接噛み付く。針では無理でも直接噛み付けば1人1人大ダメージを与えられると考えていた。

 

コンゴウが自分に向けて真空波を放とうとしている。

 

どうして自分は走っているんだろう。

 

 今の自分の行動にはなんの意味もない。それどころか仲間を危険に晒すことに他ならない。

 こんなことは決して仲間を守ることじゃないのに、沸き上がる衝動を抑えられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボス、無茶しないでください」

 

いつの間にいたのだろう。

気付くと隣に自分と並走しているのが1人。これじゃあ道連れにしてしまう。

 

 

早く射線から離れろ

 

こんな冷静さもへったくれもない、自分で決めた作戦すらやり通せないリーダーの道連れなんてさせたくなかった。

 けれどその1人はそれが聞こえなかったかのように言った。

 

 

 

「死んだヤツらは貴方を恨んだりしてません

 

皆、貴方を慕っていたんです

 

貴方の指示でヴァジュラを倒した時

 

弱い自分たちでもやれるんだと思いました

 

巣を作ったり人間を助けたり

 

貴方としたこと全部が楽しかったんです

 

食べるしかなかった自分たちに

 

楽しさをくれたのは

 

生きる理由をくれたのは貴方なんです

 

だから貴方に生きていて欲しい

 

"ボク"は貴方と一緒に過ごせて良かった」

 

 

聞いている間、何故か周囲の動きがスローになっていた。

 

 向こうで叫んでいるらしい仲間の姿。

 

 目前まで迫っている真空波

 

この状態なら体当りして彼を射線から外せる。

なのに自分の足はゆっくり前進を続け彼の言葉を聞くことしかできなかった。

 

 

「今まで......ありがとうございました」

 

 

その言葉の後自分の体が衝撃と共にコンゴウの射線から外れた。

 

 

時は正しく流れ始め、彼の体はあっという間に吹き飛んだ。

 

 

 

自分は、仲間を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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