GARO×艦隊これくしょん ~Iron blood Horizon~ 作:ジュンチェ
……例えるなら炎のようにゆらめきながら
……現実は地を龍のように踏みしめ歩いてくる
自分たちへ敵対ではなく『死』を与えるであろう男の存在は人類を仇なす者と自負してきた異形たちに歩む一歩から指先ひとつの動きから畏怖を捩じ込む。
『クッ!!』
ドンッ!!とエリートが砲撃。寸分違わず轟牙の頭を粉砕するために飛んでいった鉄塊は唸りを上げ、顔面に出した彼の掌に衝撃波を出しきりもみ回転しながらおさまった。先も述べたが、艦娘といえど戦艦クラスの砲弾は命取りになるしシールダーであるマシュですら防御に徹しても受け止めきれない威力……それを男は片手でキャッチボールのように受け止める。そして、その腕にはマシュに見覚えがある輝きを放っている…
「あれは!?」
鎧…それも金色。部分的に纏っているだけだが解る…牙狼<GARO>の鎧だ。しかし、牙狼は優牙が継承者であるはずだし目の前の男は魔戒騎士の最高位の称号を持つにしては粗暴な格好をしていた。
「なにしやがる。」
『『!』』
轟牙は砲弾を投げ捨て、ギラリと眼を向ける。反射的にエリートとル級は砲撃をぶちかましていた。対し、轟牙は背中の斬馬刀を抜き放ち盾にすると連続する砲撃の硝煙に呑まれていく。これならば艦娘でもない人間が耐えられるわけもない………
「…ッ!!」
はずが、次の瞬間には轟牙が黒煙を突き破り宙を舞うとエリートとル級の懐へ着地から斬馬刀をル級の艤装にガンッと叩きつけ歯を食い縛ると………
「………ッッ!!!」
ーー斬斬!!
『『!?』』
勢いのまま振り抜き、エリートの艤装ごとバラバラにしてみせる。エリートとル級は両手の装備が無くなったために尻餅をつき、マシュは圧倒的な強さに感嘆する…。
(強い……!)
今までの旅で魔戒騎士に出逢うことはあった。確かに各々の強さや戦い方があったが目の前の男の力は彼等に見劣りしない…いや、もしかしたらそれ以上の強さを秘めているかもしれない。
そんな彼女の思考など知る由もなく、轟牙は斬馬刀の感触を確かめていた。
「流石、明石だ。切れ味も前より上がってるな…全く、良い仕事しやがるぜ。」
鋼鉄より硬い深海棲艦の艤装を斬り裂いたのに全く刃こぼれしない柱のような刀身。かつてはひび割れ等もあったが、腕利きの魔戒法師による改修のおかげで本来の力に近づきつつある。彼女には感謝しなくては…
ブンッと剣をはらうと黒衣を巻いて背中へひっさげると一言。
「失せろ。」
『ヒ、ヒィィ!?』
脱兎のごとくとはまさにこの事。ボロボロになった艤装を捨てエリートとル級は逃げ去っていく。凄まじい…言える言葉はこれに限る。不意打ちを喰らったとはいえ、ろくに対処すら出来なかったマシュに比べ、一切の反撃を許さず戦う手段のみを奪った力と技術は恐ろしいものだ。
(………凄い。)
「…」
その時、マシュの視線に気がついたのか腕の鎧を解除し歩み寄ってくる。
「大丈夫か、山城?」
「…不幸だわ。」
「そうか。」
彼女が不幸なのはいつものことなのでつまり平気なのだろう。さてと、それなら良いとしてと視線をマシュへと向ける…。屈強な体躯から見下ろされる感覚は彼女にとって威圧感があるものだった。
「…何者だ、お前。取り敢えず、俺たち側でも艦娘でも無いようだな。」
「わ、私はマシュ・キリエライト…シールダーのデミ・サーヴァントです!決して、怪しい者ではなく…!」
「ちょっと、あんたの顔怖すぎ。女の子にそれは駄目でしょ。」
確かに、山城の言うように轟牙の顔は阿修羅さながら。注意されるや、顔に手を当て頬や眉間に手を当てると気持ち表情が援和されれた気がした……気持ちだけなので充分怖いが……
「ちっ…。少し遠出して帰ってきてみればおかしな連中が溢れてるは深海の奴等は陸にいるわ……どうなってんだ一体…」
「あの…すみません、もしかして貴方は『黄金騎士』ですか…?」
「ああ?」
やはり、気になる……彼が山城の言っていた黄金騎士なのだろうか。だとしたら、優牙に繋がる情報を持っているかもしれない。
「私の仲間も黄金騎士・牙狼なんです!だから…」
「…何?」
「ひぃっ!?」
あれ?自分なにかおかしいこと言っただろうが………途端に顔つきがさっきより険しくなりはじめた轟牙。目力だけで心臓が握り潰されてしまいそうだったが、すぐに解放され彼は後ろに意識を向けた…どうやら問いただす必要性は無かったらしい。
「…うちの後輩に何の用です?」
「先輩!」
いつの間にいたのか轟牙の背に立つのはマシュの捜し求めていた先輩こと優牙。こちらも顔は友好的な顔は浮かべておらず、向き直る轟牙と睨みあう。優牙からすれば後輩に危害を加えようとしていた輩にしか見えなかったが轟牙からは違う…
「お前…なんで『黄金騎士』のようなナリをしている?」
「…?」
白い魔法衣に赤鞘の魔戒剣…ひだりて左手におそまっている魔導輪ザルバといい、牙狼を受け継ぐ魔戒騎士として外見まさにそれ。だからこそ、その存在はあまりにも異質過ぎる者…『まっとうだった頃の自分』を映して張ったよう。
そして、優牙は魔戒剣を突き出し名乗る。
「我が名は優牙…牙狼の称号を受け継ぐ者、そして…人の歴史を守るカルデアのマスターだ。この魔戒剣と魔魔導輪ザルバがその証!偽物なんかじゃない!!」
「…」
勇ましい…若くみずみずしく、正義感にあふれる声。対し、轟牙は老年の番犬のように細めた眼で証と突きだされたそれらを眺めた……すると、『クックッ』と笑い出す。
「何がおかしい?」
「いや……俺より随分と黄金騎士らしいなと思ってな。まあ、いくら格好がどうだと言ったって最高位・最強の鎧が2つもあるわけない。さて、んじゃ俺も名乗らせて貰おうか……。轟牙、『冴島轟牙』…こんな剣とナリだが黄金騎士・牙狼だ。」
「…!?」
「……さて、もう一度訊くぞ?お前は何者だ…?」
「!」
…殺気。
反射的に優牙は魔戒剣を構えていた。今まで旅の最中で殺意を向けられたことは何度もあったが……唸るよりも静かで、振り上げられた鉄槌のような声は命を奪うことに躊躇いは無い響き。触発……戦慄が走る空気。
しかし、ここでマシュが意を決して轟牙の前に立つ。
「待って下さい!貴方が黄金騎士だと言うのなら鎧を見せて下さい!!されが何よりもの証拠になるはずです!」
「…」
…鎧の召喚。確かにこれ以上の手っ取り早くかつ真実を明らかにする方法はあるまい。余計な戦いも避けれると踏んだマシュの作戦だったが……
当の轟牙は別の方向を見ていた。
「…ちっ、誰かは知らないが余計なモン連れてきやがって。」
ーーーォォオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!
「「「「!」」」」
その時、空が暗黒に淀み…鼻から肺まで腐りそうな邪気が一帯を充たしていく…
同時に地面を砕いて腐りかけの人型(ゾンビ)が一行を取り囲むように次々と立ち上がっていきホラー映画さながらにとり囲みはじめた。
『オオオオオオ……騎士ダ、騎士ダァ…我等ヲ斬ッタ騎士ガ居ル!』
『…ォォオオオオオオオ…ォォ……ソノ心ハ燃エテイルゾォ!!復讐ッ!!!復讐!!!!陰我ノ炎ガ、メラメラト…』
「先輩、これは!?」
「マシュ、離れるな!あと、そこの人も!!」
異常事態。優牙もこんなケースははじめてだった……まるで、魔界にでも来たような気分だ。この蠢く死体どもは皆がホラーである。しかも、数が多い…マシュと山城をどっちも守りながら戦うとならば骨だ。ここはひとつ、揉め事はさておき轟牙と協力を…
「おい、ここは…」
「さがってろ、ガキども。」
「おい!?」
だが、彼は既に一団から離れて前へ出始めていた…。斬馬刀に手をかけ、つい先まで優牙に向けていた殺気を自らを怨む亡者たちにとばしながら。
すると、亡者たちの反応も更に激しくなる!
『鬼武者!!鬼武者!!!』
『陰我マミレノ魔戒騎士!!ソノ分際デ我ラヲ斬ッタ!!』
『…鬼!…鬼ィ!!!!!』
『殺シテヤル!今度コソ、我等ガ!!』
「どうやら、テメェら俺が斬った火羅どもか。なんだって、化けて出やがったのかはどうでも良い…だが、俺は今すこぶる機嫌が悪い。ウサ晴らしさせてもらうぜ。」
ブンッと空を斬る斬馬刀。通常の魔戒剣の含有するソウルメタル量を遥かに超える鉄塊は振るうだけで風が舞い上がった…。告げるのは戦いの狼煙。刃に正義の意味など無く、獲物を喰らわんと主に従う無慈悲な鋼。
『寄越セェ!!ソノ肉身ヲ!!!!』
「…」
ドズンッ!!
まず、飛びかかってきた1匹が両断されて塵になった。頭から股に裂け…グロテスクな肉塊がマシュや山城の前まで転がってくる。すると、他のホラーたちは後退りをはじめる。
「…お前らも怨みつらみか?そうだろうな…だがな、俺の陰我は俺がケリをつける。なにより、俺の復讐は…!!お前らなんかにくれてやるほど安かねぇんだよォ!!!」
唸る切っ先が地面と摩擦し、火花を散らす。散らされた火花は光となり円を描く……そこから、金色の鎧が飛び出して轟牙へ纏われる。優牙と同じであれど違う牙狼の鎧。左目は傷で潰れ残る右目は憤怒で血走るように紅い。神々しさより遥かに禍々しさを醸しだす姿は最早、『鬼』。
「ォォオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!そこをどけェェェェェェェェェェェ!!!!!!!!!!!!!!」
斬馬刀を振るい、牙狼剣へと変え…狼の兜
が咆哮する…!!
これが、『鬼武者』と呼ばれた魔戒騎士と人の歴史を取り戻すため戦う『守りし者』との邂逅であった。
To be continued.
こちら側の主人公が完全に凶悪すぎる。
優牙くんは正統派だよねぇ。可愛げだったら絶対こっちに分があがる。轟牙は熊とゴリラを足して割った悪人面だもん…