GARO×艦隊これくしょん ~Iron blood Horizon~ 作:ジュンチェ
このあと、神の牙見に行く予定です☆ そのためまず、新幹線に乗らないといけないっていう…
「…」
明の番犬所をあとにした一行。取り敢えず、近くに使われていないあばら家を見つけそこに腰を下ろして一晩を過ごすことにした。
本来、一刻でもはやく西の街道に行かねばならないがダメージを受けたマシュに身ひとつでさ迷っていた山城はもう限界がきていたのである。優牙の魔法衣をかけ布団にマシュはすやすやと眠っており、轟牙は隅であぐらをかき目を閉じている……恐らく、寝ているわけではないようだが。一方、優牙は吹雪を連れて見回りをしていた。出逢ってから色々あったが、晩になっても平然とついてくるあたりやはり幼い姿であってもサーヴァントなのだろう。
「うう、先は情けない姿をお見せしてしまいました。すみません、司令官。」
「…」
番犬所の件で落ち込む彼女を見据える瞳で優牙は別のことを考えていた。最後、別れ際に北方が言い渡した言葉が気になって仕方ない……
ーー……アノ駆逐艦ノミ、『サーヴァント』ダ。気ヲツケロ…何カ裏ガアルヤモ知レヌ。
「司令官?」
小首を傾げる純粋であどけない表情に隠したものがあるとは思いたくない。でも、北方曰く轟牙が山城が生きている現地人なのに対して彼女のみこの世界の住人でありながらサーヴァントということ。考えられるのはすでにこの少女は故人で世界を守護する異常に対するカウンターとして現界した可能性……ありえなくもない。この世界で偉業を遺した艦娘なら英雄としてサーヴァントになったとしてもおかしくないのでは?
……それにしては、随分と弱そうであるが
「なあ、吹雪……」
「はい、なんでしょう?」
「俺は君とあったのは今日がはじめてだ。何故、俺を司令官と呼ぶ?」
なら、手っ取りはやく問おう。時間は無駄にはできない。
「俺は魔戒騎士…そして、カルデアのマスター。海軍の人間じゃない。そもそも、この時間の人間でもない。これは事実だ。だから、答えてくれ…何を隠している?」
「どうして……どうしてそんなこと言うんですか……。私は……何も……何も隠してなんかいません!私は司令官の初期艦で!!一緒に鬼ヶ島鎮守府に…!!一緒に艦隊を……!!」
対し、動揺と悲しみを振り撒くように声を荒くする吹雪。若干、ヒステリックの域があるが優牙は動じない…いや、動じているように見せはしない。痛む胸中を押し留め彼女と向き合う。
「なら、順を追って話してくれ。君の中で俺とはじめて出会ったのはいつだ?」
「…っ」
「やっぱり、あんた『吹雪』なのね。」
「「!」」
その時、背後から声をかけられ振り向けば山城の姿。先から吹雪に対する目線は気がついていたが、彼女の疑問は今の会話で確信へと変わっていた。
「鬼ヶ島の初期艦…それは間違いなく吹雪。最初は別の同銘の空似かと思ったけどね。ずっと、他人のようにシカトこいてるからまんまと騙されるとこだったわ。」
「だ、騙す……?」
「なんでソイツを提督と呼ぶの?私達の提督を忘れた…?貴女と一緒に歩きだしたあの人のことを忘れたの…?」
「私の司令官は優牙さんです!!それ以外、ありえな……」
ーーパチンッ!!
「!」
乾いた音がした。
それが、山城が吹雪の頬をぶった音なのだと理解するのは時間がかからなかった。山城の眉間には怒りが露骨にわかるほど眉間に皺が寄せられ、吹雪の頬は赤く腫れている…。直後、吹雪は顔を伏せ何処へと走り去ってしまう。
「吹雪!」
すぐに優牙もそのあとを追い、共に深い林の中へ…
暫くすると、山城が完全に視界に入らなくなったあたりで泣き崩れて踞る彼女の姿があった。『吹雪……』と不安に思いながら震える肩に手をかけると……
「……!」
目の前で光が弾ける。まるで、花火が炸裂したような眩しさに視界を奪われ…彼は意識を手離した。
★★ ★★ ★★ ★★
その頃のあばら家……
「……(寝つけない。)」
一時は深い眠りに入ったものの、何かの拍子で目が覚めてしまったマシュ。まだ夜だとわかると二度寝しようかと思ったが、妙に目が冴えてしまって寝つけないでいた。う~ん、困った…。確かに身体から今一つ疲れが抜けきっていないのだが睡魔は仕事をする気配は無い。仕方ないと、身体を起こすと囲炉裏にパチパチと焚き火に火を灯す轟牙の姿が目に入った。
「わりい、起こしちまったか。」
「あ、いえ……あ……」
この時、マシュは炎に照らされた轟牙の鋼のような身体を見た。上半身の服を脱ぎ、汗を拭いていたのだろう…しかし、布切れを持つ手では隠しきれないほどの斬り傷や抉られたような幾つもの傷痕…それに、禍々しい胸の薔薇のタトゥー。歴然の戦士というよりかは、幾つものの死地を乗り越えてきた獣とでも言うべきそれにマシュは息を呑む。実際、本物の男性の裸など彼女には見る機会などまずなかった……ましてや、轟牙の肉体はそれなりに彼女にとっては刺激があるものだった。
「……なんだ?」
「!……えと、その…凄い身体をしてますね…!?」
しまった、じろじろと見すぎたか!?慌てるあまりすっとんきょうな音程でかえしてしまうが、轟牙は特に気にすることなく薪をくべる。
「まあな。魔戒騎士やってら、切ったはったやら腹をぶち抜かれるなんざよくあることだからな。まあ、俺の場合はそれだけじゃないが…」
「よ、よくある……」
斬る斬られるはまだしも、腹を貫かれている日常なんてよく生きていられると思うマシュ……。まさか、優牙もあの優しそうな顔をして数々の傷痕をその身に刻みつけているのかと思うといたたまれない気持ちになるが、それでも笑顔を持つ彼はやはり強いのだろう。
一本化で轟牙は対照的に全く笑みを見せることはない。まあ、笑うような場面などここに来るまで無かったのは事実だが、戦う時の荒々しさ以外は一遍した態度のまま。それに……
(……あの剣…)
今は主の横に横たわる斬馬刀。辛うじて牙狼の紋章である『△』印は確認できるが、脈々と続く系譜の剣にしてはあまりにも無骨で歪。優牙の魔戒剣に比べると同じ牙狼剣に成るものとしては何も知らなければ到底、同一のものとは思えない。そして、轟牙の戦い方も……あれは戦士というよりは怒り狂う嵐。逆鱗に触れられた竜……そんな言葉あうような気がする。
「……………優牙か…」
「え?」
「若いな。俺もあんな頃があったか…もう随分、昔の話だが……」
不意に優牙について触れる彼。その横顔はかなり老けているようにもくたびれているようにも見えた…。鼻からゆっくりと溜め息を洩らし、眼差しは焚き火の光が揺らめく愛刀に向けられていた。心なしか優しさとも悲しみともつかぬものが帯びているように見える……
「お前らが悪党とかの類いじゃねえのは見た瞬間から薄々わかってた。ま、お前らの言う歴史の焼却とやらはまた別だが…取り敢えず、近くにいる分くらいは信用することにした。」
人類史焼却。優牙とマシュの世界を襲った文字通り、人間の築いてきた原始から現代までにいたる全てを焼きはらわれた未曾有の事件。歴史はホラーの手によって狂わされ、それを解決するために時代を旅して原因である歴史の歪み=特異点を排除するため時代を旅するのが彼等の旅。
番犬所へ向かう最中、それについて話はしたが轟牙はおろか山城も信じなかった。無理のない話、あまりにも現実味が無い…それに、轟牙の世界ではそもそも人類史焼却など起きていないのだから。
「お前たちは俺にはもう無い『光』を持ってる。ソイツは尊いもんだ。」
「……?」
「…て言ってもわかりゃしねえか。悪い、変なこと言った。忘れろ、んでまた寝ろ。」
最後、ぶっきらぼうに言い残すと服を身につけ自分の腕を枕に横になる轟牙。暫くすると、彼は微動だにしなくなり…眠りの世界へ旅立つ。しかし、その顔はまるで死人のように生気が失せ…当の昔に魂が抜けた亡骸のようにマシュには思えた。
(この人は……一体、どんな人生を歩んできたんだろう?)
思い出す昼間の荒れ狂う戦い様。命を薪にしてくべるように刃を振るい、夜は死んだように眠る。こんな彼がかつて優牙のような人物だったなら、彼の過去になにがあったのだろう……?あれほどの強さと無数の傷が沈黙で何かを物語るが、残念ながら今のマシュには読み解くのは難しい。
(先輩……)
もし優牙が轟牙のようになるとしたら?ふと、そう考えると何故か胸が強く締めつけられた。なにか違う、今まで出会ったジャンヌ・ダルクといった英雄たちや魔戒騎士たちとは決定的に彼の『何か』が……
『…全く、コイツは相変わらず言葉が足りんな。』
「!」
突然、聞き覚えのある声が……しかし、轟牙の左手におさまっているのは見知っている形をしているが全くの別人である。
「ザルバさん……ですよね?轟牙さんの……」
『如何にも。俺がこのクソッタレ騎士の魔導輪さ。』
魔導輪ザルバ…こちらはあまり違いは見受けられないが今まで知るザルバとは異なるとなれば不思議な感覚だ。まあ、こちらもそれなりに口が悪いようだが……
「そんな……轟牙さんはお強いですよ。私や先輩が束になってかかっても勝てるかどうか………」
『む、お嬢ちゃんは魔戒騎士の強さを些か勘違いしているようだな。コイツの言葉を補填しておこう。魂を怒りや憎しみに委ねるな……例え、大切なモノを奪われた穴を復讐で埋めようとしてもいずれ自分が喰い破られる。もしくは、余計な悲劇を産む。現状そうなっている本人がいるんだから間違いない。』
「…復讐………轟牙さんは誰かに恨みを…?」
『ああ。それが、今の奴の原動力で戦う意味……全ては守るためではなく、己の怨みを晴らすため。栄えある黄金騎士の称号を持ちながら業を背負い、刃を振りかざしている。勿論、それに至るべき理由は確かにあるんだが……。』
確かに轟牙の戦い方は異常である。優牙はまだまだ未熟ながら『剣術』と呼べる領域だが、ホラーを力任せに腕っぷしと斬馬刀にモノをいわせる轟牙のそれは剣術と呼んで良いのかは傍から見たマシュにも疑問があった。
『結局、コイツは捨てた…受け継いできた誇りも技も、友も、優しさも…。人間としてあるべき良心の殆どを煮えたぎる怒りにすり替えちまった。その虚しさはまた本人も理解しているが切り離せない……だから、まだ大事な『心』を捨ててないお前たちには同じ道を歩んで欲しくないのさ。』
全てを…心を投げだすほどの怒りに駆らせる復讐。なにがそれを滾らせるのだろう。
自分も虐殺を見た…人の命が踏みにじられるのを見た……それに怒った、理不尽だと。でも、自分の核…心を削るようなことは無かった。決定的に自分も優牙も無かった。むしろ、より旅の完遂をすべきと決意を新たにして前に進む決意を固めた。復讐鬼という答えには至らなかった。
…そう、まだ彼女が憤怒や復讐というものを知るには純粋すぎたのかもしれない
しかし、魔導輪は語る
『人の心には鬼が棲む。万人、誰とて例外はない…何が鬼を目覚めされるのか、例え仏のような人間を阿修羅にも迫る鬼へと堕とさせるかは嬢ちゃんだっていずれ解る。ま、あの騎士のボウズを想うなら自分の命は粗末にしないことだな。』
…そんなことわかる日が来るのだろうか。のしかかる重い疑問を抱きながらマシュはザルバに挨拶をして優牙の法衣に再びくるまり目を静かに綴じた。
《 G A R O 》