GARO×艦隊これくしょん ~Iron blood Horizon~ 作:ジュンチェ
<Iron blood Horizon>
………………
特型駆逐艦吹雪型一番艦 吹雪
後に迫る世界大戦で活躍する新世代の特型駆逐艦の先駆けであった。 しかし、いざ戦乱時に入ると期待されていた戦果は残せず、多くの艦と共に続く形で砲火を浴び海底へと沈んでいった…。これが、艦として艦娘である吹雪がその銘と力をその身に受けた時から共に刻まれた記憶。
「だから、私は……今度こそご期待に……」
ーー大丈夫よ、吹雪姉さん。私が一番に声がかかったなら次はで吹雪姉さんにも声がかかるわ。
「…私は………ご期待に…答え…」
ーー電は、先にいってます。待ってますからね、吹雪ちゃん。
ーーこんなドジな私でも初期艦に選んでくれた人がいたんだもん。きっとすぐだよ。
「……ご期待に答え………」
ーーやったぁ!!念願のご主人様ゲッチュ……あ…
「……」
本当に期待されているのだろうか。古ぼけた校舎で気がつけば自分は独りで取り残されている……。同期たちは皆、一足先に戦場へと行ってしまった。今頃、各々の新米提督たちと新しい生活をはじめているだろう…もしくは、戦場の海原へ繰り出しているに違いない。それなのに……
ーーまだ、あの娘…残ってるのか。もうちっと、演習の戦績が良ければなぁ
ーーいくら、戦術の理解が高くたってそりゃあ頭でっかちじゃ戦場には出せない
ーーしかも、泥艦だろ…身寄りもないんじゃ、帰してやる場所も無い
囁かれる心無い言葉…でも、事実だ。だから、私は勉強した…努力した…いつか、私を選んでくれる司令官(誰か)のために…
そして、私は出逢えた…司令官に…私の提督…
『優牙!…優牙!!』
「!」
魔導輪の声、我にかえった自分は林に戻っていたと気がついた優牙。何だったのだ今のは…吹雪の情念が頭に直に流しこまれるような感覚……あれは、彼女の記憶だったのだろうか?孤独、焦燥、感傷、未だにいたいけな少女が押しつけられるには重すぎるそれらをずっと抱えていたのか?
ふと、気がつくと胸元に誰かが踞る感触を覚え…見てみると泣きじゃくる今にも折れそうな彼女の姿があった。
「……私、嘘なんてついてません。優牙さんは私の司令官です。私を選んでくれた提督です……。だから、お願い…ひとりにしないで………見捨てないで………」
「吹雪……」
怯えている。自分が信じたものが虚構かもしれないという不安とまた誰にも見向きもされない独りぼっちに戻るかもしれないことに……
その全てを優牙は図れるわけではないが、せめて抱きしめてあげようと手を……
『優牙、うしろだッ!!』
「!」
その時、ザルバの警告。咄嗟に手を魔戒剣に走らせ身を翻すと飛来してきた鋼の二刃を弾きとばして吹雪を庇う。そして、獲物を狩り損なった刃は虚空で弧を描くと茂みの影にいる主の両手に吸い寄せられるように戻った。この動き、普通の鉄の武器で出来るものではない……優牙は察する…これはソウルメタル特有の軌道。つまり、今の攻撃は『魔戒騎士』によるもの……
「司令官…!」
「吹雪、下がってろ!! 何者だ!?」
問う、何故に自分たちを狙ったのかと闇に佇む人物に…
すると、優牙の声に呼応するように月明かりが射し込んでいき『男』の姿を照らしていく……
「…俺が誰かって?」
「…!」
知っている声!!いや、まさか……しかし、ツナギを着た轟牙な退けをとらない体格と2振りの魔戒剣……顎髭は……
「俺の真名は『へルマン・ルイス』……またの名を、魔戒騎士・ゾロ!!」
魔戒騎士ゾロ……へルマン・ルイス。かつて、優牙たちとオルレアンで共に戦った魔戒騎士。中年にあたる姿で召喚されながらもその強さは破格かつ歴戦の英雄すら唸らせる実力である。頼もしい味方だったが…今回はそうでもないらしい。
余裕の笑みを浮かべて歩み寄ってくる彼を、優牙はキチリと魔戒剣を握り直して相対する。
「久しぶりだな、優牙。オルレアン以来か……あのあとも特異点を攻略したらしいが……。ふむ、期待したほど強くはなっていないらしいな。」
「へルマン、本当に貴方なのか?」
「ああ、本当さ。本物のへルマン・ルイス……絶影騎士の称号を担い、お前やジャンヌと一緒にオルレアンで竜の魔女を倒したへルマン・ルイスだ。」
『嘘は言ってないようだぞ。確かにあの時にあった奴の気配と全くかわらない。』
ザルバも本物認定。ならば、どうして自分を狙ったのか?以前、魔戒騎士のサーヴァントでも敵対した前例があることをふまえると今回の彼が味方であるとは限らない。吹雪を庇うように構えていると、へルマンは優牙を…否、吹雪を見据えて指をさす。
「感動の再会といきたいが……悪いが、時間がない。その娘を渡してもらおうか。」
…わ、私?と、驚く吹雪…別にへルマンとは何の関わりもない彼女。勿論、優牙もそうふたつ返事で即答するわけもなく……
「何故ですか?」
「説明している暇はない。」
理由を問えばこの始末。予想していたが、ますます怪しい。引き渡すことなく間があくと、呆れたように溜息をつくへルマン……
「おいおい、お前さんだって薄々わかってるだろ?その娘は今回の『異常側』のサーヴァントだってことぐらい。」
指摘。確かに吹雪はおかしなことばかりだった……初対面の優牙を提督と呼ぶし、艦娘でありながらサーヴァントでもある。明らかに対人関係も不自然だ…疑わしい要素は多々目につく。もしかしたら、騙しているのかもしれない…何か企みがあるのかもしれない。もしかしたら、ホラーに加担している可能性もある。
「なら、あなたは吹雪を斬る気ですか?」
「必要ならな。」
へルマンも短く切り詰めた答え方から本気だと判る。魔戒剣を構えなおし、いつでも臨戦状態へと移行できる間合いで優牙たちを見据え…今か今かと好機を窺う獣のように脚を進めていく。優牙は吹雪を奪われないよう庇いつつ魔戒剣を突きだして牽制し間合いに入られないように相手から眼を一切離さない。
しかし…
「司令官は、私が守ります!!」
「吹雪!?」
突然、吹雪は前に出るなり単装砲をへルマンに放つ!…が、簡単にへルマンに弾かれて一瞬に間合いを詰められると少女の身体にあまりにも重い峰打ちが首筋にギロチンのように振り下ろされ意識を奪いとる。そのまま、彼女はへルマンの胸の中に崩れ落ち、わずか5秒とみたない内に奪われてしまった。
「隙だらけだな。守りも甘い……これで黄金騎士とは笑わせる。」
「吹雪を返せ!!」
すぐさま、鎧を召喚し牙狼を纏った優牙はへルマンからの奪還を試みるが、振るう牙狼剣はことごとくかわされるか片手の魔戒剣でいなされてしまう始末。へルマン側が吹雪を抱えるぶん、不利に見えるが実際は優牙も吹雪を傷つけないように気が気でなく思うように立ち回れないでいた。
「てやッ!!」
「ぐッ!?」
そんな隙を突かれ、丸太のような脚が牙狼の腹に勢いよく食い込む。ドンッと砲弾が当たったような音と共に牙狼の口元から息が洩れ、『く』の字になってふっとばされてしまい樹に叩きつけられてしまう。相手はまだ鎧を纏っていないというのになんという強さか……。かつて、彼が味方であったことがどれほどたのもしかったかを痛感しつつ痛みをこらえて立ち上がる。
「……痛ッ…」
「さてと……んん?おっと、これはまずいな!」
「?」
ーードゴォォォォ!!!!!!!
まだ立ち直るかどうかの1秒かそこらに満たない次回だった。背後から砲弾のような影が唸りを上げながら頭上を飛び越え、へルマンが冷や汗をかきながらそれを魔戒剣で防ぐ。勢いをつけて襲いかかってきたのは鉄塊…斬馬刀であり、質量と運動エネルギーがもたらす衝撃は踏ん張る彼の足元が砕けて塵が舞い上がる様から凄まじいものだと推測できる。やがて、持久されるにつれ勢いを殺されるのを勘づくと刃を弾いてヒラリと影……轟牙は間合いをとって牙狼の前に着地する。
「轟牙!」
「騒がしいってきてみりゃあ……どうやら敵みてぇだな。」
物音なしたとは優牙が魔戒剣を弾いた時か……だとしたら、ある程度距離が離れているあばら家から文字通り防風林の中を突撃のスピードのまま突っきってきたのか!?だが、驚いているほど余裕は無い。
「ほお?お前がこの世界の黄金騎士『鬼武者』か…?」
「そういうオッサンは火炎騎士か?」
「残念ながら人違いだ。俺は絶影騎士・ゾロさ、鬼武者。」
「そうかい。なら、その小娘を置いて失せろ。今の一撃を耐えるなら殺さないように加減する余裕は無いぜ?」
「言うなぁ、若僧?なら、来いよ!!」
次の瞬間、へルマンは吹雪は放りだされ両者は鎧を纏う!目映い閃光が刹那、視界を埋め尽くすと独眼の金狼と凛とした銀狼『絶影騎士・ゾロ』が激しい剣乱舞で喰らいあう!!火花が絶え間なく迸り、剣圧のぶつかりあいは小さな嵐そのもので地面に倒れた吹雪の身動きをしがみつくぐらいで精一杯なものにしている。
「おぉぉぉぉぉぉォォ!!!(このオッサン、隙が無ェ!!!)」
「…ダァァ!!(コイツの一撃、なんて重さだ…一発でも貰ったらヤバいな…)」
両者、戦慄する……一瞬のミスが命とりになるであろう。今、拮抗しているのは若さの差と練度の差が実力の天秤を平行にしていることか…。
「吹雪!」
この内に、吹雪を助けようと優牙は鎧を解除し、助けに向かおうと走るがその前に外廊を纏う剣士が現れ先に彼女を奪いとった。顔は影になって見えないが優牙はその剣士の持つ独特の刃に見覚えがあった。深紅に輝くうねりのある刀身はかつてセプテムで見た……
「!……あなたは!?」
「…(ニヤリ)」
すると、剣士は吹雪を抱えたまま優牙へと迫るッ!反射的に剣撃を弾いたが、その際に火花の代わりに薔薇の花弁が舞い散り……風に流されたそれは独眼牙狼の視界に入る。
「!!(薔薇……!!!)」
ーーーー脳裏に焼きついた黒い薔薇が咲き誇る忌々しい記憶が手を伸ばす。
ーーーーーー憤怒は理性を喰らい、自我すら燃やして激情として燃え上がる。
「うおおおおおおおおオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!黒薔薇ァァァァァァ!!!!!!!」
「何!?」
途端、騎士は禍々しい雄叫びを上げ獣となった。精神の妬けつく飢餓を満たさんがために剣撃を更に激しく振るい、ゾロをふっとばすと吹雪を抱える剣士に向かって突撃。吹雪がいるのもお構い無しに変身させた牙狼斬馬剣を振り下ろす!!
「轟牙、やめろ!!吹雪がいるんだぞ…!!?」
「邪魔ダァ!!!」
止めに入った優牙すら強引に払いのけ、暴走する金色は止まらない。血走る独眼は容赦など無く、空を切って咆哮をあげる刃は誰もが惨劇を予想…
否ッ!!
ーードォォォォォン!!!!!
「!?」
突如、頭上から降ってきた爆弾が炸裂した。独眼牙狼は不意を突かれて怯み、そこへ紅い衣を纏った人物が彼に組み付き地面に捩じ伏せた。そして、優牙は気がつく……
「剛!!」
「待たせたな!!」
離ればなれになってしまっていた魔戒騎士、剛だ。西の街道に向かったと聞いていたがまさかこんな形で再会するとはなんたる幸運か。独眼牙狼の顔面を足で押さえつけるや懐から魔戒銃を抜き放ち、銃口を腹の紋章に向ける。
「さあ、歯ァ食い縛れよ!!」
直後、引き金を引くや砲撃のような銃声が響き渡りソウルメタルの弾丸の羅列が次々と紋章を穿つ。同時に金色の鎧は揺らぎ、強制解除された。中から汗を滝のように流し、息荒く消耗している轟牙の姿が……
これを好機と外廊の剣士とへルマンは頷きあい、吹雪を抱えたまま飛び退いて撤退していく。
「待て!」
すぐさま、後を追い飛びあかる優牙。空中に踊り出るとゾロの頭上をとり魔戒剣を振り上げる……吹雪に当たらず兜の合間の首筋を狙える位置だ。しかし……
「…ッ」
刃は振りかぶったままだった。勿論、刹那のタイミングを逃すということは逆に致命的な隙に繋がり、がら空きの優牙の懐目掛けて振り向いたゾロの拳が勢いよく吸い込まれていった。そのまま、優牙はふっとばされ地面に叩きつけられゴロゴロと転がり…ゾロたちは森の奥に拡がる闇へと消えていく……
そして、取り残された者たちにはただ、沈黙が重くのしかかるだけであった。
< GARO Iron blood Horizon >
☆次回予告
ザルバ『全てを背負おうとする憤怒が若き剣の覚悟を試す!次回、【血闘!】折れる牙は果たしてどちらだ!?』
☆轟牙のトラウマ
黒い薔薇とたにか関係があるようだが、詳細はいまだ不明。鎧装着時に刺激されると頭に血がのぼり暴走状態になる。
☆剛の魔戒銃
剛は騎士でありながら、戦闘特化の魔戒法師としての一面もある。魔戒銃はハンドガンやリボルバーなど様々なタイプを所持している。中には『騎士殺し』と呼ばれるものもあるそうだ。