GARO×艦隊これくしょん ~Iron blood Horizon~ 作:ジュンチェ
……取り敢えずだ。
轟牙(オレ)は今、牢屋に放り込まれている。目が覚めたらこれだ……まず、説明しなきゃならない…そうだろ?
ー 矜 持 ー
時は遡り、昨晩。火羅と化した白露型姉妹を撃破した轟牙。ふぅ…と溜息をつくのは目的の成果が得られなかったため。まあ、良い…別に期待していたわけじゃない。あとは片付けてこの場を去る越したことは無い。
「おい、艦娘。ザルバを返せ。」
「えっ……う、うん……」
「今日のことは運が悪かったと割りきれ。そして、万一…またこんなことが目についても首を突っ込むな…お前じゃ何も出来ない。」
蒼龍からザルバを返却してもらい、警告を添えて背を向ける轟牙。その時……
「不幸だわ。」
「!」
不意に頭上に現れた影に対応出来なかった。凄まじい威力のパンチが脳天を直撃して、あまりの衝撃で脳ミソが揺れて頭がアスファルトをバウンドする。
蒼龍は気がついた…ここに現れた彼女は……
「山城!」
「蒼龍、無事だったようね。全く、手間かけさせて……」
蒼龍の危機にかけつけた山城だった。おしとやかな外見に似合わない怪力で轟牙を叩きつけたのだ。
「……な、な……んだ…?」
「で、コイツが誘拐犯?明らかに怪しいんだけど?」
「待って、その人は助けてくれたの!手荒に扱わないで…!」
「憲兵じゃないのに、こんな剣ひっさげてる時点で逮捕確定よ。取り敢えず、拘束して連れていくわ。」
畜生め。鎧を召喚して戦ったあとじゃなきゃ遅れはとらなかったのだが…消耗した今では山城に抗う力も術も無い。そのまま、蒼龍の弁護虚しく何処へと首根っこを掴まれて連れていかれるのであった。
☆★ ☆★ ☆★
「…ちっ、ドジ踏んだな。」
『らしくないな……連戦続きで勘が鈍ったか?』
悪態をついても仕方ない。斬馬刀も持っていかれたし、コート兼マントも盗られた……せめて、ザルバが残されていたのが救いだろう。牢の隅で踞りながら轟牙は考える……これからどうするべきか?まずここを出る…ザルバがいれば難しいことじゃない。次、剣の奪還……素人が扱える代物じゃないのだがそこは良い。問題はこの施設の何処にあるかだ。木造だがしっかりしており、牢屋の広さからして建物の規模もそこそこのもの。気がつかれないで奪還・脱出が出来れば一番だがそうはいかないだろう。
「仕方ねぇ。気がすすまねぇが憲兵とかの服でも盗って剣を捜すしかないな。最後の手段となったら、人質でもとるか…」
『おーお、黄金騎士の台詞かそれ。』
「…」
相変わらずうるさい指輪だ。事が事……手段は選べない。
すると、丁度よく誰かがくる足音が近づいてくる。
「ザルバ、黙ってろ……」
扉を破るのはザルバがあれば簡単だ。あとは、憲兵なり何なりを如何に無力化するか…取り敢えず、人間なら問題は無い。 一眠りしたあとだから体力の余裕も……
「…!」
「…お前が、時雨と夕立を殺したのか?」
『(轟牙、コイツは…!?)』
前言撤回。白と緑のセーラー服の眼帯少女は自分を戦闘不能に追い込んだ艦娘だ。山城を成人女性くらいとすらならまだ幼い雰囲気の彼女だが昨晩のことを考えれば丸腰で相手など愚かであろう。唯一の左目からは殺気をガンガンと乗せた鋭い視線が飛んでくる……ここは出方を窺う轟牙。問にまず、答えることにした。
「…昨日のガキどものことか?艦娘を誘拐した……」
「ああ、そうだ!何故、殺した!?」
件は昨日のシラツユツヴァイ…もとい、白露型姉妹のこと。大方、まだあの彼女たちが堕ちる前の同期か何かだろう…
「俺はな、アイツら白露型と付き合いがあった。アイツらは身勝手な提督のせいで酷い日々を送っていた。われるべきだった……更生の機会だってあったはずだ!それを……」
「アイツらは人を喰っていた…そして、もうとっくに死んでいた。斬らなきゃあんたのお仲間の艦娘が喰われてたぞ?」
「黙れ。やはり、貴様ら人間は身勝手過ぎるッ!!」
一層、殺気が強くなる。されど、怯まない轟牙…話はしているが意識は脇の西洋刀に意識が向けていた。怒るなり何なりすればこの獲物で斬りかかってくるだろう。怒らせ、引き抜いて牢に入ってくる時が千載一遇のチャンス…この僅かな隙を突いてこの少女を体当たりで蹴散らしてしまえばあとは全力で逃げきれるはず。
「貴様が審議を受ける必要は無い……ここで俺が裁く!自分たちは棚にあげ、艦娘(俺たち)を虐げるお前たちなど…!!」
「…誰が、誰を裁くって?」
「!」
…が、あと少し……彼女が構えていざ抜かんとしたところで邪魔が入る。木曾のように白のセーラー服で黒の三つ編みの少女。シャツの裾にチラリと見えた『北上』という刺繍が彼女の名前と思われる。
「はぁ……お姉ちゃんはそんなふうに育てた覚えは無いんだけどね。」
「テメェに育て貰った覚えも無い。邪魔をするな。」
「一応、外には伊勢と日向もいるんだけど?ここで、スーパー北上お姉ちゃんを相手にする?」
「…ちっ…!!」
会話の後、眼帯少女は舌打ちをして去っていく。これを確認すると、北上はゴソゴソと鍵を取り出して牢の戸を開けた…。
「ほーら、出なよ。そんなところにいると、また面倒なことになるよ?あ、私は雷巡の北上……ま、よろしく。」
「…」
「大丈夫、大丈夫、これ提督の命令だから。取り敢えず、私に着いてきて。」
何かだるそうなというか抜けたというか…独特な喋り方だ。というより、牢を以外な形で抜けられた。まあ、平和なことに越したことは無い……
轟牙は案内されるまま、不思議な少女…北上についていくのであった。
☆★ ☆★ ☆★
「……不幸だわ。」
山城は本日もまた憂鬱である。理由は緊急任務で潰れた休日の代休申請が却下されたからだ…。無念を込めて、申請書をクシャッと丸めて、桜の木の下で溜息をひとつ。
「姉様も、何処で桜を見ているのかしら……」
丁度、満開から散り桜で見頃。余裕があれば花見でもしたいところ……そこは上官のさじ加減か。
すると、山城は気がつく。
「ん…?あれって……」
よく見ると、別棟エリアから歩いてくる北上と見覚えのある男……轟牙だ。
「もしかして、釈放されたの?…ってことは無関係の人間を殴ったってこと私?始末書……それとも、クビ?ああ、本当に不幸だわ。」
どうやら、まだ自分の憂鬱は終わりそうに無いと嘆く山城であった…。
その様子を……轟牙は歩く傍ら見ていると北上が声をかけてくる。
「ごめんね、さっきは。悪い娘じゃないんだけどね……」
「さっきの眼帯か。」
「私ら姉妹の末っ子、『木曾』…。水雷戦隊の指揮官をよく務めててあの白露型も一時は部下だった時もあってね…なまじ面倒見も良かったし、善くも悪くも世話焼きだったから…」
成る程、つまり彼女…木曾は先に可愛い元部下の仇を取り損なったわけだ。これはリベンジも覚悟しておくべきだな……
そんな時、北上の制服の袖……正確にはそこから見え隠れする……
(…傷?)
包帯だ。別に艦娘が傷を負うのは珍しいことじゃない。ことじゃないのだが……何故にこの傷を自分は気にしたのだろう?具体的には表現は出来ないが引っ掛かりを感じる。
「本当はかなり人情に厚いし、涙もろいし…駆逐艦にも好かれてるから私も助かってるんだよね~。私、駆逐艦に限らず小さい子どもとか苦手で……」
「…そうか。お前も末っ子想いのようだな。」
「ま、そうかな?」
木曾の話やら他愛ない話をしつつ、轟牙は本館とおぼしき建物へと案内され…木造の廊下を歩む。その際に昨晩の白露型と変わらないような少女たちや大人びた雰囲気を持つ軍服を纏う女性たちともすれ違った…あれら皆が艦娘なのだろう。それぞれで走り回ったり、談笑したり騒いだりと過ごしていた。彼女たちが命を危険に晒して戦っている……そんな実感、轟牙には感じられなかった。
そして、とうとう目的地の古めかしい如何にもその先に重役います雰囲気をだす扉の前へ…
「ここが、執務室…この鬼ヶ島鎮守府の提督がいる場所。ここから先は私は入るな、って言われてるから私はここまで。それじゃ、大井っちが待ってるから…バイバイ~。」
「…ああ。ありがとよ。」
ここで、北上と別れることになった。窮地を助けてもらい短い間でも会話した彼女との別れはほんの少し名残惜しいが仕方あるまい。また機会があれば会えるだろう…そう考えながら轟牙はドアノブに手をかける、
……一方
「あ……ちょっと、これはまずいかも……」
丁度、轟牙の死角にあたる曲がり角に入った北上は強い倦怠感と立ち眩みを感じて、平衡感覚を失うと同時に固い木の床へと身を投げ出す。彼女の表情はさっきの独特な雰囲気は無くなり…苦しげに、はぁはぁと熱に悶える少女となっていた。
G A R O
→→To be continued……
登場人物紹介
☆冴島 轟牙(さえしま ごうが)
黄金騎士 牙狼の称号を継承する独眼の魔戒騎士。背負う斬馬刀こそが、彼の魔戒剣である。『鬼武者』と通り名を持ち、敵・味方から怖れられる孤高の男。なにやら目的のある旅をしていたようだが…
所属の管轄は無い。
イメージはベルセルクのガッツとFate/のクー・フーリンを足して割ったかんじ。
☆山城
航空戦艦の艦娘。巫女服の大和撫子といった外見であるが不幸に見回れやすい体質なため、口癖は『不幸だわ』。装備があれば、消耗した轟牙でもワンパンできる。鬼ヶ島鎮守府所属。