真剣で弟と認めなさい!?   作:黒瀧汕

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正直、長く更新待たせてすいません。
いやー、身内の分断とか親族のあれやこれやでめんどくさいことが続き遅れてしまいました。申し訳ありません。

今年最後の更新。来年から就職で今回みたいな期間ぐらい開くかも知れませんが続けるつもりです。

では、交流戦中盤どうぞ


第十三話

 それは偶然に近いものだった、先程の襲撃を何とか脱した俺は別の場所で待機した。すると予め工場地帯に施した幾つもの警報に敵が引っかかったのだ。敵は川神側陣営上空からの奇襲を仕掛けるようだ。傑將の位置は陣営からそう遠くない高台に居る。梯子を降って迎撃するには間に合わないだろうし九鬼にいる序列上位達みたいな大ジャンプなど到底出来るはずもなかった。

 

 「仕方ない…」

 

 正直、気乗りもせず少し恐怖で首あたりが粟立つが傑將は高さが一番近い台に向かって飛び出した。

 

 ※※※

 

 川神市九鬼所有工場地帯・上空

 

 「さて、そろそろ本陣の守りが移り手薄なる頃か…」

 

 そう呟くのは全身を黒の忍装束で夜の景色に溶け込んでる天神館の生徒「鉢屋壱助」だった。彼は大人一人分乗れるであろう黒塗りされた大凧で制空権を手にし戦況の監視、天神館へと伝えていた。

 そして、時経つにつれ押し込んでいる戦況に終止符を打つ為に獲物に手を伸ばす。彼が居るのは川神本陣の上空、目指す獲物は川神総大将「九鬼英雄」であった。

 

(守りは居れど、手練は出払ってる様だ…ならば、今こそ好機!!)

 

 獲物目掛け目を細める鉢屋、その目からは執念にも似た何が宿っていた。

 

 鉢屋壱助の家は代々戦国の時代でも暗躍した鉢屋衆の一派で今も内閣調査室処理課で影の活躍をしている。壱助も忍びとしての技術を学び秘められた才能を開花させる。その後も多種多様な依頼を熟し、技術を磨く。そんな時に、鍋島からスカウトされ今に至る。

 だが、壱助は川神に対してそれほど思う所は無くむしろ無関心であった。しかし、壱助がいつも覗いてるサイトから珍しく猥談以外の話題、本日の東西交流戦の事が上がりその中でとある一言が多くの者を刺激し彼が動くきっかけとなった。

 

『何だかんだで、西って東よりよえーじゃんww』

 

 何も知らずぬるま湯に浸かった弱者の戯言だがその一文が火種となりいつの間にか収まらぬ所まで炎上、醜い争いへと変わっていった。サイトのコメントが罵倒で苛烈極める中、サイト主がとある機転を利かしこの争いをやる気へと繋げたのだ。

 

 それは……。

 

 「(一番名を挙げた者に合わせ贈られるサイト主秘蔵セット1箱分……これを逃す手はない!!)」

 

 大変くだらない理由(原初の欲求)だった。

 

 何故、彼がこのような下らない理由に闘志を燃やすか、それは今でも内閣情報室処理課の仕事殆どを請け負っている彼の叔父であり、師の体験談が全ての原因である。

 鉢屋壱助にとって叔父は心の底から尊敬する師であり目標であった。そんなある日、身体の基礎が出来つつある鉢屋に叔父は次の段階の精神鍛錬として様々な体験談を語った。元々素直な性格である鉢屋はその話を聞き思考を偏らせたのだった。

 そこから彼の生活は変わった。女性とは肌で触れることがなくなり、密かに人気だった容姿もパーカーなどで隠す様になった。勇気を振り絞った女子からの告白や贈り物などにも丁重に断り忍者としての修行に打ち込んだのである。だが、生活が変わっても中身は思春期真っ盛りの健全な学生である。憧れを抱いたり鍛錬に励み共に暮らす異性を頭の隅で意識する思春期の少年に鋼の精神はまだ柔かった。

 そこで彼は気付いた。何も己が堅物的な思考までして我慢するのではなく、己で己を鎮めれば良いという至り方だった。健全な男子であれば誰しもその本能から刺激される劣情を抑えることは出来ない。故に、鉢屋は内に潜む煩悩を己で吐き捨て心身共に賢者の如く一ミリも隙間ない精神を心掛ける様になった。

 

 「(他十勇士に人員を送り守りが薄まったこのタイミングでなければ後に響くだろう、故に今ここで討ち取らせて貰う)」

 

 大凧から鉢屋は身を投げ落下する。手には使い慣れた苦無を握りしめ、確実に仕留め意識を奪うイメージを固め実行する。目下にいる英雄は勿論、周りで忙しなく動き回る生徒達も気付く様子が無かった。

 

 「川神総大将、その首貰い受ける」

 

 あと十数秒で届く距離であった。しかし、鉢屋が次にとった行動は相手を昏倒させる事ではなく彼の経験から導き出された不意打ちからの守りと受け身だった。

 

 ガキィィンッ

 

 苦無から伝わる勢いと力、それは予想外な所から放たれていた。

 

 「なっ、上からだと!?」

 「英雄の首は早々とらせませんよ」

 

 突然現れた男は左手に纏わりついてるいチェーンの様なアクセサリーを鉢屋に向け放つ。迫るチェーンに鉢屋は舌打ちし苦無で防ぎながら巧みに体を捻り軌道を逸らした。勢いを殺しながら地に転がる鉢屋に対し男はもう片方の手に纏わりついてるチェーンで滑りながら危なげもなく着地した。直後男の横に黒く塗られた大凧が音を立て落ちてきた。

 

 「なるほど、拙僧の凧を利用したか」

 「頑丈な糸で助かりましたよ。切れてたらそのまま落下してましたから」

 

 男は鉢屋が使用していた凧の高台に繋がっていた糸を滑り奇襲したようだ。

 

 「なっ、なんだ」

 「て、敵襲! 敵襲だ!!」

 

 突然現れた侵入者に呆気をとられた親衛隊一同は鉢屋と男の着地してから動き出す。川神生徒が動き回る中、対峙する二人は周りなど気にすることなくお互いだけを見ていた。

 

 「鉢屋壱助で、間違いなさそうですね」

 「拙僧の名を既に知るとは、川神の方も中々やるようではあるな」

 「ええ、貴方の情報得るのに知り合い8人に連絡取りましたよ、お陰で新しく10人ほど知り合いが増えましたがね」

 

 突然現れた丁寧な口調で語る男、鉢屋は数度脱出の算段や奇襲を仕掛けようと伺うが男の立ち位置、構え方、こちらのタイミングに合わせ動く手に行動が阻害されてしまっているのだ。

 

 「お主、何者だ」

 「そうですね、周りの味方への伝えも兼ねて自己紹介しておきましょう」

 

 男は銀色の一度髪をかき揚げ、先程より大きく名を述べた。

 

 「私は『九鬼傑將』。本日より川神学園に仮転入しました、以後宜しくお願いしますね」

 

 この日より『九鬼傑將』の名が世に伝わった。




やっぱり、最後はらしくないかな?

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