真剣で弟と認めなさい!?   作:黒瀧汕

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前々から思ってたけど、別に川神が無能って訳じゃありませんからね。単に間の悪さと突然の事に対応出来ない現代のマニュアル人間を少し出してるだけですから(書いてる人の技術不足もある)


すいません、サブタイ変えるの忘れてました(投稿から12時間後気付く)


第十四話

 やや湿気の残る夜、九鬼財閥が保持する工場地帯では学生達の生み出す熱気が最高潮に達しようとしていた。

 

 その中で英雄の後ろで気配を消し控えるあずみは喉に引っかかる小骨の様な疑問を抱いていた。

 

 (何故、英雄様は先程の襲撃を許したのか(・・・・・・・・・・・・・・・・・・))

 

 それは英雄目掛け鉢屋一助が接近してきた時だ、上空に僅かな違和感を感じたあずみは周囲の人間の気配と地下の振動、上空20mほどの辺りの変化に気を配った。あずみは鉢屋の襲撃に一早く気付き主である英雄に報告と護衛をしようとするが英雄はこちらを軽く見た後すぐに視線を元の位置に戻した、まるで全てを承知しその上で敢えて何もしないと。

 

 すると甲高い金属の弾く音が鳴り響いた。護衛は勿論襲撃者も驚く中で英雄は笑みを深め堂々とその姿勢を崩すことは無かった。

 

 (全てを知ってた(・・・・・・・)? 鉢屋の襲撃も、傑將様が割り込むことも?)

 

 だとすればそれはもはや予知能力のような超能力としか言えないものであった。実際、英雄の中でもこれはらしくない賭けで内心冷や汗物だった。英雄はやや性格に傾きがちではあるが実力主義の川神学園の学年2位の頭脳を持っている。勿論慢心する心はあれど相手の過小評価と己に自惚れる事は無い。

 

 だが、英雄は信じた。己の信ずる者が己の信じた結果を示し、応えてくれる事を。そして願いは通じ結果は示され英雄の心中は叫びたい程感極まっていた。

 それとは別に得物構える傑將は目の前の敵に対する警戒の他に別の思考をしていた。

 

 (さっきの襲撃、不思議と自分でもよく動けたと思う)

 

 対策を立てたとはいえ25mからの飛び降り、対象を絞った襲撃、違いがあるとは言え技量が上の相手に対し1対1の対決。どれもこれも彼にとってはらしくもないものだ。

 

 (自分は日陰者だ。影からチクチクと襲撃や罠、誘導して相手を弱らせる。時として自分も駒として誘いまたは撃退する)

 

 しかし、日本に来てから傑將の思考や闘い方も変わった。

 卑屈な態度で相手を煽り相手の乗りやすい話し方でペースなど掴んでは裏を探り本質を見定めていた。しかし、日本に来てはどうだろうか、隠し欺いていた感情が剥き出しになり吐く言葉に感情が籠る。終いには自ら前に出て立ち奮うなど…。

 

 (随分とまあらしくなくなったものだ…。)

 

 そう己を評価し細く微笑み嘲笑する。

 

 「ふん。敵を前に笑うなど余裕であるな」

 

 「いえ、貴方を侮辱した訳ではありませんよ。ただ、らしくない自分が可笑しくて……さて」

 

 先程の意識から更に冷えて捉える視線に力が増した。息を吐くと身体の中の余計な熱が吐き出される幻覚を覚えた。腕や足がどこまでも機微に反応し、僅かに落とした腰は重心が安定し相手の動きにどこまでも対応できる姿勢となる。

 小指から親指まで力が籠り僅かにたわんでたチェーンがピンと張る。腕の可動域を僅かに広げ攻防どちらにも対応できる形にもっていった。

 

 飛び込む機会を伺っていた鉢屋だが傑將の雰囲気が豹変したことでその余裕を捨てた。射抜く程の鋭い視線と隙の無い構え、慢心する心の一切を捨てた闘う者の姿。そんな傑將に鉢屋は背中に冷や汗が流れた。

 

 (これは想像以上に厄介な手合いだ)

 

 この時から既に鉢屋は迎撃の手段を捨て逃げの算段を巡らせていた。同時に傑將も相手の思考を先読みし退路を塞ぐ為の情報と策を巡らせる。

 睨み合うこと僅か10秒と満たない時間、先に動いたのは鉢屋だった。

 フェイントを含めた初動で向かう先には英雄がいる所だった。

 

 「川神御大将の首、刺し違えてでも貰い受ける!」

 

 懐から幾つもの火薬を握り鉢屋はそのまま英雄に向かい心中を計る。

 

 「させるか!!」

 

 しかし、その前に気配を消していたあずみが躍り出る。小太刀を構え己を肉壁にしてでも英雄に被害が及ばない覚悟で鉢屋に相対する。

 

 「貴様、風魔の者か!」

 「そう言うお前も鉢屋だな。悪いがこの先には一歩も通させねえぞ」

 

 もうすぐにでも激突する両者。あずみは相手との距離と己の持つ最大速の技が当たるだろうタイミングを読み構える。瞬間、あずみの足元から勢い強い煙幕が広がった。

 

 「ちっ!」

 

 これにはあずみも舌を打った。いくつか想定されていた結果ではあったがこうなるとあずみは英雄に付いて居なければならないのだ。

 

 (下手に動けば敵は英雄様を狙う。だが、英雄様に付いていれば敵は情報と己の生存を確保出来る)

 

 (あの鉢屋の場合恐らく後者の選択をするだろう。いつもならステイシーや李に護衛を任せてあたい自ら討ち取りに行くんだが、これは学校イベント従者は居ない上に周りにいるのは腕がまあまあの学生のみ)

 

 「仕方ねぇか」

 

 煙幕の中から素早く抜け出したあずみは構えを解かないままで英雄の元へ戻る。辺りの安全の確保が出来るまでそのまま警戒し煙を睨みつける。

 すると煙の向こうから金属が擦れる金切り音が響いた。

 煙が晴れると片膝を着いたり完全に倒れたりしてる生徒と、擦り傷だらけで鉢屋を捕縛した傑將の姿が現れた。

 




また半年後かに出すかも知れませんのでその時まで待ってください。
新入社員として研修やら頑張ってきます。

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