死んだら、戦艦ミカサのメンタルモデルになってた件   作:くいあらためよ

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黒の襲来・終

「多聞!ねぇ、多聞ってば!」

 

必死に揺すったり、声を掛けているが目を開ける様子がない。

 

「お願い…………目を覚まして……」

 

気づけば、水が自分の顔から落ちていた。

これが涙だと、気づくのにはそう時間もかからなかった。

 

「…………いくよ。」

 

流れる涙を拭いながらミカサは、デフォルミカサに声をかけた。

 

「多聞が命を懸けて戦ったんだ、私だってそれに答えないと……全速前進!」

 

ミカサは、満身創痍の船体を軋ませながら進んでいった。

 

「ミサイル全門発射!!一番二番魚雷菅に侵触魚雷装填!」

 

残弾は残り少なかったが、そんなことを気にせず、ナガトに対し飽和攻撃を行った。

 

一方ナガトは、撃ち返してくる気配は無く既にクラインフィールドすら展開する余裕も無いらしい。

 

「副砲射程圏内に入った………全門斉射ァ!」

 

一斉にナガトに襲いかかる。

侵触弾頭の着弾も相まって大爆発を起こした。

 

もう、彼女は沈むだろう。

 

「ナガト………さようなら。」

 

そう呟き、去ろうとした。

しかし……

 

『ミカサァァァァ!!』

 

直後、ナガトから高出力レーザーが放たれた。

ミカサはとっさにクラインフィールドを展開するものの、重力砲発射における障害がまだ残っていた。

 

ミカサの今の演算能力ではナガトのレーダーを防ぐ事ができず威力を少し弱めただけで、ミカサに着弾した。

 

「何て威力なのよッ!」  

 

しかし、小規模な爆発はあったもののすぐにナガトのレーザーは消えた。

2発目を覚悟したが、飛んでくる様子はない。

きっと、あれが最後の攻撃であったのだろう。

ミカサはそう感じた。

 

「何て執念なの…………でもこれでッ!」

 

二番砲に、エネルギーを充填させナガトへ発射した

 

艦の中央を貫かれたナガトは、轟音と共に沈み始めた。

中央から真っ二つに折れたのだ。

 

「ハァ………ハァ…勝った………」

 

深いため息と共に甲板に座り込む。

早くこの海域から脱出しなければ……

 

「もう…限界かも…………」

 

目の前がチカチカする…

 

ミカサは眠ろうとした。

しかし

 

「………!ソナーに感あり!なにか来る!」

 

ソナーに映る1隻の影がこちらに近づいてきていた。

目視では見えなかった。

ディスプレイを開き、さらに視界を広げるも見つからなかった。

 

「一体どこに…………!まさかッ!」

 

しかし、ミカサが気づいたときには既に遅く数本の雷跡がこちらへ向かってきていた。

 

「全速前進!!クラインフィールド構成開始!」

 

しかし間に合うことはなく、右舷の艦尾辺りに被弾した。

 

「侵触弾!?早く直さないと……ッ!?」

 

今度は中央に2発、艦首に1発次々に当たった。

 

「間に合わない……………ここまで来て!」

 

ミカサも反撃に移るがいかんせん、敵の正体がわからなかった。

 

「確か、普通に船も潜ることは出来たけど………出てきて射撃しないということは………潜水艦か!」

 

ミカサの予想は見事に的中した。

ナガトの命令で海域を離れていた伊8が、ナガト撃沈と共に戻ってきたのだ。

 

ミカサの演算処理が低下した状態では潜水艦の姿を見つけることはできず、一方的な攻撃を食らっていた。

 

ミカサの稼働できる艦のシステムは既に30%を切っていた。

 

「こんな……とこ……ろ…でぇぇ!!」

 

最後に右舷から集中雷撃を受けたミカサは、爆発と共に海へ沈み始めた。

 

「ちくしょう……………ここまで……か。」

 

ミカサの視界が激しく歪み、ぼやけていった。

 

 

 

轟沈していくミカサを横目に、伊8は沈んだナガト、シラツユ、シグレのユニオンコアを回収し、静かに当海域を離脱していった。




これで、第1章は終わりとなります。
沈んでしまったミカサはいかに!?

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