死んだら、戦艦ミカサのメンタルモデルになってた件 作:くいあらためよ
ミカサ達は、アカシの後をついていった。
コントロールはあちらが握っている。
「良いのか?やっぱり不安になってきた……」
「大丈夫よ、男がそんなにビビってどうするのよ。」
「うむ…………」
「うぅ…………」
シキシマが目を覚ました。
「………ここは…!」
周りを見渡して、すぐに状況を理解したのかミカサに掴みかかった。
「ミカサ!てめぇ、何しやがる!」
「ちょ、ちょっと………落ち着きなさいって!」
「落ち着いてられるかよ!説明しろ!」
「俺たちはハシラジマってとこにむかってんのさ。」
「ハシラ………ジマ…だと?」
「全く、元気が良いなぁお前は。」
不意に後ろの方から声がした。
「妹たちを沈めたわりには反省してないようだな?」
「アカシ………」
気付くとアカシがそばによってきていた。
「にしても、ずいぶん暴れたようだな。艦が至るところでめちゃくちゃだ。」
「…………」
「はぁ、可愛さがないねぇ………ミカサ、もうすぐ着くよ。準備しとけ。」
「え、えぇ。」
シキシマは黙ったまま、船の奥に消えていった。
「ここがハシラジマ………おっきいわねぇ……」
「霧の本拠地か………」
ミカサ達は、港へ着いたとたんすぐに広場に案内された。
「ここでは401とあんたのせいで大忙しだよ。」
「え?」
「撃沈した艦を直すのが私の仕事でね、沈んだ艦のコアを回収したり、一部をサルベージしたりともう大変だよ。」
「そ、そうなのか。」
「そうだよ……ほら、ここが広場だ。ドックと港が一望できる。」
前面大きなガラスで覆われており、観葉植物と机が等間隔で配置されていた。
奥の机には見覚えのある女性がいた。
「ナ……ナガト!」
「……ふふ、来たわね。」
こちらを見つけると寄ってきた。
「待っていたわ、貴女が来るのを。」
「…………ッ」
「そんなに睨まないで欲しいわね。あのときの借りはいつか返させていただくわ………あら。」
菅野の姿を見たとたん、ナガトは動きを止めた。
「貴方………人がこんなところに来るなんてめずらしいわね、お名前は?」
「俺は、元統合海軍所属の菅野直だ。」
「私はナガト、ほんとはもう一人いるのだけれど………まぁよろしくね。」
「こっちこそな。」
「人間がここに来るのは貴方が二人めね、ふふ、また後で……」
「二人目?一体どういう………」
菅野が言い出したときにはすでにナガトは部屋を出ていってしまった。
「…………」
「あ、そうだ。おーい、チョウカイー!」
「はい、お呼びですか?」
部屋の奥からさらにもう一人出てきた。
「ミカサ、この子がチョウカイ、ハシラジマの管理人だ。」
「よろしくお願いいたします。」
「え、えぇ、よろしく………」
大きな眼鏡をかけているこのチョウカイというメンタルモデルはどことなく、雰囲気が他とは違っていた。
「ちょうどいい、チョウカイ、ミカサをドックへ連れていってくれないか?」
「良いですよ。さぁ、こちらへ………」
「わかったわ。」
「…………俺は?」
ミカサとチョウカイは部屋を出ていってしまい、残された菅野は戸惑う。
「そこら辺でも座っておいてくれ。」
「お、おう………」
第三建造ドック・展望デッキ
「おー、ほんとに出来てる…」
「当たり前でしょう、港なんですから。」
チョウカイに連れられ、ミカサは自身の艦を見下ろしていた。
「こうみるとやっぱり私って小さいなぁ…」
「…………」
「どうしたの?」
「貴女は………とても人間らしい雰囲気ですね。」
「え!……そ、そうかしら?」
「そうですよ。私は仕事がありますので先に戻りますね。」
「わかった、ありがとう。」
デッキには、ミカサ一人だけが残った。
「…私は誰なんだろう…何者なんだろう………」
一人呟く
「私は霧の艦として生まれてきた……でもなんでだろう………なんだか人間だったような………」
その時、後ろから声がした。
「戦艦三笠はな、日露戦争のときに起きた日本海海戦で、連合艦隊の旗艦を務めたとても誇り高い艦なんだ。」
聞き覚えのある声………まさかッ!?
「私がもっとも尊敬する艦だよ。」
振り向くと、そこには死んだはずの男がいた。
「うそ………そんな………多聞………」
「心配かけたな、ミカサ。」
山口多聞がそこに立っていた。