死んだら、戦艦ミカサのメンタルモデルになってた件   作:くいあらためよ

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救助

辺りは日が暮れていた。

 

「頑張れ!死ぬんじゃないぞ!」

 

「艦長………」

 

統合軍海軍…所属艦あきつ乗組員は、先の霧との戦闘で海に投げ出されたままだった。

 

「もう、私は無理です。」

 

「何をいってる!最後まで生きて帰るんだろ!」

 

「この怪我ではどのみち無理です。どうか、最後に情けを……」

 

「駄目だ!必ず助けが来る、それまで耐えるんだ!良いな!」

 

「は…はい、」

 

「艦長!」

 

今度は別の方向から声が聞こえてきた。

 

「艦長…」

 

「どうしたんだ?南雲航海士」

 

南雲といわれた男は、周りに聞こえない声で艦長と喋った。

 

「艦長…ほんとは気付いてるんですよね。」

 

その声はかすかに震えていた。

 

「……なんのことだ。」

 

「大丈夫ですよ、もう。みんな薄々と気付いています」

 

ここに救援がこないこと

 

「………やはりか。」

 

「艦長…」

 

「くそ!……我々はどうしたらいいんだ‼」

 

その声は、震えて弱くなっていった。

 

「俺はこいつらを見捨てることは出来ない!ちくしょう………」

 

ここにいる、全ての乗組員が耳を傾けていた。

そのときだった。

 

「光が…船の光が見えます!」

 

とある乗組員が言った。

 

「何処だ!」

 

「ほんとだ……しかも大きい」

 

それは、まばゆい白い光を放っていた。

 

至るところから歓喜の声が上がる。

 

「艦長…!」

 

「あ、あぁ。奇跡だ。」

 

「艦長の願いが叶ったんですよ!」

 

「やった…やったぞ!助かったんだ!!おーい、俺たちはここだ!!」

 

艦長は、船に場所を知らすべく叫んだ。

大きな希望が湧いてきた。

 

しかし、その希望は儚く砕けるのであった。

 

「あ……あぁ……」

 

「そんな…」

 

「霧の……戦艦……」

 

目の前に現れたのは、先程自分達を沈めた霧の戦艦であった。

 

霧は、自分達の目の前で止まった。

 

「もしかして、俺たちにトドメを刺しに来たのか!?」

 

「艦長…」

 

「ここまでか……」

 

乗組員は黙って、これから起きる事を受け入れようとした。

 

しかし、何も起きなかった。 

乗組員たちが拍子抜けしてると、頭の上から声が聞こえてきた。

 

「貴方たちの艦長は何処?」

 

 

どういう状況何だろう……

 

私は、タカオと別れたあと先程の被害現場に戻った。

歓声が聞こえたと思ったら急に静かになるから、不思議だなぁ…

 

と考えていたが、早くしないとヤバそうな雰囲気だったので、とりあえず艦長に会ってみることにした。

 

「貴方たちの艦長は何処?」

 

「…」

 

はぁ…と溜め息をつくともう一度質問をした。

 

「貴方たちの艦長は何処なの?」

 

「私だ」

 

やっと反応してきた。

見ると、弱々しく手をあげていた。

 

「あなたが艦長か。良いでしょう。」

 

頭の中で念じると、船に積んであったボートが降りた。

 

「今から、貴方たちを助ける。早く乗りなさい。」

 

なにいってんだ?

 

と、疑問に満ちた顔で私を見つめてきた。

 

「聞こえなかった?早く乗りなさい。」

 

「助けるというのは本当か!?」

 

艦長が、そう叫んだ。 

霧が人間を助けるなんて、あり得ないことだからだ。

 

「本当よ。むしろ、それ以外にある?」

 

「し…しかし、」

 

「あぁ、もう!!乗りたくないならそれでいい!早くして!」

 

「艦長…」

 

乗組員たちは、艦長の意思にしたがった。

 

「とりあえず、乗ろう!話はそれからだ。」

 

「決まったようね!さぁ、早くして!」

 

ミカサの用意したボートに乗り込み、それでも乗りきれないものは、ミカサの甲板に乗った。

 

「本当に、これは現実なのでしょうか。」

 

「あぁ…我々は助かったんだ。」

 

戦艦ミカサは、横須賀に向けて出発していった。

 

 

その後ろをつけているものに、私は気付かなかった。 

「おいおい、一体どういうことだよ!」

 

「霧が人間を助けるとは……」

 

「本来ならあり得ないこと。あの、艦は何かおかしい。」

 

タカオとの戦闘を終えたイオナたちが、この一部始終を見ていたのだった。


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