死んだら、戦艦ミカサのメンタルモデルになってた件   作:くいあらためよ

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少し長めに書いてみました。


接触

「何故、アンタは我々を助けたんだ?」

 

私は、艦長と言われる男と艦長室で話していた。

 

「んーその前に名前を名乗ってほしいわ。」

 

「あぁ、失礼した。私は護衛艦あきつ艦長山口多聞一等海佐だ。」

 

「私は、この世界だとミカサって呼ばれてるわ、よろしく。」

 

山口は、私の今の発言に疑問を抱いたがすぐに忘れようとした。

 

「先程の質問だが…」

 

「何故助けたか……何故だろうね。」

 

私はあえて、質問をはぐらかした。

色々と面倒なことになるのを恐れたからだ。

 

「………まぁ、良い。ひとまず助けていただいたことに感謝する。」

 

山口は敬礼をしたので、私も笑顔で返す。

 

「いいえ、これも『人として』当然ですから……あっ」

 

ヤバイ!口がすべった!!

あからさまにこちらを不思議がってる!

 

「…今のは一体」

 

「艦長!!」

 

焦る私を助けるかのように、山口の部下が走ってきた。

 

「どうした?そんなに慌てて。」

 

「潜水艦です!間違いありません!チラッとですが確認しました。」

 

潜水艦?まさか!?

 

すぐに私はディスプレイを開き確認した。

レーダーにはミカサの後ろにぴったりとくっついている潜水艦があった。

 

「潜水艦…もしかして霧か!?」

 

「えぇ、そのようね……」

 

ここまで早く見つかるとは、流石と言った所か…

 

「ミカサ……」

 

山口が、私をじっと見つめる。

 

はぁ…

 

と溜め息をついた。

多分、私のしたことはあちらに筒抜けだろう。

下手したら、こっちを攻撃してくるかも知れない。

 

あれこれ考えて、私は決断する。

 

「ここまでしたんだから、最後まで抗うとしますか。手伝ってくれます?」

 

思わぬ言葉に少し戸惑っていた山口だったが、覚悟を決め

 

「任せてください。全力でサポートします!」

 

ミカサは、すぐに戦闘支度を始めた。

 

 

「目標、旋回しました。」

 

「恐らく、我々を敵と思っているのでしょう。」

 

「イオナ、相手の情報はわかるか?」

 

イオナは霧のデータベースにアクセスしてみるが、ミカサについての情報は見付からなかった。

 

「わからない。多分新しい艦だと思う。」

 

「大きさは、重巡クラスだと思われますが。」

 

千早群像は相手について、しばし考えていた。

 

「恐らく目標の霧艦艇は、何らかの理由で同じ霧から追われてると考えられるが……どう思う?」

 

「確かに、先程の救難活動。明らかに霧のルールから逸脱してる行動でしたしね。」

 

「でも、相手がこっちに危害を加えない…という結論にはまだ早いんじゃないか?」

 

401クルーたちはそんな相談をしていたが、

 

「…!ソナーに反応!これは…侵食魚雷来ます!」

 

「なに!…デコイ射出!クラインフィールド展開!イオナ、急速潜航!」

 

「了解。クラインフィールド展開、急速潜航」

 

間一髪で直撃を避けた401だった。

 

「一番から二番!魚雷装填!順次発射!」

 

「了解!っとこれでも食らえ!」

 

二発の魚雷がミカサを捉えた。

 

 

「敵の雷撃、来るぞ!」

 

「わかってるわよ!ミサイル用意!」

 

私は、一人での戦闘に四苦八苦しつつ攻撃していた。

 

「くそ、一発破壊しそびれた!来るぞ!」

 

「クラインフィールド!」

 

間一髪で防ぐが、かなりの衝撃が艦を揺らした。

 

「侵食魚雷じゃないだけましか…」

 

気を取り直し、魚雷を放っていった。

 

「侵食魚雷もそんなに多くないし…」

 

と、呟いていると、

 

「なぁ、ミカサ…相手と通信は出来ないか?」

 

「は?」

 

突拍子もない事を言って来た。

山口は更に口を開く。

 

「出港する前、こんな話を聞いたんだ。近々、横須賀に人が操る霧の潜水艦が来ると。」

 

「今戦っているこいつがそうだと言うの?」

 

「確定は出来ないが恐らく…」

 

この状況で通信できるのか、いや通信出来たとしても相手は応じてくれるか

 

私は考えたが、今、乗っている人達に被害を出すわけにはいかないと結論がでて

 

「わかった、通信してみるわ。」

 

と、相手との概念伝達を行った。

 

 

「ふぅ…あれ?敵の攻撃が止んだぞ」

 

「…!群像、あっちが呼び掛けてる。」

 

「なんだと?」

 

「モニターに出す。」

 

ここで、401のクルーは初めてミカサの姿を見た。

 

『あー、と聞こえてますか?』

 

目の前には、黒髪ロングの女性が現れた。

 

「こちらは401の艦長、千早群像だ。」

 

『私は戦艦ミカサよ、よろしく。』

 

「早速だがミカサ、用件を伺おう。」

 

『えーと……山口よろしく!』

 

画面に、一人の男が現れた。

 

『私は、護衛艦あきつの艦長山口多聞一等海佐です。401の皆さん、この様な事になり非礼をお詫びします。』

 

「もしかして、先程の…なるほどそういうわけか。イオナ、浮上してくれ。」

 

ミカサたちの意図に気付いた群像は、イオナにそう指示した。

 

「おいおい、何を言ってるんだ!」

 

「大丈夫だ。相手はもう、我々を攻撃してこないだろう。イオナ」

 

「了解、浮上する。」

 

 

異世界転生してきた私が、この世界の主人公たちと接触した瞬間であった。


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