今回は前々からきらりを書くならこれと決めていたので少し長くなりました。もしかしたらみなさんが求めていたのとは違うかもしれませんが、私の欲望ですのでご容赦ください。
では、どうぞ。
最近姉さんがより楽しそう。
姉さんは普段から楽しそうにしてはいるが最近ではそれが数段レベルアップしている気がする。
……そのおかげでタダでさえ鬱陶しく感じているのに、それが増してしまった。レッスンや仕事から帰ってくるなり俺の部屋に来て、やれ今日はPちゃんが~だの、みんなハピハピだにぃ~だの、その日あったことすべてを話しまくってはニコニコしている。
俺は何にも言葉は返さないし、目線もむけることもない。それでもひたすら話しているのだ。それを俺が引きこもりもどきになってからずっとだ。……ああ、一応伝えておく。俺は引きこもりもどきだ。完全に部屋から出ないわけではないぞ?夜限定でコンビニにはいくから”もどき”だ。その経緯?普通だよ。学校に行きづらくなって、休みがちになって、それで引きこもった。
……それだけ。ただそれだけだ。
だから今の姉さんは
そしてたぶんそのまま俺の部屋に来る。
「ただいまだにぃ、光ちゃん」
……ほらね?
「光ちゃん、ちゃんとご飯は食べたのぉ?」
「……」
「光ちゃん?」
「……」
「ひーかーるちゃーん!!」
耳元で叫ばないでくれ。
と、いうかこれは返さないと延々と叫ばれることになりそうだ。そんなことされたら俺の耳が昇天する。
「食べた。」
「やーと返事してくれたねぇ♪」
「……」
「でもそっかー!ちゃんと食べたならよかったにぃ!」
「……」
「それでねそれでねぇ、今日はレッスンだったんだけどぉ……」
「……」
今日も懲りずに話し続けてる。返事が返ってこないことはとっくに知っているはずなのに。
おかげで知りたくもない姉さんの活動状況もアイドルの基礎知識も頭に入ってしまった。
どうやら姉さんは充実したアイドル活動をしているらしい。アイドルのことを話す姉さんは輝いているように見えてそれが姉さんのアイドルとしての姿のようにも見えてしまう。だから姉さんは俺とは違う。
”きらり”
姉さんの名前。さっき言いかけたけどその名の通り今の姉さんはきらりと輝く星のようだ。それに比べて俺はどうだ?
”光”
……笑わせる。薄暗い部屋で黒いパーカーかぶってパソコンにかじりついているやつが”光”?……は。
「それでねぇ……」
「……」
だからこんな風に楽しそうにしているねえさんが
「まーたむむむ~って顔になってるよぉ?ほら、はっぴはっぴだにぃ?」
「……姉さんは」
「んー?」
なんで
「なんで俺にかまう?」
「なんでってぇ?」
「話しかけても俺は返事してないし、頼んだわけでもない。なのになんで……」
「それはもちろんおねえちゃんだからだよぉ。」
「それだけで……」
「きらりはね、光ちゃんにははぴはぴしててほしいの。でもね?だからってお外に出るのはいやでしょお?だったらせめてきらりの一日のことを話してそれで少しでも楽しい思いをできたらなぁって思うの。」
「そのために毎日飽きもせず話してるのか?」
「もちろんそれもあるけどぉ……なにより光ちゃんのことが大好きだから!……きゃあ言っちゃったぁ!」
「……」
結局姉さんはそういう人だ。無償の愛、見返りを求めない、ただ自分がそうしたいから、そんなきれいごとのようなものを素でやってしまう。
なら俺は?俺に何が出来る?何を与えられる?
「あ!!そうそう!」
「……」
「もうすぐねおっきなイベントがあるんだぁ。そこではね346のみーんなが歌って踊ってお客さんと一緒にはっぴはっぴするんだぁ♪」
「……」
「きらりもでるから今はいっぱいいっぱい練習してるんだよぉ。」
「……」
「だからぁ光ちゃんも応援してくれると嬉しいにぃ♪」
「……」
来てほしい、とは言わないんだな。
俺に気を使っているのか、本当に応援だけでいいのか、それはわからない。
それでもたぶん……
「よぉ~し!明日もたくさんレッスンするから今日は寝るね!」
「……」
……もうそんな時間か。
いろいろ考えてたら思っていたより時間が過ぎいていたらしい。
「それじゃあ光ちゃん!おやすみぃ!」
「……」
そういって姉さんは出て行った。おそらく今から風呂に入って寝るんだろう。ふと時計を見てみるとすでに10時を回っていた。明日も早いはずなのに、俺なんかのこと考えて遅くまで話していく。そんなことを平然とできてしまうから姉さんは眩しい。
……俺も今からでも姉さんみたいになれるだろうか。いや無理だろう。自分の性格をほかの人に似せて変えるなんてできやしない。だから俺はきっと死ぬまでこんな性格のままだ。これから先も姉さんに負担をかけていくのだろう。何もしてあげられない。何かを与えることもできない。
でも……
誠意を見せるくらいなら。
~after days~
いよいよイベントも終わっちゃう。美波ちゃんが倒れたり、雨が降ってきたりで大変だったけどそれも全部含めていいイベントにできたと思う。合宿でたくさん練習したダンスをみんなで踊り、歌を歌って、雨の中戻ってきてくれたお客さんもそうじゃない人もみんなはっぴはっぴになってほしい。そう思いながら最後のポーズを決める。そこできらりはいるはずがないけれどある男の子の姿を探してしまう。きらりの大切な大切な弟の姿を。
『ありがとうございました!!!!!』
最後まで見てくれたお客さんたちに心からの感謝を伝える。
そうだ、今はみんなに感謝しなくちゃ。それで家に帰ったら今日のこといっぱいお話しよう。そう決めて頭を上げる。みんなが拍手を手を振ってくれている。シンデレラガールズのみんなも笑顔で未央ちゃんや智絵里ちゃんは目に涙を浮かべている。それにつられてきらりの目にも……
いろいろな感情に包まれながらあたりを見渡すと……奥に何もせずただこちらを見ている人がいた。その人は黒いパーカーを着て手をポケットに入れている。
「うそ……」
涙も止まってしまった。だってあれは!見間違いじゃない、きらりが光ちゃんを見間違うはずがない。
それならあれは……!
「きらりちゃん?」
「え?あ、うん今行くにぃ!」
どうやらいつの間にか退場する時間になっていたらしい。みりあちゃんに呼ばれて慌ててステージから退場する。去り際にもう一度その人の姿を探すとその人は帰ろうとしていた。
「皆さんお疲れさまでし「ごめん!!Pちゃん!!」諸星さん!?」
「きらり!?どうした!?」
Pちゃんや杏ちゃんに声をかけられるけど今のきらりはそれどころじゃなかった。
衣装のまま外に出る。あたりを見渡すけどその人はどこにもいない。
「そうだ!携帯!」
イベント後の疲れなんて忘れて携帯を取りに控室へ走る。
控室のドアを開けたままにして自分がデコレーションしたポーチから携帯を出し電話帳の一番上の人に電話を掛ける。
トゥルルルルル……トゥルルルルル……
「お願い…!出て!…!」
みんなが控室に来たようだけどきらりは電話に集中する。
トゥルル…ピッ
「もしもし!?光ちゃん!?」
『……』
みんなが驚いている。きらりがこんなに切羽詰まった声を上げたのは初めてだからだと思う。
『……』
「光ちゃん…」
『……すごく眩しかった。お疲れ様。』ピッ……ツーー
「!!」
その言葉を聞いた時きらりは声を上げて泣いてしまった。
光ちゃんが来てくれた。それだけでも嬉しいのに感想まで言ってくれた。今までで一番うれしい。
みんなが心配そうに見ているけれどきらりはみんなに向かっていった。
「さいっこうに、はっぴはっぴだにぃ!!!!」
おしまい!
「ふう……」
俺は携帯の通話を切りため息をつく。まさかばれるとは……
……すごく眩しかった。ただそれだけの感想だけど自分にとっては大きな意味があったと思う。
だから少しだけ、ほんの少しだけ輝きを借りるね、姉さん。
俺はもう使わないと思っていた電話番号を探す。たぶん電話を掛けるのは二度目になる。一回目は拒絶だったけど……
そう思いながら震える指で掛ける。
「……こんばんは。二年三組の諸星です。あの……」
俺もほんの少しでも輝けるのなら。
おしまい?
みなさんライブには行きましたか?
私は宮城の一日目に行きました。
控えめに言って……最高で最高で最高でした。